唯「今日はみんなに重大な発表があります!」

ある日の放課後。いつも通りティータイムを楽しんでいる時、唯が突然そんな事を言った。

みんなが唯に注目する。

律「お?なんだなんだ?」

まあ唯のことだ。たいしたことじゃないだろうけど、とりあえずのってみる。

紬「な~に?唯ちゃん」

梓「ゆ、唯先輩。ホントに言うんですか・・・?」

澪「なんだ?梓は何か知ってるのか?」

梓「いえ・・・。その・・・。」

唯「あずにゃん、みんななら絶対大丈夫だよ」

梓「・・・わかりました。じゃあ唯先輩、どうぞ」

なんなんだろう。2人に関係することなのか?

私は正直おもしろくなかった。

唯と梓が2人だけの秘密を持っているみたいな感じがして。

唯「うん。あのね、みんな」

唯「私ね、あずにゃんと付き合ってるんだ」

律「・・・え?」

今・・・なんて言った?

付き合ってる?唯と梓が?え、なんで?は?


澪「つ、付き合ってるって・・・。どういう意味だ?」

唯「どういう意味ってそのまんまの意味だよ。私とあずにゃんはね~、恋人同士なんだー」

澪「恋人!?ホントか梓!?」

梓「はい。本当です」

澪はとても驚いていた。きっと女同士で付き合っているという事にびっくりしているんだと思う。

まあ普通の反応だろう。そういう私もかなり驚いていた。澪とは違う理由でだけど。

律「唯と梓が・・・恋人・・・」

私は唯が好きだった。

私と一緒に馬鹿やって笑い合える唯が。

いつも笑顔で、見ているだけで私に元気を与えてくれる唯が。

そんな唯が、梓と付き合っているなんて・・・。そんなのって・・・。


紬「そうだったの。おめでとう唯ちゃん、梓ちゃん」

私達2人をよそに、唯一ムギだけは動揺していないようだった。

むしろ目を輝かせているような気さえする。

紬「とってもお似合いのカップルね。もっと詳しく聞かせてくれないかしら?」

唯「うん。私ね、あずにゃんが入部して来たときからずっと好きだったんだ~。

  一目惚れってやつだね。だってあずにゃんってすごいかわいいんだもん」

梓「もう///。恥ずかしいからやめてください」

紬「あらあらまあまあ」

ムギはなんでこんなに楽しそうにしているのだろうか。

こっちはこれ以上ないくらいショックをうけているというのに。

それに唯も。なんでそんなに楽しそうに話してるんだよ・・・。

紬「梓ちゃんは?梓ちゃんも唯ちゃんのこと好きだったの?」

梓「わ、私は、その///」

唯「もうあずにゃんったら照れちゃってかわい~」

梓「て、照れてません!」

いつもとたいして変わらない光景のはずなのに、どうしてこんなにも心が痛むのだろう。

梓「私は最初はむしろあまり好きではなかったですよ。練習も全然しないし、だらしない先輩だなーと思ってました」

唯「う・・・。あずにゃん私のことそんな風に思ってたんだ・・・」

梓「だから最初はですってば。でも、軽音部で過ごしているうちに、唯先輩のいいところをたくさん見つけました。

  ホントは頑張り屋さんなところとか、とても優しいところとか、一緒にいる人を幸せな気分にさせるところとか」

梓「それで、気づいたらいつの間にか好きになっていました」

唯「なんか恥ずかしいね///」

梓「おかえしです」

笑いあう2人。とても幸せそうに見える。


なんで梓なんだよ・・・。私じゃ駄目なのか?


澪「それにしても驚いたよ」

澪が話に入っていった。どうやらもう落ち着いたみたいだな。

澪「驚いたけど・・・。うん。確かに2人はお似合いだよな。おめでとう2人共」

唯「ありがとう澪ちゃん」

梓「ありがとうございます」

お似合い?どこがだよ。梓なんかより私の方がよっぽど・・・


澪「律?」

律「な、なんだ?」

いきなり話しかけられて私はドキリとしてしまう。

澪「どうしたんだ?さっきから黙ってるけど。なんか顔色も悪いぞ」

律「いや、なんでもないよ・・・」

唯「りっちゃん大丈夫?」

唯が心配そうに私の顔を覗いてくる。

それはとても嬉しくて、だけどとても苦しい。

律「なんでもないってば。ただちょっとびっくりしちゃってさ。アハハ」

私はなんでもないフリをする。私の心の中を必死に隠す。

唯「ホントに?」

律「ホントだって。いやー、それにしてもお前達いつから付き合ってるんだ?」

梓「1ヶ月くらい前からですね」

お前に聞いてねーよ

澪「そんな前からなのか。全然気づかなかった。」

紬「そうよ。もっと早く教えてくれれば良かったのに」

唯「ごめんねみんな」

梓「唯先輩は悪くありません。私が内緒にしてくださいってお願いしたんです」

澪「いや、別に責めてるわけじゃないよ」

紬「そうよ。別にそんな事はいいの。それより2人とも、もうキスはしたの?」

律「・・・!」

相変わらず目を輝かせているムギがとんでもないことを言い出した。

いくら何でもその質問はないだろ・・・

梓「ム、ムギ先輩///」

澪「お、おいムギ。さすがにそんな事聞くのは///」

紬「いいじゃない。恋人同士なんだもの。なにもおかしな事じゃないわ」

聞きたくない。

唯「え~、さすがに恥ずかしいよぅ///」

紬「ここまで言っちゃったんだもん。もう全部言っちゃお!唯ちゃん」

唯「も~ムギちゃんってばー」

もう何も言わないでくれ・・・

唯「うん///。チューもしたよ」

その瞬間、私の中の何かが大きな音をたてて崩れ落ちた。

紬「わぁ///。じゃ、じゃあもしかして、その先も」

梓「ストーーーップ!ストップです!。もうこの話題はおしまいです///」

紬「えー。もうちょっといいじゃない梓ちゃん」

梓「ダメです!さあ皆さん。そろそろ練習を始めましょうよ」

澪「そうだな。もういいだろムギ」

紬「はーい。残念だけどしょうがないわね」

唯「ごめんねムギちゃん。また今度ね」


ムギは少し不満そうだったけど、その話はそこで終わった。

だけど私は、いつまでもその話が頭から離れることはなく、心の中は、黒い感情で一杯だった。

悲しみ。嫉妬。憎しみ。

その他のいろいろな感情が一緒になったものが渦巻いている。

梓が私の唯を奪ったんだ。

私の方が唯のことを大好きなのに。

私の方が唯のことを幸せにしてあげられるのに。

梓なんか軽音部に入れるべきじゃなかったんだ。


梓なんか死ねばいいのに。




澪「それにしてもホントに驚いたよな。唯と梓が付き合ってるなんて」

部活が終わり、私と澪は2人で並んで帰り道を歩いている。

律「・・・そうだな」

澪「まあでも、ホントにお似合いだよな、あの2人」

律「・・・」

澪「・・・なあ律」

律「なんだよ」

澪「私さ、今までずっと悩んでたことがあったんだ。こんなのおかしいことなんだって。

  正直諦めてたと思う」

澪は何を言っているのだろう。

いきなり語り出した澪の真意がわからず、私は困惑した。

律「なんの話だ?」

澪「でもさ」

私の問いには答えずに、澪は話を続ける。

澪「今日、唯と梓が付き合ってるって聞いて、2人の幸せそうな様子を見てたらさ、

  なんか悩んでるのが馬鹿らしくなってきたっていうか、ふっきれたんだ」

付き合ってるだの、幸せそうだの。

私はついイライラして、口調が荒くなってしまう。

律「だから何の話してるんだっての!」

澪「律」

真剣な顔で私の目を見つめる澪。心なしか顔が赤いような気がする

澪「私、律の事が好きなんだ」

律「・・・は?」

澪「私と付き合ってほしい」


澪の突然の告白に、私は固まってしまった。

とても驚いた。澪が私をそんな風に見ていたなんて、全然気づかなかった。

・・・いや、気づくわけもないか。

私は唯しか見ていなかったのだから。

律「澪・・・」

私は、大事な親友になんて答えるべきなのだろう。

私は唯の事が好きで。でもその唯は梓と付き合っていて。

どうせ叶わぬ恋ならば、いっそ諦めて澪の想いに応えてあげるべきなのかもしれない。

だけど、やっぱり私は・・・。

律「澪、私は・・・」

澪「唯のことが好きなんだろ?」

律「!?な、なんで」

澪「わかるに決まってるだろ。好きな人の事なんだから」

律「・・・うん、そうなんだ。だから」

澪「唯は梓と付き合ってるんだぞ」

そんな事はわかってる。わかってるんだ。だけど

律「でも・・・諦めるつもりはないから」

澪「諦めないってどうするつもりだ?唯と梓の仲を引き裂くつもりか?

  そんな事までして唯に振り向いてほしいのか?」

律「・・・」

澪「律・・・。私じゃ駄目か?律のこと、絶対に幸せにするよ」

律「・・・ごめん」

澪「・・・そうなんだ。そんなに唯がいいんだ・・・。律とずっと一緒にいたのは私なのに・・・」

澪は最後にそう言って、逃げるようにその場から走って行ってしまった。

1人残された私は、しばらくその場に立ち尽くしていた。




律「はあ・・・」

家に帰って来た私は、服を着替えることもせず部屋のベッドの上に倒れ込んだ。

澪に言われたことが頭から離れない。

澪『諦めないってどうするつもりだ?唯と梓の仲を引き裂くつもりか?

  そんな事までして唯に振り向いてほしいのか?』

私は唯のことが好きだ。大好きだ。

でも唯は梓の事が好きで。恋人同士で。

唯のことを本当に想っているのならば、唯の事は諦めるべきだと、きっとどこかの常識人は言うのだろう。

それが正しいのはわかってる。

だけど、それはわかっているけれど、私の唯への気持ちは、どうしても諦められるものではなかった。

自己中心的だと言われようとも、私は唯のことが大好きで、唯にも私を好きになってほしい。

それが私の正直な気持ちなのだから。

だから、そのためには



律「梓が・・・邪魔だな・・・」



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