翌日、田井中家。

澪「きたぞー」

律「おお、来たか……あがってあがって」

澪「まったくもう、
  なんでこのクソ暑い中、
  わざわざ宿題を見せに来なきゃいけないんだ」

律「まあまあまあ、クーラー効いてるし、
  アイスもジュースも冷えてるよ」

澪「クーラーもアイスもジュースもうちにあるんだよ」

律「うちのクーラーは澪ちゃんの家のより高性能です!」

澪「意味分からん。帰りたい」

律「おいおい、いきなり帰りたいはないだろー。
  ほら、私の部屋に」

澪「はいはい……まったく」

律「……」




律の部屋。

澪「きたなっ。片付けろよ」

律「いやー、夏休みはついだらけちゃって」

澪「夏休みだからこそ掃除をするべきだろ」

律「まあまあ、座る場所はちゃんと確保してあるから」

澪「ぎりぎり座る場所しかない部屋って酷いな……
  よっこらしょっと」

律「じゃあ澪ちゃん。宿題見せておくんなまし」

澪「分かったよ、もう……
  丸写しはだめだぞ、適当に間違えろよ。
  あと後半の応用問題は空白のままにしとけ。
  そのほうがリアリティがある」

律「やだよ、それじゃ私が馬鹿みたいじゃん」

澪「馬鹿だろう」

律「ひどいなあ、ははは」


澪「……」

律「……」カリカリカリカリ

澪「漫画貸して」

律「うん」

澪「……」

律「……」

澪「……」

律「……」

澪「ぷっ」

律「……」

澪「……」

律「よーしっ、数学は全部写せた!」

澪「あ、そう」

律「次、現国貸して」

澪「現国か。いま出張中だ」

律「じゃあ古文」

澪「古文かー。生物なら今大売出しなのになあ」

律「それもあったわ」

澪「たった今、生物は閉店になりました」

律「もうええわ……ってこんなお約束の流れは
  ホントにいらないから、早く貸してくれ」

澪「やだよ、貸してもらう態度じゃないだろ、それ」

律「くっ……か、貸してください」

澪「んー、どうしよっかなー」

律「お願いします……」

澪「喉かわいちゃったなー」

律「はっ、少々お待ちをー!」
ガチャバタン


澪「……」

ガチャ
律「持ってきた!」

澪「はやっ」

律「田井中家特製の特濃トマトジュース……
  うわあっ!」

澪「おわっ!」

律は足元に散らばっていた雑誌を踏んで滑ってしまい、
手に持っていたトマトジュースは
澪のお腹にぶちまけられた。

澪「な、何すんだよ律ぅ!」

律「ご、ごめん澪」

澪「もう、服がべちょべちょじゃないか……」

律「すぐ洗わないとシミになっちゃうぞ。
  着替え用意するから、すぐに脱げ」

澪「わ、分かった……」ぬぎぬぎ


律「ごめんな澪」

澪「ホントだよ……
  あー、もう下着までびちょびちょ」

律「早く脱いだ方がいいよ」

澪「分かってるよ……見るなよ」

律「見てないから早く脱げよ」

澪「うん……」ぬぎぬぎ

律「ほら、着替え」

澪「ありがとう」

律「じゃあ澪の服は、洗濯機にかけとくから。
  ちゃんと洗って乾かして返すよ」

澪「おう……」

律は澪の衣服を抱えて出て行った。
部屋に残されたのは澪一人。

澪「…………あっ、私の宿題までべちょべちょ……」




澪が半泣きで宿題にかかったトマトジュースを
必死に拭き取っている頃、
律はと言えば。

律「はあ、はあ……あったぁ!」

澪のパンツを裏返して、
血眼になってパンツに付いた陰毛を探していた。
そしてそれはすぐに見つかったのだ。

律「くそっ、一本だけか……
  でもまあいい、手に入っただけで喜ぶべきだな」

律はその陰毛を一通り眺め回したあと、
ポケットに忍ばせておいたチャック付きのビニール袋に
大事にしまった。
そして澪の衣服を洗濯機に放り込んだ。

律は最初からこのつもりで
澪を家に呼び、そしてジュースをぶっかけたのだ。
こんな下らない作戦がうまく行くとは律自身思っていなかったが、
なんと見事なまでに成功してしまった。
これには律も苦笑い。




ふたたび律の部屋。

律「ただいま、澪ちゃ~ん☆」

澪「なんでそんなゴキゲンなんだよ!」

律「なんでそんな怒ってんの?」

澪「怒るに決まってるだろ、
  服だけじゃなくて宿題までトマトジュースまみれだ!」

律「ありゃー、ごっめんごめん!
  でもこれじゃもう宿題写せないな~」

澪「そういう問題じゃないだろっ!
  ていうかなんだよその態度は」

律「だからごめんってば。
  申し訳ないと思ってるよ、な、このとーり」

澪「嘘つけ、ぜったい本心じゃないだろ。
  もういいよ、私帰る」

律「あ、そう? じゃーな」

澪「じゃーね!」
ガチャバタン




律「…………」

澪を怒らせてしまったが、
そんなことは律にとってはどうでもいいことだった。
今の律にはさっき採取した陰毛を
心ゆくまで愛でることが最優先だったのだ。
むしろ邪魔者がいなくなってくれて
ラッキーだったくらいである。

律「はあはあ……澪の陰毛……」

律は澪の陰毛を取り出した。
取れたての瑞々しい張りがある陰毛だ。
窓から入る日光に照らされて、
つやつやと黒く光っている。

律「そうだよ、これだよ、私が求めてたのは……
  やっぱ陰毛は新鮮なものに限る」

律はその後、何時間も陰毛を愛で続けた。
もはや律は理屈も理由も抜きにして
ただ本能から陰毛を求めるようになっていた。

夏休みの間、律は澪の陰毛を片時も手放さなかった。
しかしその日採取した澪の陰毛も、
夏休みが終わって学校が始まる頃には
乾いてボロボロになってしまったのだ。




そして2学期が始まった。

律「おはよー、澪」

澪「……おはよう」

律「どうした、元気ないな」

澪「元気ないわけじゃないけど……
  まあいいや」

律「あ、そうだ。はい、服」

澪「うん」

律「私の服も返してくれよ」

澪「分かってるよ」

律「……もしかしてまだ怒ってんの?」

澪「……」つーん

律「澪ちゅわーん」

澪「ぷいっ」

律「もう、澪は頑固だな」

澪「お前が悪いんだろ……
  ていうか宿題はちゃんとやったのか」

律「んー……やってない」

澪「やってないのかよ」

律は夏休み中ずっと陰毛を眺めていたために
宿題などやる暇はなかったのだ。
いや、宿題をやろうとしたこともあった。
しかし意識が陰毛のほうに反れてしまい、
集中して宿題を続けることができなかったのだ。

澪「もう……宿題くらいちゃんとやれよな」

律「私は澪に写させてもらわないと宿題できないんだよ」

澪「開き直んな」

律「へっへー……」


こうして澪とふざけて会話をしている最中も、
律の意識は常に澪の股間に向いていた。
この制服のスカートの下に、パンツの下に、
陰毛がそれはもうびっしりと生えている……
考えてはいけないとわかっていながらも
頭の中はそのことで占められていた。

夏休み中に手に入れた澪の陰毛がひからびてから、
律は陰毛を愛でることも見ることもしていない。
そのために一種の禁断症状のような状態に陥っていたのだ。

律「…………」

澪「律?」

律「…………」

澪「おい、律」

律「…………」

澪「律っ!」

律「はっ……な、なんだ!?」

澪「なんだ、じゃないよ。
  どしたんだよ、ボーッとして」

律「あ、いやー、
  なんでもないなんでもない……っはは……」

澪「? ……
  具合悪いなら帰ったほうがいいぞ、
  どうせ今日は始業式だけだろうし」

律「だ、大丈夫だよ、元気だよ、
  元気だ元気だ、むっきっきー」

澪「むっきっきー?」

律「とにかく大丈夫だから、
  心配してくれなくても……うん」

澪「ああ、そう。
  それならいいんだけど」

紬「おはよう、久しぶりね」

澪「おームギ、おはよー」

律「…………」

久々に会った紬に挨拶をすることも忘れて
律はただ陰毛のことだけを考えていた。
どすうればもう一度澪や紬、そして唯の陰毛を
手にすることが出来るのか……
陰毛を見たい、触れたい、愛したい……
律の頭にあるのはそれだけだった。

始業式の最中も陰毛は頭を離れなかった。
体育館に整列した数百人の生徒、
その全員に陰毛が生えているかと思うと
頭がフットーしそうだった。
校長の長ったらしい話を聞きながら
陰毛が欲しい、陰毛が欲しいという
本能的な欲求をひたすらに抑えつけていた。

そして始業式が終わり、教室でのHRも済んで、
いつもより何時間も早い放課後を迎えたとき、
ついに律の我慢は爆発してしまったのだ。



     第一部 完



第2部予告!
ムギちゃんは多分出番なし!


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