憂「さ、聡くんだ」コソコソ


聡「…ん?今チラッと……」

鈴木「どうかしたか田井中」

聡「…いや、なんでもない。気のせい気のせい」

鈴木「は?まぁ帰ろうぜ」

聡「あー悪い、俺おつかいして帰るからさ」

鈴木「そうか、じゃな」

聡「おーまた明日なぁー」


憂「……」


聡「…さて、俺も帰ろうっと!」


憂「……」スッ

聡達がその場から居なくなった事を確認し、
何とはなしにゲームセンター前に行く憂

憂「あんまりお金ないけどやろっかなぁ……」ジーッ


憂「うーん……」

「それあと一押しで取れますよ」

憂「えっ!?」バッ

憂「あっ、さ 聡くん」

聡「どうも(うわーめっちゃ負のオーラ出てるなぁ)」

憂「ど、ど、どうしたの?」

聡「いやなんかチラっと見えたんで…何してんのかなって」

憂「……家に居辛いから時間潰してるんだ……」

聡「まだ唯さんと仲直りしてないんスか?」

憂「う、うん……もうお姉ちゃん許してくれないよきっと……」

聡「…ちょっと遊んできます?時間潰すなら付き合いますよ。
  どうせ俺も今姉ちゃん帰ってきたらパシられそうだし」

憂「え、でも……」

聡「いやぁ俺はもう気にしてないですって。昨日言ったじゃないですか」

憂「……ありがとう…」




憂「あー、まただめだぁ!もう500円も使っちゃったよぉ」

聡「ははは、でも最初のやつはやっぱり一押しで取れたでしょ?」

憂「そうだね、聡くん凄いね」

聡「いやぁ俺この辺じゃちょっとしたクレーンマスターって呼ばれてるんで!」

憂「そうなの?wおもしろいねそれ」

聡「そっすか?はははw …あ、もうこんな時間だ。そろそろ帰ります?」

憂「あ……う、うんまたね。あ、これ」

聡「いいっすよ、取ったの憂さんだから憂さんにあげますよ」

憂「ありがとう…」

聡「じゃ!」タッ

憂「さ、聡くん」

聡「はい?」

憂「今日はどうもありがとう…」

聡「いえいえ。それじゃあ!」タッタッタッ




憂「私も帰ろう」

憂「これかわいいなー♪お姉ちゃんにあげたら喜ぶかなぁ」プニプニ

憂「えへへへ……」




憂「…うぅ…商店街出たあたりじゃまだ楽しかったのに…
  家に近付くにつれて気分が重いよぉおお……」

憂「つ、着いちゃった……」


ガチャ

憂「ただいまー…」


シーン…


憂「……靴ある…帰ってるよねお姉ちゃん…うぅ」


憂「ご、ご飯食べてくれたかなぁ」ガチャ

憂「…………」

テーブルに用意された食事は一切手をつけられておらず、
代わりに当てつけのようにカップ麺の空容器が置いてあった

憂「……うぅ……」グスン

憂「食欲ないや…私も今日はごはんいらない…寝よう」



それから数日が過ぎたが、
相変わらず平沢家の空気はどこか重いままだった。
姉妹が食卓を共に囲むことは無くなり、
たまにリビングで顔を合わせても特に言葉を交わさないまま部屋へ戻り…
二人は仲直りするどころか、距離を遠ざけていくばかりだった。


――――
律「あ、唯さぁ今度うちこない?遊ぼうよ~」

唯「うんいいよりっちゃん」

澪「わ、私も行っていいかなー律ぅ……」

律「え……まぁいいけど…」

澪(ま、まぁって……まぁって…)シュン

律「じゃあ今度の日曜なー」

唯「うん」



ピンポーン

「はーい」

ガチャ

律「お、唯!もう澪きてんだ、上がって上がって」

唯「ほーいお邪魔しやーす」トントン

澪「おー唯、おっす」

唯「……あれ、聡くんは?」

律「ん?あぁ何か友達と遊ぶって出てったぞ」

唯「そうなんだ(久しぶりにお話しようと思ったけど残念)」


唯「…あ。そういえば私新しい弦買おうかなって思ってたんだ」

澪「そうなの?」

律「じゃあちょっと外出るかぁ。こないだ見つけた喫茶店も気になるし」

唯「おー!いこ~」



――――

カラカラン

唯「ふー!お茶おいしかったね~」

律「あの店当たりだったなー!今度ムギも連れてこようぜー」

唯「じゃあ帰ろっかー」

澪「お、おい!弦買いに来たんだろ」

唯「あ、そうだったー」

律「…ん?あれ聡じゃん。あいつゲーセンに遊び来てたのか」

澪「…あれ?一緒にいるの憂ちゃんじゃないか?」

唯「え」

律「あ、ホントだ!!あの二人いつの間に……」

唯「…………」


澪「どうする?声かける?」

律「……」チラッ

唯「……」

律「いややめとこうぜー、それよりさっさと弦買って帰ろうぜ」

唯「……」

澪「そうだな。ほら唯行こうよ」

唯「うん」



――――

聡「いやー遊びましたねー、今日も楽しかったですよー」

憂「私も!聡くんといると時間過ぎるの早いなぁ」

聡「そっすか?いやーははは」

憂「じゃあね~またねぇ」

聡「はい、またっす」


憂「楽しかったな~、今日もかわいいぬいぐるみ取っちゃったし!部屋に飾ろっと」



――――

澪「しかし驚いたな、まさかあの二人がなんて…あれデートだよな?二人きりだったし」

律「か、かなぁ…(おい澪静かにしてろよ…)」チラッ

唯「……」

澪「あれかな、最初は唯と別れさせるために仕方なく会ってみたけど
  実は意外や意外、気が合っちゃって…みたいな。うわぁーやっぱあるんだな」

律「お、おい澪」

唯「違うよ。どうせまだ私とくっつけたくないからってやってるんだよ」

澪「えっ」

唯「そうにきまってるよ、だって憂だし」

澪「い、いやでも何か普通に楽しそうにs」
唯「そうに決まってるよッ!!!」

澪「ひっ」ビクッ

律「唯落ち着けって…きょ、今日はこの辺でお開きにしようぜ」

澪「そ、そーだな。じゃあな律、唯」

唯「……」



――――

憂「ただいま~」ガチャ

シーン…

憂(買い物してきたの冷蔵庫に入れてから部屋行こ)ガチャ

唯「……」

憂「あ、お姉ちゃんいたんだ……」

唯「…」チラッ

何も答えず、憂が片手に持ったぬいぐるみに目を落とす唯

憂「……(気まずいよぉ、さっさと冷蔵庫にお野菜しまって部屋行こう…)」

買い物袋を持ってキッチンの冷蔵庫へ向かう憂。
と、唯はふいに憂が手を空けるためにテーブルに置いたぬいぐるみを掴む


唯「うい。これどうしたの?」


憂「えっ?」ピタリ


唯「かわいいね。これどうしたの?」

憂「あっ、それ…えっと、買い物にいったついでにゲームセンターで取ったんだ」

唯「ふーん。一人で行ったの?」

憂「え…ええと……う、うん……買い物のついでだもん」

唯「やっぱり憂だね。何も反省してないよね。うそつきだもん」

憂「う、うそなんかついてないよ…」

唯「うそだよ。本当は買い物がついでだよね?」

憂「……な、何が言いたいのお姉ちゃん……」

唯「今日聡くんとデートしてたでしょ」

憂「!?」


憂「どうして知ってるの……?」

唯「りっちゃん達と商店街に行った時に見かけたから」

憂「そ、そうだったんだ……」

唯「ねぇ、どうして聡くんとデートしてたの?」

憂「えっとそれはその……(あぅ、どうしよう)」

唯「……あのさ、私もう聡くんと遊ばないから。
  だから憂も無理して聡くんと遊ばなくていいよ」

憂「? お、おねえちゃん何言って」

唯「だから私を取られたくないから聡くんと遊んでたんでしょ?もういいから」

憂「ち、違うよ私聡くんと友達になったんだよ」

唯「は?ねぇ憂、どうしてうそつくのやめないの?」

憂「うそじゃないもん……」

憂「……お、お姉ちゃんそのぬいぐるみ欲しかったらあげるよ、だから機嫌なおしt」
唯「いらないよこんなものッ!!!」

ブチブチィイイッ!!!

憂「!!」


憂「な、何するのお姉ちゃんっ!!聡くんが取ってくれたのに……!」

唯「へぇ、やっぱりそうだったんだ。憂クレーンゲームへたくそだもんね」

憂「何でなのお姉ちゃんどうしてこんなことするのぉ…グスッ……ぇぐ……」

唯「憂がだめで卑怯な妹だからだよ。私と聡くんのデート邪魔しただけじゃなくって
  聡くんと仲良くなってるなんて許せないよ。最低だよ。もう顔も見たくない」

唯「じゃあね、私部屋行くから」ガチャ バタン

憂「……ヒグッ…」

夕陽が僅かに差し込むだけの薄暗いリビング。
床に無惨に引き裂かれてちらばったぬいぐるみ。
憂は声を殺して泣きながらそれを片付けた。



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