聡「唯さん、もう本当に出ちゃいますって……」

唯『じゃあ出せばいいじゃん』



 田井中家 夜

聡「いや、出せばいいじゃんって言いましても」

唯『出したいんでしょ?』

唯『私もこうして好き放題してるんだし、キミも出したいなら出せばいいじゃん』

聡「ちょっと理屈がわかんないです。俺が損するだけじゃないですか」

聡「ほんとに、いいから早く……」

唯『……』

 チョロロッ チョロ…

聡「ちょ、唯さんまたそれ」

唯『ん、ふぁ……』シャァァァ…

唯『なんと言われても、どかないからね。ん……』

聡「っ……唯さん、マジで限界なんスけど……!」

聡「ぅあ……だめだっ、でるうっ!!」


――――

 その日の夕方 田井中家の居間

律「っかー、5人だとゲームやりにくいなあ」
澪「どうしても1人余りが出ちゃうな。仕方ないけど」

梓「グチってないで、早く誰が代わるか決めてくださいよ」

律「んだな。いくぞー、最初は」

唯「ちょいとタンマ!」

律「ぐ……なんだよ?」

唯「トイレいかせてください!」

律「はいはい……部屋出て右の左な」

唯「どもども」タタッ

紬「じゃあトイレの間、梓ちゃんを入れてやろっか」

梓「え、でもいいんですか? 唯先輩」

唯「いーよ、すぐには戻ってこれそうにないし」

梓「ああ、ウン……ン、ウン! では遠慮なくいただきますね」

律「よっしゃ、やるぞー」

 とととっ

唯(右行って……左側)クルッ

唯(ここかな)ガチャ

唯(ここだ)パタン

唯(……便座の脇についてるこれ、なんだろう)

唯(おしり? び、で? ……あ、もしかしてウォシュレット?)

 カチャカチャ スルリ

唯「よいしょと」トスン

唯(まあ今は、先にトイレしなきゃ)

唯「ふ、むっ」ぶりぶり

 ポチョン

唯「ふはぁ。」

唯(……ウォシュレット、使ってみたかったんだよねー♪)

唯(おしり……かな? スイッチオン!)ポチ

 ウィーン

唯「お、おお……」ドキドキ

 プシャァァァ

唯「っは!?」ビクッ

唯「あっ、ちょ……んんっ」

唯「や、やだっ」ポチポチ

唯「は、あ、止まんな……」

唯「……~~っ!!」ゾクゾクッ

唯「とまって、とまってよう……」ポチッポチッ

唯(どうして止まらないの、やだ、やだっ!)ガクガク

唯(……『止』?)ハァハァ

 ポチッ

唯「ふう、はあっ……」

 チョポポポ…

唯(止まった)

唯「……」ボー

唯(とりあえず、ウンチを流そう)ジャーッ

唯「んっと」

唯(「おしり」ボタンで)ポチ

 シャァァァ

唯「あくっ……ふ」

唯(「止」ボタンで、止まる)ポチ

 チョポポ…

唯「……」

唯(ウワサの通り、お尻はすごくすっきりしたけど)

唯(こんなだなんて、聞いてないよ……)

唯「……」ポチッ

 プシィィィ

唯「あ、あっ……ん」

唯「はあっ、く、きゅ……」

唯(やっぱり、気持ちいいよこれ)

唯(ウォシュレット……アソコいじるより良いよぉ)

 シャアァァァ

唯「あっく、ふ、んやぁ……」ピクピクッ

唯(手も疲れないし……完全に大人のオモチャだよ)

唯「んあっ、あっ、あっ……」

――――

律「ろおおおいらああああ!!」

梓「いやああああ!!」

 ピュー

律「はい1位~超1位~」

梓「なっ、うそです! 私の方が早かったです!」

澪「ムギー、逆走してるぞー」

紬「このコース迷路みたいでわからないの」

澪「はい私の勝ちー」ピュー

紬「くう」

律「さて、ちょいと失礼して」スック

澪「ん、どうした律?」

律「いやなに。トイレだよ」

澪「唯がまだ入ってるだろ?」

律「ん、まあそろそろ出てくるだろうし。……あれから何分経った?」

紬「20分くらいだと思うけど」

梓「お腹の調子悪いんですかね?」

律「そんな風には見えなかったけど……ちと様子見てくる」

梓「あ、私も……」

律「お前は私に負けたんだから修行でもしてなさい」

梓「んがっ!?」

律「ちゅーことで行ってくるわー」

 スタスタ

律「んー」

 コンコン

律「ゆいー?」

律「……唯?」

 ガチャガチャ

律「おーい? 生きてるかあ?」

唯『……はっ、かろうじて、生きております』

律「腹の調子悪いのか? なんなら、薬持ってくるけど」

唯『……そうじゃないけど』

律「そうか?」

唯『ん』

律「けど、もう20分こもってるんだぞ。無理しないで言っていいぞ」

唯『んー……』

唯『じゃあその。訊いてもいいかな』

律「おう、なんだ?」

唯『りっちゃん家のウォシュレット、もらっていい?』

律「あん?」

唯『ウォシュレット……欲しいな。きゅるりん』

律「そういうのは親御さんと話して下さい」

唯『りっちゃんドケチ!』

律「あぁん!?」

唯『まあそう言うだろうってのは分かってたよ』

唯『だがねりっちゃん、私にも考えがある』

律「おーい」

唯『私はここを動かない!』

唯『りっちゃんがウォシュレットをくれるまで、トイレにこもり続けるから!』

律「そんなにウォシュレットが欲しいか!」

唯『欲しいよ! だってさぁ、ほらぁ!』ポチッ

唯『あっあ……ウォシュレットって、はああぁぁ……最高だよねぇ』シャァァァ

律「アホやこいつ」

 スタスタ

律「パンパカパーン、唯が壊れましたー」

澪「おう、おめでとう」

澪「……はっ?」クルッ

律「唯ちゃんが壊れまちたでちゅ」

梓「何があったんですか……」

律「わ、私には分からない次元の話でさあ」

紬「私たちも様子を見にいってみない?」

澪「うん、そうするか」

 トタトタ…

律「……」

律「っ」モジ

律「まずい、トイレ行きたい」

 スタスタ

澪「律も来たのか」

律「みお。後は任せた」

澪「え?」

律「私はトイレに行ってくるから。じゃっ!」

梓「逃げっ!?」

紬「……限界だったのよ、たぶん」

梓「はあ……あの、唯先輩?」

唯『っあ、ふ。なあに、あず、にゃん?』

梓「なにをして……らっしゃるんでしょうか」

唯『ウォシュレットを使ってるんだよ。き、きもちいよぉ』

梓「……あの、私トイレしたいんですけど」

唯『だー、め……りっちゃんがウォシュレットくれるまで、ここは開けないもん』

梓「……そのりっちゃんは今はどこかへトイレを借りに行ったわけですが」

唯『え。ん……それじゃ篭城してる意味がぁ』

梓「じゃあ出ません?」

唯『出ません』

梓「そうですか……」

梓「と……まぁ、だいたいこんな感じですね」

澪「確かに壊れてるなあ」

紬「どうしたらいいの、これ?」

澪「唯がトイレにこもっていても、私たちにさほど影響はないけど……」

澪「律に頼まれたし、なんとかしてこのドアを開けさせないとな」

梓「可能でしょうか?」

澪「さあ。とにかく手を尽くしてみよう」

紬「まずは作戦会議ね。部屋に戻りましょう」

 トタトタ

澪「さてと。どうするかな」

梓「憂を呼びません? 唯先輩って怒った憂が苦手みたいですし」

紬「憂ちゃんね、確かに有効そうだわ」

澪「じゃあムギえもん、早速出してくれ」

紬「はいさほいさ」ゴソゴソ

 パッパカパッパ パーパーパーン

紬「 のどかちゃん 」

和「えっ? ここどこ?」

紬「間違えちゃった☆」テヘッ

梓「ついでですから、和先輩も巻き込んじゃいましょうか」

澪「いい案だな。唯の扱いにも長けてるだろうし」

紬(ボケたのに誰も叩いてくれない……)シュン

澪「部屋を出て右行って左だ、和」

和「なんなのこの状況?」

澪「いいから。そのドアの先に唯がいるから、状況は唯に教えてもらえ」

和「……ああもう、わかったわよ」スック

 スタスタ

紬「それじゃ改めて、憂ちゃんを出すわね」

梓「はい、お願いします」

紬「これかしら?」ゴソッ

 パッパカパッパ パーパーパーン

紬「 ういちゃん 」

憂「きゃあーっ!?」

梓「は、裸だー!!」ブーッ

憂「梓ちゃ、あ梓さんのえっちー!!」

梓「ノリが良いってレベルじゃない」

憂「ところで、お姉ちゃんがウォシュレットにハマって閉じこもったと聞きましたけど」

澪「誰から聞いたんだよ」

憂「すいません、姉がご迷惑をおかけして……」

梓「でもやっぱり人となりは完璧だ」

紬「……憂ちゃん、それで唯ちゃんを外に出すには」

憂「お姉ちゃんはウォシュレットが欲しいと言って閉じこもったんですよね」

憂「だからウォシュレットを与えれば、出てくると思いますが」

梓「まあもっともな話だね」

澪「でも、ウォシュレットって高いし……今余裕ないぞ」

梓「恥ずかしながら私も……」

憂「いま月末で……」

 チラッチラッ

紬「……」

澪「……」

紬「わかった、出すわ、出しますってば」ゴソゴソ

紬「 さいふ 」パカパヤ

澪「よし。じゃあ早速出かける準備をしよう。憂ちゃんそろそろ服着ようか」

憂「えっ、でも」

澪「着なさい!」

憂「はいっ」

 トタタ…

梓「このへんでウォシュレットがあるところというと……」

澪「あそこの……トンちゃんのホームセンターかな」

澪「律の家からだと片道で30分くらいだ」

紬「運ぶのが大変だから、帰りはもっとかかるかもしれないわ」

梓「とにかく先ずは唯先輩に報告しません?」

梓「買うって言ったら出てきてくれるかもしれませんし」

紬「そうね。伝えてみようかしら」

澪「そういえば、和が遅いな。何してるんだ?」

紬「ミイラとりがミイラ、とか」

梓「まさか。そんなはず」

澪「見に行ってみるか……」

 トタトタ

澪「和ー? 何して……」

和「おおおぉぉっ! んほおおおおおっ!!」グチュグチュ

唯『和ちゃんっ、ねえ、大丈夫なのっ?!』

紬「狂った雄牛のように呻いているわ」

梓「性欲って汚いですね」

憂「こんなことを和さんから反面教師的に教わるなんて、夢にも思ってなかったよ」

梓「いたんだ、憂」

澪「ムギ、あのドブメガネをしまってくれないか」

紬「こういう役割ばっかり……」ムンズ

和「くぁっ、ちょ、何するのよっ」ボタボタ

 ズポンッ

紬「ふぅっ……手にちょっとついたわ」

澪「『和』だけにな」

紬「……語尾について言ってるの? 今のはものすごくつまらなかったわよ」

澪「わーわー言えばいいってものでもないな」

紬「うわぁ」

憂「掃除終わりました!」


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