梓「唯先輩はどうしたんです?」

澪「掃除当番だよ。もうすぐ来るんじゃないかな?」

紬「あれぇ~?」

律「どうした? ムギ?」


紬「今日のお菓子であるクリームぜんざいの器が見当たらないの」

律「おぉ!! 暑かったからぜんざいはうれしいぜ!!」

澪「器なら確か…」


澪「物 置 部 屋 に あ っ た は ず だ よ」


カイジ(……!!!!!)

カイジ(ヤバい……こっちに来るっ……!!!)

紬「そうだったの。ありがとう澪ちゃん~」


紬が物置部屋のドアノブに手をかける――


カイジ(馬鹿野郎っ……開けるなっ……開けちゃっ……)


カイジ絶体絶命っ――!!



ガチャ――



紬「えっ!?」


ドアを開けた瞬間、カイジが紬に飛びかかる


紬「むぎゅ!!」

カイジ「頼むから、黙ってくれっ!!」


紬の口に手を覆う

律「いっ!?」

梓「む、ムギ先輩」

澪「きっ……」

カイジ「頼むから、みんな黙ってく……」

澪「きゃっあぁあぁああぁあぁぁあああぁ!!!!!!!!!!」


カイジ「ばっ、声を出すなって!!」


水も飲まず、枯れた声でカイジが叫ぶ


律「ムギを離せよ!! 変態!!」

梓「けい、警察を……」

カイジ「だめ、ダメだ。警察なんか呼んだらダメッ―!!」

紬「んー、んー」

カイジ「いいから大人しく……」

澪「嫌―、誰か助けてっ」ガタガタ


目をそらしながらその場にうずくまる澪


カイジ「俺はただ、ここで待てと……」


ガッ――

律「ムギを離せ!!」

カイジに飛びかかる

カイジ「うわっ!!」


カイジはバランスを崩し、ムギを離す


律「大丈夫か!? ムギ!?」

紬「ありがとう、りっちゃん!」


律「ムギ、この変態を押さえるのを手伝ってくれ」

ムギ「わかったわ」


二人はカイジを押し倒し、拘束する


律「梓、早く警察を!!」

梓「はっ、はい!!」


鞄から携帯を取り出す――


カイジ「やめ、やめろーー!!!!!!!」


ガチャ――


唯「みんな~ 遅くなってごめんね~」

唯「って、あれ?」

唯「さすがカーくん!! もうみんなと打ち解けているんだね!!」

カイジ「……女子高生と仲良くするのって命がけなんだな」

律「どゆこと?」

紬「唯ちゃん。この人と知り合いなの?」

梓「だとしてもなぜ物置部屋に?」


唯「へへっ、実はね~」




~~~~~~~~




紬「はいっ、お水」

カイジ「す、すまねぇ」んぐっ、んぐっ

カイジ「はぁ、はぁ、生き返った……」

律「なるほどな、そういうことがあったのか」

梓「唯先輩も、そんな見知らぬ人とあんまり関わっちゃだめですよ!!」

唯「カーくんは面白くて、いい人だから大丈夫だよ!!」

律「唯が言うには大丈夫らしいぜ。だからもっとこっちに来いよ。澪」

澪「うう、本当に?」

唯「本当だよ~」

カイジ「さっきは取り乱して悪かった。反省する」

澪(でもあの人顔に傷あるし、怖いよ。本当に大丈夫かなぁ)

澪(いきなり、ガッと襲ったりしないよね……)

カイジ「みんな悪かったな。もう夕方だし、俺はこの辺で失敬する」

カイジ「唯ちゃん。帰りの案内頼めるか?」

唯「えっ~ もう帰っちゃうの?」

唯「カーくんもみんなと一緒にお茶していこうよ!!」

カイジ「へっ!?」

唯「ねぇ、いいでしょう?」

カイジ「俺は、そんなつもりは……」

唯「ねぇねぇ、むぎちゃん。今日のお菓子は何?」

紬「今日はクリームぜんざいよ」

カイジ「……!!」

カイジ(クリームぜんざいだとっ!? このくそ暑い日にぴったり過ぎるだろっ!!)

カイジ(そんなの卑怯だろっ……!! 卑怯っ……!!)

カイジ(くそっ、くそっ!! 食べたいっ!!)

唯「ねっ、ねっ、一緒に食べようよ!!」

カイジ「……ぐっ、いいのか?」

唯「もちろん!!」

唯「よーし、お茶の準備だよ!! ムギちゃん!!」

梓「お茶の時間は輝きますね。唯先輩」

カイジ(馬鹿野郎っ、唯ちゃんはいつも輝いてるっ!!)


~~~~~~


唯「今日のお茶会はいつもと違うね~」

いつもの席に一人、長髪の顔が尖った男が混じる
その光景は実に奇妙――


カイジだけ圧倒的に浮いている
それはまるで住む世界が違う住人が紛れ込むように――

カイジ(……///)

カイジ「なぁ、俺浮いてないかな?」

唯「大丈夫!! まるで最初からいたかのような馴染み具合だよ!! ねっ、りっちゃん?」

律「えっ、あぁ、そ、そうだなっ」

梓「……」

澪(なんか気まずい……)


カイジ(……なんか変に緊張するな)

カイジ(でも逆に考えればこれはいい経験かも)

カイジ(俺の人生、ほとんど女の子と出会っていないからな)

カイジ(そして、おそらくこれからも……)

カイジ(良く見ると、みんな可愛らしい美女ばっかりだしな)

カイジ(美少女5人組の女子高生とお茶が出来る)

カイジ(どんなに世の男性がうらやむかっ……!!)

カイジ(これを逃したら、こんな経験二度とできないだろう)ニヤニヤ


カイジ、今の状況に優越を覚える
そして一人キモチワルイ笑みをこぼす――


紬「さぁ、みんな~ おまたせ!! クリームぜんざいよ」


皆にぜんざいが行き渡る


カイジ(こっ、これはう、うまそうだぁっ)

律「おー!! いいなぁ」

梓「今日みたいな真夏日にはぴったりですね!!」

澪「暑かったからな。これはおいしそうだ」

唯「いただきまーす!!」

皆が、器に手を取る――

カイジ(うっ…!! ううっ…!!)

カイジ(キンキンに冷えてやがるっ……!!)

カイジ(あっ、ありがてぇっ……!)

スプーンで一口すくい、口に入れる――

カイジ(うわぁ……!!)

カイジ(涙が出るッ……!!)

カイジ(犯罪的だっ……!!)

カイジ(今日一日走り回った後に)

カイジ(窮屈で熱気のこもった物置部屋に7時間っ……!!)

カイジ(汗まみれの中、体力も削られ、熱を帯びたこの体に)

カイジ(冷たくて甘いこのクリームぜんざい……!!)

カイジ(染み込んできやがる… この体にっ……!!)


その手は止めることなくスプーンを口に運び続ける


カイジ(本当にっ… 溶けてしまいそうだっ… ううっ)

カイジ(い、いまなら、やりかねない……)

カイジ(おかわりだってっ……)

唯「カーくんもう食べちゃったの?」

律「早っ!!」

梓「別に急いで食べなくても逃げないのに」

カイジ「……あぁ、確かにそうだな///」

カイジ(女の子の前なのに少し大人げなかったか?)


気づけば、カイジは誰よりも早く且つ最も旨そうに食べていた――


紬「おかわりいかが?」

カイジ「えっ!? いいのか?」

紬「お客さんですもの」

紬「どう?」

カイジ「……///」コクコク


カイジ、黙って首を縦に振る


紬「はいどうぞ~」

カイジ(うまっ、うまっ!!)


カイジ二杯目突入――


~~~~~~~~~


やがて全員が食べ終わり、一息ついていた。

唯「ムギちゃんのお茶はおいしいねぇ」

律「あぁ、癒しだな」

カイジ「確かに……」


カイジ(普段、自分でお茶なんて入れないからな……)

カイジ(これはいい……///)


紬「うふふ、カイジさんも喜んでくれてうれしいわ」

唯「そういえば、カーくん」

カイジ「何だ?」

唯「まだ何で今朝、怖い人たちに追われているか理由を聞いてなかったよね?」

カイジ「……確かにな」

唯「何で追われていたの?」


無邪気に笑顔で問いかける唯


カイジ(あまり言いたくはないが)

カイジ(助けてもらっておいて嘘は流石につけない。いくら俺でも……)

カイジ「あ、あいつらは借金取りなんだ」

カイジ「俺は借金をしているんだよっ……!!」

澪(借金……)

紬(可愛そう……)

律(おいおい、ホントにこの人と関わって大丈夫かぁ)

唯「なんで借金しちゃったの?」

カイジ「……!!!」

カイジ「そ、それは… ギャンブルとかいろいろ……」

梓(……)

唯「いくら借金しているの?」

カイジ「…1000万ぐらい」


答えるたびに声が弱弱しくなるカイジ


唯「逃げるってことは返せないの?」

カイジ「うん……」

唯「何で?」

カイジ「……そ、それは、えっと……」

唯「お仕事は何してるの?」

カイジ「……」

唯「どうしたの?」

カイジ「俺、む、無職だから」

カイジ「返せねぇんだよ……」

紬(……)

澪(……)

律(……)

梓(……)


場の空気がクリームぜんざいの如く、キンキンに冷えていく――

唯「なんで働かないの?」

カイジ「俺は、まだ途中なんだよ」

カイジ「今は悪い状況だけど、最終的には良くなるっ!!」

カイジ「必ず成功するんだ!!」

カイジ「そ、それにただ働くだけじゃ、そこらへんのリーマンと同じ!!」

カイジ「死ぬまで、社会に使われ、大した高揚もなく日々を消費する毎日だっ!!」

カイジ「そんなの生きてるっていわねぇ!!」

カイジ「精神が高揚し、額から汗を流すような日々を送ることこそ」

カイジ「生きるってことじゃねぇのかよ!?」

カイジ「はぁ…はぁ…」

唯「カーくんさぁ」

カイジ「あっ?」

唯「カーくんはどういう時に生きてるって感じるの?」

カイジ「……俺はギャンブルだ」

カイジ「ギャンブルこそ、精神を研ぎ澄まし、血が沸騰するような熱い感情が生まれる」

カイジ「そして勝てた時にはこれ以上のない喜びが待っているんだっ!!」

梓(……)

律(……)

澪(……)

紬(……)

唯「なるほどね~ でもそのような感情なら私たちもなるよ!!」

カイジ「何!?」

カイジ「唯ちゃんもやるのか? ギャンブル?」


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