ドーン!!


私の名前は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん

ただのせぇるすまんじゃございません

私が取り扱う品物は“ココロ” 人間のココロでゴザイマス・・・

この世は老いも若きも男も女もココロの寂しい人ばかりそんなみなさんのココロのスキマお埋めします

いえお金は一銭もいただきませんお客様が満足されたら、それがなによりの報酬でゴザイマス・・・

さて今日のお客様は・・・

梓「もうちゃんと練習やりましょうよ!」

中野 梓 15歳 女子高生

  【スタジオ貸します】

ホーホッホッホ・・・・・・


 部室

律「まだいいじゃねぇかよ」

唯「そうだよあずにゃん、まずはお茶にしようよ~、練習はそのあとだよ~」

梓「いつもそう言って結局は大した練習出来ないじゃないですか!たまには真面目にやりましょうよ!」

紬「まぁまぁ梓ちゃん落ち着いて」

梓「ムギ先輩もムギ先輩ですよ!なんで毎日お菓子を持ってくるんですか!?」

唯「えぇ~じゃああずにゃんお菓子食べたくないの?」

梓「そ、そりゃ食べたいですけど…」

律「もうガタガタ言ってないで食え!ほら!」

梓「ふえ、やめてくださいよ~…」

紬「うふふ」

梓「ほらもう全部食べ終わりましたよ!早く練習しましょ!」

唯「う~ん、なんかお腹いっぱいになったら眠くなっちゃった…」

律「わたしも~」

梓「子供ですかあなたたちは!澪先輩もなんか言ってくださいよ!」

澪「ZZZ…」

梓「寝てるし!」

紬「うふふ、じゃあ今日は練習は中止してお昼寝しましょ」

唯律「賛成~」

梓「そんなぁ~…」

唯「あ~ずにゃん!」むぎゅ!

梓「ちょっと抱きつかないでくださいよ!」

唯「あずにゃ…むにゃむにゃ…」

梓「……」


  帰り道

唯「バイバイあずにゃ~ん」

律「変な人に話しかけられてもついていっちゃダメだぞ~」

梓「言われなくたってわかってますよ!たく…」

梓「……」トコトコ

梓(軽音部に入って4か月になるけどいまだにまともな練習してないな…)

梓(文化祭もあるって言うのに大丈夫なのかなあの人たち…)

梓「くそお…」

喪黒「ホーホッホッホ、どうしたのですかお嬢さん」

梓「(ひっ!変な人キタ!)な、なんでしょうか!?」

喪黒「そんな怖がらなくても大丈夫ですよ、ワタシはこういう者です」サッ

梓「ココロのスキマお埋めします、喪黒福造?」

喪黒「えぇ、あなたみたいなココロにスキマを持ってる方を救済する仕事をしてるのです」

梓「(うわっうさんくさ!)わたし別に心にすき間なんてありませんから!それでは」

喪黒「ではなぜさっきあんな険しい顔をしていたのですか?」

梓「険しい顔!?私が!?」

喪黒「えぇ、可愛いらしい顔が台無しでしたよ、なにか学校であったのではないかぁ?」

梓「……」

喪黒「まぁいいでしょう、なにか話したくなったら名刺の裏に電話番号が書いてありますのでそこに連絡してください、それでは…」

梓「……」


 次の日

梓「さぁ今日こそちゃんと練習しますよ!」

唯「相変わらずあずにゃんは熱いねぇ」

梓「当たり前じゃないですか!私は武道館を目指してるんですから!」

律「言う事がデカイねぇ、まぁたまには真面目に練習っすか」

梓(やった!)

  ガチャン

紬「みんな遅くなってごめ~ん」

律「ムギが遅れてくるなんて珍しいな」

紬「じつはね、ほら」 パサ

唯「うわ~チーズケーキだぁ、どうしたのこれ~」

紬「みんなと食べようと思って買ってきたの~」

律「ではさっそく…」

梓「だめです!さっき練習するって言ったじゃないですか!」

律「いいじゃねぇかよ、ほら食おうぜ」

梓「いいですわたしは!」

唯「ほらあずにゃん、ア~ン」

梓「やめてください!」パシ

唯「もうあずにゃんのいけず~」

紬「うふふ」

梓「澪先輩もなんか言ってやってくださいよ!」

澪「うめぇうめぇ」

梓「食べてるし!」

唯紬律澪 ワイワイワイ

梓「……」

喪黒『なにかあったら連絡してくださいねぇ』

梓「……」


BAR 魔の巣

 カランコローン

梓「……」

喪黒「ホーホッホッホ、いらっしゃい」

梓「こういうところ初めてです…」

喪黒「たしかにあまり学生が来るような場所ではないですねぇ」

梓「……」ガチガチ

喪黒「まぁそんな緊張なさらずに、マスター、お嬢さんにハーブティーを」

マスター タンッ

梓「……どうも」

喪黒「それであなたの悩みというのは?」

梓「実はわたし高校でバンドやってるんですけど、他のメンバーが真面目にやってくれないんです」

喪黒「なるほど」

梓「わたしは真剣にやりたいのに…」

喪黒「ところであなたの担当楽器はなんですか?」

梓「ギターです」

喪黒「バンドの花形ですねぇ」

梓「えぇ」

喪黒「中野さんはやる気まんまんですねぇ」

梓「メジャーデビューを狙ってますから」

喪黒「でも他の人のやる気が無ければ、メジャーデビューは出来ませんよねぇ 」

梓「そうなんです…」

喪黒「それはきっと練習する場所が悪いからですよぉ」

梓「場所ですか…?」

喪黒「中野さんたちは普段どこで練習なさってるのですか?」

梓「放課後の音楽室です」

喪黒「だからですよ中野さん」

梓「え?」

喪黒「そんな学校の音楽室なんかで練習したってやる気はでませんよ」

梓「で、でも他に練習出来る場所なんて無いですし!」

喪黒「もっと立派な設備じゃなければダメですよぉ」

梓「したいですけど…」

喪黒「実はワタシ、スタジオをひとつ所持してるんですよ

梓「えっ!そうなんですか!」

喪黒「えぇ、プロの歌手もレコーディングに使用するスタジオです」

梓「すごいなぁ…使いたいなぁ…」

喪黒「使ってよろしいですよ」

梓「え?ホントですか!?でもお金無いですし…」

喪黒「いいえお金は要りません、無償で貸してさしあげます」

梓「そんな!申し訳ないですよ!遠慮します!」

喪黒「そうですか…ではいつでも使いたくなったときの為に名刺の裏にスタジオの場所を書いておきますね」

梓「……」

梓(スタジオか…)


 次の日

律「おいスタジオはまだかよ!」

梓「多分そろそろ着くはずですよ」キョロキョロ

唯「もう疲れた~、澪ちゃんおぶって~」

澪「ふざけんなよ自分で歩けよ!」

唯「ぶー」

梓「ありました!あれです!あのビルです!」

澪「へぇ~結構立派なビルじゃん」

律「早く行こうぜ」


 スタジオ内

 ガチャン

律「うおおお!すげぇ本格的じゃん!」

梓(さすがプロ仕様だ…レコーディング等の設備が充実してる!)

唯「TVでよく見るよこういうの!すごいよあずにゃん!」

紬「これなんのスイッチでしょうか」 ポチ

澪「勝手に触っちゃダメだろ!」

律「よおしさっそくセッションしようぜ!」

梓(喪黒さんの言う通りだ!みんなやる気になってる!)

律 ジャンジャカジャンジャンジャンジャカジャンジャン

唯「1・2・3・4・ゴハン!1・2・3・4・ゴハン!」

澪 ボンボンボーン ←ベース

紬 パラポンパラポンピーン ←キーボード

唯「OK!きょうはみんな気合入ってるね」

律「なんてたってこんな立派なスタジオだからな!やる気も出るさ!」

紬「これも全部梓ちゃんのおかげね!」

梓「それほどでも///」

澪「なぁレコーディングできるならCD作らね?」

律「良いね!作ろう作ろう!」

唯「私たちのデビューシングルだね!」

澪「別に発売するわけじゃないから…」

紬「でもいつかはデビューしたいなぁ」

律「よおし絶対デビューするぞ!そして武道館を一杯にするんだ!」

唯「そしたらお菓子も一杯食べれるね!」

澪「あんたは食うことしか頭に無いのか」

梓(すごい良い雰囲気!)


BAR 魔の巣

梓「喪黒さん、スタジオありがとうございます!」

喪黒「いえいえ」

梓「あのスタジオのおかげで練習ははかどるし、みんなはやる気出すしで最高ですよ!」

喪黒「喜んでくれたのならワタシもスタジオを貸した甲斐があります」

梓「実は昨日みんなでCDを作ったんです!ぜひ聴いてください!」

喪黒「ありがとうございます、家に帰ったら聴きますね、マスター、中野さんにラムネを一杯」

マスター タンッ

梓「ありがとうです!」

梓「喪黒さんのおかげでこれからは楽しい軽音ライフが送れそうです!」

喪黒「それはよかったですねぇ」

梓「はい!」ニコッ

喪黒「あぁ言い忘れてましたがひとつだけ約束してほしいことがあるのです」

梓「なんですか?」

喪黒「スタジオを使用するのは週に1回にしてほしいのです」

梓「週1ですか…」

喪黒「厳密にいえば使えないわけではないのですが、そう何回もタダで使わせると他にお客にしめしがつかないのです」

梓「そうですか…わかりました、わがまま言ってすいません」

喪黒「いえいえ、ワタシも中野さんの期待にこたえられなくて残念です」

梓「でもきっと大丈夫ですよ、昨日の練習でみんなやる気出しましたから、音楽室でも真剣にやってくれるはずです」

喪黒「そうだと良いですねぇ」


 次の日 部室

律「カステラうめえええええ!!」

唯「う~ん長崎のカステラは美味しいね~」

紬「みんなのために本場から取り寄せたのお」

梓「……」

梓(やっぱあのスタジオじゃなきゃダメか…)

澪「旨いなぁ」モグモグ

梓「ねぇ早く練習しましょうよ」

律「うるせぇ!お前もカステラ食えい!」

紬「梓ちゃんの好きなバームクーヘンもあるわよ」

梓「いらないですよ!なんで練習しないんですか!昨日は頑張るって言ったじゃないですか!」

唯「昨日のスタジオじゃなきゃやる気出ないよ~」

梓「昨日のスタジオは今週はもう使えないんですよ…」

律「じゃあ練習しねぇ!やる気出ねぇ!カステラうめぇ!」

澪「さすがに太るぞ律、それ以上食うと」

梓「……」

喪黒『スタジオを使用するのは週に1回にしてほしいのです』

梓(使えないわけでは無いんだよね…厳密にいえば…)

梓「わかりました…行きましょ、スタジオに」

律「ヒャッホーやったぜ!」

梓「真面目に練習してくださいね!」

律「わかってるっつーの」


 ガチャン

律「イエーイ帰ってきたぜスタジオ!」

唯「帰ってきたぜ!」

紬「やっぱ本物のスタジオは良いわねぇ」

澪「♪♪」

梓「ではさっそく練習しましょう」

唯「そうだねぇ~」

律「よおし腕が鳴るぜ!」

梓(ホッ…よかったやる気になってくれて…)

律 ジャンジャカジャンジャンジャンジャカジャンジャン

唯「カレーちょっぴりライスたっぷり~♪」

澪 ボン!ボン!ボーン!

紬 ポンポンパラポンポンポン!

梓 ジャーン!

唯「みんなすごいよ~!前より全然上手になってるよ~」

律「この調子で行けば武道館も近いな!」

梓「ちょっとトイレ行ってきます」

律「行ってら~」


  ガチャン

梓「……」

梓(フフフ良かった、みんなやる気になってくれて、この調子で行けばホントにメジャーデビューも・・・!)

喪黒「中野さん」

梓「ひっ!喪黒さん!?」

喪黒「ワタシとの約束を破りましたね」

梓「だってあそこのスタジオじゃなきゃみんな真面目にやってくれないですよ!」

喪黒「そんなのワタシの知ったことではありません」

梓「ごめんなさいごめんなさい!」

喪黒「いいえダメです、約束を破ったらどうなるか、思い知っていただきましょう」

梓「え?」


喪黒「ドーーーーーーーーーーーーーン!!!」

梓「いやあああああああああ!!!!」


 ガチャン

梓「……」

唯「あずにゃん遅いよ~」

梓「す、すいません、ちょっと道に迷っちゃって…」

律「梓はマヌケだなぁ」

澪「早く扉を閉めろよ、外から丸見えだろ」

梓「すいません今閉めます!」

―――梓がドアノブに掴む直前、急に扉が勢いよく閉まった・・・!

バタン!! 梓「うわあああああ!!!」

唯「どうしたのあずにゃん!?」

梓「ああああ、ゆ、指がドアに…!!」

律「挟まったのか!?ってうわっ!!」

澪「ひぃっ!あ、梓の指が全部逆方向に曲がってる…!」

梓「痛いよ!すごく痛いよぉ!うわああああああ!!」ヒックッヒック



喪黒「ホーホッホッホ、彼女の指は二度とギターが弾けなくなってしまいましたねぇ」

喪黒「まぁやる気が無いのもやっかいですが、彼女みたいにやる気があり過ぎるというのもやっかいなものですなぁ」

喪黒「ホーホッホッホ・・・・・・」

終わり



最終更新:2011年06月09日 23:47