律「じゃあねー梓」

梓「失礼します」

先輩方と別れてから唯先輩にメールをした。
風邪の具合のこと、学園祭のこと、そして今日拾ったソレのこと。

メールが帰ってきたのは夕食を食べた後だった。

ありがとうあずにゃん!学園祭までには頑張って治すからね!
あ、それと種(?)はあずにゃんにあげるよ!

こんな感じの内容だった。



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憂「梓ちゃん帰ろ?」

梓「あ、ごめん。今日は用事があるから先に帰ってて」

純「土曜日も部活?」

梓「ううん。ちょっとね」

純「…あやしい」

憂「まあまあ…それじゃ梓ちゃんまたね」

梓「うん」


今日は土曜日で部活もない。
私が学校に残った理由は…

梓「この辺にしようかな…」

唯先輩は私にくれるって言ったけど、唯先輩も欲しそうにしてたし…
そう考えた私は学校の校舎裏に植えることにした。
勝手に植えるのはあんまり良くないかもしれないけど、ここなら唯先輩にも見せらえる。
それに周りに草木も生えてるし1本増えたところで問題ないだろう。

手ごろな木の枝で穴を掘ってソレを埋めた。
そのあと大き目の石ころを3つ拾い集めてそれを目印にして完成。

梓「…よし。がっしり根付いてね」

お腹も空いてきたしそろそろ帰ろう。



梓「おはよう」

憂「はあ、はあ、おはよー」

また遅刻ぎりぎりにやってきた憂に一応聞いてみる。

梓「もしかして唯先輩はまだ…」

憂「…うん。まだ熱が下がらなくて…」

梓「そっか」

唯先輩に見せようと思ったのにな…
と言っても植えたのは一昨日だしそんなすぐに芽は出ないだろうけど。

梓「…あ」

憂「どうしたの?」

梓「あ、えっと、今日って宿題あったっけ?」

憂「うーん、今日は無かったはずだよ」

梓「そっか、ありがと」

大事なことを忘れていた。
植えたのはいいが水をやってない。土曜も日曜も。
何をやっているんだろう。部活に行く前に水をやりに行かないと。


…憂に言おうかとも思ったけどやめた。
先輩方にもだがなんとなく秘密にしておきたかった。
そのうち唯先輩が喋るかもしれないけど
なんとなく、唯先輩と二人の秘密にしようと思った。


…まだ唯先輩にも話してないけど。



梓「うそ…」

放課後、ペットボトルに水を入れて校舎裏に向かった私は
自分の身長ほどの樹の前で呟いた。

梓「…場所間違えたかな…こっちだっけ?」

校舎裏に生えている木はどれも4メートル以上のものしかなかった。…土曜日までは。

梓「…新しく植えたのかな?」

よくよく考えてみればそれが一番しっくり来る。
たったの二日でこんなに成長することなんてありえない。

梓「でもこれじゃあ芽が出ないかもなあ…」

とりあえずその樹のまわりに水を撒いて部室に向かった。

樹の後ろには石ころが3つ並んでいた。



律「ちょっと休憩しようぜ~」

澪「さっき休憩したばっかだろ」

律「う~ん、なんか疲れちゃって」

澪「……」

澪先輩はそれ以上反対しなかった。
今日の律先輩のドラムはパワーが足りない。
それに…

紬「実は私も今日は疲れちゃって…体育もないのにどうしてかしら」

梓「……」

実は私も…なんて言ったら今日の練習が終了してしまうので言わないことにした。



律「はぁ~それじゃな~」

梓「はい、失礼します」

結局あの後ティータイムに入ってから練習を再開することはなかった。
澪先輩も口には出さなかったけど疲れた顔をしていた。
もしかして部員全員が風邪を引いたんじゃあ…
かくいう私も午後から少し調子が悪い。

今日は早く寝ることにしよう。



次の日、目を覚ますと昨日まであった身体のダルさがなくなっていた。
よく寝たら治ったみたいだ。先輩方も良くなってるといいなあ。
そう思いながら登校する。

梓「…そうだ」

昨日の樹が気になったので、教室へ行く前に校舎裏に向かうことにした。
あれは別の木なんだろうけど、そうだとしてもあの周りに水を撒いておきたい。



その樹は昨日よりも大きくなっており、なんと樹の実までもが付いていた。
まわりの木にはそんなもの付いていないし、そもそも葉は紅葉して冬の準備に取り掛かっている。

梓「…やっぱり、この樹だったんだ」

樹の実を見た私は、この樹を私が植えたものだと信じて疑わなかった。
水を撒き終えた後、樹の実をひとつもいで鞄に仕舞った。


その日の夜、私は樹の実を食べることにした。



樹の実は朱色で表面がぶつぶつしていて、正直に言うと少し不気味だ。
コレを食べることとスタイルが良くなることを秤にかけてみる…

梓「一口だけなら…お腹壊したりしないよね」

妥協した。

包丁で二箇所に切り込みを入れて、くし型に切る。
切った感触はりんごに似ていたが中身は薄紫色をしていた。

舌を出して軽く触れてみる。
舌がヒリヒリするわけでもなく、むしろほのかな甘さが口の中に広がる。
これは…予想外に美味しいかもしれない。

梓「い…いただきます」シャリ

食感もりんごに似ていた。
味も悪くない…というかとても美味しい。
今まで食べたどんな果物よりも美味しいかもしれない。


梓「あ…」

気が付いたら一切れ全部食べていた。
しまった…いくら美味しくてもお腹壊すかもしれないのに…

後悔し始めたその時


ドクンッ!!


梓「え…!?」

ボコッ!ボコッ!
そんな音が聞こえそうな勢いで私の身体が膨らんだ気がした。

梓「はあ…はあ…」ブルブル

自分の身に何が起こったのか解らず、恐怖で身体が震えた。
震えを押さえるために背中を丸めて自分の腕を抱き寄せる。

だけど…
そのせいで胸の辺りが水ぶくれのように腫れていることがわかってしまった。
ブラウスで押さえられてパンパンになっていて、抱き寄せた腕が半分隠れている。
見たところ胸以外は腫れてないようだけど……


……え?


私は全身を確認してみた。
足はすらっとして腰もくびれている。
背を伸ばしてみるといつもより少し視界が高くなったような気がした。

梓「す、すごい………」

後姿も確認しようと身体をひねった時

ブチッ

と音がしてブラウスのボタンが飛んでしまった。


梓「ほ、本当に効果があったんだ…」

この時は気が動転していて他の事を考える余裕もなくて
異常とも言える樹の実の効果に対してあまり疑問に思わなかった。
それに…嬉しかったし。

お風呂でまじまじと自分の身体を見たり、
鏡に向かってポーズをとったり、自分のスタイルの良さに興奮していた。


次の日の朝、やっぱりお父さんとお母さんに驚かれた。
が、何とごまかすことに成功した。
この異常事態をごまかせるとは…実は頭も良くなってたりして。
それからお母さんからブラウスを借りて着替えようとして気付いた。

梓「下着…どうしよう」

梓「お母さんのブラウスでも胸の辺りがきつい…」

結局学校へ行く前に下着を買いに行いにいったので
3時間目の休み時間に合わせて登校した。
2時間分の授業をサボッてしまった…
いっそブラウスも買っておけばよかったかもしれない。

ブレザーとスカートはこれから育つだろうという希望的観測から
大き目のサイズを買っていたので少し窮屈に感じるが問題ない。

あ、どうせなら髪を解いて澪先輩みたいにすればよかったかも。
前の体型より似合うかもしれない。

そんなことを考えながら教室に入り、見知った姿に声をかける。

梓「憂~!純!おはよ」

憂「あっおはよー」

純「おはようってもう3時間目終わってるよ~」

憂純「……って、誰?」



憂「ほんとに…」

純「梓なの…?」

梓「そうだよー」

当然だけど二人とも驚いている。
クラスメイトもこちらを気にしていた。

純「…昨日まであんなにちんちくりんだった梓が…私より(胸が)大きく…」

梓「私純より(背が)大きくなっちゃってたんだ」

純「べ、別に悔しくないもん!」


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