2月も終わりに近付いたある日、わたし達軽音部は受験の重圧から解放され
卒業も近いと言うこともあり、憂と純ちゃんを招き、お茶を開くことにしました。

唯「お~…すごい量のお菓子…どこを見てもお菓子お菓子お菓子…」

紬「うふふ、今日はお茶も色んな種類のを持ってきたのよ~?」

いつもの机だけじゃ足りず、他の教室からもいくつか借りてきましたが、
それでも乗せきれない程の食べ物、飲み物があります。

ケーキ、クッキー、ドーナツ、和菓子にお煎餅、ピザやマックスバーガー、
ポテトにお寿司等々、ちょっとしたバイキングくらいの量と種類があります。
とても1日で食べきれる量ではありませんが、
余ったらさわちゃんにでもお裾分けすればいいでしょう。

梓「さすがにこの量は多すぎじゃ…」

唯「あずにゃ~ん、細かいことは気にしないのっ」

律「そうだぞー梓 わたし達ももう卒業なんだし、
 残された時間を全力で楽しむのは当たり前だろ?」

梓「全力出しすぎです!…でも、そっか」

梓「先輩達、卒業しちゃうんですよね…」

澪「梓…」

梓「………」

律「…なぁーにしんみりしてんだよ!わたし達が卒業しても梓には
 憂ちゃんと鈴木さんがついてるだろー?」

憂「そ、そうだよ梓ちゃん!心配ないよ!」

純「寂しかったらわたしがかまってあげるからさっ 泣かないの!」

梓「う、うるさい!寂しくないし、泣いてないもん!」

紬「寂しくなったらいつでも会いにいってあげるわよ~?」

梓「ムギ先輩まで?!…でも、うん、ありがとうです…」グス


唯「よーし!気を取り直して、今日は食べまくろうよみんな!」ブチュー

澪「あ、こら唯!勝手にポテトにケチャップかけるなよ!」

唯「あれ~澪ちゃん、ケチャップつけない派だった?ごめんごめん~」エヘ

梓「もー、唯先輩!少し落ち着いてください!」

憂「あははっ 梓ちゃん、もう元気になってる」

梓「う、憂までからかわないでっ!」


やっぱり、軽音部はとても楽しいです。
みんなみんないい子ばかりで、お互いに支えたり支えられたり…
居心地が良くて自然と笑顔になれる、わたしの大好きな場所です。

それもあと数日で終わってしまいます。
卒業したらこうして部室に集まることも出来ないかも知れません。

ああ、今日は帰りたくないなあ。
みんなとずっと一緒に部室でお茶していたいです。
ずっとずっと、放課後を楽しんでいたいです。



いつの間にかわたしは寝てしまっていたようです。
ぼやけた頭で周りを見渡すとみんなも机に突っ伏しています。
いつも寝ぼすけなわたしが一番に起きるなんて…と、感動を覚えましたが、
なにか、どこかがおかしいような、不気味な感覚に襲われ、みんなを起こすことにしました。

みんなを起こすと、やはり何かしらの雰囲気を感じてるようで、
とりあえず落ち着いて状況確認を…と、思いふと外を覗くと

そこには、空と地平線がぶつかって見えるくらい広大な砂地が広がっていました。
わたし達の漂流生活が始まりました。



漂流生活一日目!

澪「お、おい!なんだよこれ!砂漠か?!」

純「いや、でも、わたし達は軽音部の部室にいますし…」

憂「建物とか車とか、人陰も見当たらないね…」

唯「わたし達の街が砂漠化しちゃったのかな~?」

紬「でも、部室だけ無事ってのもおかしいわよね…」

梓「ひっ…扉の向こうもずーっと砂漠です!」

律「だーっ!意味わかんねー!何が起こったんだよ?!」

純「全っ然理解できません!お母さんとか大丈夫かな…?」

澪「弱ったな…どうすればいいんだ?」

唯「…あ、そ、そうだ!困ったときは110番だよ!お巡りさんだよ!」

梓「そ、そうです!電話して助けてもらいましょう!」

憂「おねえちゃん、さすがだよ!」

唯「えへへ~、それほどでも~…じゃあ早速!」カチカチ

唯「………あれ?」

律「ど、どうしたんだ 唯?」

唯「圏外になってる…どうしてだろ?」

紬「っ?!…わたしの携帯も圏外だわ」

律「な、なんだって?!…う、本当だ」

憂「電波塔も見当たらないし…携帯は使えないみたいですね」

純「ううう~…万事休すじゃんかぁ…」

澪「…なあ、みんな とりあえず一旦今の状況を整理しないか?
 そうすれば、なにか解決策が見つかるかも知れないし」

紬「そうね…澪ちゃんの言う通り、冷静になりましょう」

律「あ、ああ、そうだな…」

梓「わかりました…それじゃあまず、席について落ち着きましょうか」



それからわたし達は、色々話し合ったり、少し外に出て様子を見てみたり、
ホワイトボードを使ったりして状況を把握することに努めました。

わかったのは「周りは見渡す限りの砂地である」こと、
「軽音部の部室以外の建物がない」こと、
「水、電気は使える」こと、
「部室の中は特に変化はない」こと、
これくらいでした。

これらのことからわたし達は、「部室だけがどこか砂漠のど真ん中に飛ばされた」と、推測しました。
水道や電気が通ってるのは不思議ですがそう考えるのが一番自然に思えたからです。

もっとも、部室が飛ばされるなんてバカみたいな考えだとは思います。
しかし、他に考えようがないのです。
この事態に直面しているわたし達にとっては、
何が起きていてもおかしくないと思えてしまっているのです。

幸い食糧や水は大量にあるので、とりあえず今日は来るかわからない救助を待とうということで合意しました。

食事中はみんな口数も少なく、食べ物も喉が通らないようでした。
当然の光景だとは思いますが、いつも賑やかにごはんを食べていたので
こんなにも静かな部室は居心地が悪かったです。

ごはんが終わっても雰囲気はどんよりしていましたが、仕方がないでしょう。
いつもはムードメーカーのりっちゃんでさえ、物思いにふけっています。

夜は準備室に置いてある物をいくらか出して、そこに寝床を作りました。
話し合った結果、何か変化があったときに対応できるように
2グループに分けて交代で仮眠を取ろう、と言うことになりました。

わたしはこれからの生活への不安と、
もしかしたらこれは夢で、起きたらいつもと変わらない日常が待っているのではないか
という微かな期待を胸に床につきました。

生存者 7人



残念ながらというか、当然というか、
わたしは広大な砂漠の中にポツンと建っている部室の準備室で目覚めました。

しかし、これでようやく今の状況を冷静に受けとめることができました。
夢ではなくて現実であるということ。
だから、どうにかしてこの状況を打破しなければならない、と。

もしかしたら、みんなも一晩寝てそう実感したかも知れません。
わたしはみんなと力を合わせて、元の生活に戻ることを決意しました。



漂流生活二日目!

澪「さて…今日はどうするんだ?」

純「このまま部室で救助を待てばいいんじゃないですか?」

紬「いえ、一晩考えたけど今わたし達が砂漠の真ん中にいるなんて
 恐らくわたし達以外に知ってる人はいないんじゃないかしら?
 だから何かしらのアクションを起こした方がいいと思うの」

律「そうだな、食糧もいつかなくなるかも知れないし、
 体力があるうちに近くだけでも探索した方がいいかもな」

純「う、う~ん…そうです…か」

紬「大丈夫よ、純ちゃん わたし達がついてる」ニコッ

純「は…はいっ!そう…ですよね!行動を起こさないと何も始まりませんよね」


梓「それじゃあ今日は周辺の探索、ということで」

紬「それと、部室の中から何か使えそうな道具類を探すのも必要だと思うわ」

憂「2グループに別れて行動ってことですね」

唯「あ、わたし外でて調べたい~」

律「いいけど、あまり遠くまでは調べないぞ
 何か危険な生物がいないとも限らないからな」

唯「大丈夫だよ~じゃあ外探索グループはあと3人くらい?」

澪「ひっ…わ、わたしは部室の中で…」

律「今までしっかりしてたのに、いきなりヘタレになったなー澪」

澪「変な生き物とかは嫌だ!無理!」

律「仕方ないなー、じゃあわたしも行くよ」

紬「わたしも行きた~い こんな機会、二度とないでしょうしね~」

律「唯もムギも緊張感ないなー…尊敬するよ」

純「あっ…じゃ、じゃあわたしも行きます!」ビシッ

律「おー、そしたらこの4人で周辺の探索だなー」

梓「部室はわたしと憂と澪先輩ですね」

憂「みなさん、気をつけてくださいね
 おねえちゃん、迷子にならないようにね~」

唯「任せなさい!」フンス

紬「日が傾くくらいには戻るわね~」



――――――――
―――――

律「よーし、それじゃ出発ー!」

唯「イエッサー、りっちゃん隊長!」ビシッ

純「お二人共、テンション高いな~」

紬「純ちゃん、頑張りましょうね~」

純「あ、は、はい!ムギ先輩!」

紬「うふふ~」

純(ムギ先輩と一緒ってなんか安心するな…)



――――――――
―――――

律「ぜんたーい、止まれー」

唯「ぴっぴっぴっ!」スタッ

律「それじゃあここら辺から探索しようか」

唯「りっちゃん、探索っていっても砂しかないよ~」

律「もしかしたら何か手がかりになるものが埋まってるかも知れないだろ?」

純「この砂掘るんですか?!」

紬「くまなく掘ってたら何年かかっても終わらないから、
 怪しかったり何か落ちてたら調べればいいのよ~ ね、りっちゃん?」

律「ムギの言う通り、今日は落ちてる物がないかと、
 砂が盛り上がってるところに何かないかだけでいいんじゃないか?」

唯「そうだね~ 焦りすぎも良くないね」

純「わかりました!じゃあ早速始めましょう!」

紬「純ちゃん、やる気マンマンね~」

純「えへへ」

律「みんな夢中になってあんまり遠くに離れるなよー」

唯「イエッサー、りっちゃん隊長!」ビシッ

紬「イエッサー!」ビシッ

純「え?!あ、い…イエッサー…」ビシッ


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