ドーン!!


私の名前は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん

ただのせぇるすまんじゃございません

私が取り扱う品物は“ココロ” 人間のココロでゴザイマス・・・

この世は老いも若きも男も女もココロの寂しい人ばかりそんなみなさんのココロのスキマお埋めします

いえお金は一銭もいただきませんお客様が満足されたら、それがなによりの報酬でゴザイマス・・・

さて今日のお客様は・・・

律「えぇっ練習!?」

田井中 律 16歳 女子高生

   【異次元ルーム】

ホーホッホッホ・・・・・・


  部室

梓「そうですよ、なに言ってるんですか」

律「まだいいんじゃないか?なぁ澪」

澪「いややらなきゃダメだろ、もうすぐ文化祭だろ」

律「まだ気が早いって!唯だってそう思うだろ?」

唯「私は今日は練習したい気分だよ~」

律「唯もかよ!」

梓「さぁ早く練習しましょ」

律「はぁ…」

紬「ほらりっちゃん早く!」

律「うん…」

唯 ジャーン!ジャカジャン!

唯「すごい良いよ~!みんな以前より全然上達してるよ~!」

梓「唯先輩こそどんどん上手くなってますよ!」

唯「ありがとあずにゃ~ん!」ガシッ

梓「抱きついていいとは言ってません///」

紬「うふふ」

律「……」

澪「どうした律?なんか元気無いな」

律「そ、そんなことないよ」

澪「なんか一人だけ音がズレてたし、ひょっとして体調でも悪いのか?」

唯「えっ!りっちゃん病気なの!?」

律「病気じゃねーし!ほらこんな元気!」ガシッ

梓「ってなんでわたしに抱きつくんですかぁ!!」

律「うりうり~」

紬「うふふ」


 帰り道

澪「じゃあな、律」

律「おう、ちゃんとまっすぐ家に帰るんだぞ~」

澪「子供じゃないんだから分かってるよ!」フンッ

律「……ハァ」

律(みんなどんどん上手くなってくよなぁ最近)

律(唯なんてギターのギさえ知らないド素人だったのに…)

律(なんか置いてかれてる気がするなぁ…)

律「ハァ…」

喪黒「どうしたんです?元気が無いですねぇ」

律「なんだよおっさん」

喪黒「いやぁすいません、あなたがあまりにも浮かない顔をしてるのでつい声をかけてしまいました」

律「ふん、どうせエロい目でわたしを見てたんだろ、あっちいけよ」

喪黒「いえいえ、ワタシはそんな不埒な人間ではありません、こういう者なんです」サッ

律「ココロのスキマお埋めします…も、も、も…」

喪黒「喪黒福造です」

律「わかってるよ!でなんなの?このココロのスキマお埋めしますって」

喪黒「ワタシは現代人の悩めるココロを救済するセールスマンなんです」

律「ははんわかったぞ、わたしに何かを買わせる気だな、残念だったね、わたしは金持ってないんだ」

喪黒「いえいえお金は一銭も頂きません、あなたの満足された顔が見たいだけなのです」

律「ふーん(すげぇうさんくさいぞ!)」

律「とにかくわたし帰るから!じゃあな!」

喪黒「田井中さん」

律「なんだよ!ってなんでわたしの名前を…」

喪黒「あなたバンドをおやりのようですねぇ」

律「えっなんで知ってるんの!?」

喪黒「そしてあなたの担当はドラムですね?」

律「ちょおっさんすげぇ!なんでわかったの?」

喪黒「ホーホッホッホ、そりゃカバンからスティックが飛び出てますからねぇ」

律「……驚いて損したわ、じゃあな」

喪黒「そして田井中さんはそのドラムのことでお悩みのようですねぇ」

律「う!」ギクッ

喪黒「どうやら図星のようで」

律「……」


 BAR 魔の巣

喪黒「ほう、軽音部に所属してるのですか」

律「ええ、一応部長をやってます」

喪黒「部長でドラマー、立派じゃないですかぁ」

律「そんなことないよ、わたしはダメなんですよ」

喪黒「なにがダメなんです?」

律「気づいちゃったんだよ、自分にはドラムの才能が無いって」

喪黒「ほう」

律「他のメンバーはどんどん上手くなっていくのに自分だけは全然上達しなくて…なんか置いてかれてる気がして」

喪黒「なるほど、他のメンバーに対して劣等感を感じるわけですね」

律「そうそれそれ、ギターの唯なんてギター初めて1年しか経ってないのに今やバンドの中心ですよ」

律「かたやわたしは何年もドラムをやってるのにみんなの足を引っ張る始末で…もうやめようかなドラム」

喪黒「もっと上手くなるように練習すればいいじゃないですか」

律「練習?」

喪黒「そうです、才能が無いと思うなら人一倍努力をして上達させるべきです」

律「練習なら毎日してるよ」

喪黒「ホントにそうですかぁ?普段の自分をよ~く思いだしてください」

律「普段の自分…」

律『よおしお菓子食べようぜぇ!』

梓『えぇ~!早く練習しましょうよ~!』

律『慌てるでない慌てるでない、まずは腹ごしらえじゃ!』

梓『もう!』

律『もぐもぐカステラうまい!』

律「……」

律(そういえば食ってばっかだな…)

喪黒「どうです?普段の自分は真面目に練習してますか?」

律「……まぁそれなりに」

喪黒「学校だけではダメです、家でも練習しなければ上手くなりませんよ」

律「でもドラムセットは大きいから場所とるし音もデカイから家じゃ練習出来ないよ!」

喪黒「たしかにそうですねぇ」

律「それに学生だから勉強もしなきゃいけないし(まぁしないけど)」

喪黒「実はそんな田井中さんにぴったりな部屋があるのです」

律「わたしにぴったりな部屋?」

喪黒「そうです、今から御案内します」

律「でもそろそろ帰んなきゃ親に怒られるよ」

喪黒「大丈夫です、さぁ行きましょう」

律「ホントに大丈夫なのかよ…」

喪黒「ここです田井中さん」

律「え?ここなの?」

喪黒「ええそうです」

律「……」


―――律の眼の前にあるのはコンクリートで出来た立方体の建物だった・・・!

律「このコンクリの中で練習するの?」

喪黒「ええそうです」

律「これのどこがわたしにぴったりな部屋なの?」

喪黒「ホーホッホッホ、入ってみればわかりますよぉ」

律「そうすか…(なんか心配…)」

 ガチャ

喪黒「どうぞお入りください」

律「……」

―――部屋の中にはドラム一式が置かれていたが他にはなにも無かった

律(ドラム以外はなにもないのか…殺風景だな…)

喪黒「どうです、ここなら思う存分ドラムの練習が出来ますよ」

律「たしかにここから騒音を気にせず練習が出来るけど、時間が無いですよ」

喪黒「時間ですか」

律「そうだよ、部活が終わってから行っても家の門限とかあるから大した練習が出来ないよ」

喪黒「ホーホッホ、御心配なく田井中さん、自分の腕時計を御覧なさい」

律「腕時計?」

律 ちらっ

律「……あれ?針が止まってる、壊れたのかな」

喪黒「実はこの部屋は外とは別世界なのです」

律「は?どういうこと?」

喪黒「この部屋は時の流れが無いのです」

律「えっ、ちょっと待って、えっつまりこの部屋に居ると時間が進まないってこと?」

喪黒「ええその通りです」

律「ということはこの部屋に居る限りいつまでも練習が出来るってこと?」

喪黒「そうです、何日何カ月何年も練習することが出来ます」

喪黒「しかも時間の流れが無いので空腹も来ないし年も取りません」

律「すげぇ…すげぇよ喪黒さん…!あんたすげぇよ!」

喪黒「ではお好きなだけ練習してくださいね、ホーホッホッホ」


律 ダダンダダン!!ダダンダダン!!

律 ドドドドドド!!

律 ドンガラガッシャーン!ドンガラガッシャーン!

律「いやぁなんかいくらやっても疲れないなぁ、これも時が止まってるせいかなぁ」

律 ジャンジャカジャンジャンジャンジャカジャンジャン

律(ふふふ、これならいくらでも練習できるからすげぇ上達するんじゃないか)

律(きっとみんなのわたしを見る目が変わるぜきっと!)

律「さぁもう一丁!」 ドンドンシャン!ドンドンシャン!


律(いったいどれぐらいドラムを叩いただろうか…何時間、いや何日か?)

律「なんか一心不乱にやりすぎたな、そろそろ帰るか」ピョン

律「なんか外に出るのドキドキするな…」

律「外に出ると、そこは荒れ果てた地球の姿がっ!……なんてな、ハハハ」

 ガチャン

律「……」

律「ホッ…入った時と同じだ…街の喧騒も空の色も」

 カチッカチッカチッ

律「おおお時計の針が動きだした!やっぱ喪黒さんの言う事はホントだったんだ!」

律(ぐふふ、毎日ここで練習すればいつかは世界一のドラマーになれるかも!)


 一週間後 部室にて

律 ドンドンバン!ドンドンバン!ドンドンドンドン!バシーン!

律「ふぅ…」

唯「りっちゃんすごいよ~プロみたいだよ~!」

律「そ、そうか?へへへ」

澪「いつの間にこんなに上達したんだよ、これはホントにプロ級の腕だよ」

律「み、澪まで褒めてくれるのか!おいおい照れるじゃねぇか////」

梓「律先輩!!わたし律先輩のこと見直しました!どこで練習したんですか!」

律「じ、自分の部屋だよ」

唯「りっちゃん真面目だね~ただのぐうたらだと思ってたのに」

律「お前には言われたくよ!」

紬「さぁお茶にしましょ」

唯梓澪「は~い!」

律(ぐふふ…)



 BAR 魔の巣

律「ぷはぁ~!マスターおかわり!」

喪黒「いやぁいい呑みっぷりですねぇ」

律「喪黒さんありがとうございます!喪黒さんの紹介してくれた部屋のおかげでドラムがどんどん上手くなっていきますよ!

喪黒「その満足された顔が見られただけワタシも紹介した甲斐がありました」

マスター タンッ

律「コーラ~コーラ~♪」ゴクゴク

喪黒「田井中さん、ワタシはあくまで練習の場を提供したのですから絶対に毎日サボらないで練習してくださいね」

律「サボらないよ絶対!アハハ」


 次の日 部室にて

律 ドンバシャドンバシャン!ドンドンバンバン!ドンシャン!

唯「なんかすごいねりっちゃん…」

澪「うん…なんか引くぐらいすごいな…」

紬「同じ高校生なのになんでこうも違うのかしら?」

律(ふふふ、君たちとは練習量が段違いだからな!)

  ガチャン

さわ子「田井中さん居る?」

律「はいはい、なにさわちゃん?」

さわ子「あなたに会いたいって人が来てるの」

律「誰だよ、わたしに会いたがってる奴は?」

さわ子「なんか音楽事務所の人らしいけど」

律(音楽事務所!?)


  職員室にて

音楽P「ぜひ田井中さんに我が事務所に入っていただきたいのです!」

律「なんで?」

音楽P「実は田井中さんのドラムを聴かせてもらったのですがあなたのドラムテクニックは素晴らしいですよ!
    海外のアーティストと比べても遜色ないですし、世界トップレベルの腕前ですよ!」

律「(世界トップレベル///)でもいつわたしのドラムを聴いたんですか?部室以外で披露した記憶が無いんですけど

さわ子「ごめ~ん、あまりにも上手いから勝手にテープに撮ってこの事務所に送っちゃったの~」

律「さわちゃんアンタって人は…!」

音楽P「お願いします!我が事務所はあなたが欲しいです!」

律「別に良いですけど、わたしみたいなのが音楽事務所に入ってもなにをすればいいんですか?別に歌を上手いわけじゃないし」

音楽P「我が事務所が来年から売り出そうとしてるガールズバンドが居るのですが実はそのバンドのドラムが諸事情で抜けちゃったわけですよ」

律「そこにわたしが入ると」

音楽P「その通りです、どうです?悪い話じゃないでしょ?」

律「う~んたしかに(もちろんOK!やった!メジャーデビューだぁ!」

音楽P「今日は他に予定が無いなら我がスタジオを見学してもらいたいのですが」

律「今日ですか?う~ん…」

喪黒『絶対にサボらないでくださいねぇ』

律「(別に一日ぐらいいいだろう)今日は予定無いです!行きましょう!」


  次の日 朝

律「ふぁあ~、ああ眠い…」

律(昨日は遅くまで見学しちゃったから結局練習出来なかったなぁ…)

律(まぁそこは適当にごまかしてと……ククク、メジャーデビューか、わたしもついにスターだぜ!)

律「ぐふふ」

喪黒「おやおや、朝から機嫌が良さそうですねぇ」

律「も、喪黒さん!?じ、実はわたし芸能界デビューが決まりまして……」

喪黒「あなたワタシとの約束を破りましたね」

律「う・・・!それはっ!」

喪黒「ホーホッホッホ、約束を破ったらどうなるか思い知っていただきましょう」

律「な、なにするんだ!?」

喪黒「罰を受けてもらいます」


喪黒「ドーーーーーーーーン!!!!!!」

律「うわあああああああ!!!!」


律「う…う…」

律「ハッ!どこだここは!?」ムクッ キョロキョロ

律「ここはたしか…喪黒さんに紹介してもらった部屋だ…なんでこんなトコに居るんだろう」

律「そんなことより早く学校行かなきゃ!」

律「……あれ?あれちょっと待ってよ…ドアが無い!あったはずのドアが無い!」

律「喪黒さん!出してよ!ここから出してよ喪黒さん!ドアはどこにやったんだよ!」

律「嫌だ!こんなところに一生いるなんて嫌だよおお!!」ヒックヒック

律「澪!助けてよ澪!みおおおおお……」

律「嫌だあああああああ!!!」


喪黒「彼女は時の無い世界に永遠に閉じ込められてしまいました」

喪黒「でも良かったですね田井中さん、これで思う存分ドラムの練習が出来ますよ」

喪黒「ホーホッホッホ・・・・・・」  

【異次元ルーム】 完