あと一歩で楽園というところで、私の中の理性が本能を押しとどめ、

ドアの向こうから叫ぶだけという形に収まってしまった。

スモークが!!スモークが邪魔だ!!シルエットだけなんてなんて生殺し!!

紬「あらりっちゃん、今年は自分から……」ボソ

澪「り、律!?お前なんでここにいるんだ!!」

律「ダッテ悲鳴ガ聞コエタカラ何カアッタノカト思ッテ!!!!」

超棒読みだな私

澪「いつもの事だ!唯と梓がじゃれてるだけだよ!!」

律「ナンダソウダッタノカ!」

そんなことだろうと思った。

梓「唯先輩だめですって!

って律先輩いるんですか!?んんっ、唯先輩、揉んじゃ……!」

揉ん……っ!!!

唯「またまた照れちゃって~」

梓「はぅぅ……っん……」

なんだろう、梓の声がすごく……その、エロい

紬「唯ちゃん揉み心地は?」

唯「控えめだよ~」

梓「唯先輩っ!今そんなこと言っちゃダメです~~~!!!」

ムギ、gj………

澪「うわあ!!律が倒れた!!」


―――

律「ここは……」

紬「あ、起きた」

あれ?なんで寝室にいるんだ?

ええと確か私は……

澪「気絶してるとはいえ、男子がいる中で裸で行動するのは」

唯「恥ずかしかったよね~」

紬「ね~」

澪「………お前ら、ホントに恥ずかしかったのか?」

律「あー……」

唯「りっちゃん、ここまで運んでくれたのはムギちゃんなんだよ?」

律「そうなの?」

男の私を運ぶことができるとは……恐ろしい子……

紬「エッヘン」

自慢げに胸を張るその姿からは

どう見てもそんな力があるようには見えない……が、流石ムギ……

律「梓は?」

澪「あー………あっち」

澪が指差した方向には、

梓「うううううううううう」

さっきの傷が癒えないのか、体育座りで

唸っている梓がいた。

澪「梓……」

梓「律先輩は私達を心配してきてくれたっていうのが、

かえって責める相手がいなくてつらいです……」

律「はは……」

なんかごめん。

唯「あずにゃん、元気出してよ!!」

律「お前が言うな」バシッ

唯「あいた!」

梓「うううううううううう」

紬「そうよ、梓ちゃん、気にしちゃだめよ……私なんて去年」

律「うわああああああああ!!!」

私は慌ててムギの口元を抑える。

唯「何やってるの?」

律「別に!!」

ムギ、今とんでもないことを言おうとしなかったか?


梓「旅に出ます、探さないでください」

私達がコントを繰り広げているうちに、

梓がとうとうそんなことを言い出した。

澪「おおい!早まるな!」

澪が梓を引き止め、私にアイコンタクトをとる

澪「(なんとかしろ)」

律「(無茶言うな、それにどうやって)」

澪「(なんでもいいからはやく!)」

どうしろっていうんだ。

律「あー、梓」

梓「律先輩……」

律「俺は何も聞かなかったことにするから、そんなに気にするなよ」

頭を撫でてやった、なでなで

梓「あぅ……」

律「な?」

梓「……そんなのできません……」

と、ちょっと拗ねた感じでつぶやく梓だが、

口元緩んでるぞ。


深夜、こっっっっそりと入浴を終え寝室へ戻ろうと廊下を歩いていた私は、

ギターの練習をしている梓を見つけた。

あ、ちなみに寝室ってのは去年と同じように雑魚寝だ、おのれ。

律「何やってんの?もう皆寝てるぞ?」

梓「りっ、律先輩!?」

律「そんなに驚かなくても」

梓「だって……っていうか、どこ行ってたんですかっ?」

律「風呂」

私は首にかけたバスタオルを見せた。

梓「そうだったんですか……わたしはてっきり………」

律「梓はギターの練習?」

風呂場に向かう時には寝てたのに、起こしてしまったのだろうか。

梓「はい、なんか眠れなくなっちゃったんで」

律「こんな時間まで熱心だな、俺に似てきたか?」

梓「なら律先輩も一緒に練習しますか?」

律「……こ、こんな時間にドラムをたたくのは非常識だ」

梓「そうですね、でもどうしてでしょう、律先輩が言うと練習しないための

口実に聞こえますね」

律「………ぬぬ」

梓「えへへ…………実はさっき目が覚めたときなんですけどね」

律「ん?」

梓「律先輩がいないのに気付いて、もしかしたら練習してるのかなって思ってここに来たんです。

でも律先輩いなくて……でも、せっかくだから練習していこうかなと」

律「なんだー?俺に会いたかったのか?」

からかうつもりで聞いてみると

梓「…………はい」

なんだかすごくかわいい笑顔でそう返された。

律「え?」

なんて反応すりゃいいんだ!

梓「律先輩といるのは、楽しいですし……」

律「あ、おう……俺も、梓といるのは楽しいよ」

梓「えへへ………」

それ以降何もしゃべらずただギターの練習に没頭する梓。

その真剣な表情は、いつか見たライブの時のそれと同じだ。

でも、なんだか一生懸命な感じがして可愛らしい。

ずっとみているうちに……

律「(かわいーよなー……)」

自然とそう思っていた。

梓「律先輩……」

律「ん?」

梓「あの……そんなに見られるとやりづらいです」

律「あ、悪い」

見とれるあまり、

無意識に顔を近づけていたらしい。

梓「いえ………」

そういうと、またギターの練習を始める梓

ジャカジャカ

律「……………」

梓「……………」

ジャカジャカ

暇だ

梓「ふぅ………ちょっと休憩しようかな……」

律「終わったのか?」

梓「ちょっと休憩です」

そう言いながら猫のように体を伸ばすと、ツインテールがゆらゆらと揺れて、

私にあることを思いつかせた。

律「なぁ梓、俺良い事思いついた」

梓「はい?」

律「梓っていつもその髪型じゃん?」

梓「はぁ……まあ、そうですね」

律「ちょっと髪おろしてみない?」

梓「それって律先輩が遊びたいだけなんじゃないですか……?」

いきなり本心を見破られジト目で突っ込まれるが、私の決意は固い。

絶対梓の髪で遊んでやる。

律「いいじゃんかーほら、ちょうどここに櫛と手鏡もあるしー」

梓「なんであるんですか……まぁいいですけど」

律「ホント!?」

梓「私の髪の毛なんてそんなに綺麗じゃないですよ?」

律「またまたご謙遜を」

梓「そういえば律先輩の髪の毛は綺麗ですよね、女の子みたいな髪の毛です」

律「そりゃ元女の子ですから」

梓「えっ?」

律「いやなんでもない」

律「じゃあ、ここに座って」

梓「え?………そこに座るんですか……?」

律「そりゃ、ここじゃないとダメだろ」

梓「(……………なんで律先輩の足の間に座るなんて……恥ずかしすぎる……)」

律「ほら早くー」

梓「し……失礼します」

ちょこん

お、いい匂い……

律「じゃ、髪ほどくぞー」

梓「は、はい……」

髪がほつれないように気を付けながら、ゆっくりと

長い髪の感触を楽しむ。

律「やっぱり長いな」

梓「へ、変ですか?」

律「いや、似合ってると思うぞ」

梓「あ、ありがとうございます……」

律「ポニテー、どう?」

何処からか取り出した手鏡を、

私の前でちょこんと収まっている梓に渡す。

梓「わぁ……律先輩、上手ですね」

律「梓の髪がサラサラだから、やりやすいんだよ」

さわさわ

梓「んぅ……それは、関係ないかと……」

律「じゃあ次は……」

梓「ま、まだやるんですか?」

律「だってどんな髪型でも似合うから、楽しくってさ」

梓「そ、そうなんですか……それはその、光栄です………」

ゆっくりと痛まないように気を付けながら、

少しすつ梳いていくことさえ、楽しく思えてしまう。

梓「あの、律先輩」

梓「律先輩……」

律「ん?」

梓「こうしてると私達ってやっぱり、兄妹みたいに見えるんですかね?」

律「兄妹?」

梓「はい」

律「うーん………」

梓が妹か、やっぱり朝起こしてくれたりするのかな

律「別になってもいいけどエロゲーやったり夜中に買い物頼んだりするのは

なしな」

梓「え?」

律「いやなんでもない」

律「けど実際、俺達は兄妹じゃないし」

梓「そうですよね……」

律「そもそもなんでいきなりそんなこと聞くんだ?」

梓「それは……その……私……」

律「ん?」

梓「私……兄妹じゃ、いやだなって……」

兄妹じゃ嫌?私がお兄ちゃんじゃいや?

地味にショックだぞ。

律「それはどういうことでしょうか…」

梓「あの、律せんぱいっ」

律「はいっ」

私の方を向いた梓の顔は何故か真っ赤で、

私の顔も何故かつられて紅潮していく。

梓「確かに兄妹って、すごく近い距離にいると思います、

お互いを理解しあってて、時々喧嘩して、でもとっても仲が良くて……

律先輩がお兄ちゃんだったら、毎日楽しいなって思うんですけど」

一応合格なのか、よかった。

じゃあ、何が嫌なんだ?

梓「でも、兄妹ってそこまでじゃないですか」

律「そこまでって?」

梓「………それ以上の関係にはなれないってことです」


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