唯「火葬場にすぐ持っていく方がいいよね!」

憂「……」


憂「急にどうしたのお姉ちゃん?」

唯「聞いてよ憂、お葬式はボッタ栗なんだよ!」

憂「ぼったくり?」

唯「私テレビや雑誌で知ったんだよ!」

唯「お葬式は、必要以上にすごくお金がかかるんだって」

唯「私、絶対にお葬式はしないよ!」

憂「そうなんだ…」

憂「でも、もしお姉ちゃんが私より先に死んじゃったら、私お葬式したいよ」

唯「何言ってるの憂!それは世間の風潮に騙されてるんだよ!」

憂「そうかなぁ?」

唯「そんなお金があるんなら、みんなでパーティーでもすればいいんだよ!」

唯「みんなが悲しくジメジメするくらいなら」

唯「楽しく盛り上がってくれた方が、私も嬉しいよ!」

憂「パーティー!?」


憂「えっと、おねえちゃん」

唯「なぁに?」

憂「もし私やお父さんお母さんが死んじゃっても、お葬式したくないの?」

唯「当たり前だよ!」

憂「えっ?」

唯「お葬式なんて無駄だよ!何百万も葬儀会社やお坊さんに払うなんて意味無いよ!」

唯「私は無宗教だしね」

唯「考えてみたら、なんでお坊さんにお経あげてもらうだけで何十万も払わなきゃいけないの!?」

唯「どんだけ大物歌手なの?」

唯「私は、今後一切お葬式は否定するからね!」

唯「そんなお金、アイスに使ったほうがマシだよ!」

憂「そうなんだ…」


憂『みなさんは、おねえちゃんの言う事をどう思いますか?』

憂『みなさんは自分のお葬式、あげてもらいたいですか?』

憂『お葬式って一体なんだと思いますか?』

憂『まず商業としてのお葬式、これに疑問を持つ方は多いと思います』

憂『そしてややこしいのが宗教としての問題』

憂『わたしはお姉ちゃんに、お葬式というものを上手く説明できません』


憂『どうしようかなぁ…』



軽音部の部室!

唯「ごめんね遅れちゃった」

律「待ちくたびれたぞー」

紬「唯ちゃん、お茶はいってるわよ」

唯「わぁー、いい香りー」

唯「あれ、あずにゃんは?」

澪「ああ、梓なら親戚のご不幸事だとかで、今日は休み見たいだな」

唯「ゴフコウゴトぉ?」

紬「お葬式って事じゃないかしら?」

唯「ほえー」

律「親戚のお葬式なら、公休にならないのに偉いなー」

唯「えっ、偉い?」

唯「お葬式に行くのが偉い事なの?なんで?」

律「えっ、私はなんとなく言っただけだけどー」

澪「良い事じゃないか、周りの人が亡くなったなら」

澪「休みを取ってまで供養に行くなんて感心だろ?」

唯「えーっ、そんなこと無いよー!」

唯「そんな無駄なことするぐらいなら、学校でちゃんと勉強するほうが偉いよ!」

律「学校でちゃんと勉強って、唯らしからぬ発言だな」

唯「りっちゃんに言われたくないよー」ブー

律「なんだとコノヤロー!」ガバッ

キャッキャッ!

紬「あらあらウフフ」

澪「おーい、遊んでないで練習するぞー」

唯「あっ、そうだよっ!あずにゃんはいっつも」

唯「『せんぱーい、ちゃんと練習しましょうにゃん☆』って言ってたのにー」

唯「こんな時堂々と休むなんて、ずるいよ、卑怯だよ!」

律「にゃん☆とは言ってないだろ…」

澪「なんだよ唯、やけに拘るな、お葬式なんだからその位いいだろ?」

唯「だったら澪ちゃんは、なんでそんなにお葬式を評価してるの?」

澪「評価って…」

唯「あんなの恐怖の詐欺集会だよ!」

律「まったく何言ってるんだよー」

紬「お葬式って大切なことじゃない?」

唯「えっ、二人までそんな事いうの!?」

律「はぁ?当たり前の事だろ?」

唯「ダメだよりっちゃん、りっちゃんは世間に騙されてるんだよ!」

律「へっ?」

唯「お葬式をするのが当たり前っていう風潮が、りっちゃんを洗脳してるんだよ!」

唯「実際そんな事しても、葬儀会社やお坊さんが儲かるだけじゃない!?」

唯「お葬式なんてあげなくても、気持ちさえあればいいんだよ!」

律「ええっ!?」

唯「でしょっ?りっちゃん!!?」ズイッ

律「ううっ…」

律(なんだか唯の言ってる事がもっともに思えてきた…)


澪「おいおい、唯に騙されるなよ!」

澪「死者を弔う気持ちを忘れちゃいけないぞ!」

律「そ、そうだよな…」

唯「騙してるのは澪ちゃんの方だよ!」

唯「そんなオカルトメルヘンメンヘラリンで、人々の不安を煽り騙し、あんた地獄に落ちるわよ!」

唯「澪ちゃんのスピリチュアル詐欺師っ!!!」

澪「言ってる事よく分からないけど、そんな言い方無いだろっ!?」

紬「ねえ唯ちゃん、ちょっと極端じゃない?」

紬「大切な人を亡くした悲しみは、誰だって同じでしょ?」

唯「だからこそ私は言ってるんだよっ!」

唯「大切な人を喪って悲しんでいる人の心に付け込んでお金儲けなんて!」

唯「酷いよ!死者への冒涜だよ!!!」

澪「なっ、なんだよ、お金の問題か?」

澪「そんな式やイベント事でも、お金がかかるのは仕方が無いだろ?」

澪「だったらできるだけ安いプランで組めばいいじゃないか?」

唯「そこがいけないんだよ!?」

唯「そもそもお葬式自体する意味が無いんだよ!」

唯「それをやっちゃうから、足元見られて搾取されちゃうんだよ!」

唯「今こそ脱お葬式!これだよ!」

唯「これが新しい時代のニュースタンダードだよ!!!」

唯「ねっ、りっちゃん!?」ズイッ

律「えっ、まあ、そうかな…」

澪「おい律、何言ってるんだっ!?」バッ

律「あうっ、ごめん…」

唯「ちょっと澪ちゃん、りっちゃんは私に賛同してるんだからとらないでよっ!?」

澪「なんだと!?お前のめちゃくちゃな話しに律を巻き込むな!」

唯「めちゃくちゃなのはソッチじゃん!?」

唯「お葬式が何故必要かちゃんと説明出来ないくせに!!!」

澪「必要なものは必要なんだ!!!」

澪「お前がへそ曲がりなだけだ!!!」

唯「ねえ、りっちゃんは私の味方だよね?」

澪「律は私の言ってる事の方が正しいと思うよな?」

律「ええっ!?」

律「そっ、それはー」タジタジ


律『お葬式の事なんて考えたことも無いや』

律『唯の言ってることは、尤もだと思うけどー』

律『澪の言うとおり、お葬式をしないってのもなんだか抵抗があるよなー』

律『あーっ、もうどうすりゃいいんだ!?』

律『みんなはどう思う?』

律『お葬式って何?』

律『それは必要な事なの?』


律『どうしよう…』


律「私は…わかんないよ」

唯「えーっ、私の言ってる事の方が明らかに正しいよっ!」

唯「りっちゃん、わかんないってどういう事!?」

澪「律、素直に私の方に賛同すればいいんだ!」

澪「お前は親のお葬式もあげない人でなしなのか!?」

律「えっ、うう…」

律「うえーん、ムギーっ、助けてーっ!!!」

紬「りっちゃん…」

紬「ちょっと二人とも、りっちゃん困ってるわよ」

紬「喧嘩しないで、お茶でも飲んで」

澪「そうだムギっ、ムギはお葬式あげるの賛成なんだよな?」

紬「えっ、うん、そうだけど…」

澪「ほら見ろ、ムギはこっちの味方だ」

澪「律は中立だから2対1だな」

唯「くっ…」

澪「唯、とにかくお前は少数派のへそ曲がりなんだ」

澪「まったく、非常識なこと言うなよなー」

唯「そんなっ、一人多いくらいでっ!」

澪「でも二人は一人の倍だしなー」

唯「ううっ…」

澪「まあ、この話はこの辺で、練習に…」

唯「ああっ!!!」

澪「わぁ!?」

澪「なんだよ急に、ビックリした」

唯「えへへ、澪ちゃん、大きな顔できるのは今のうちだけだよー」

澪「へっ?」

唯「私、今から和ちゃん呼んでくるから!!!」

澪「何だって!!!?」

澪(和はなんだか冠婚葬祭にドライな考え方してそうだ…)

澪(まさか唯の強力な助っ人に…!?)



和「なんだか知らないけど、連れてこられたんだけど…」

澪「くっ、ついに来たなっ、負けないぞ!!!」

唯「へっへーん、和ちゃんが来たからにはもうこっちのもんだよ!」

紬「はい、和ちゃんお茶どうぞ」

和「あら、ありがとう」

律「ううっ…」

和「律はなんか元気ないわね、珍しい」

紬「その代わり、唯ちゃんと澪ちゃんがヒートアップしちゃって…」

唯「いーっだ!」

澪「むぐぐっ…」

和「やれやれ、今度は何事なの?」

唯「そうそう、和ちゃんは、お葬式の事どう思う?」

和「へっ?お葬式!?」

和「急に何言い出すのよ?」

唯「まあ、和ちゃんの頭脳で考えた合理的で理論的な正しい意見を聞きたいなーなんて」チラッ

澪「」イラッ

澪「和、こっちは準備万端だ!さあかかって来い!!!」

和「なんなのよあんた達…」

唯「まあ、いきなり結論もなんだからね」

唯「和ちゃんは、宗教信じてる?」

和「えっと、お爺ちゃんおばあちゃんの所にはお仏壇があって、お坊さんが来てるみたいだけど」

和「私の家には無いわね、私自身も特に何の宗教を信じてるって事もないわ、無宗教って事かしら?」

唯「うんうん、いいよー、それじゃあ、霊魂の存在は信じる?」

和「いいえ、信じないわ非科学的だもの、今の時代本気で信じてる人の方が少ないんじゃない?」

澪「くそっ」ググッ

唯「へっへー」ニヤリ


唯「じゃあさ、お葬式に沢山お金をかけるなんて、どう思う?」

和「それは、無駄なんじゃない?お金をかければ良いって問題じゃないわよ」

唯「ふんふん、ちなみにさ、お葬式って、やったからって一文の得にもならないよねー」

和「当たり前でしょ!?ご香典だって返すんだし、金銭面ではマイナスよ!」

唯「厳しい言い方だねー!和ちゃんかっこいい!!!」

和「そうかしら?」

澪「ううっ…」


唯「それじゃ、最後の質問だよっ、お葬式はしなくてもいいよね?」

和「何言ってるの?しなきゃいけないに決まってるでしょ!?」

唯澪「何でだよ!!!?」


唯「えっ、澪ちゃん?」

澪「わっ、意外だったもんで、私までつい突っ込んじゃった…」

和「何驚いてんのよ、当たり前のこと言ったまででしょ?」

澪「そうだけど、和の言い方だと、なんだかお葬式あげなくて良いって言いそうだったから…」

和「そうかしら?」

唯「びえーん、和ちゃんの裏切り者ーっ!」

和「なんでそうなるのよ?」

紬「でもなんで和ちゃんは、お葬式が必要だって思うの?」

律「あっ、私も聞きたい!なんだかこの問題、頭こんがらがっちゃってさー」

唯「あっ、わかった!」

唯「和ちゃんは世間体を気にしてるんだ!!!」

唯「真鍋さん所の娘さん、親のお葬式もあげないんだって、怖いわねーっ」

唯「そう言われたくが無い為の、偽装結婚ならね、偽装お葬式!!!?」

唯「和ちゃんの山陰地方!土地と家制度に縛られた陰湿女!!!」

和「あんたねえ、山陰地方の方に怒られるわよ…」

和「言っとくけど、私がお葬式をあげるのと、そういう世間体は関係ないわよ?」

紬「だったら、親族が集まる機会だからって事かしら?」

紬「こういう時にしか集まれないし…」

和「親族が集まる事の良さはあるけど、お葬式をあげる直接の理由じゃないわね」

律「だったら何の為だよ?今更霊魂を天国に送る為とか言わないよな?」

和「違うわよーっ」

和「まあ理由を説明する前に、分った事があるわ」

和「あなた達全員に共通する事…」

唯「ほえっ?」


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