律「あの~…どちら様?」

教室で憂達に言われたことと同じようなことを律先輩に言われた。
普通はそうなりますよね。
クラスでも軽い騒ぎが起こったし。

梓「いやだなあ、梓ですよ」

ニコニコしながら答える。

澪「う…うそだろ…?あ、もしかして梓のお姉さんとか?」

梓「私一人っ子ですよ」

律「どうしちゃったんだよ梓ー!!」

梓「私だって成長期ですからね、成長しますよ」

まあ、成長期で片付けられるレベルではないのだけど、
もう少し律先輩をからかってみようかな…

律「いや…まさかあ……」ガクガク

澪「 」ブルブル

さわ子「チョリース!……あれ、この娘だれ?」

梓「やだなあ先生まで」

さわ子「あなた……いろいろ似合いそうねえ」



――――――――

さわ子「じゃあ次はコレ着てみましょう!」

梓「まだやるんですか?」

と口では言うけど、今まではあまり似合わなかったような服も
バッチリ着こなせるようになったので内心楽しかった。

律「……こりゃー澪を超えてるかもなぁ」

紬「女の私でもドキッとするわね…」

律「…なあ梓ー、そろそろ本当のことを教えてくれよぅ」

そう言って席を立ち、私の元へ来ようとする律先輩。
私が話しかけようとしたその時…


律「あれ…?」

ドサッ

律先輩は倒れてしまった。


梓「律先輩!?」

澪「律!大丈夫か!?」

律「あれー…どうしたんだろう私…」

さわ子「貧血かしら?保健室に連れて行ったほうがいいわね」

澪「そうします。ムギ、手伝ってくれ」

紬「はいっ」


保健の先生によると身体が衰弱しているらしい…
それに今日はそういう生徒がたくさん来たと言っていた。



澪「律は私が送っていくよ…」

そう言って先輩方は帰って行った。
なんだか澪先輩も疲れているように見えたけど…

私は一晩寝たら治っていたし、むしろ今朝から調子がいい。
でも先輩方やクラスメイト、先生まで疲れた顔をしていた。


律先輩に澪先輩…大丈夫かなあ。



次の日の昼休みにムギ先輩が私の教室へやってきた。

梓「え…律先輩と澪先輩が休み?」

紬「ええ…だから今日の部活はお休みにしようと思うの」

梓「そうですね…3人も休みじゃ仕方ないですよね」

梓「ムギ先輩も体調悪そうですけど大丈夫ですか?」

紬「…今日ゆっくり休めば多分大丈夫だと思うわ」

梓「そうですか」

ムギ先輩はそう言ったけど

午後の授業中に倒れてしまった。



憂「それじゃまた明日ね」

梓「うん」

憂は最近授業が終わるとすぐに家に帰る。
先生から最近体調不良の生徒が増えているからと注意もあったし
きっと唯先輩が心配で仕方ないんだろう。

現に今日は空いてる机が目立った。
それに私のクラス以外も少なくない欠席者がいたらしい。
純も休みだったし…



そして我らが軽音部は私以外みんなダウンしてしまった。
この分じゃ学園祭でライブは出来ないだろうな…

それともうひとつ嫌な予感がした。

予感というよりは嫌な考えが頭をよぎったのだが、
あまりにも突拍子のない考えだったし、証拠も無かったから
深く考えないことにした。

梓「…あ、帰る前に水やりに行かなきゃ」

校門に向かう途中で最近出来た日課を思い出した。



梓「あ……」

ペットボトルに水を汲んでから校舎裏へ向かう。
そこには他のどの木よりも大きくなっているあの樹があった。
今日も成長してるだろうと思っていたので驚きは少なかった。

それよりも周りの草木に葉が一枚も付いていないことで
余計に際立ったあの樹を見て…言いようのない不安に駆られた。

確か回りの木には紅葉した葉がついていたはずなのに…
今はただの枯れ木にしか見えない。

あの樹が回りの草木から滋養を吸収してるようにしか見えなかった。

私は水の入ったペットボトルを鞄に仕舞った。
そもそも水遣り自体無意味かもしれないけど…
それでも水を撒く気にはなれなかった。

梓「明日憂や先生に相談してみようかな…」

当然樹は切られるだろうし多分…いや絶対怒られるな…
唯先輩に見せたかったけど…しょうがないか。

樹を見上げると赤く熟れた実が昨日よりも増えていた。
一番低いところになっている実でも私の身長より2メートル近く高い所にあった。

梓「せめて樹の実だけでも…」

前回とった樹の実は冷蔵庫で保存しようかとも思ったが
家族に食べられるといろいろまずそうなので処分した。

これ以上成長されたら実が取れない高さになるかもしれない。
その前に樹を切られるかも。
どちらにしてもやるなら今しかない。


あたりを見回してみるが当然高枝切りバサミもハシゴもない。
ついでに周りには誰もいない。

誰もいないなら…

私は鞄を置いて樹から数歩下がる。

梓「…よし」

もう一度人がいないか確認してから樹に向かって走り出す。

梓「よっ!」

左足を踏み込み樹へ向かってジャンプ。
さらに右足で樹を蹴りより高く飛び跳ねる。
その先にある樹の実へ左手を伸ばすとしっかり掴むことができた。

自分でもびっくりするくらいうまくいった。
これも樹の実のおかげなのだろうか。


家に帰り、自分の机の一番下の引き出しに樹の実を仕舞った。



いつもより早く目が覚めた。

パジャマのままリビングへ向かう。

梓「おはよう」

 「…おはよう」

なんだかお父さんもお母さんも体調が悪そうだけど大丈夫かな。

それでも二人とも出かける支度をしているので私も学校へ行く準備に取り掛かる。
今日もお母さんのブラウスを借りた。近いうちに自分のブラウスを買いに行かなきゃ。

梓「いってきまーす」

いつもより早く家を出る。

少し迷ったが髪はいつも通り左右に結ぶことにした。



梓「え…学校閉鎖…」

予鈴が鳴り、教室に入ってきた副担任は今日から学校閉鎖になるので帰るようにと話した。
なんでも欠席者が全校生徒の半数以上になってしまったらしい。
担任も休んでしまったそうだ。それにクラスの生徒は数えるほどしかいない。

梓「……」

憂「さっき学校に来たばっかりなのにね」

梓「あ、憂」

憂「でもしかたないよね。帰ろう梓ちゃん…」

梓「うん」

私が席を立とうとした時

突然憂が倒れた。


梓「えっ…うい!?大丈夫?」

憂は起きない。

梓「ねえっ!憂が!」

そう言ってクラスを見回したが、誰も返事をしない。
残っているクラスメイトはみんな机に突っ伏している。

それにやけに静かだ。
他のクラスの生徒も帰り始めているはずだからこんなに無音なのはおかしい。
また言いようのない不安に駆られるが、そんなことより今は憂をなんとかしないと。

梓「ういっ!しっかりしてっ…」

そう憂に話しかけたとき

突然大きな音と共に激しい地震が起きた。


梓「きゃあ!!」

ありえないくらいに校舎が震え、机と椅子が跳ねる。

憂を庇おうとするけどうまく歩くこともできず転んでしまう。

そのうち壁にひびが入り、校舎に潰されるのではと恐怖していると

下からも音がしてきた。

メキメキと何かが軋む音が近くなってきたと思ったら

床や壁を突き破ってすごい勢いで何か、樹のようなものが生えてきた。

梓「うわっ…!」

私は下から突き出てきた樹に跳ね飛ばされ、何か硬いものに頭をぶつけて

気を失った。


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