店員「残念。チ ャ レ ン ジ 賞 で す ね」





カイジ「……」

カイジ「はっ……!?」

店員「また挑戦してくださいね」

カイジ「いや、いや特賞だろ?」

店員「チャレンジ賞です。ほら」


くじを開いて見せる


カイジ「えっ、なっ、何で? 」

カイジ「くじ箱の中身すべて引いたのに特賞がないってどういうことだっ!?」

店員「いや、継ぎ足す暇なくお客さん一度に7枚も引いちゃうんですもの。」

カイジ「継ぎ足す?」


そう言って店員はバックヤードから新たにくじを持ってきた――


店員「オーナーからくじが少なくなってきたら足してくれって言われていたのに……」


そう言いながら空箱になったくじ箱にくじを継ぎ足していく

カイジ「そっ、そんな…馬鹿な…」

カイジ「あ、あり得ないっ!!」ぐにゃあぁあぁ


店員「お客さん、顔が歪んでますよ」

カイジ「あ…あわ…あわ」


カイジ、言葉も出ない――


店員「見たところ、まだ引換券を持っているみたいですけど」

店員「続けますか?」

カイジ「くっ…あと5回で特賞を引けっていうのかっ……!!」

カイジ「いや……」

カイジ「これくらいの逆境… 俺は乗り越えてきた」

カイジ「それも一度だけではなく、何度もっ!!」

カイジ「俺は引けるっ…!!」

カイジ「どうせなら最後の灯が消えるまで足掻いてやるよ」

カイジ「蝋燭だって消える直前こそ輝くんだっ!!」

店員(目つきが変わった!?)


カイジ――
残り5枚に全てを懸けるっ……!!

狙うは特賞『デラックス1/1羊もふもふぬいぐるみ』!!!!!!!


~~~~~~~~~~~


店員「そしたら全部で12枚分のティッシュになります」

店員「はい、どうぞ」

カイジ「……」ショボーン

店員「ありがとうございましたー」



カイジ落胆し、店を出る――


カイジ(くそっ、結局12枚すべてチャレンジ賞のティッシュ……)

カイジ(あれから5枚引いてもまだ30枚近くあった……)

カイジ(くそっ!! こんなコンビニくじでも負け組かよっ!!)

カイジ(俺は、俺は結局何もできねぇ男なのかよっ)

カイジ「くそぉぉおぉおぉぉ」


雄叫びを上げながらコンビニのゴミ箱を蹴り飛ばす


ガッシャーン――!!


ゴミ箱がひっくり返り一面にごみが広がる


カイジ「くそっ、くそっ!!」

店員「ちょっとお客さんやめてください」

店員が慌てて、取り押さえる


店員「ちゃんと散らかったゴミを片付けてから帰ってくださいよ」


カイジ(……)


カイジ渋々ゴミを拾おうとする、がっ

その時、カイジに電流が走るっ――!!


カイジ「こ、これって……」

カイジ「そ、そうか必ずしもみんなが……」

カイジ「ってことは……」


カイジに圧倒的閃きっ――!!

カイジ「そうだ!! これなら急げば、まだ間に合うっ」

カイジ「他の人にぬいぐるみを取られる前になるべく早くっ!!」


両手を買い物袋でいっぱいにし、彼は夜の街へと走り出した――


~~~~~~~


それからかれこれ5時間が経過し、太陽が徐々に顔をのぞかせ始めていた


店員「いらっしゃいませー」

カイジ「はぁ…はぁ…」

店員「???」

カイジ「よかった。まだあった……」


羊ぬいぐるみは他の人にまだとられず相変わらず通路をふさいでいた。


カイジ「くじを引かせてくれ」

店員「あっ、はい」

店員(なんだ? この人朝早くから……)


カイジがポケットから次々と引換券を出していく


店員「えっ!? えっ!!」


店員も唖然とする
なんとその数150枚――!!


店員「ど、どうしたんですかっ!! この数はっ!!」


カイジが冷静にゆったりとした口調で話す


カイジ「……割に合わないんだよ」

店員「えっ!?」


カイジ「このくじは特賞とチャレンジ賞しかない」

カイジ「1500円の買い物でわざわざティッシュを狙うやつはいない」

カイジ「となれば狙いは特賞」

カイジ「だが、全ての人がこの特賞に魅力を持つとは限らない」

カイジ「さらに引換券は一枚ではなく、5枚集めてやっと一回くじをひける」

カイジ「引換券一枚でくじが引けるなら、興味のない人でもやってみるかという」

カイジ「感情が湧くかもしれないが、興味ない人に5枚集めるのはきつすぎる」

カイジ「つまり、よっぽど特賞が欲しい人以外はこのくじをやるには割に合わないんだよ」

カイジ「となれば、興味のない人にとってその引換券は価値がないよな」

店員「……」

カイジ「価値を感じない人にとって引換券は同時に渡されるレシートと同じようなもの」

カイジ「……捨てるんだよ」

カイジ「興味がなければレシートと一緒に引換券もっ!!」

店員「……つまりあちこちのコンビニのゴミ箱から券を拾ってきたということですか」

カイジ「そうさ、一晩中かけてだ」

カイジ「多くの人が大抵300円以上の買い物をするから予想より早く集まったけどな」

カイジ「さぁ、引かせてもらうぜ!!」

店員「そ、そんな拾った引換券なんて、ダメですよ」

カイジ「ダメじゃねぇ。引換券は引換券だ。引かせろよっ!!」

店員「そ、そんなぁ」

カイジ「どうなんだよっ!!? あっ!? はっきりしろよっ!!」

店員「わ、わかりました」


くじ箱を差し出す――


カイジ「この瞬間を待っていたっ……!!」


カイジはさっそうと手を伸ばす――
ついに届いた希望の光


そしてつかみ取るっ――!!


~~~~~~~~


カイジ「じゃあ、このティッシュ21個と羊のぬいぐるみは貰っていくからな」

店員「はっ、はい。ありがとうございました」


カイジ22枚目にしてやっとぬいぐるみを手に入れ、店を出る


カイジ「重いぬいぐるみだなぁ。はぁ、はぁ……」

カイジ「でも急がねぇと…… 生徒や先生が来る前に……」


カイジは桜が丘高校の前に来ていた――


カイジ「確か、こっちに裏口が……」

カイジ「まだ早朝で人がいなくて助かった」


ガチャッ――
なんとか部室にたどり着く――


カイジ「よし、これでOKだ」

カイジ「つ、疲れた…… 昨日から寝てないし、体力が限界だ」

カイジ「それにしても俺の体力ってけっこう持つんだな」

カイジ「体力仕事もいけるかも」

カイジ「……下らねぇこと言ってないで帰るか」


最後に部室を見渡す――


カイジ「ありがとうな、唯ちゃん。昨日の事は絶対に忘れねぇよ」

カイジ「たとえ地の獄に行ったとしてもな」

カイジ「悪いがこれぐらいのことしか出来ない俺を許してほしい……」

カイジ「もし、また会えるなら…今度は貸し借り無しで会おうな」

バタン―
カイジは部室を後にする


~~~~~~~~


朝――

唯「えぇ~!! 特賞なくなちゃったの!?」

店員「すいません。今日の早朝で出ちゃいまして」

唯「そ、そんなぁ… あの羊ちゃんのために一万円近く使ったのに」

店員「気の毒に……」

唯「うぅ…うっ…わぁ…うわぁぁぁん」ポロポロ

店員「特別にチャレンジ賞のティッシュを差し上げますから」

店員「これで涙を拭いてください」

唯「いいよぉぉ…いっ…いっぱいもってるしぃぃ」ポロポロ

店員「……」


学校っ――!!


唯「みおちゃぁあん、りっちゃぁああん、むぎちゃああぁあん、聞いてよぉおお」ポロポロ

律「唯っ!! ちょっと部室に来てくれっ!!」

唯の手を引っ張る――

唯「えっ、なに、何なのぉ」ポロポロ

澪「泣いてる場合じゃないんだ」

紬「大変なことになってるのよ」

唯「ひっく、ひっく、ど、どういうことぉ?」


3人に連れられ、部室のドアを開ける
中には梓が控えていた


梓「唯先輩、こ、これ見てください」

唯「えっ、これって」


唯の涙が止まる――



そこにはお菓子やジュースが入った大袋4つ分が机に置かれ
そして唯の席の隣にはあの特賞『デラックス1/1羊もふもふ ぬいぐるみ』が置かれていた



唯「あっ、あぁ」


思わず息をのむ――

唯「羊ちゃんだぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!!」


思わずぬいぐるみに飛びつく唯


梓「これってやはりプレゼントってことですかね?」

澪「た、たぶん」

紬「だとしたらやっぱり……」

律「唯がこのぬいぐるみを欲しがっていたことを知っているのは」

律「私たち4人ともう一人だけ……」

梓「私ちょっとあの人のこと見直しました」

澪「確かに、見た目は怖くて危険な感じがしたけど」

紬「やっぱり唯ちゃんの言っていた通りだったわね」


唯「だから言ったでしょ!?」







羊に抱きつき、もふもふさせながら言う――








唯「カーくんは良い人だって♪」




終わり