唯「違うよ~ 私たちがその感情になるのは軽音部としてライブをしたときかな」

唯「私たちもライブをしてる時は集中して、それこそ全身が沸騰しそうなくらい」

唯「演奏や歌を頑張るんだよ!!」

唯「その時、私たちはとっても生き生きしてるよ!!」

唯「そしてね。ライブが終わった後、お客さんに歓声をもらうの」

唯「それがまた、嬉しいんだ~」

カイジ(馬鹿な、ギャンブル以外にそのような感情になるわけが……)

律「確かに唯の言う通りだよな~」

紬「そうね~」

澪「私たちも演奏や歌には全力だもんな」

カイジ(そ、そうなのかっ)

カイジ(まさかギャンブル以外にもあるとはっ……!!)

唯「でも、カーくんがギャンブルが好きだったらやり続けてもいいんじゃない?」

カイジ「へっ?」

唯「だってさ、ギャンブルやってる時が生きてるって感じるんでしょ?」

唯「その生きてる時間を禁止するのは辛いよね」

唯「私も軽音やめろって言われたら辛いもん」

唯「だからさ、好きなだけギャンブルやってみたら?」

カイジ「……」

唯「借金については私もお金持ちじゃないから」

唯「代わりにお金を払うとかはできないけど」

唯「また、怖いおじさん達に追われたら、この部室に逃げてくればいいよ」

カイジ「そんなこと……」

唯「困った時はお互い様だよ~」

カイジ「な、なんでこんな俺をかばってくれるんだよっ」

唯「なんかね~ カーくんと私って似てる気がするんだ」

唯「私も運動とか勉強も特に出来るわけでもないし、部活も何もやってこなかったんだ」

唯「でも、軽音っていう好きなことを続けていったらこのメンバーにも出会えたし」

唯「どんどん毎日が楽しくなってきてるもん」

唯「だからカーくんもその生きてる時間を大事にするべきだよ!!」

カイジ(まさかギャンブルやってることを肯定してくれる人がいるとは……)

唯「そうだ!! 私たちの演奏聞いていってよ!!」

カイジ「えっ、あっ、あぁ」

唯「よーし!! みんな準備だよ!!」

律「いきなりだな」

唯「早く~ 早く~」

澪「わかった、わかった」

唯「みんな準備できた~? じゃあ始めるよ~」


~~~~~~~~~


唯「どうだった? カーくん?」

カイジ「いや、なんていうか。その、すごかったよ」

カイジ(すごいっ…)

カイジ(俺には、音楽の良し悪しなんてわからないが)

カイジ(彼女らが、一生懸命且つ心から楽しんでいるということは)

カイジ(嫌というほど伝わった)


カイジこれには感服せざるおえない――


カイジ「いいものを見せてもらったよ」

カイジ「本当にみんな今日はありがとな」

律「よーし一応演奏もしたし、今日はこの辺にして帰るかぁ」

唯「ねぇねぇ、帰る時さ、コンビニ寄っていかない?」

律「なんだぁ、唯。まだあのコンビニの特賞狙ってるのかぁ?」

唯「もちろんだよ。りっちゃん!! 絶対この手でもふもふするんだ!!」

律「わかった。わかった。じゃあ行くかぁ」



~~~~~~~~~



店員「こちらチャレンジ賞ですね」

唯「はうっ、またティッシュ……」

律「諦めろって」

梓「300円ごとのお買いもので引換券が1枚もらって、それを5枚集めて」

梓「やっと一回のくじが引ける権利が得られるんですか……」

紬「中々厳しいのね」

澪「しかもティッシュのチャレンジ賞と」

澪「特賞の『デラックス1/1羊もふもふ ぬいぐるみ』の二つの賞しかないとは」

梓「唯先輩、このくじ割に合いませんよ」

梓「特賞のぬいぐるみもたった一つしかないんですよ」

梓「1500円の買い物でやっと一回引けてさらに一つしかない特賞を狙うなんて」

梓「お金の無駄遣いですよ」

唯「あずにゃん、ひど~い」

唯「あの羊ちゃんぬいぐるみに顔を突っ込んでもふもふしたくならないの?」

梓「なりません」

唯「いけず~」

カイジ(あんなでっかいぬいぐるみ邪魔なだけだろ……)

カイジ(コンビニの通路、明らかに封鎖しちゃってるし)

律「唯、もう飽きらめて帰るぞ」

唯「うぅ~」


ありがとうございました――


6人は店を後にする


律「そしたらカイジさんはここでお別れかな」

カイジ「あぁ、そうだな」

紬「お元気で」

梓「唯先輩がご迷惑をおかけしました」

澪「今度学園祭でライブがあるので見に来てください」

唯「カーくん。また遊びに来てね。今日は楽しかったよ!!」

カイジ「あぁ、ありがとう」


唯「じゃーねー!!」


5人と別れるカイジ――


カイジ(良い子たちだったな)

カイジ(ぜんざい御馳走になったし、演奏も聞かせてもらったし)

カイジ(特に唯ちゃんには世話になりっぱなしで……)

カイジ(……本当に、俺って……)

カイジ(……俺は何をやっているんだ)


カイジの目から涙があふれる――


カイジ(いい大人が借金取りから追われて、女子高生に助けられて)

カイジ(ぜんざいとお茶まで頂いて、さらに欲をかいておかわりまでっ……)ポロポロ

カイジ(そのうえ、今はまだ途中だとかむきに力説して)

カイジ(女子高生に今のままでいいよなんて宥められる始末っ……!!)

カイジ(そんな唯ちゃんたちに俺を何をしてやった……?)

カイジ(助けてもらって菓子食って、茶飲んで、演奏聞いただけ)

カイジ(何もしてねぇ、お礼の一つすらもっ……!!)ポロポロ

カイジ(このままじゃ、だめっ!! 何か俺が唯ちゃんたちにしてやれることは……)


腕で涙をぬぐう――

まだ少し視界がぼやけたままある場所を見つける


カイジ(行くしかねぇっ!! 唯ちゃんがダメなら俺がやってやるっ……!!)



カイジの激闘が今幕を挙げる――


いらっしゃいませ――


店員(あれ、あの人さっき女子高生達に紛れ込んでた長髪さん……)

カイジ「おい」

店員「あっ、はい」ビクッ

カイジ「聞きたいことがある」

店員「何でしょう?」

カイジ「何枚だっ……?」

店員「えっ?」

カイジ「今、くじ箱に入っているくじは残り何枚だと聞いているっ……!!」


店員「えっ、そんなこと聞いて……」

カイジ「いいから答えろっ!!」

店員「はっ、はい」

店員「1……2……3……」


店員がくじ箱の中身を確認していく――


店員「の、残り18枚です」

カイジ「18枚か……」


ポケットから財布を取り出す

カイジ(全財産ちょうど1万8000円かぁ)

カイジ(くじにして12回分)

カイジ(……くそっ、あの時パチンコで負けてなければっ)


乱暴に店のかごを取り、次々にお菓子やジュース類を入れていく


カイジ「会計頼む」

店員「ありがとうございます。168円が一点、200円が一点――」

店員「合計で1万8000円になります」

カイジ「ほらよ」


店員「ちょうど1万8000円お預かりします」

店員「レシートとくじの引換券60枚になります」

店員「ではこちらからくじを12枚お引きください」


くじ箱をカイジの前に差し出す――


カイジ「今はいい……」

店員「えっ?」

カイジ「後でまた引かせてもらう」


そう言って両手に買い物袋を持ち、本コーナーに立ち寄る


カイジ(今はまだ出るときじゃねぇ)

カイジ(今は待機っ!!他の人がくじを引くのを待って残りが12枚になった時 )

カイジ(ここで一気に攻める)

カイジ(それまでに特賞が引かれちまったら終わりだが、他に手はねぇ)

カイジ(ここからは戦略もくそもねぇが運否天賦だっ……!!)

カイジ(先にすべて引いて出なかった時のどうしようもなさに比べれば)

カイジ(他の人が引いてくれた方がギャンブルとして潔いっ……!!)

カイジ(さぁ、ここからは長期戦だっ!!)

雑誌を読むふりをしながらレジを見つめ続ける――


客1「くじ1枚お願いします」

店員「はい、どうぞ」

カイジ(引くなッ、引くなッ)ドキドキ

店員「はい、チャレンジ賞ですね」

カイジ(ふう)



こんなやり取りを5時間――


客6「くじをひきたいんですけど」

店員「はいどうぞ」

カイジ(こいつだっ……!!)

カイジ(こいつが引かなければくじの残りは12枚っ……!!)

カイジ(残りのくじ箱の中のくじはすべて俺が引けるっ……!!)


客6「え~と、これと、これと、これと……」


次々とくじが引かれ、レジの上に置かれる


カイジ(はずれろっ、はずれろっ!!)


持っている雑誌が強く握られ、しわになってしまうほどの
緊張ぶり――


店員「じゃあくじを開けてみますね」


ぺりっ――


店員「チャレンジ賞ですね」

ペりっ――

ペりっ――

ペりっ――

ペりっ――


店員「今のところ、全部チャレンジ賞です」

店員6「これが最後っ!!」


最後のくじを店員に渡す


カイジ(頼む、頼む、引くなっ!!)

カイジ(これさえ外れれば俺の勝ち!! 勝利っ!!)


額に今日にして何度流れたかわからない汗がまた流れる


ぺりっ――


カイジ(ごくっ……)

店員「残念。チャレンジ賞です」

カイジ(やっ、やったぁ)

カイジ(勝った!! 勝ったぞ!!)

客6「くそっ、全部チャレンジ賞かよっ」

客6「もう、金ないしなぁ。ちくしょうっ」


客6が渋々店を出る


と同時にカイジ出撃――
レジの前に移動

カイジ「おいっ」

店員「はい」

カイジ「俺もくじを引かせてもらう」

店員「はい、どうぞ」

カイジ「悪いが行かせてもらうぜっ……!!」

店員「えっ!?」

カイジ「ここからは遊びじゃねぇ」

カイジ「引かせてもらうぜっ……!! 限界を超えてっ……!!」


くじの残りに合わせて、35枚の引換券をレジに叩きつける


カイジ「残り7枚全て、底が見えるまでかっさらうっ!!」


くじ箱に手を突っ込み全てのくじをつかむ


カイジ「さぁ、開けろっ!!」

店員「はっ、はい」

カイジ(待ってろ唯ちゃんっ!! もうすぐ手に入るからな)

ぺりっ――

ぺりっ――

ぺりっ――

ぺりっ――

ぺりっ――

店員「今のところ、全部チャレンジ賞です」


カイジ(残りは二枚っ!! どちらかが特賞……)

店員「いきますよ」

ぺりっ――

カイジ「けっ、チャレンジ賞かぁ」

カイジ「結局最後まで粘りやがって」

店員「最後くじ開けますね」

カイジ(あの、でかいぬいぐるみどうやって持って帰るかな……)

ペりっ――

店員「あっ!!」


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