澪「ふふっ、大丈夫…これは義足なんかじゃないぞ?
  拘束具みたいなものなんだ。
  中身は無数の針で構成されているが、それが色々なツボをくすぐる仕組みのようで…
  動けなくするには安全で、手っ取り早い道具なんだ。」

憂「あはは、びっくりしたぁ…驚かせないでくださいよ」

澪「第一、切断なんて怖くてできないし…
  愛しい愛しい唯が失血死してしまうこともあるからな」

憂「そうですよね… 私も怖くてできません」

一瞬恐怖で体が凍りついたが、僕の足は保障されているようだ。
しかし、まだ安心はできない…。




バタン

憂は僕の命と四肢が満足していることを確認すると、そのまま帰宅してしまった。
そういえば、結婚前の憂と現在の澪ちゃんって似ている…。
なんだろう?二人は僕にどうして欲しいんだろう?

そう考えていると、澪ちゃんが次に出す料理の説明を始める。

澪「ところで唯…
  この前"ハンバーグが食べたい"ってリクエストがあったから、レシピを考えてみたぞ?
  これも私の愛情をたっぷり詰め込む自信作なんだ。
  台所に来てくれ、材料の紹介をするから…材料は新鮮な方が美味しいだろ?」

澪ちゃんは僕の足から拘束具を外してくれた…ツボを突き違えたところは内出血している。
それよりも、自分の生の足を目視できたことが何よりも嬉しかった。
自分の両足で立とうにも、未だ麻痺していることから上手く立つことができない。

澪「だいじょうぶか?肩…貸そうか?」

唯「うん…でも、澪ちゃん大丈夫?」

澪「よいしょ… うん… だいじょう ぶっ!」

ゴスンッ!

唯「ぐえっ!!」

すってんころりんという言葉が似合う見事な転びっぷり、当然僕も巻き添えだ。


唯「…」

澪「…」

僕たちは転び大の字になって横になっている。
少しの沈黙の後、天井へ向けていた視線を澪ちゃんへ向け、澪ちゃんと視線を交わした。

澪「くすっ… ふふふっ」

唯「あはは…」

こうやって二人で笑っていられることが普通なんだ、これ以上もこれ以下も僕は望んでいない。
でも、このままでは現状を打破することができない…。

僕はこのまま一方的な愛を受け続けるしかないのだろうか??
りっちゃんに相談したいけど、ここは自分でなんとかしなくちゃいけないと思った…。
曲がりなりにも、りっちゃんに認められた夫婦なのだから。


なんとか台所にたどり着いた…まな板の上にはハンバーグの種がボールに入っている。
澪ちゃんは包丁を取り出し、切っ先を僕に向けた。

材料は僕自身なのだろうか?

そんな懸念を他所に、澪ちゃんは包丁を自分の左手首に当て…
ツッ…とヴァイオリンを演奏するかのように軽く撫でた。

透き通るような白い肌にできる血液の源泉はゆっくりと赤い糸を作る。
それはキリストの血とも呼ばれているブドウ酒のようで、彼女の肌の色と見事に調和している。
そして赤い糸は、そのままボールへと落ちていく。

赤い糸の源泉より数センチ先を見ると…赤紫色をした生々しい切り傷が数箇所できている。
とても痛々しく僕の目に映る。

唯「こんなの…おかしい…」

澪「なんで…?」

唯「澪ちゃんは、痛くないの…!?」

澪「痛いよ…?
  でも、唯の為だったら我慢できる程度の痛さ…こんなの平気だよ…」

唯「でも、僕は…澪ちゃんが傷ついてまでの愛情なんて欲しくない!」

僕はもう素直な気持ちをそのまま伝えることにした。
これで通じないようだったら、刺されても文句は言えない…澪ちゃんに刺されるなら本望だ。
僕が居なくなることで、傷つかず心配することが無くなるなら、それでいいと思った。

澪「私は…私はもっと唯の愛情が欲しいの!!
  なんで解ってくれないの?私の髪の毛、好きなんでしょう?私の体、好きなんでしょう?
  それなのに…なんで… なんで… 唯は私に愛情をくれないの??」

唯「僕だって… … …」

言葉が続かない、澪ちゃんのことは好きだけれども…
僕は今まで澪ちゃんの望む愛情というものを贈ったことがあるだろうか?
ただ愛情を贈った"つもり"でいたのかもしれない。

何度も交わした視線、重ねた唇、確かめ合った体温、日常の言葉…
澪ちゃんが本当に望んでいたものを、僕はずっと知らなかった。

だとすると、彼女の望む愛情っていうのは…もしかしてコレのことなのだろうか?


僕は食器棚から2つ又のフォークを取り出した…サイズは申し分ない。
澪ちゃんは何をしようとしたのか、とっさに理解し身をかがめ目を瞑った。

唯「澪ちゃん…僕が今からすること…最初から最後まで見ていて」


右手でフォークを握り、先端を親指の肉と爪の間へ滑り込ませた。
そして、フォークの先端を爪にひっかけ…てこの原理で持ち上げ、肉から爪を剥がし始めた。
耳から音は聞こえないが、メリメリといった擬音が脳内で再生される。


痛さもハンパじゃない…正直、誰かにあっさりとやって貰いたいくらいだ。
でも、澪ちゃんは心と体を痛めて僕に愛情を注いでくれたのだから、それに応えないといけない。


そんな義務感を背負い、少しずつ少しずつ爪を剥がしていく。


全身は脂汗まみれで、インナーが体に貼り付いて気持ちが悪い。


いい加減、僕は腹をくくり…握りこぶしでフォークの柄を叩いた。
負荷のがかかっていた親指は楽になり、コツリと落ちる2つの音、どうやら…成功したみたいだ。


さすがに精神の限界、意識が遠のいていく…





澪「…っ! 唯っ!!」

澪ちゃんが泣いている、このままだと…りっちゃんに怒られちゃうな。
とにかく、何か言わないと…

唯「みおちゃん… やっほぉ…ちゃんと見てた?」

澪「バカっ!私のために、あそこまでする必要なんてないだろ!?
  私のことを愛しているんだったら、そんな傷つくような真似するな…苦痛の表情をするな!」

澪ちゃんの涙がぱたぱたと僕の顔を濡らす。

唯「澪ちゃん… その気持ちが僕の気持ちなんだよ?
  一方的な愛をあげるのが大変な気持ちは解ったけど、貰うほうは…どんな気持ちだった?」

澪「こんなの… こんなのおかしいよ… グスッ…唯のバカッ!!
  こんなことやらなくても、言ってくれれば…私も理解できたのかもしれないのに グスッ…」

唯「あはは、ごめんね…バカだから…上手く言葉にできないや。」

澪ちゃんに愛情が伝わってよかった…今はそれだけしか考えられない。
これであの異常な日々が来ることはないだろうな…。





梓「平沢先輩、おはようございますっ!
  1週間も休むなんて、何事かと思いましたよ…」

唯「あれ… 1日だけしか休んでないと思ったんだけど…」

梓「何ねぼけているんですか?
  平沢先輩の机、書類で山ができていますよ?」

唯「うわぁ…ホントだ…あずにゃん、手伝って」

梓「嫌です。」



澪ちゃんと愛情の確認をしあった翌日、僕は1週間も休んでいたことが解った。
あの毒リンゴを味わったようなキス、その日から昨日まで眠らされていたようだ。
正直その期間何があったのか全く知らない、澪ちゃんを問い詰めても教えてくれなかった。
やたらと楽しみにしていたみたいだけど…なんだろう?

そういえば、りっちゃんから"手紙"についてのメールが来ていた。
空メール送ってって書いてあったに、送らなかったことに怒っているみたい。

律「"澪から離れろ 危険"って書いたんだけど、澪のメール見る限り無事解決できたみたいだな…
  唯がうちに泊まった翌日、澪から"殺す"って文字で埋め尽くされたメールを1000件貰ったから、
  さすがに驚いたよ。
  さて…と、私もいい加減、いい人見つけるとすっかなー!?」



澪ちゃんはというと…僕の爪をお守りにするそうで、自分の髪の毛を縫いこんだお守り袋をつくっている。
僕としてはなんとも微妙な気持ちだけど、澪ちゃんが満足するならそれでいいかな。

ちなみに、あの1件以降日課1つ追加された。

澪「なぁ… わたしの、舐めてくれるか?」

唯「そんなの当たり前だよ、だって澪ちゃんが望んでいるんだもん。
  もちろん、僕のも舐めてくれるよね?」

澪「あ・・・ うん、唯が望んでいるなら…」

ぷっ…つ…

ちゅぷ… ぷっちゅ…

自分の指に針を刺し、互いの指を、血液を舐めあう…
それが互いの愛情を確認しあう方法となった。
周りから見れば異常だろうけど、僕達にとってはこれが普通なんだ。

ぷちゅっ…
ふと澪ちゃんが僕の指から口を外す…すると、指と唇を結ぶ淡い光を帯びた繊維が生じた。
そして澪ちゃんは唾液でぺっとりとした唇で、嬉しそうに話しだした。

澪「そうそう、来月…小さいけど大きな発表があるかもしれないんだ」

唯「来月??」

僕には全く心当たりがない、なんだろう??





翌月のある日のことだった、僕は澪ちゃんに初めてのデート場所である公園に呼び出された。
家であえて話さず、公園で話すなんて…なんだろう?
噴水を眺めていると、遠くから見える白いワンピースを来た黒髪ロングの女性。
いつもは走って来るのに、今日はどこかよそよそしい。

澪「唯…待ったか?」

唯「ううん」

澪「あのな…聞いてくれ、真面目な話なんだ…」

ツリ目で上目遣いをするが、以前のような恐怖感は感じられない。
むしろ、安心感を覚える。

澪「赤ちゃん、できたんだ…」

唯「!?」

僕は耳を疑った、なぜなら…僕と澪ちゃんは、結婚してからずっと避妊して性行為を営んできたからだ。
誰の子供だろう…重く暗い不安に襲われる。
澪ちゃんはキョトンとした顔で僕を見つめている、それもそのはずだ…
自分の子かどうかもわからないというのに…素直に喜べるはずがない。


澪「ふふっ…自分の子かどうか解らないって顔してるな」

澪ちゃんは白いワンピースの上からお腹をやさしくさすりながら、
僕に空白の1週間について説明してくれた。

澪「唯にとって空白の1週間があっただろ?
  実はその1週間、私にとっては危険日だったんだ…一番赤ちゃんが出来やすい期間。
  唯は解らなかっただろうけど、1日4・5回射精していたんだぞ?
  私の膣で、何回も…何回も…。今思うと、あれも一方的な愛情だったんだな…。」

唯「だったら、もっと普通のやり方でよかったんじゃ…」

澪「だって…」

彼女は頬を赤らめ俯き、何かモゴモゴ言い始めた。

澪「唯の精液いっぱい出して!?膣に出して欲しいのっ!唯と私の赤ちゃん産みたいのぉっ!
  …って私は言わなくちゃいけないんだろ? それを考えただけで…
  恥ずかしい…」

僕は一瞬呆然としたけれど、いつも通りの澪ちゃんの反応、そして…
これから生まれてくる子供が自分の子であることを知った嬉しさで、澪ちゃんを強く抱きしめた。

そう、僕と澪ちゃんの関係はここから始まった。
そして今、また新しい関係がここから始まる、それも3人で…。




【おわり】
★駄文で途中で切れるつもりが、ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
 相変わらず後味が悪いオチですいません、ではまたROMに戻ります…いや、寝ます。

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/13(日) 07:49:12.98 ID:m8j+RehH0
いつもオチが弱いと定評があるくらいに微妙です。
軽く1杯飲んでから寝るとします…
保守&支援していただいた方々、本当にありがとうございました。

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/13(日) 07:52:07.91 ID:nqr1G5MAP
表現とか描写がすごいんですが
なにかを参考になさっているのですか?

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/13(日) 07:56:40.39 ID:m8j+RehH0
286
性描写は実体験&官能小説辞典というものを使ってます。
痛々しい部分については、コレがココに刺さったらどう裂傷するか?
とか妄想しながら書いてます。

オススメのエロゲあったら教えて欲しいです。