ガバッ

唯「うう…死んでないよぅ…ちょっとうとうとしていただけだよ」

律「まったく、うとうとどころか熟睡モードだったじゃないか…よだれ溜まり、拭いとけよ。
  ところで、飲み会のこと、澪には伝えてくれた??」

唯「もちろんだよ、あの頃みたいに3人で楽しく飲もう!」

そういえば、この前あずにゃんを運んだ時のりっちゃん…本気だったのかな?
少し気まずいけど、あれはきっと酔っていたからだよね、うん!

律「場所は、いつもの焼き鳥屋でいいよな?」

唯「そうだね、学生時代もよくお世話になったところだし、色々懐かしい話がでてくるかもしれないね」

律「そうだなー、あははは」

唯「あはははは」

律「ところで、今日の会議資料はもちろんできているんだろうな?
  私がここにいるのは、打ち合わせに参加するからなんだぞ?」

唯「ごめんなさい」




そして、なんだかんだで飲み会の日がやってきた。
多忙な時期だと、平日でも時間があっという間に過ぎていくのがわかる。
楽しい時間なんて本当にあっという間だ、1時間が5分足らずに思えてくる。

澪「…おーい、生きてるかー?」

律「うー…ギボチワルイ…」

澪「まったく、飲みすぎだって…
  唯、律を家まで送ってもらっていい?私はとりあえず会計済ませて、先に帰ってお風呂沸かしておくから。」

唯「えー…重いし、めんどくさいよぉ…よっこいしょ っと」

澪「なんだかんだ言っても、結局運んでくれるんだなw
  それじゃ、よろしく頼むぞ」

律「う"ー、澪…またなー」

澪「あはは、途中で吐いたりするなよ」

うーん、この顔色でこの状況…途中で吐く確率は100%といったところだね。
途中のコンビニで水でも買って行こう。



紬「ううっ…」

店主「おい、姉ちゃん…何があったんだ?」

紬「ビアンのどこが悪いって言うのよぉ!同性の結婚も認めなさいよぉっ!
  ただし女性限定で!女性にも権利をっ!
  …ちょっと、聞いてるのっ??」

店主「えー、へいへい…」
   (また変な客か…)




嫌な予感は的中した…僕は今、りっちゃんの背中をさすっている。
当の本人はというと電柱を目標に、口から異物を放出している。
僕はコンビニの袋からペットボトルの水を取り出し、りっちゃんに渡した。

唯「ほら、りっちゃん…お水」

律「げぽっ… 唯… あでぃがと…」

ガラガラガラッ! ペッ!

りっちゃんは口に水を含み、豪快にうがいをした。
口の中がサッパリしたのか、スッと立ち上がり…ペットボトルに残った水を…


僕にかけ始めた。

律「ぎゃはは、唯びっしょりだ~!」

唯「む… このっ!」

シャカシャカシャカ… ブッシャーーーっ!

僕は手持ちのコーラで応戦した。
学生の頃は、ずっとこうやってバカやっていたなぁ…。




唯「ほら、家についたよ」

律「うん、ありがと…ていうか・・・なんでビショ濡れ?
  私も唯もコーラまみれだし…」

りっちゃんのせいだよ…と言いたかったけど、ここは抑えるべきところ。
学生時代の楽かった頃を思い出させてくれたお礼もあるし。

律「まぁ、とりあえずこのまま帰らせると澪に怒られそうだ…とりあえず、今晩は泊まってってよ。
  澪には私から連絡しておくから。」

唯「もー、怒られるのは僕なんだから、簡便してよぉ…」

律「フォローしているのは私じゃん?」

唯「う…わかったよぉ…りっちゃん、おねがい。
  あと、着替えも持ってくるよう連絡しておいてくれると嬉しいかな?」

律「あいあい、了解了解…
  とりあえず、お風呂先入っててよ…といってもウチはシャワーしか使わないけどw
  それと、ちょっとコンビニ行ってくるわ、どうせこの後少し飲むんだろ?」

僕はりっちゃんに従い、シャワーを借りることにした。
湯の線がぷつぷつと肌を刺し、線は玉となり肌を伝い足下へ落ちる。

律「おーい、下着とシャツ買ってきたぞー。
  風呂場の外に出しておくからー。」

唯「りっちゃん、ありがとー!

律「代金はキッチリいただきます♪
  さて…あとはこのゴキブリが沸きそうな部屋を片付けるとするか。」

パリピリ…

シャワーを浴び終え、下着とシャツのパッケージを開けると新品の香り…この匂い、結構好きなんだよね。
着衣を終え部屋に戻り、りっちゃんにシャワーを終えたことを伝えた。

唯「りっちゃん…何しているの?」

律「いや、片付け途中に古い雑誌見つけちゃってさ…ついつい…
  あはは、全く片付いてないやw」

唯「ところで、澪ちゃんには連絡してくれた?」

そう、それだけが気がかり…
澪ちゃんは心配症だから、あずにゃんの時みたいにずっと待っててくれているかもしれない。

律「ああ、さすがに連絡入れたよ…だ・ん・な様の為を思って ね。」

唯「そっか、ありがとー」


風呂場から雨に似た音が聞こえる、りっちゃんもシャワーを浴びはじめたのだろう。
ここは風呂場を覗くのがセオリーなのだろうが、生憎ながら僕には澪ちゃんがいる。
しかもその親友の風呂を覗くなんてことできるはずがない。

ないんだけどー…

僕の足は言うことを聞いてくれないようだ、そう…仕方が無い…仕方が無いんだ。
くっ…足が疼く、頼む…言うことを聞いてくれぇぇぇぇ…と言ってみる。
そんなわけで、おじゃましま~す というような流れになるよう風呂場に
向かおうとしたそのとき……


バタン

律「おーい、唯!バスタオル忘れたから持ってきてくれー!
  あと、覗いたら…澪に言いつけてやる!」

どうやら、行動は見抜かれていたようだ…
僕は肩を落としバスタオルを片手に、とぼとぼと風呂場へ向かった。


唯「りっちゃん!?」

バサッ

僕は衝撃的な光景を前にア然とし、バスタオルを落とした。

律「…」

僕から目をそらし、頬を赤らめ全裸で立っている女性の姿が在った。
生まれたての子供のようにぷっくりと綺麗な丘に茂みはない、いわばパイパンというやつだ。
普通は剃り跡が残るものだが、全く残っていない…つるつるで玉のよう。
胸は澪ちゃんのように乳房とよべるほど大きくはなく、
控えめにぷっくりとした胸の膨らみ…そう、まさに「おっぱい」という単語が似合う。
膨らみの先端には桃色のトッピング、ぺろりと舐めると甘味を楽しめそうだ。

僕は澪ちゃんとまた違う美を、りっちゃんから感じ取った。

ゴクン…

固唾を飲み、頭の中で葛藤が始まる。
本能が勝つか、理性が勝つかというところだ。
据え膳食わぬは男の恥とよく言ったものだが、ここで本能を勝たせてしまってはいけない。
とにかく目の前の状況に耐えることにした。

律「以前、一緒に寝てみないか? って誘ったこと…あれ、本気だったんだぞ。
  今こうしているのも、覚悟があってのことだ。
  澪には黙っているから、今日だけは私を見て欲しい…そして、私の全てを知って…」

りっちゃんは両手を広げ、じりじりと僕に寄ってくる。
その手は卑怯だよ…




僕は負けじとバスタオルを拾い、りっちゃんの肩にふわっと被せた。

律「…いくじなし…」

唯「ごめんね…」

柄にも無く、りっちゃんは泣き顔を浮かべた。
僕はそっと彼女の前髪を上げ、チャームポイントであるおでこに軽くキスをした。
彼女の覚悟を踏みにじったお詫びのつもりだ。

律「うぇっ… ぐすっ… 唯のバカヤロー…
  そんなに優しくされたら、澪から奪い取りたくなるだろ…」

唯「でも、僕の取り得ってコレしかないから…
  バカで、奥手で、鈍くて…自分で優しさが取り得っていうのもなんだけどね。」

律「グスッ…
  着替えるから、先寝てろよ…私をこれ以上惨めにさせないでくれ」

唯「ごめんね… そして、おやすみ」

僕は寝室に行くと、風呂場の方から泣き叫ぶ声が聞こえた。
それはとても重く、苦しい叫び。

そのとき、僕は皮肉にもあのことを思い出してしまった。
3人で飲まなくなったのは、僕と澪ちゃんが初めて交わったあの日からだ…
りっちゃんの気持ちに気づけなくてゴメンね。 本当に…ゴメン。




チュンチュン…

げしっ!

唯「痛っ!!」

律「お~い、いつまで寝ているんだ?」

そうだった、昨晩はりっちゃんの家に泊まったんだった。

澪「ったく、それはこっちのセリフだぞ…10時に来たっていうのに、まだ寝ているなんて。
  学生時代いつもこんな感じだったな、3人で雑魚寝して私が早起きして…」

律「ははは、そんなこともあったっけな~!
  ささ、唯はとっとと着替えて澪と出かけてきな、今日こそは掃除しないとなーっ!」

りっちゃんはいつもより明るかった、いや…空元気だ。
申し訳ないことをしたけど、りっちゃんも昨晩の一件でケリがついたのかもしれない。


澪「唯が世話になったな、今度埋め合わせするよ」

律「いいっていいって!ビール1ケースでいいなんて言えないよ」

ゴスンッ!

澪「調子に乗るなっ!」

律「いったぁ…」

そういえば、こんな光景を見るのも久しぶりだな…。


律「それじゃ、またなー」

澪「あぁ、また3人で飲もうなー」

バタン

律「あーあ、やっぱり振られちゃったか…まぁ、コレでスッキリしたかな?
  でも、唯はああじゃなくちゃ…な。
  さーって、超!快晴だし!部屋片付けるぞーっ、今度はうちで飲み会だー!」


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