※紬


【母親の在り方というモノ】


唯「――ねぇ、ムギちゃんってお母さん?」

紬「へ? 急に何? 唯ちゃん」


うん、そりゃ言葉が足りないよね。落ち着け私。


唯「この『世界』を創った人、産んだ人……だから、お母さん」

紬「なるほど……まぁ、否定はしない、じゃダメ?」

唯「うーん……一番お母さんっぽいのはムギちゃんなんだけどなぁ」

紬「唯ちゃんに隠し事はしたくないけど、他のみんなとの約束だから…」

唯「じゃあ、仮にムギちゃんだとして……どうして、こんな世界を創ったの?」

紬「仮に私がお母さんじゃなくってもこう答えるわ。唯ちゃんがいない世界が嫌だったからよ」

唯「じゃあ私が死ななければいいんだよね?」

紬「……そんな簡単に言わないで? 私達だって、何度も試したのよ……でも、ダメだったの、どうやっても、唯ちゃんは…!」ジワリ

唯「あ、ご、ごめんねムギちゃん! 覚えてなかったとはいえ、勝手なこと言っちゃった……」

紬「……たとえどんな万全な状態で挑んでも、たとえ周囲に何も無い状態でも、唯ちゃんは急に倒れてそのまま…起きなかった…」


私のせいとはいえ、自分の最期を聞くのもなんか微妙な気分になる…


唯「……私はもしかして、毎回そんな苦しい思いをしてたのかな?」

紬「安楽死の方法なんて…いくらでもあるわ……眠ったように、あっちに逝けるの…」グスッ


そうか、もしかして私が過去の出来事が夢とごっちゃになってるのは、ここしばらくは眠ったように終わってたから?
そして、きっとそんなことを手配してくれてるのは……


唯「…ごめんねムギちゃん、そしてありがと」

紬「お礼なんて…言わないで…」

唯「…ごめんね、私は何回も苦しませてたんだね、ムギちゃんも」

紬「うっ、ううっ……!」ポロポロ


……もう、これ以上ムギちゃんを苦しませることは出来ないよね。
この世界をどうにかしたい、という私の最初の思いももちろん忘れたわけじゃないけど、もしそれが叶わなかった時は…ムギちゃんの手は煩わせないようにしよう。

――それから、軽音部のみんな一人一人に「お母さんなの?」と聞いたけど、みんな答えはムギちゃんと一緒。
……やっぱり、自信と確証を持って当たらないとそりゃ教えてくれないよね…

でも、その自信も確証も持てないまま、卒業式さえも終わってしまった。


唯「……間に合わなかった、のかな…」


今回も、ダメだったらしい。いつか澪ちゃんも言っていた。何も出来ない、って。
何も出来ないまま、また私は高校生を繰り返す。
…そういえば、いつ私に最期が訪れるのか、それを聞いてなかったことを思い出す。
ま、高校生を繰り返すんだから…早ければ今日かなぁ?


唯「……ムギちゃんの手は、煩わせない」


今はもう放課後、部室に向かえばみんながいる。会っちゃダメだ。
部室をスルーして、私は外に飛び出した。


――道路の向こうから、おあつらえ向きの大型トラックが向かってくる。
あとは飛び出すだけ。少し恐いけど、どうせ一瞬だ。終われば今回の始まりみたいに、私は全て忘れて、憂に起こされて目を覚ますんだ。

――バイバイ、みんな。助けられなくてごめんね。次は頑張るから。

……私は覚悟を決めて、飛び出した。




ドンッ


――飛び出した私は、それ以上の勢いで何かにはじき出され、トラックを通り過ぎた。


唯「え……?」


ブレーキ音。衝突音。悲鳴。流れる血。
でも血だまりの中心にいるのは、私じゃなくて。


唯「あれは……」


どうして、そこに横たわってるの?
どうして、ここに来たの?
どうして…私を助けたの?

見間違えるはずの無い、自分と同じ制服。
見間違えるはずの無い、ふわふわの髪。
見間違えるはずの無い、どんなに遠くでも、どんなに変わり果てても、見間違えるはずの無い……!

私の大好きな、あたたかくて、ぽわぽわしてて、おっとりしてて、お母さんみたいな……!!


唯「……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」




――どこをどう走ったかなんて覚えてない。どれくらい走ったかも覚えてない。
覚えてるのは、最初の願い。

――みんなを、こんな世界から、解放してあげたい。

その結果がこれだ。私が生き永らえて、かわりに大好きな人が死んだ。
こんなの、こんなこと、認められるわけがない。許されるわけがない。誰が何と言おうと、私自身が認めない。


認めないから――やり直す。


すごく高い場所から、空へ向かって、私は躊躇なく一歩を踏み出した。



    エンド2『赤い空へ』




※紬


【母親の在り方というモノ】


唯「――ねぇ、ムギちゃんってお母さん?」

紬「へ? 急に何? 唯ちゃん」


うん、そりゃ言葉が足りないよね。落ち着け私。


唯「この『世界』を創った人、産んだ人……だから、お母さん」

紬「なるほど……まぁ、否定はしない、じゃダメ?」

唯「うーん……一番お母さんっぽいのはムギちゃんなんだけどなぁ」

紬「唯ちゃんに隠し事はしたくないけど、他のみんなとの約束だから…」

唯「じゃあ、仮にムギちゃんだとして……どうして、こんな世界を創ったの?」

紬「仮に私がお母さんじゃなくってもこう答えるわ。唯ちゃんがいない世界が嫌だったからよ」

唯「じゃあ私が死ななければいいんだよね?」

紬「……そんな簡単に言わないで? 私達だって、何度も試したのよ……でも、ダメだったの、どうやっても、唯ちゃんは…!」ジワリ

唯「あ、ご、ごめんねムギちゃん! 覚えてなかったとはいえ、勝手なこと言っちゃった……」

紬「……たとえどんな万全な状態で挑んでも、たとえ周囲に何も無い状態でも、唯ちゃんは急に倒れてそのまま…起きなかった…」


私のせいとはいえ、自分の最期を聞くのもなんか微妙な気分になる…


唯「……私はもしかして、毎回そんな苦しい思いをしてたのかな?」

紬「安楽死の方法なんて…いくらでもあるわ……眠ったように、あっちに逝けるの…」グスッ


そうか、もしかして私が過去の出来事が夢とごっちゃになってるのは、ここしばらくは眠ったように終わってたから?
そして、きっとそんなことを手配してくれてるのは……


唯「…ごめんねムギちゃん、そしてありがと」

紬「お礼なんて…言わないで…」

唯「…ごめんね、私は何回も苦しませてたんだね、ムギちゃんも」

紬「うっ、ううっ……!」ポロポロ


……もう、これ以上ムギちゃんを苦しませることは出来ないよね。
この世界をどうにかしたい、という私の最初の思いももちろん忘れたわけじゃないけど、もしそれが叶わなかった時は…ムギちゃんの手は煩わせないようにしよう。

――それから、軽音部のみんな一人一人に「お母さんなの?」と聞いたけど、みんな答えはムギちゃんと一緒。
……やっぱり、自信と確証を持って当たらないとそりゃ教えてくれないよね…

でも、その自信も確証も持てないまま、卒業式さえも終わってしまった。


唯「……間に合わなかった、のかな…」


今回も、ダメだったらしい。いつか澪ちゃんも言っていた。何も出来ない、って。
何も出来ないまま、また私は高校生を繰り返す。
…そういえば、いつ私に最期が訪れるのか、それを聞いてなかったことを思い出す。
ま、高校生を繰り返すんだから…早ければ今日かなぁ?


唯「……ムギちゃんの手は、煩わせない」


今はもう放課後、部室に向かえばみんながいる。会っちゃダメだ。
部室をスルーして、私は外に飛び出した。


――道路の向こうから、おあつらえ向きの大型トラックが向かってくる。
あとは飛び出すだけ。少し恐いけど、どうせ一瞬だ。終われば今回の始まりみたいに、私は全て忘れて、憂に起こされて目を覚ますんだ。

――バイバイ、みんな。助けられなくてごめんね。次は頑張るから。

……私は覚悟を決めて、飛び出した。




ドンッ


――飛び出した私は、それ以上の勢いで何かにはじき出され、トラックを通り過ぎた。


唯「え……?」


ブレーキ音。衝突音。悲鳴。流れる血。
でも血だまりの中心にいるのは、私じゃなくて。


唯「あれは……」


どうして、そこに横たわってるの?
どうして、ここに来たの?
どうして…私を助けたの?

見間違えるはずの無い、自分と同じ制服。
見間違えるはずの無い、ふわふわの髪。
見間違えるはずの無い、どんなに遠くでも、どんなに変わり果てても、見間違えるはずの無い……!

私の大好きな、あたたかくて、ぽわぽわしてて、おっとりしてて、お母さんみたいな……!!


唯「……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」




――どこをどう走ったかなんて覚えてない。どれくらい走ったかも覚えてない。
覚えてるのは、最初の願い。

――みんなを、こんな世界から、解放してあげたい。

その結果がこれだ。私が生き永らえて、かわりに大好きな人が死んだ。
こんなの、こんなこと、認められるわけがない。許されるわけがない。誰が何と言おうと、私自身が認めない。


認めないから――やり直す。


すごく高い場所から、空へ向かって、私は躊躇なく一歩を踏み出した。



    エンド2『赤い空へ』