葬儀からの帰り道。私達2人はほぼ無言だった。

ムギとの分かれ道に着いたとき、私はムギに聞いてみた。

律「なあムギ」

紬「なに?りっちゃん」

律「唯は・・・どうしてるんだ?」

紬「うん。憂ちゃんの話によると、ずっと部屋に引きこもっているみたいなの。呼びかけても出てきてくれないみたい・・・」

律「そっか・・・」

紬「澪ちゃんの様子は?りっちゃん何か知ってる?」

律「ごめん、わからない・・・」

紬「そう・・・。ショックよね、やっぱり」


律「私、唯の家に行ってみるよ。なにも出来ないかもしれないけど、とりあえず唯に会ってくる」

紬「あ、じゃあ私も行くわ」

律「いや、いきなり2人で行ったら唯も戸惑うかもしれないから、まずは1人で行った方がいいと思うんだ」

紬「・・・わかったわ。じゃあ私は澪ちゃんの家に行ってみる」

律「ああ、頼む」

紬「うん。じゃあね、りっちゃん」

ムギと別れ、私は1人唯の家へと向かう。

きっと唯はとても傷ついているのだろう。

恋人を失う悲しみは私には分からないけれど、私が、梓の代わりに唯の悲しみを癒やしてあげたい。

邪魔な梓は、もういないのだから。




唯の家に到着し、インターホンを押す。

それから少しして憂ちゃんが玄関から出てきた。

憂「あ、律さん」

律「こんばんは、憂ちゃん。唯、いる?」

憂「・・・お姉ちゃん、梓ちゃんが死んじゃって、すごい・・・ショックみたいで」

憂ちゃんの目から涙がこぼれる。顔を両手で押さて泣きだした。

憂「それで・・・部屋から・・・出てこなくて・・・梓ちゃんが死んじゃったなんて・・・

  私も・・・信じられなくて・・・ついこのあいだまで・・・なんで・・・梓ちゃんが・・・」

律「憂ちゃん・・・」

泣きながら話す憂ちゃんの言葉は支離滅裂で、だけど憂ちゃんの気持ちは、文字通り痛いほど伝わってきた。

律「お邪魔しても、いい?」

憂「はい・・・。お姉ちゃんの事、よろしくお願いします・・・」

私は憂ちゃんに連れられて、2階に上がり唯の部屋の前まで来た。

憂「お姉ちゃん、律さんが会いに来てくれたよ」

憂ちゃんが扉ごしに呼びかける。返事はない。

憂「ずっとこんな感じなんです」

律「そうなんだ・・・」

私は今度は自分で唯に話しかけてみる

律「唯、私。律だ。入ってもいいか?」

やっぱり返事はない。

律「入るぞ」


私は扉を開け、唯の部屋に入る。

唯の部屋は電気がついておらずカーテンも締め切っていて真っ暗だった。

その暗い部屋のベッドの上で、唯は自分の膝を抱えていた。

私が入ってもきても顔をあげることすらしない。

律「よっ、唯。元気か?」

私は努めて明るく話しかける。

私の取り柄はこれしかないから。これしか出来ないから。

律「あーあ。電気もつけないで。知ってるか?部屋が暗いと気持ちまで暗くなってくらしいぞ。

  それに部屋もだいぶ散らかしてるなー。よし、私が掃除してやるよ」

律「あ、そうだ唯。その間に風呂にでもって入ってきたらどうだ?

  何日も入ってないんじゃないか?すごい頭してるぞ」

律「ちゃんとご飯は食べてるのか?憂ちゃんがせっかく美味しい料理作ってくれるんだから、食べないともったいないぞ」

私がどれだけ話しかけても、唯は返事をしてはくれない。

それでも私は唯に話しかけ続けた。


唯「帰ってよ」

30分もした頃、唯がようやく口を開いた。

唯「お願いだから帰って」

律「唯・・・」

唯「帰って!」

律「・・・分かったよ。でもまた明日来るから」

唯「・・・」

律「じゃあな。唯」

私はそれからというもの、放課後は毎日唯の家に行った。

その日学校であったことや、昨日見たテレビの内容など、取り留めのない話を唯に話して聞かせた。

相変わらず唯は返事をしてくれないけれど、少しずつつでもいいから唯が元気になってくれればと思う。




今日も私はいつも通り唯の家に向かっていた。

澪「律」

後ろから声をかけられ、私は振り返った。

そこには久しぶりにみた親友の姿があった。

律「澪!」

澪「久しぶりだな、律。ちょっと話、いいか?」

久しぶりに会った澪は、思っていたよりも元気そうだった。

澪と最後に会った時にあんな別れ方をしてしまったから気になっていたけれど、とりあえず安心した。

律「澪、もう大丈夫なのか?」

澪「律、最近毎日唯の家に行ってるらしいな」

ムギにでも聞いたのだろうか。澪がそう言った。

律「ああ。実は今、唯かふさぎ込んじゃっててさ。唯に元気になってほしくて」

澪「人の弱ってるところを狙ってるわけだ」

律「・・・は?」

澪「律は梓がいなくなって弱っている唯に優しくして、

  梓の変わりに自分を好きになってもらおうとしてるんだろ。最低だな」

律「・・・」

律「・・・だったらなんだよ!唯は、梓がいなくなってボロボロになってるんだ!

  今の唯には、唯の心を支えてあげられる人が必要なんだよ!それが何か悪いことなのか!?」

澪「律・・・。そんなにか・・・。そうまでするほどに、唯じゃないとだめなのか?私はこんなに律のことが」

律「どんなに言われたって、私が好きなのは唯なんだ。悪いけど、澪の気持ちには応えられない」

私は最後にそう言って、澪を残してその場を去った。




唯「ねえ、りっちゃん」

今日も私が唯の部屋で話をしていたら、突然唯が話しかけてきた。

顔をあげ、私を見る。

律「なんだ?唯」

唯「なんでりっちゃんは、毎日私に会いに来てくれるの?」

律「唯が心配だからだよ」

唯「そっか・・・。ごめんね、心配かけて」

そう言って唯は力無く笑う。

唯「ホントはね、分かってるんだよ。こんな事してたってしょうがないって。

  あずにゃんは戻ってこないんだって」

唯の声が、徐々に涙声になっていく

唯「でも・・・どうしても・・・あずにゃんの事を思い出しちゃって・・・苦しくて・・・

  立ち直らなきゃって思ってるのに・・・出来なくて・・・忘れられなくて・・・」

唯「ねえりっちゃん・・・私は・・・どうしたらいいのかな・・・」


律「・・・なあ、唯。私じゃ駄目か?」

唯「え?」

律「これからは、ずっと私が唯のそばにいる。唯が苦しい時も私が隣にいてあげる」

唯「りっちゃん・・・」

律「私は、唯が好きだ。」

唯「でも・・・私はあずにゃんが・・・」

律「唯、残念だけど、梓はもういない。唯は、これから梓のいない世界で、

  前を向いて歩いて行かなきゃいけないんだよ」

律「唯。私と一緒に歩いていこう。今はまだ、辛いかもしれないけど、私がいるよ。

  いつか絶対、唯を幸せにするから」

唯「・・・」


唯「りっちゃん・・・。1つだけ約束して」

律「なんだ?」

唯「私を1人にしないって・・・。いなくなったりしないって・・・。」

唯「もう絶対・・・大切な人がいなくなるのは嫌なの・・・」

律「ああ、約束する。私はどこにも行かない。ずっと一緒だよ、唯」

私は唯を抱きしめた。唯は私の胸の中で、いつまでも泣いていた。




数週間後。

唯「りっちゃん帰ろー」

律「ごめん、先行ってて。今日日直なんだ」

唯「えー。早くしてね」

律「わかったよ」

唯はだいぶ元気を取り戻していた。決して梓のことを忘れたわけではない。

それでも唯は、強く生きていこうと決めたんだ。

私はそんな唯の支えになれた事がとても嬉しい。

軽音部にはあれから行っていない。

今はまだ、辛い場所だから。

でも、いつかまた、4人で演奏出来る日がくればいいと思う。




日直の仕事を終えた私は、教室を出て、唯が待つ昇降口に向かう。

そして、階段をおりようとした所で



ドンと

背を押され

私は

階下に

落ちていった



体が動かない。頭から血が流れているのが分かる。

ヤバい。死ぬ。死にたくない。

助けて。誰か。

だけど、私の意識はどんどん遠のいていく。

意識がなくなる寸前、階段の上にいる人物の姿が目に入った。

その黒髪の美少女の言葉が耳に届く。

澪「ごめん・・・律。もう・・・こうするしかなかったんだ。

  でも安心してくれ。律を1人になんて絶対にしないから」

澪「私達は、ずっと一緒だよ」



終わり






これで終わりです。読んでくれた方、ありがとうございました。
唯律もっと増えろ

なんか宣伝になっちゃいますけど、暇な方は
唯「りっちゃん大好き」
唯「幸せってなんだと思う」
も読んでくれたら嬉しいです。