喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません、私の取り扱う品物はココロ、人間の心でございます」
喪黒「ホーホッホッホッホッホッホ――…」

喪黒「この世は老いも若きも、男も女も心のさみしい人ばかり」
喪黒「そんなみなさんのココロのスキマをお埋め致します」
喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません」
喪黒「お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」
喪黒「さて今日のお客様は……」


――とあるバス停前

律「1日8000円か」
紬「お母さんに前借りした5万円をあわせてもまだ全然足りないわね」
唯「……」

平沢唯(15)高校生
『ギー太に首ったけ』

澪「あと何回かバイトするか」

律「よっし!」

唯「や、やっぱりいいよ!バイト代はみんな自分のために使って!」

紬「唯ちゃん…」

唯「私、自分で買えるギターを買う!早くみんなとも練習したいし!」

律「唯…」

唯「また楽器屋さんに付き合ってもらってもいい?」

紬律澪「うんっ」

唯「じゃあ帰るね!」


――帰路

唯「はぁ…みんなにはああ言ったけど、やっぱり欲しいなぁ…」

唯「でもみんなにこれ以上迷惑かけたくないし…」

喪黒「ホッホッホッホ」

唯「え?うわっ」

目の前に現れた全身黒スーツの男
不気味な笑い声をあげながら唯に近づいてきた

唯「あ、あの…」

喪黒「あなたぁ、このギターが欲しいのですかぁ?♪」

唯「え?こ、これって!」

男が持っていたギターはまぎれもなく、先日唯が欲していたギブソンレスポールのギターであった

喪黒「ホッホッホ♪よろしかったらこれをお譲りしますがぁ♪」

唯「え!?で、でもこんな高価なモノを見ず知らずの人に…」

喪黒「申し遅れました、わたくしこういう者です」

唯「ココロのスキマお埋めします…?」

唯「も、もくろふくづくり…?変わったお名前ですね…」

喪黒「オーッホッホッホッホホホ」

喪黒「一種のボランティアでしてね、あなたの様に心にスキマのある方を探していたんです」

喪黒「平沢唯さん♪」

唯「な、なんで私の名前を!?」

喪黒「そんな事よりもこのギターいかがですかぁ♪」

唯「でも…」

喪黒「私が持っていても宝の持ち腐れ」
喪黒「あなたのように心からギターを愛していただける方に使ってもらったほうが、このギターも幸せというもの」

唯「あ、愛します!だってこれすっごくかわいいんだもん~!」

喪黒「では、これはあなたのモノですよ♪」

男は唯にギターを手渡す
唯はそれを両手で抱きこむように受け取った

唯「……」
唯「あ、あの!」
唯「あれ?」

唯がギターに見とれていた隙に、男はいなくなっていた


――唯の部屋

唯「かっわいいなぁ~!」
唯「ルンルン♪」
唯「おお、ミュージシャンぽぃぃぃ」
唯「ニタァ」
唯「あ、サインの練習しなきゃ!」

ガチャ

憂「お姉ちゃんうるさい~」


――翌日桜が丘音楽室

律「うお!唯!」
澪「ど、どうしたんだそれ!?」
紬「まぁ、あのギター?」
唯「えへへ~実は昨日あの後ね~」

――――
――

律「へぇ~変わった人もいるもんだなぁ~」
澪「大丈夫なのかそれ…新手の詐欺じゃないだろうな…」
紬「でもよかったわね唯ちゃん!」
唯「うん!昨日からもうかわいくってさぁ~!」
澪「そういやギターのフィルムもつけっぱなしだな」
律「ウズウズ」
律「うりゃーーー!!」
唯「アーッ」

あははははは~―――


―――帰路

澪「じゃあな唯」
律「家でもしっかり練習しろよー!」
唯「うん!また明日~」

唯「えっとCがこうで…」
喪黒「平沢さん」
唯「え?あっ!」

唯「ふくづくりさん!」

喪黒「どうですかその後♪」

唯「はい!超かわいくってもう、一緒にご飯食べたり~一緒に寝たり~」
唯「あ、今日もギターのコード教えてもらったんですよ~うふふふ」

喪黒「それはよかった♪喜んでくださってるようで私も何よりです」

唯「でも本当にタダでいいんですか?せめて5万円…」

喪黒「いいえかまいません♪ですが平沢さん、1つ約束してください」

唯「はい?」

喪黒「決してこのギターを粗末に扱わない、大切に使うと♪」

唯「そんなの当たり前ですよ~!」

唯「私の大事なギー太ですもん!」

喪黒「それを聞いて安心しました♪では、失礼します」


――1年半後

桜が丘音楽室

梓「こ、これ弦錆付いてるじゃないですか!」

唯「え?」

梓「ネックも曲がってるし…いつメンテしたんですかこれ!?」

唯「めんて?」

澪「お、落ち着け梓!今の唯にはまったく理解できない!」

梓「…大事にしないとダメじゃないですか…いいギターなのに…」

唯「だ、大事にしてるよ!一緒に寝たり、お洋服着せてあげたり!」

梓「大事にする方向性が全然違いますよ…」

唯「りっちゃんもメンテなんかしてないよね?」

律「しとるわ」

澪「仕方ない、楽器屋に行こう」


―――10GIA

梓「すいません、このギターメンテナンスお願いします」

喪黒「これ、ヴィンテージギターですかぁ?♪」

唯「!!」

梓「すいません…ただ汚いだけです…」

唯「ふ、ふくづくりさん!?」

梓「…?お知り合いなんですか?」

喪黒「平沢さん、あなた私との約束を破りましたね」

唯「え…?」

喪黒「大事にするように、と言いましたよね私」

唯「だ、大事にしてましたよ!一緒にお風呂にも入ったり!」

梓「お風呂まで入ったんですか!?」


喪黒「仕方ない、あなたにはギターの気持ちになって頂きましょう♪」

唯「え?」

喪黒「ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

唯「アヒャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


―――

梓「先輩方、メンテ終わりました」

律「お、早かったな」

紬「あら?澪ちゃんは?」

律「まだあっちでベース見てるよ、ちょっと呼んでくる」

――10GIA入り口前

梓「よかったね~唯先輩~!」

抱きしめたギターに梓はそう呼びかける

澪「名前付けてたんだな…」

律「なぁ、どっかでお茶していかね?」

紬「いいわね」

梓「はいっ」



喪黒「ホッホッホッホ、これで平沢さんもギターの気持ちがわかることでしょう♪」

喪黒「ギターを可愛がるのもけっこうですが、メンテを怠ってはかいわそうですねぇ♪」

喪黒「皆さんも楽器は大切に扱ってくださいよ、いいですねぇ♪」

ホーホッホッホホホホホホホホホホホホホ……――

END



喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません、私の取り扱う品物はココロ、人間の心でございます」
喪黒「ホーホッホッホッホッホッホ――…」

喪黒「この世は老いも若きも、男も女も心のさみしい人ばかり」
喪黒「そんなみなさんのココロのスキマをお埋め致します」
喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません」
喪黒「お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」
喪黒「さて今日のお客様は……」

桜が丘文化祭当日

澪「はぁ…いよいよ本番か…」
澪「唯達…もう来てるかな…」
ガチャ
澪「お待た…」

秋山澪(16)高校生
『ボーカル症候群』


――1-3焼きそば屋『やきやき』

唯「はいらっしゃいらっしゃい!やすいよやすいよ~!」
喪黒「私ソースたぁっぷりでお願いしますぅ♪」
唯「はいまいど~!おじさんありがとね~!」

澪「唯!」
唯「あ、澪ちゃん!焼きそば?」
澪「そうじゃなくて…」

喪黒「ズルズル♪」


――お化け屋敷入り口前

律「ありがとうございました~!」
律「いらっしゃいませ~!」
喪黒「1名お願いします♪」
律「はい、50円になります!ごゆっくり~!」

澪「律!本番前に練習…」
律「あーごめん今無理!ほら、こんなに並んでるしさ」
澪「そう…じゃあムギはどこ?」
律「こん中だよ」

お化け屋敷を見つめる澪

澪「ひっ」
律「クラスの人は入ってもいいよ」
律「あっ、ありがとうございました~!」


――お化け屋敷内

澪「ヒィィィ…む、ムギ…どこにいるの?」

喪黒「おや?あなたもお一人なんですかぁ?♪よろしければご一緒に――」

澪「                           」

澪「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

紬「あら?」

律「ん?あっいらっしゃいませ~!」


――外

澪「す、すいません…てっきりお化けかと…」
澪「あっ…!す、すいませんすいません!」

喪黒「いえいえお気になさらず♪このような顔ですからぁ♪」

澪「い、いえ…」

喪黒「失礼ですがあなたもこの学校の生徒ですよね?何もお仕事はないのですかぁ?♪」

澪「あ…私達3時から体育館でライブやるので…」

喪黒「おや♪それは楽しそうですねぇ秋山澪さん♪」

澪「!?何で私の名前を…?」

喪黒「おや失礼♪申し遅れましたがわたくしこういう者です」

澪「ココロのスキマお埋めします…?もぐろ…ふくぞうさん?」

喪黒「はい♪わたくしセールスマンでして、あなたのように心にスキマのある方を探していたんです♪」

澪「…?いえ私は別に…」

喪黒「おや?そうですかぁ?その恥ずかしがり屋な性格で悩んでおいでではないんですかぁ?♪」

澪「な…!」

喪黒「ホーッホッホホホ、なのにこの度はボーカルなどと大役を任せられてしまって随分プレッシャーを感じておられるようですね♪」

澪「……」

喪黒「この飴、よかったらいかがですかぁ?♪」

澪「は…?」

喪黒「これは声がよく出るようになる魔法の飴でしてねぇ、これを舐めれば誰もが聞き惚れるような歌声が出せるんですよ♪」

澪(うさんくさすぎ…)
澪「け、結構です…それにお金もないので私」

喪黒「いいえ御代はけっこうです♪騙されたと思って使ってみてくださいなぁ♪」

澪「……」

喪黒「それではライブ楽しみにしてますねぇ♪前のほうで拝見させていただきます♪」

澪「あ、あの…!」

澪「……」


――音楽室

喪黒からもらった怪しげな飴を見つめる澪

澪「いい声がでたって…恥ずかしいものは恥ずかしいのに…」パクッ

澪「味は…悪くないな…はぁ…」

澪「君を見てると~いつもハート――」

澪「!?」

澪「い、今のが私の…!?」


――音楽室前

律「何やってんだ?唯」
唯「シーッ」
紬「?」

澪の練習姿を窓の外から眺める3人

律「ずっと…練習してたんだな」
唯「うんっ」

律が勢いよく音楽室のドアを開けた

律「待たせたな澪ー!」
紬「1人にしてごめんなさい」

澪「あぁ神サマおねがい♪2人だけの~♪」

唯「澪ちゃん?」
澪「ドーリームぅタイムゥくだーさい♪」
律「みおー?」

澪「え?あっ!」

律「す、すげえ集中のしようだな…」
唯「でもこれなら余裕だね!」
紬「そうね!」

澪「フフフ」


――体育館舞台裏

律「よーっし!練習の成果を存分に発揮するぞー!」
唯紬「お~っ!」
澪「ああ!」

『次は、軽音楽部によるバンド演奏です』

「なにあれ~?」「かわいい~」「何組の子?」

さわ子「私GJ!」
喪黒「ホッホッホ」

唯「澪ちゃん、大丈夫だからねきっと」
澪「わかってるよ、みんな最高のライブにしよう」
律「み、澪?」
紬「はいっ」

澪「君を見てると~いつもハートDOKI☆DOKI☆」

ワーーーーッ!

会場は盛り上がり、ライブは大成功に終わった


律「みんな、おつかれさん!」
唯「すごい楽しかったよ~!」
紬「澪ちゃんすごかったわね!」
澪「あれくらい余裕よ」

唯「あ、さわちゃんに記念撮影してもらおうよ!呼んでくる~!」
律「澪、なんかすごい堂々としてたな」
紬「うん、私もびっくりしたわ」
澪「そうかな?」

さわ子「は~いみんなこっちむいて~!」
唯「いぇ~い!」


――律澪紬のクラス
お化け屋敷後片付け中

律「澪、これ捨ててきてくれー」
澪「うん」

澪「よいしょ、よいしょ」

喪黒「秋山さん」

澪「あ!喪黒さん!」

喪黒「覚えていていただいて光栄です♪素晴らしいライブでしたねぇ♪」

澪「なんか全然緊張しなくて…それに、自分の声が今まで思っていたよりもすごく綺麗に聞こえたんです!」

澪「だから皆に私の歌声をもっと聞いてもらいたい気がして…」

澪「もしかして、本当にあの飴の効果なんですか?」

喪黒「ホッホッホ♪いえいえこれがあなたの実力なんですよ♪」

澪「……あの、喪黒さん!あの飴まだありますか!?」

喪黒「ええ♪ありますが♪」

澪「も、もっと頂けませんか!?お金は払いますから!」

喪黒「ホッホッホ♪そこまで言うんでしたら、御代は結構ですが1つ約束していただけますか?」

澪「約束…?な、何ですか?」

喪黒「来年、軽音部に必ず新入部員を1人でも入れると♪」

澪「そ、そんな事でいいんですか?」

喪黒「ええ♪」

澪「私の歌声があれば…!約束します!だから…」

喪黒「わかりました♪今あるのはこれだけなので、無くなったら名刺の裏に書かれた場所まで取りに来てください♪夜は大抵いますから♪」

澪「ありがとうございます!」