紬の別荘で合宿中。

澪「はー、今日はいっぱい練習できたなー」

唯「汗かいちゃったよ」

紬「お風呂、入りましょうか」

澪「そうだな」


唯「りっちゃーん、お風呂だって」

律「くかー」

紬「寝てるわ」

澪「よっぽど疲れたんだな」

唯「おーいりっちゃーん起きてーおいー
  りっちゃんりっちゃんーお風呂だよー
  おーい起きてりっちゃーんりっちゃんりっちゃーん」

律「ふんごー」

紬「起きないわね」

澪「無理に起こすこともないよ。
  私たちだけで先に入ろう」

紬「そうね。じゃあいきましょう」

唯「わーい、露天風呂~ろってんぶっろー」

律「ぐおー」




律「ぐー」

律「すかー」

律「ふごー」

律「すぴー」

律「ふがー」

律「ぐかー」

律「う~ん……」

唯「あ、やっと起きた」

律「ん? あれ、寝てた?」

澪「爆睡してたよ」

唯「だから先にお風呂入っちゃった」

律「えー、何でだよ~。
  起こしてくれりゃ良かったのに」

紬「なんども起こそうとしたけど、
  全然起きなかったじゃない」

律「えー、起こされた記憶なんてないけど」

澪「そりゃそうだろ」

唯「りっちゃんも、早くお風呂入ってきたら?」

律「一人で入るのかよ~。
  それなら入らない方がましだよ」

澪「何いってんだ、汗臭いから早く入ってこい」

律「やだよー、じゃあ澪ちゃん一緒に入ろうよー」

澪「嫌だよ」

唯「まあまありっちゃん、
  一人で入るってことは、あの広い露天風呂を独占できるってことだよ。
  泳いだり潜ったり、思いのままだよ」

律「おお、そう言われればそうだな!」

澪「人んちのお風呂で遊ぶなよ」

律「よーし、じゃあ早速風呂に入ってくる!
  イエーイ!」だだだだっ

唯「あはは、りっちゃんって単細胞だよね」

澪「お前が言うか……」




風呂。

律「おー、やっぱこの露天風呂は広いな!」

律「クロールも平泳ぎもやり放題だな!
  あはははは!」ざんぶざんぶ

律「水泳50m自由形、
  田井中律選手、飛び込み台に立ちました!」

律「しなやかなフォルムで飛び込みます!
  豪快な水しぶきとともに今スタート!」ざっぱーん

律「世界記録の壁を破れるか、田井中選手!」ざっぷざっぷ

律「あはははは、あはははは」

律「飽きた」

律「やっぱ風呂はゆっくり入るべきだな」ちゃぷちゃぷ

律「うぇーい、いいお湯だ」


律「…………ん、これは……」

律は湯船にたゆたう一本の毛を見つけた。
太く短く縮れたそれは、まぎれもない陰毛だった。

律「……」

湯船に陰毛が浮いている。
それは別に珍しい光景ではない。
田井中家の風呂でも毎日のように見かけるし、
あまりにも当然のことで特に意識すらもしていなかった。

しかし今は自宅の時とは状況が違う。
この陰毛は家族のものではなく、
間違いなく友人のものなのだ。
そう考えると律の胸の内には
得体の知れない感情が沸き起こってきた。

そして律は、謎の好奇心に駆られて
その陰毛を手に取ったのだった。

律「これは……唯の、か?」

手の中で茶色に光る陰毛。
律はそれから目を離すことができなかった。


5分ほどその陰毛をじっくりと観察して、
律はあることに気がついた。

律「唯のがあるってことは……
  澪やムギのも探せば見つかるかも知れない」

それを思いついた次の瞬間には
もう律は陰毛捜索モードに入っていた。
律はなぜ自分が陰毛を欲するのか分かっていなかった。
ただ友人の陰毛を見たいという、
心の底に芽生えた欲求に従ってのみ動いていた。
律は目を皿のようにして、湯をかき分け、
ひたすらに陰毛を探し求めた。

律「どこだ……どこにある、澪の陰毛、ムギの陰毛……
  出てこいよ、早く……」

この陰毛探しは、2時間ほど経って
律が出てこないのを心配した唯たちが
風呂にやってくるまで続けられた。




唯「りっちゃーん」ガラガラ

律「うおっ、な、なんだよ」

澪「律、いつまで入ってんだ」

紬「のぼせて倒れてるんじゃないかと思ったわ」

律「は、ははは、そんなわけないだろー。
  一人水泳大会やってただけだよ、
  今バタフライの世界チャンピオンと泳いでたところだ」

唯「あはは、虚しい遊びだね」

澪「もう……遊んでないで早く上がれよ。
  私たち、早く寝たいんだからさ」

律「えー、もう寝るのかよ。
  最後の夜くらい遊びたおそうぜ」

澪「やだよ、明日の電車間に合わなくなるだろ。
  いいから早く上がれって」

律「へーい……」ざぶざぶ




寝室。
律が入ったときには、
唯たちは既に布団を敷いておやすみモードだった。

律「いえーい、待たせたな!
  りっちゃん登場だゼーット!」

澪「あー、やっと来たか……
  じゃあもう電気消すぞー」

紬「はーい」

律「何だよー、夜はまだまだこれからだろ!
  夜通し語り明かそうぜ!」

澪「やだよ、みんな眠いんだから。
  唯なんて目を開けるだけで必死だぞ」

唯「……早く電気消してえ」

律「ちぇー、分かったよ。
  じゃあ早く電気消しゃいいだろ」

澪「分かってるよ、律もおとなしく寝ろよ。
  じゃあおやすみ」パチッ

紬「おやすみなさーい」

律「…………」




唯「すー……」

澪「ぐーぐー」

紬「Zzz...」

律「…………」ごそごそ

暗闇に目が慣れた頃、
律は手の中に隠していたものを取り出した。
それは3本の陰毛だった。

律「これは唯の陰毛、こっちが澪の陰毛、そしてこれがムギの陰毛」

律は風呂における2時間の捜索の末に、
見事に3人分の陰毛を見つけ出していたのだ。
茶色と、黒と、金色の陰毛を見つめ、律は静かにため息をつく。

律「これが……澪たちのあそこに生えてるんだよな」

律「誰にも見せたことのないヒミツの場所に」

律「その毛を私が持ってるんだ」

律「みんなの恥ずかしい毛を」

律「私だけが、知ってるんだ」




――

――――

――――――

澪「起きろーっ、律ーっ!!」

律「はうあっ!?」

澪「まったく、いつまで寝てるんだよ……
  唯もムギも、もう朝ごはんの準備してるぞ」

律「え、も、もう朝……?」

澪「そうだよ朝だよ。
  早く布団片付けて、着替えて降りてこいよ。
  じゃあ台所で待ってるから」
ガチャバタン


律「え、あ、ああ……」

律「……」

律「…………」

律「はっ、陰毛!!」

律「…………良かった、ちゃんとあったよ……」




台所。

律「おっはろー」

唯「あー、ねぼすけりっちゃんだ」

澪「寝坊した罰として、
  後片付けは全部律にやってもらうからな」

紬「頑張ってね、りっちゃん」

律「えー、そりゃないよ。
  ところで朝食のメニューは?」

紬「ぶりの照り焼き、おひたし、酢の物、味噌汁、納豆、だし巻きよ」

律「旅館のようだ」

唯「頑張って作ったんだよー」

澪「律が寝てる間にな」

律「嫌味っぽいなあ……」


唯「じゃ、いただきまーす」

澪「いただきます」

紬「いただきまーす」

律「いただきま~っす」

唯「もぐもぐ……んー、おいしー」

紬「唯ちゃん、ほっぺにご飯ついてるわよ」

唯「えー、どこどこ?
  取って取って~」

紬「ここよ、ほら」

唯「えへへ、ありがとムギちゃん」

律「…………」

澪「どうした律、食べないのか」

律「えっいや、何でもないよ、ちゃんと食べるよ。
  あーおいしーなーあははのは」もぐもぐ

澪「……?」

律(こんなふうに子供みたいに無邪気に笑ってるけど……
  唯にもあの陰毛が生えてるんだよな……股間にびっしりと……
  表向きはまだまだ子供なのに……
  衣服に隠された肉体はもう毛がボーボーの大人なんだよな)

紬「澪ちゃん、お茶のおかわりいる?」

澪「うん、ちょうだい」

律(そうだよ、ムギだって……
  お上品なお嬢様って感じだけど……
  アソコには私たちと同じように
  汚らしい陰毛がもじゃもじゃ生えてるんだな)

澪「このだし巻き美味しいな」

唯「あ、それムギちゃんが作ったんだよ」

紬「上手く出来てたかしら?」

澪「うん、おいしいよ」

律(澪だってそうだ、
  誰にも内緒の陰毛を生やしてる。
  こいつら、私が陰毛を持ってるって知ったら
  どんな顔するだろう……?)

澪「律……箸が進んでないけど、大丈夫か?」

紬「あ、なにか嫌いなものとかあった?」

律「え!? あーいや、別にそんなんじゃないんだ、
  ただちょとまあ、うん、まだ眠気がとれてなくてさ、
  あははは、ははは、はははは!」

唯「りっちゃんったらホントにねぼすけさんだね」

澪「まーったく……
  寝るんなら帰りの電車で寝ろよ?」

律「わかってるよ、はは……」もぐもぐ

律(うーん……意識がこいつらの陰毛に集中して、
  ろくに食事もできない……)




――

――――

――――――

食事が終わったあと、
唯たち4人はさっさと荷物をまとめて別荘を出た。
そして駅まで歩き、地元行きの電車に乗った。

唯「くかー」

澪「すぴー」

紬「ぐー」

律「お前らが寝るんかい……まあいいや」

律はポケットから陰毛を取り出した。

律「みんなが知られたくない恥ずかしい毛を、
  私が独り占めしてるんだ……
  なんか変な気分だな。
  でも悪くない」

電車が地元の駅につくまで、
律はずっと陰毛を眺めていた。


家に帰ったあとも、
律は陰毛から目が離せなかった。
朝も昼も夜もずっと陰毛を愛でて過ごしたのだ。

律「ああ……唯の陰毛」

陰毛の何がそれほどまでに律の心を捉えたのか。
律はおそらく、友人たちの陰毛を持っているという背徳感、
優越感、罪悪感、その他もろもろ湧き上がる感情に
ほのかな快感を覚えていたのかも知れない。

律「ふう……澪の陰毛」

しかし律自身はそれを自覚していなかった。
ただ友人たちの陰毛に惹かれる。
友人たちの陰毛を見つめる。
それだけで良かった。

律「YES……ムギの陰毛」

そんな生活が一週間続いた。
その頃にはもう、
陰毛は干からびてぼろぼろになってしまっていた。


律「ああ……せっかくのみんなの陰毛が……」

律「こんなボロボロになっちゃったら
  魅力9割減だよ」

律「どうしよう……どうにかして、
  新しい陰毛を手に入れたいなぁ……」

律「3人全員分とは言わないから、
  せめて1本だけでも欲しいな……」

律「うーん」

律「…………」

律「そうだ、澪にメールを……
  『夏休みの宿題見せて~』っと、送信」

律「これで澪を私の家に呼び出して……」

澪からの返信は『自分でやれ』というものだった。
しかし律はしつこく頼めば澪が折れることをわかっていた。
結局、澪は断りきることができず、
律の家へと宿題を持っていくことになった。



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