二日酔いと戦いながら、書いてみる。
ボクは平沢 唯。
現在、大学時代に知り合った女性「秋山 澪(現:平沢 澪)」と結婚し一緒に住んでいる。
ボクには憂という1つ下の妹がいるのだが、なかなか結婚を許してくれなくて大変だった。
「2年程つきあっている女性がいて、今度結婚することにしたんだ…」
…と伝えたとたん、憂は突然台所から包丁を持ち出してきた。
ボクは数箇所切られて流血、それで憂がシラフに戻ってくれてよかった。
本当は良い子なんだ…ただ、人よりもちょっと私に愛情を持ちすぎているだけ。
その後、しばらく口を聞いてくれなかったり、
料理にバッタ(イナゴじゃない)を入れられたりだの多々嫌がらせされたけど、
澪ちゃんを紹介した途端、それはピタリと止んだ。
彼女は女性からも告白を何度か受けた経歴を持つほどの「べっぴん!」さんなんだから。
今思うとあの時の憂、なんだか ぽーっ…としてたっけ。
澪「唯、お弁当!今日も頑張って作ったんだぞ!」フンッ
唯「澪ちゃん、いつもありがとう!」
澪「なぁ…
私たちは夫婦なんだから、いいかげん"ちゃん付け"はやめてくれよ…」
唯「うん、ごめんね澪ちゃん。 あっ…
う~ん、でもやっぱり澪ちゃんは澪ちゃんだよ!」
澪「朝から…恥ずかしいっ」
唯「それじゃ、行ってきま~す」バタン
うとうと…
うとうと… ハッ!
律「お~い、昼ごはん前だっていうのに寝るなよ、だ・ん・な・様♪」
唯「は…はれっ?なんでりっちゃんがここにいるの?」
この男っぽい性格の女性は"田井中 律"さん、僕は"りっちゃん"って呼んでる。
澪ちゃんの幼馴染であり、ガードマンとも言える存在。
彼女のガードをくぐりぬけるのはとても大変だったけれども、今となっては良いお友達。
たまに3人で遊びに行ったりもしている。
律「営業で近くの会社に寄ったついでに、唯のマヌケ面を見にきたんだ。
しっかしまぁ…澪とは仲良くやっているか?」
唯「うん、毎日らぶらぶだよ!」
律「そりゃよかった、私の幼馴染だからな…何かあったらタダじゃおかないぞー!」
唯「はは…りっちゃん怖いよ」
結婚した今でも澪ちゃんのことを心配してくれる、とても優しい人です。
ヴヴヴヴ… ヴヴヴヴ…
唯「あっ、噂をすれば澪ちゃんからメールだ」
律「おーおー、昼間っから熱いねぇ♪」
ピッ
澪『今晩、何食べたい?』
メルメル
唯「 『とんかつ!』 …と、送信!」
ヴヴヴヴ… ヴヴヴヴ…
ピッ
澪『え?それだけ?』
唯「あちゃー・・・・またやっちゃった、メール送りなおさないと」
律「どうしたんだ?食べたい物を間違えたか…
まさか、"澪を食べたい"なんて送るんじゃないだろーな にひひ♪」
唯「ちがっ!ちがうよ…
あ、なんだかんだでお昼になるよ?りっちゃん会社戻らないと…」
律「あ、やっば… んじゃ唯、またこんどな!」
楽しい時間っていうのは、あっという間に過ぎちゃうんだなぁ。
昼休みにメール返しておかなくちゃ…えーと、メール件数は「20件」、珍しく少ないな。
内容は「まだ?」とか「何しているの?」とか、他愛も無いものばかりだけど、
僕のことを想ってくれてのことなんだろうな。
さて、晩ごはんのメール返そうっと。
カチカチカチカチ…
唯『とんかつ!…と、ホカホカで白いごはん、
あとは大根とにんじんのあったか~い味噌汁かな?
たまには澪ちゃんが漬けた漬物も食べてみたい。
キャベツの浅漬け食べたいよー
これからお昼ご飯!今日のお弁当も美味しそう♪
いつもありがと、愛してる澪ちゃん v』
あとは写メ添付…と。
カシャッ
…
唯「ふぃぃぃ… 疲れたぁ…」
コツリ…と、私の目の前に置かれた飴玉。
いつものあの子だ。
梓「平沢先輩、お疲れ様ですっ!
うわぁ…この写真の方、奥さんですか…?とてもキレイな方ですね」
唯「おー、あずにゃんおつかれぇー…ふふっ、自慢の妻なんだー。
あずにゃんも惚れちゃった?」
梓「わっばっ… そんなことあるわけないじゃないですか!
人妻ですし、第一女同士なんですよ!」
唯「あはは、あずにゃんて正直だねー…真っ赤だよ」
彼女は自分の顔を確認するかのように、ぺちぺちと手を頬に当てる。
僕がニヤニヤしていることに気づいた彼女は、ハッと我に返り怒り顔になった。
梓「そんなこと言う人には、お菓子あげません!」
唯「あずにゃん、ごめんよー・・・
っと、遊んでいる場合じゃなかった、今日は20時に帰るって約束してたんだった。
それじゃ、あずにゃん お先ね!」
梓「お疲れ様でーす」
コロコロと飴玉を頬張り、電車に揺られながらの帰り道。
19時40分…これじゃ20時過ぎちゃうな、澪ちゃんに連絡しておかないと。
カチカチカチ
唯『澪ちゃんごめん、会社出るの遅くなっちゃった。
うちに着くの10分くらい遅れるかも(汗)』
ヴヴヴヴ… ヴヴヴヴ…
メールを送ったその数秒後、澪ちゃんからの返信はあった。
内容は記号含めた"ホント?"とたった4文字のメール。
予想通りの返信に、僕は周囲の目を気にすることなく路線図を撮影して送り、
澪ちゃんの返信内容を確認しホッと胸をなでおろした。
澪『うん、了解~♪ 寄り道せずに帰るんだぞ(ニコニコ』
唯「ふわ… ねむ…」
眠気覚ましもかねて、あずにゃんからもらった飴玉をもう1つ頬張った。
黒飴もなかなかイけるもんだね。
唯「やっほ~、ただいまー」
澪「おかえり、唯… ん?
外で何か食べてきた?少し甘い匂いがする…」
あずにゃんから貰った飴の香りを嗅ぎつけ、ツンとしたツリ目で僕を睨み付ける。
上目遣いで見られるのが、これほど怖いと思ったことはない。
唯「あっ… そうだ、今日りっちゃんが来てね飴もらったんだー」
澪「ホント?」
唯「うん、澪ちゃんにウソなんてつけないよ。
なんなら、りっちゃんに電話で確認してみてもいいよ??
…って、もうかけてる…。」
澪「うん、うん… あ、そうだったんだー。
律、忙しいところゴメンな、それじゃまた今度3人で遊びに行こう!」
ガチャ
澪「唯、ごめん…疑っちゃって。 グスッ… ホントにごめん…」
唯「ううん、大丈夫だよ…よしよし。
晩御飯冷めちゃわないうちに、早く食べよう!
ずっと楽しみにしていたんだよね」
(りっちゃん、話あわせてくれたんだ…助かったぁ…)
ザザーッ・・・ カチャカチャ・・・
食事を済ませ僕は食器洗いを始めた。
いつも家事を担ってもらっているんだから、これくらいはしないとね。
少し主婦気分になって、"うんたん♪うんたん♪"と鼻歌を歌っていたら嫌な視線を感じた。
冷たく、嫌な汗が背筋を伝っているのがわかる。
澪「ねぇ…この子だぁれ?」
明らかにいつもよりも低いトーンで問いかけられる…怖くて振り向けない。
振り向いたら何かが終わる気がする。
澪「ふ~ん、"まなべ のどか"って読むのかな?
知的溢れる上品な名前な人みたいだけど…誰?
"今度一緒に飲みに行こうよ、美味しい店見つけたよ!"って書いてあるんだけど…どういうこと?」
ザーッ… ザザーッ…
ただ水道から流れ出る水の音だけが響く台所。
こういう時の澪ちゃんの表情は怖い…というよりも、何をされるかわからない。
ゆっくりゆっくり慎重に振り向くと、澪は僕の携帯電話を示しながらゆらりとたたずんでいた。
澪「答えられないの?」
雰囲気が尋常じゃない、澪ちゃんの周りの空気はどす黒く淀み、歪んでいるように見える。
僕は心を落ち着け、口を開いた。
唯「澪ちゃん…それ、"まなべ かず"君のことだよ。
僕たちの結婚式にも来てくれたじゃない?」
真実を知った澪ちゃんは、瞳に光を宿し顔を紅潮させた。
澪「あ…わたしったら、またやっちゃった」
唯「あはは、澪ちゃんはおっちょこちょいだなぁ」
携帯電話のチェックは澪ちゃんの日課なんだけど、携帯電話のチェックなんかして楽しいのかな?
うーん、わからない。
唯「それじゃ、洗い物終わったらお風呂入るから、澪ちゃん先に入って」
澪「う… その、今日は…」
唯「どうしたの?」
澪「えと…久しぶりに一緒に入らないか?」
唯(恥ずかしがっている澪ちゃん…やっぱりかわいい)
…
ざっぱーん…
風呂は命の洗濯とか誰かが言っていたけど、ホントにそうなんだなぁ。
ガラッ
澪ちゃんが入ってきた…
モデルさんのようにスラッと長く細い脚、ガラス細工を思わせる。
アンダーヘアーは手入れしており、キチンと整っている。
そして、スリムな肢体に実った乳房は張りがあり、湯気でしっとりとしている。
梅雨の時期に取れる桃という表現がピッタリだ。
澪「な…なんだよ、そんなじっくり見て…恥ずかしい」
唯「えー、だって澪ちゃんが一緒に入ろうって言ってきたんじゃない」
両腕で体の部位を隠す澪の姿は「ヴィーナスの誕生」を髣髴とさせた。
…
僕たちは風呂から上がり、床についた。
ふかふかのベッドに疲労を預けるに連れ、徐々にまぶたが閉じていく。
澪「ねぇ、唯… 寝る前にいつものしてほしいな」
唯「あ、そうだったね」
僕の1日は澪ちゃんが寝付くまで「愛している」とささやくことで終わる…
彼女が寝付く頃には「ている愛し」となったりもして…ふぁ、ねむ。
澪ちゃんも寝付いたみたいだし、僕も寝るとしよう…
…
最終更新:2011年06月04日 21:09