それは中野梓が入部して二日目のことだった。

律「中野? 聞こえなかったのか?」

梓「な、なんで私がそんなことしなくちゃいけなんですか?」

律「おまえ後輩だろ? 後輩は先輩の命令には従うべきだ」

梓「そんなのめちゃくちゃです!! 運動部じゃないんですから…。
  それに先輩達練習するつもりないじゃないですか。
  何しに音楽室に来てるんですか? 死んだ方がいいと思います」


律「…」

唯「…」

紬「…」


梓「だいたい偉そうな顔して音楽室占拠しちゃって。
  目標は武道館wwとかそこの黒板に書いてありますけど
  練習はちゃんとしてるんですか?」


律「…」

唯「…」

紬「…」


紬は梓から見えない角度で拳を握り締めていた。
それでもアクションは起こすつもりはなく、黙って
梓の演説に耳を傾けていた。


梓「何ていうか、負け組みですよ先輩達は。停滞してるんです。
  努力を放棄してお茶やお菓子に逃げる。たしかに最近は努力や
  根性は流行しませんからね。そうなるのも分かります。でも…」


紬「…」


梓「私には…先輩達が将来ニートになりそうで見てられません。
  特に唯先輩がです。その年で妹に衣食住の面倒見てもらってるって
  異常です。何により気持ち悪い」


唯「てめえ…」


梓「ブサイクな顔で睨まないでください。で、律先輩と唯先輩がこの怠惰で
  堕落した部活を作り上げた張本人達であるのはすでに周知の事実です。
  あなたたちは知的障害ですからね。しかし、諸悪の根源は…」


紬「梓ちゃん? それ以上は…」


梓「マユ…紬先輩です。学校に無断で高級菓子を持ち込み、部員に無償で与える。
  そう。それはまさに、動物をエサ付けするかのように!! そして出来上がったのが
  このやる気のかけらもない部活ですよ!!」


梓の拳が机に叩きつけられた。



いつもの席に着席している律ら一同は、それにひるむことなく眉を
釣り上げていた。皆生意気な後輩に対し、いかなる制裁を加えるべきか
考えていたのだ。やがて怒りで血管が浮かび上がってしまった紬が
静かに立ち上がろうとするが、対面にいる唯に静止させられる。


唯「中野さん? ずいぶん言いたい放題言ってくれたね。
  さすがの私もキレちゃったんだけど。殺される前に
  何か言い残したいこととかある?」

梓「唯先輩は憂より胸がありません」

唯「…」

梓「…」

唯「死のうか。中野さん」

梓「はぁ? 何その顔? 調子乗るなよカス」

先攻は中野梓。短い助走をつけて唯に飛び掛った。
二人は転倒し、激しくも見合いながら互いの髪の毛を引っ張り合う。
キャッツファイトである。対格差があるにもかかわらず、
劣勢になった唯がカナギリ声をあげていた。



紬「紅茶のおかわりよ」

澪「いつもありがとなムギ。この香りは…」

紬「ダージリンよ。もう飲み飽きたかしら?」

澪「いや。そんなことはないよ。今はそれより、あの二人の
  女の子達の決闘を温かく見守っていたい」

紬「そうね。女の私から見ても惚れ惚れするくらいの戦いっぷりだわ。
  唯ちゃんの乱れた髪の毛と胸元が刺激的ね」


唯は怒りで我を忘れていた。必死になって腕を振り上げ、中野の顔面に
叩き込もうとするが当たらない。逆に梓から強力なカウンターを喰らい、
次第に思考能力を奪われていった。

これを勝機と見た梓は、マウントポジションで唯の首を絞め始めた。
唯は梓を親の敵のように睨みつつ罵詈雑言を並べ、身の不幸を呪っていたそのとき…



和「何してるのクズたち?」



紬「見てのとおり喧嘩よ。入部二日目にして謀反した後輩にたいして
  制裁を加えていいるところなの」

和「なるほど。さすがは我が高のガン、けいおん部ね。程度が
  低いとは思っていたけどここまで最低だとは思わなかったわ」

紬「…? 何を言ってるのか理解できないけど、少なくとも最低なのは
  唯ちゃんと梓ちゃんでしょ。キチガイとキチガイが互いを潰しあう。実に滑稽ね」

和「唯が気絶したわ」

紬「ふ…。眠っている顔もブサイクね。後の処理はこちらに任せて頂戴。
  あんたはうざいから生徒会の仕事に戻りなさいよ。
  あんたの顔見てると胸焼けがしてくるわ」

和「そういうわけにもいかないのよクズ。この部、もう廃部だから」

紬「…?」

和「意味が分からないって顔してるわね。私は生徒会役員よ。現生徒会長は
  澪の盗撮写真で買収済み。すでに私が生徒会を掌握しているといっても
  過言ではない」


紬「…待って」

和「なに?」

紬「けいおん部は私のオアシスよ。潰されるのは困るわ」

和「だから?」

紬「取引しましょう」

紬は和に着席するよう進めた。
和は紅茶とミルクレープの誘惑に負けてしぶしぶ座る。
二人はテーブルを挟んで睨み合う形となった。

紬「冷静に話し合いましょう? あなたは聡明な女の子よ。
  交渉の余地はあると思う」

和「そんなバナナ」

紬「…」

和「ふん…。しらけちゃったわね。とにかく、あんた達は私のことを
  何度も馬鹿にした。いままで私のことを生徒会の犬だの脇役だの
  眼鏡だの罵倒してくれたじゃない? ついさっきはうざいって…」

紬「一切記憶にございません」

和「…帰るわ」

紬「すみません。調子に乗りました!!」



和「…次はもうないわよ? まず、交渉するつもりなら私に対して謝罪するべきなのよ!!
  ひざまづいて!! 誠意を込めて!! まるで犬のように!!」

紬「…」

和「…」

紬「きゃああああああああああああああああああ!!」

和「え? な、なに!?」

紬「いや、叫んでみただけ」

和「…」

紬「ねえ和ちゃん。私のオッパイ見せてあげるから許して」

和「…ふざけてるの?」

紬「ゲヘヘ…ジョーダンだよぉ~マジ受けるんですけどぉ?」


和「…」(ふぅ…)


和は怒りで震える右手で眼鏡に触れた。
そしてゆっくりと眼鏡を外しながら溜息をついた。


和「…澪の裸が見たいわ。それを撮影して会長閣下への手土産にしようと思う。
  今すぐ彼女を呼びなさい。厳命するわ」

紬「無理です」

和「なぜ?」

紬「中野梓と交戦中だからです」


それは事実だった。

平沢を沈めることに成功した中野は、次の獲物を澪に選定した。
先程と同じように澪に突撃し、押し倒し、胸を触りながら髪の毛を引っ張っていた。
澪が暴れ始めたのでマウントを取り、おっぱいを揉みながら顔を殴っていた。

梓は、澪がクズのくせに無駄に美人なのが許せなかった。



梓「うらあああああああああああああああ!!」

澪「ば…馬鹿…胸を触りすぎだ…!! そ、そんなに…あっ...」

梓「なんでてめえばっかり、胸がでけえんだよおおおおおおおおおおおおおおお!!」

澪「ふぁあ…やめへえ…あ、あれ…なんだか変な気持ちに…」


澪はアヘ顔で殴られ続けていた。
梓がここまで怒りを露にするのは、澪に対する嫉妬だった。
小柄で貧乳な梓は、澪を一目見た瞬間から殴りたいと思っていた。

澪の慎重に嫉妬し、太ももに嫉妬し、ブラジャーのサイズと柄に嫉妬し、
大人っぽい声に嫉妬した。

もはや中野は小姑のような存在と化していた。


和「うらああああああああああああああああああ!!」

律「ば、馬鹿…デコを触りすぎだ…!! そ、そんなに…あっ」


一方、和はストレス解消に律をいじめていた。
馬乗りになって律のデコを触りまくっている。

和がここまで怒りを露にするのは、律にたいする怒りからだった。
けいおん部設立以来、生徒会にやっかりになっておきながら、
和に対して菓子折りの一つも用意しない彼女に苛立っていた。


和「あばばばばばばばwwww」


急に調子の乗りだした和。
律のおでこをドラムスティックで叩き始める。


律「あ……そ、そんなに強くしたら……駄目え…」

和「あばばばばばばばばwwww」

律「の、のどかしゃああん」


律は気持ちよさのあまり、遂に気絶してしまった。

和はようやく満足したのか、コホンと咳を吐いた後持ち場に戻った。
再び紬の前に着席し、冷たいジュースを要求したが、そんなものは
ないと断られたのでぶん殴ることにした。


紬「あはぁあああん!!」


殴られた紬はオーバーだった。
与えられた反動の倍以上の大きさで吹き飛び、
ドヤ顔でよだれを垂らしながら転倒した。



梓「おい秋山。私の足の裏を舐めろよな」

澪「はぁ…はぁ…」


澪は梓に顔を踏まれていた。すでに体中ボロボロになっており、
なぜか上半身だけ裸にされていた。


澪「だ、だれか助けて」

梓「うぜえよ。助けなんてくると思ってるのか? いいからてめえは今日から
  私の手下だ。服従の証として私の足をペロペロしてよ」

澪「…」

梓「きいてんのか。秋山」

澪「…はぁ? ゴキブリが私に命令するとか何それ? 意味わかんないし」

梓「…あぁ!?」

澪「もう手加減する必要ないか」


澪は梓の足を払いのけ、何事もなかったかのように立ち上がった。


澪「これなーんだ?」

梓「そ、それは…!! 私の…」

澪「ご名答。梓ちゃんのパンツでーす」


澪が得意げに見せびらかした代物。
それはピンク色のショーツだった。
しかもシマパンである!!


澪「さらに…こんなものまで」

梓「そ…それは…!!」


澪が得意げに見せびらかした代物。
それは梓のブラジャーだった。
しかもAカップ用である!!(そもそもブラをする必要があるのか不明である)


澪「ちなみに、これらはおまえと揉みあっている最中に奪ったものだ。
  他にも色々あるぞ」

梓「このクズ女…どこまで腐ってるの…」


梓はスカートの裾を押さえながら澪を睨みつけた。


澪「梓の下着ってとっても可愛いんだね。感動しちゃった」

梓「ひ、人の下着をまじまじと見つめないでよ変態!!」

澪「ちなみに私はレズです」

梓「…え?」

澪「レズビアンだと言いました」

梓「うわああああああああああ!」


梓は腰を抜かしてしまった。

澪は気にせず、梓の小さめのブラを何と身に着けようとしたが、
やはりサイズが小さすぎる。こんな子供用のブラがなぜ
この世界に存在するのか。澪はそう憤慨しながら梓を
哀れみながら、痛烈な一言を放つのだった。


澪「梓。君。ブラする必要ないよね」

梓「…!!」 (ぐあああああああああああああ!!)

梓「うぐぐぐぐぐぐぐぐ…ちくしょう…秋山てめえ…」

澪「やはり物語の主役には私のような美人がふさわしいと思わないか?
  楽器の演奏はうまく、気立てがいい美人の私こそが。君のような
  ちんちくりんのゴキブリもどきは、もう下がりたまえ(作品から)」

梓「ち、違う!! 私のようなロリも需要があるはずだ!!」

澪「そんのごく一部の人間だけだ。
  てか貧乳な時点で女としての魅力に欠けているのだよ君は」

梓「ち…ちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!」


梓は四つんばいで吼え始めた。
どう言い訳しようにも澪の胸には勝てない。
世の男どもは皆胸ばかり見てる。尻の大きさでも身長でも澪には及ばない。
なんという世の理不尽。自分には色気の欠片もない。
あの幼稚でクルクルパーの唯よりも。怒りのボルテージは絶好調で上昇中だった。


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