律「――は?」

各々の家路につく友人達を玄関先で見送りながら
楽しかった時間の余韻に浸っていた律は、
弟の発した言葉に我に返る。

律「おい、今なんて?」

聡「唯さんマジかわいいって言ったんだけど」

律「なんで唯って分かるんだよ」

聡「いや、話したから…」

律「はぁ!?お前部屋にずっといたはずだろ」

律は弟がいると邪魔だからと、友人達を招いている間は
聡に自室に閉じこもっているように指図している。
なんともひどい話だが、この年頃の姉弟にはよくあることだ。

聡「トイレ行った時に偶然廊下ではちあわせてさー」

律「は、お前トイレなんか行ったの?」

聡「そんな酷な……俺だって人間だよ、部屋でもらしたくないよ」

律「て、てめー……」

聡「なんだよ俺が姉ちゃんの友達と話すのがそんなに嫌なのかよ」

律(そういえば唯も一度トイレに出たよなあ…)

律(よくよく思い返してみればちょっと戻ってくんの遅かったな…)

律「とにかくお前ふざけた事したんだから罰な」ゴシカッ

聡「いでぁッ! 何すんだっ、デコっ!」

律「うるせーマセガキ」

律(唯は私のなんだよ)




憂「おかえり~お姉ちゃん」

唯「ただいまういー」

憂「律さんち楽しかった?」

唯「うん!ムギちゃんの持ってきたお菓子もおいしかったよぉ//」

憂「よかったね!ご飯まだちょっとかかりそうだからね」

唯「ほ~い」テクテク


唯「……」ガサッ



――時は戻って田井中家――

律「トイレは廊下奥だからー」

律「間違っても途中にあるドアは開けないでねー(聡の部屋だから)」

唯「あいよー」ガチャ


ジャー ゴポポ…

ギィ

唯「ふーぃ…」バタム

唯「ほっ ほっ 」タッタッ

ガチャリ

唯「ほゎったッ!?」ドテッ

聡「うわっ!な、何だ?」

唯「あててて…」

聡「あっ、大丈夫っスか?スイマセン!」

聡(!?うわっ、めっちゃかわええ…つか黒タイツやべえ……いい匂いしすぎだし……)

唯「ほ、ほいご心配なく… …あ、あのどちらさまで…」

聡(いや、それ俺の台詞じゃね?ここ俺んちなんだけど)

聡「姉ちゃんの友達ですよね?俺弟の聡っていいます。あ、どうぞ」スッ

唯「えっ(手…)あ、ありがとう」ギュ

唯「よっこらセイウチ」

聡「……あ、あの」

唯「あっ!ご、ごめんね 私は唯だよ~。平沢唯」

聡「平沢さんですか」

唯「唯でいいよ~みんなそう呼ぶし」

聡「マジですか! じゃ、じゃあ…唯さん…!」

唯「んはっ!(な、何か…は、は、恥ずかしい…)」


唯「…あっじゃあ私もう戻るね。へへ、失礼しやした…」

聡「ちょっ ちょっと待ってください!」

唯「へっ?」

聡「彼氏さんとかいます?」

唯「い、いませんが~」

聡「俺と付き合いませんか!?」

唯「えっ!?!?」

唯「……あ、あ、あのあの…」

聡「…だめですか!?一目惚れとか認めないタイプですか?」

唯「…えっと…えーと……う、ういに聞いてみないと…」

聡「は?(何て?)」

聡「じゃ、じゃあとりあえず友達になってください!あ、ちょっと待ってて!」ダダッ

聡「……」カキカキ


聡「これ、俺のケータイのアドと番号っす!」

唯「えっ あう」

聡「おねしゃーっす!」バッ!

唯「う、うんわかったありがとうまたねー(棒読)」


唯「……」ギクシャク



ガチャ

律「おー唯遅かったじゃんウンコ?w」

唯「ほぇ!?//」

澪「り、律!そういう事言うなよ!」ゴン

律「あでっ! …ププ、このチョコクリームを唯のうn ぁがっ」

澪「……」ギリギリギリ

律「ぁ…っぎ…ギブギブ」パンパン

―――回想終了―――



唯「男の子に携帯の番号渡されたのなんて初めてだよ~」

唯「……まぁりっちゃんの弟くんだけど…」

唯(告白されたのも初めてだよ~……あれって告白だよね?)

唯「とりあえず何もしないのも悪いかなぁ…メールしてみよう」ピコピ

唯「ぇと… 『唯です、よ、ろ、し、く…ね』 っと。番号も貼っとこう」

唯「ぅう~…… えいっ!」送信

唯「お、お、送ってしまった!はぶぁっ!」ボフッ


憂「おねえちゃ~ん、ごはーん!」

唯「あっ、はーい!今いくよー!!」

唯「……気になるから携帯もってこ」




唯「ふいー おぉっ、いいにおい!これは…」

憂「じゃーんビーフシチューだよ!」

唯「うわーいやった~♪」


ピリリリリ ピリリリリ

唯「あ、でんわ」ピ

唯「もしもーし」

聡『唯さんですか!?聡です!メールあざっす!』

唯「あっ さ、聡くん」

憂「」ピクッ

憂(くん…!?)

唯「どうしたの~」

聡『いや嬉しくってつい!お邪魔でしたか?』

唯「えっ、えーっと 今からご飯食べるとこだけど…少しなら大丈夫だよ~」

憂「お姉ちゃん貸して」バッ

唯「あっ」

憂「もしもし?」

聡『えっ、だ 誰スか?』

憂「聞こえませんでしたか?今から食事なので」ピッ

憂「はい、お姉ちゃん」

唯「う、うい切っちゃったの…?」

憂「だってシチュー冷めちゃうもん」

唯「あっ、そうか…そうだけど… え、えと… いただきまーす」カチャカチャ

憂「おいしい?」

唯「うまい!」モグモグ




唯「ぷはーごちそうさま!」スリスリ

憂「あははお姉ちゃん食べすぎ!おなかぽんぽんだよー」ポンポン

唯「ぅぷッ ぁぷ…うい叩かないで」

憂「あ、ごめんごめん」

唯「ふぁー…」


ピリリリリ ピリリリリ

唯「はいもしもーし」

聡『あっ、唯さん!聡です!さっきはご飯時にスイマセンでした…』

唯「いいよ聡くんこっちこそごめんねー」

憂「……」

聡『それであの、その… 今度の休みどっか遊び行きませんか?』

唯「え!? えーっとそれは…ふ、ふたりで…?」

憂「……」

聡『そ、そうです!…だめですか』

唯「えーっと…と、とりあえずういに聞いてみないと…」チラチラ

憂「貸して」パシ

唯「ぁう」

憂「もしもし」

聡『えっ。あ、あの唯さんは…?』

憂「かわってもらいました。私は妹の憂です」

聡『あの俺唯さんに話が……』

憂「あなた誰なんですか?」

聡『唯さんの友達の田井中律の弟ですが…』

憂「律さんの?ふーんそうですか……で、お姉ちゃんに何の用なんですか?」

聡『あ、それは唯さんと話すんで…』

憂「ないならこれで切りますよ」

聡『ちょ、ちょっと待ってよ!えーっと…今度の休みに遊びに誘いたいんだけど…』

唯(……)チラチラ


憂「…(さっさと断ってやってもいいけど、どうせまたかけてくるよね……)」

憂「…どこに?さっさと言って」

聡「えっ?あ、ええと…じゃ、じゃあとりあえず日曜の昼12:00にマックスバーガーで待ち合わせ…」

憂「分かりました伝えておきます」

聡「ま、マジっすか?あ、じゃあちょっと唯さんにかわtt」

ピッ

唯「あっ」

憂「はいお姉ちゃん、返すね」

唯「聡くんなんて言ってたの?」

憂「えーとね、日曜の昼過ぎ…1時って言ってたかな。家に来てって言ってた」

唯「そっかー!遊んでいいの?」

憂「いいよ」

唯「わーい!ありがとうーいー♪」

憂(ごめんねお姉ちゃん、でもこれはお姉ちゃんの為なんだよ)


――――

ピピピピピピ


唯「……ろいはー!」ガバッ

唯「朝ダッシャッ!!!」

憂「おねえちゃん起きたのー?朝ごはんできてるから降りてきてー」

唯「ほーい」

唯(今日は聡くんと遊ぶ日だ)


唯「……」モグモグ

唯「…」チラッ

唯「…モグモグ……」チラッ

憂「もーお姉ちゃんさっきから時計見すぎだよー」

唯「だ、だ、だって……モグモグ」

憂「そんなに楽しみなの?今日」

唯「男の子とふたりきりで遊ぶの初めてだもん……モグ」チラチラ

憂「……あ、今日は私昼前に出かけるから」

唯「え、そうなの?」

憂「友達と遊ぶ約束してたんだー。お姉ちゃんよりちょっと早く出るからお姉ちゃん戸締りお願いね」

唯「分かったよぉー」



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