漂流生活五日目!

律「おはよー…」

憂「あ…律さん、おはようございます」

唯「…おはよ、りっちゃん」

律「澪はどうした?」

憂「起きてトイレに行ってますよ」


澪「………」ガチャ

律「澪、おはよ 調子はどうだ?」

澪「えっ?!あ、ああ…お、おはよう うん…だいぶ、いいよ、うん」

律「ほんと、大丈夫か…?なんならまだ休んでても…」

澪「い、いやっ!大丈夫!大丈夫だから!」

律「そっか…なら、いいんだけど」

憂「………」



――――――――
―――――

唯「ねー、あずにゃん大丈夫かな?」

澪「………」

律「んー…足を怪我してるから連れて行くわけにもいかないし…
 まあ、憂ちゃんもついてるし、大丈夫だろ」

澪「………」

唯「そうかなー…んー…そうだね…」

澪「………」

律「なあ、澪」

澪「っ?!」ビクッ

律「お前、本当に大丈夫なのか?今朝からなんか変だぞ?」

澪「い、いや、大丈夫…大丈夫だよ…」

唯「…まあ、ただでさえ澪ちゃんは怖がりなのに…」

澪「………」

律「そっか…そうだよな…ごめんな、澪」

澪「………」

律「よし…ま、頑張って歩こうぜ!なにか手がかりが掴めるかも知れないし!」

唯「…うん、そうだね…頑張ろっ」

澪「………」

律「………」



――――――――
―――――

唯「ただいま~…」

憂「あ、みなさんお帰りなさい!どうでしたか?」

律「………」フルフル

憂「そうですか…」

唯「うい、あずにゃんの調子はどう?」

憂「意識はあるみたいだけど…かなり弱ってるよ…」

律「そうか…」

澪「わ、わたし…お茶、いれるよ…」

憂「あ、澪さん わたしが…」

澪「いっ?!いやっ、いいよ わ、わたしがやるから!」ビクッ

憂「あ…わかりました… それじゃあ、お願いしますね」



――――――――
―――――

澪「ほ、ほら、お茶入ったぞ…」カチャカチャ

唯「澪ちゃん、ありがと~」

律「さんきゅ、澪」

憂「あ、ありがとございます」

澪「梓は準備室か…?」

憂「はい…そうですけど」

澪「そ、そうか…」カチャカチャ

律「お、おい…澪 梓は具合悪いみたいだから、そっとしといた方が…」

澪「へ?あ、ああ、大丈夫だって!梓もお茶、飲みたいはずだし…!」

律「澪…」



――――――――
―――――

唯「そろそろ寝よっか~りっちゃんも起きて~
 机で寝たら体痛くなるよ~?」

憂「…う…はあっ…」

唯「うい?どうしたの?顔色悪いよ…?」

憂「ん…大丈夫…っ!」ドタドタ

唯「あ!憂!…どうしたんだろ、トイレ我慢してたのかな…」

澪「…ひひっ…くくく…」

唯「澪ちゃん?」

澪「…っあはははは!ははは!ひひっ!」

唯「澪ちゃん…どうしたの?怖いよ…」

澪「あはははっ!なあ、唯!ここって地球じゃないんだよな?わたし達以外、誰もいないんだよなぁ?!」

唯「う、うん…そうみたいだけど…」

澪「じゃあさ、何したっていいよな!!捕まらないよな!!
 盗みをしたって!お茶に薬をまぜたって!人を殺したって!!!」

唯「澪…ちゃん…?」

澪「これ、見ろよ…ムギのバッグに入ってたんだけどな…
 色んな種類の薬があるんだよ!どんな効果があるか試してみたくてな!!
 面白そうだろ?!なぁ!!!」

唯「もしかして…それをお茶に混ぜたの?!
 憂が具合悪そうだったのも澪ちゃんのせい?!」

澪「あはははは!知らなーい!カップを選んだのは自分だろ?
 わたしのせいじゃないだろ!!」


唯「澪ちゃん…酷い!おかしいよ!」

澪「ははっ…っげほ…うっ…ほら!唯、見て!血吐いちゃった!
 わたしの飲んだ薬は血吐いちゃう薬だったのかな?!
 唯は?!何か変わったことない?!律は睡眠薬でも飲んだのか?!」

唯「…りっちゃん!起きて!早く!澪ちゃんが!」ユサユサ

澪「う…ぷっ…くくっ…ははは…!楽しいな、これ!
 ロシアンルーレットならぬ、ロシアンティータイムってとこかな!あはははは!!」

唯「ねえ…っ?!…りっちゃん…息…してない…?」

澪「あれ?律死んじゃったの?ねえ、ほんとに?ゲームオーバー?
 ぷっ…ははははっ!!敵を一人殺してやった!!ははっ!
 あと3人殺せばわたしの勝ちだ!帰れる!やった!!あは、あはははは!!」

唯「澪ちゃん…わたし、許さないよ…澪ちゃんのこと…絶対…」

澪「ふふっ、ははは!そうこなくっちゃ!
 無抵抗の敵を殺すゲームなんて楽しくないからな!!

 …なあ、唯 唯はなんともないんだよな?
 ふふっ…じゃあ、さ、他の薬も試してみようぜ…!!」ダッ


唯「っ!!やめて!近寄らないで!」

澪「あはははは!ほら!次はこの薬飲めよ!はは!…ぅごほっ!!げほっ!!
 っははっははは!!なあ、口開けて!ほら!ほら!ほら!ほらぁ!!!」

唯「~っ!!…いやっ…だ…やめて!!!」ドンッ

澪「うっ?!うわ!!」ガシャーン

唯「ふっ…はあっ…はあっ…わ、わたし…」

澪「ぅえっ…ごぼっ…!………」



やってしまいました。
りっちゃんのことを軽蔑していたわたしが、りっちゃんと同じことをしてしまいました。

人間ってもろいもんなんですね。

澪ちゃんはわたしに突き飛ばされ、
勢い余ってトンちゃんの水槽に後頭部を打ちつけてしまい、
水槽の割れた破片が首に刺さり夥しい量の血を垂れ流しています。

部室の中に静寂が戻った頃、憂が入ってきました。
吐いたあとだったのか、げっそりしています。
部室の惨状を見て驚いていましたが、何も言わずにわたしを抱きしめてくれました。



わたしは一息ついてからあずにゃんの様子を見にいきましたが、
あずにゃんも無事だったみたいで寝息をたてて横になっていました。

りっちゃんは…耳をあてて確認しましたが、心臓は動いていませんでした。
抱きしめるとまだ微かにりっちゃんの温かさを感じられ、また泣いてしまいました。

二人の供養と大量の薬を始末して、疲れと具合の悪さから見張りはせずに
わたしと憂はあずにゃんの隣で身を寄せて眠りにつきました。
期限まであと少しです。

生存者 3人



目が覚めました。
なんだか悪い夢を見てうなされていたような気もしますが、夢の内容は覚えてません。
寝汗がびっしょりで気持ち悪かったです。

だんだんと思考がはっきりし出すと、昨日の感触が両手に蘇ってきました。
ああ、人を殺すってこういうことなんだ。
わざとではないにしても自分のしたことに対し、罪悪感を感じざるを得ません。

今日の天気はわたしの気持ちと反比例するような、雲ひとつ無い晴天です。



漂流生活六日目!

唯「………」

憂「………」キィ

唯「…ねえ、うい」

憂「…なあに?」

唯「あずにゃん…大丈夫…?」

憂「………」

唯「………」

憂「…たぶん、もう、危ないと思う…」

唯「………」グスッ

憂「あれだけ何度も刺されて、血もたくさん流したのに、
 ロクな手当てもできてないんだもん…
 こんなこと…言いたくないけど…もう、限界だよ…」フルフル

唯「うい…」ギュ

憂「…ねえ、おねえちゃんも…そばにいてあげてよ」

唯「………」コク


唯「…あーずにゃん」

梓「…はぁ……はぁ…」

唯「大丈夫?傷、痛む?」

梓「………」

憂「…梓ちゃん…最期までわたし達が、そばにいるからね…?」

梓「………はぁ……っ…」

唯「…えへ…あずにゃん、大好きだよー…」ギュ

憂「梓ちゃん…わたし、も、大好き…だよ…?」グスッ

梓「………ん…」ニコッ

唯「………」グスッ



その日の昼過ぎに、あずにゃんはゆっくりと眠りにつきました。
最期は、笑っているようにも、泣いているようにも見える顔をしていました。
わたしと憂も笑顔であずにゃんを見送りました。
目に涙をいっぱい溜めながら。

これでとうとう、わたしと憂だけになってしまいました。
もう、状況を解決しようなんて気持ちも起こりません。
まさに、絶望っていう言葉がぴったりです。

期限は明日。
もうどうにでもなっちゃえ。

生存者 2人



運命の七日目。
わたしは夜中からの記憶がありませんでした。
床についたのか、椅子に座っていたのか、ソファに寝転んでいたのか。
起きていたのか、眠っていたのか。
それさえもわかりません。

わたしは抜け殻同然でした。

気付いたら、憂がお茶をいれてくれてました。
わたしは少しぬるくなったお茶をすすりながら、昼食代わりに、
もうシケってしまったポテトチップスをつまみました。



漂流生活七日目!

日がちょうど真上を通り過ぎた頃、憂が突然おかしなことを口にし出しました。
殺してほしい、と。

気でも狂ったのかと思いましたが、どうやら真面目なようです。

話を聞くと、わたしを最後の一人にして助けたい
そしてどうせ死ぬのなら大好きなわたしに殺されたい
と、言うことらしいです。

もちろんそんな話は却下です。
わたしは二度と人を殺したくはないし、憂無しでは生きられません。
憂を殺すくらいなら、わたしが死んで憂を助けます。
わたしだってこれでもお姉ちゃんなんです。

しかし、憂は言うことを聞いてくれません。
たまにものすごく頑固なところがある子です。
こんなときの憂は絶対に意見を曲げません。

わたしが憂を説得しようと困っていると、
おもむろにナイフを取り出してわたしに無理やり握らせました。
上から憂の手でがっちりと覆われてるので、離すに離せません。

そして、ナイフを自分のお腹に近づけました。

わたしは必死に抵抗しましたが、
憂への恐怖で上手く逃げられません。

やめて、とめて、と何度も叫びましたが、
憂はわたしの目を見つめて笑顔でいるばかりです。

憂はそのまま、一度、躊躇して、
おねえちゃん、愛してる、みんなの分まで幸せになってね
と優しく語りかけたのち、刃を自らの体内へと進めました。

ズブズブと、とてつもなく不快な感触が身体中に広がります。
そして、傷口から真っ赤な液体が溢れ出てきました。


憂は苦しそうに、けれども笑顔のまま、
殺してくれてありがとう
とわたしに告げ、動かなくなりました。

わたしは数分、ナイフを握りしめたまま、呆然と座り込んで、
意識がはっきりした途端、猛烈な後悔と罪悪感に襲われました。

もっと抵抗すれば憂のバカげた行為を防げたかも知れない。

憂の剣幕に圧され、ビビっていたなんてことは言い訳にもならない。

ほんとは自分だけ助かることができるとわかり、
心のどこかでそれを望んでいたんじゃないか。

わたしが死んで憂を助けるなんて口だけだったんじゃないか。



そうだ、わたしは卑怯者だ。

憂は自分の命を引き換えに助けてくれようとしたのに。

憂をとめなかった。

むしろ、憂が死ぬことを望んだ。

わたしが助かるから。

憂を殺したのはわたしだ。

わたしが殺したんだ。

この手で。

殺した。
殺した。
殺した。

自分が助かりたいがために。



気付いたらわたしは、自らの手でナイフで喉を切り裂いてました。

へー、死ぬってこういう感じなんだ。
痛みがどんどん薄れていって、眠気が襲ってくる。

良くお話の中であるような、天使のお迎えはないみたい。

いや…わたしだからないのかな。
卑怯者だし、妹と友達を殺してしまったし。

きっと地獄へ堕ちるんだ。

憂、助けてくれたのにごめんね?
でもわたし、憂がいない世界なんていらないや。

憂はちゃんと天国へ行けるかな?

…行けるよね?

憂はとっても優しい子だから。



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斎藤「お迎えにあがりました。一週間お疲れ様でした。」

斎藤「さ、シャトルの中へどうぞ」



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―――――

斎藤「…野暮だと承知で聞きますが、なぜあのようなことを?」

 「見ていたんですか…?」

斎藤「ええ…部室の中は小型カメラで衛星中継されてましたから」

 「…助かるためですよ
 やっぱり、まだ若いのに死にたくはないじゃないですか」

 「わたしは、自分が一番可愛いんです」

斎藤「…あなたが直接殺さなかった理由は?」

 「おねえちゃんが妹を殺して狂う姿、面白そうだったから…
 だから自殺に追い込んだんです
 おねえちゃんならきっと死んでくれると思いましたから」

 「ふふっ、見事に引っかかってくれましたからね
 あれ、ケチャップ薄めただけなのに」

斎藤「………」

 「それに…人を殺すのって犯罪ですしね」

生存者 1人




終わりです
支援、保守してくれた方、読んでくださった方、
こんな駄作に付き合っていただいてありがとうございます

ちなみに漂流教室もバトロワも見たことありません