澪「え?」

律「お、お前…ヒゲが…」

澪「は?何言ってるんだ?」

律「あ、顎…触ってみろ…」

澪「え?」

ジョリジョリ

澪「!!!?」

澪「なんだ…これ…」

律「か、鏡…ほら…」

サッ

澪「…!く、黒々としたものが…私の顎に…」

フラッ

バタッ

律「澪っ!澪ー!!」



翌日

唯「わー、澪ちゃんオヒゲ生えてるー」

梓「これは気色悪いですね」

紬「悪夢だわ…」ゾワゾワ

澪「いっそ死にたい…」


ガチャ

律「澪ー!ヒゲソリ買ってきたぞー」

さわ子「とりあえず剃れば大丈夫ね。青くなってもファンデでごまかせばいいわ」

澪「うう…何でこんなことに…」


澪「…」ジョリジョリ

唯「ああ…オヒゲが剃られていく…」

律「うん、これでバッチリだな!」

澪「へ、変じゃないかな?」

唯「大丈夫だよー!澪ちゃーん」スリスリ

澪「こ、こら唯!///」

唯(うわ、チクチクする…)

紬「…見ててもうれしくないわ…」



翌日

澪「お、おはよう…」

律「おー!澪!…っておい…」

梓「また生えてますね。鬱蒼と生い茂るジャングルの木々の様に」

紬「昨日より濃くなってる…う、うぷっ…」

唯「なんかワイルドだね澪ちゃん」

さわ子「剃れば剃るほど濃くなるとは聞いていたけど、これほどとは…」



翌日

澪「おはよう…」

律「おは…うわ!!?澪…!?」

唯「すごーい、まるでくろひげ危機一髪みたいだー!」

梓「黒髪ロング巨乳の髭面はきついですね」

紬「もう女子校にはいられないわね…」

澪「そ、そんな!剃るから!今すぐ剃るからっ!!」



翌日

澪「…」

律「これはなんていうか…」

梓「まるでハグリットですね。ドラゴンでも飼いますか澪先輩?」

唯「すごーい!触らせて触らせてー!」

ワシャワシャ

唯「うわ…気持ちわる…」

澪「…」



翌日

澪「おはよう…」

律「うわっ!な、なんだ?澪…か?」

紬「こ、これはもうヒゲっていうか…」

梓「顔中毛むくじゃら…。なんかムーミンにこんなキャラいましたよね」

さわ子「澪ちゃん、もう剃っちゃダメよ!人間に戻れなくなるわ!!」

澪「顔だけじゃないんだ…ほら…」スッ

一同「!?」


唯「あ、足が…」

梓「これはスネ毛ですね。毛量自体は普通の男性程度ですが」

紬「…私、目眩がする…」



翌日

澪「うう…」

律「つ、ついに足まで毛むくじゃらか…」

唯「…あれ?何か毛の色が明るくなってきてない?」

梓「澪先輩…精一杯のオシャレですか?」

澪「違う!…なんか…色が抜けてきたみたいだ…」

さわ子「色素が無くなってるのかしら?一体澪ちゃんの身体はどうしちゃったんだろう…」

紬「斎藤、車を用意して。…ええ、気分が優れないので早退するわ」



翌日

澪「くっくっく…」

律「み、澪…何か目つきがヤバいぞ…」

梓「私だったらもう自殺しますよ…全身毛むくじゃらの女子高生なんて絶対嫌です」

さわ子「この症状…どこかで…」

唯「あ、ムギちゃん今日はお休みだってー」



翌日

澪「お腹…すいた…ふふふ…」

律「お、おい…大丈夫かよ…」

梓「今にも飛び掛かってきそうですね。まあそしたらムスタングで殴打してやりますけど」

さわ子「野性…これが澪ちゃんの本性…?いや、何か違う…。こ、これはまさか…!?」

唯「ムギちゃん、明日ショットガン持ってくるってさー」



翌日

澪「ぐるる…ぐああぅ!!」

律「うわっ!やめろ澪!!」

梓「こっちに来たらムギ先輩のショットガンで撃ちますよ?」

唯「澪ちゃんすごい!全身コガネ色だよー!」

紬「保健所の方!こっちでーす!こっちにいまーす!」

さわ子「待って、これはやはり…!」



翌日

唯「澪ちゃんこないねー」

律「あんな獣になっても・・・私の親友だ。見捨てるわけには・・・」

梓「私は獣とバンドを組む気は無いですよ」

紬「みなさーん、お茶が入りましたよ♪」


ブブブブ

律「澪からメール?何々・・・今から裏山に来てくれ・・・か。よし!皆行くぞ!」



裏山

澪「やあ・・・みんな・・・」

律「澪・・・?何だよ草むらの中に入って。隠れてないででてこいよ・・・」

澪「来るなっ!!!!」

唯「澪ちゃん・・・?」

澪「私はもう・・・」

澪「みんなとはいられない・・・私は畜生道に身を堕としてしまった」

澪「たまに人間の心に戻るけど・・・もうその時間も短くなってる」

さわ子「澪ちゃん・・・あなたやはり・・・」

澪は言った。
律が桜高からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、
その時には自分が酔っていて故人を認めずに襲いかかるかも知れないから。

又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、此方を振りかえって見て貰いたい。
自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。勇に誇ろうとしてではない。
我が醜悪な姿を示して、以て、再び此処を過ぎて自分に会おうとの気持を君に起させない為であると。

律は叢に向って、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。
叢の中からは、又、堪え得ざるが如き悲泣の声が洩れた。
律も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。
一行が丘の上についた時、彼女等は、言われた通りに振返って、先程の林間の草地を眺めた。
忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。
虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、
又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。