律「唯の山……とかどうでしょう」

唯「いいね! かわいい!」

律「そうかぁ……?」

親方「かわいいかどうかはおいといて、覚えやすいし『山』ついてるし、いいんじゃないか?」

親方「じゃあ協会には申請出しとくな」



唯「ふぉぉ、じゃあ今日から私は唯の山ってみんなに呼ばれるんだね!」

律「まあ、この部屋の力士は『~の山』ばっかだから、みんな唯って呼ぶけどな」

唯「がぜんやる気出てきたよりっちゃん!」ドスコーイ!!


そんなこんなで3月場所、唯のデビュー戦が始まった。



呼出「ひがーしー唯の山ぁー……」

紬「きゃー唯の山ー!!」

和「唯がんばってー」

観客「唯の山ー!!」

兄弟子1「すごいな、唯……序の口であんな応援初めて見たぞ。特にあの金髪の子」

律「あー、あれは友達なんで」

兄弟子1「懸賞金をめちゃくちゃ出そうとして相撲協会に止められたとかいう噂も」

律「ムギ……」

しかし、唯が太っても可愛かったのは幸いだった。
デブカワの頂点は柳原か、唯の山か、なんて論争もどこかで巻き起こってるらしい。



初土俵、唯は見事勝利を飾った。

相手は唯と同じ新入りで、まだひょろひょろした奴だったが、新聞やテレビでは大々的に
『やはり天才か、唯の山!圧倒的勝利』などと報道された。

まあ、男女の差を考えれば、確かにものすごいことではある。


唯「今日は勝ったけど……やっぱり真剣勝負はすごいね。次も頑張らなきゃ」ドスドスッ


唯は初勝利後これでもかというほど稽古をした。

私はなんだかあのときの――唯が力士になると言ったときの、恐ろしさを感じた。


           /)  . . .-‐―‐-. .
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        /,.=゙''"///´ ̄ ̄  ̄ ` i    :.
 /     i f ,.r='"-‐'つ.ーーヾ〃-一 i    ハ  
/      /   _,.-‐'~V: ,        i    }
  /   ,i   ,二ニ⊃{ \  、/_  {    `丶、
 /    ノ    il゙フ./ :{Y 心ヾ '"んハ`Y    :   \
    ,イ「ト、  ,!,!|/: : ハ. Vリ   弋ソ 人   l: : く⌒
   / iトヾヽ_/ィ"/ : ( 〉 ''   '    '''   rヽ l: :/⌒
.  /     /{ . :/i 人   Fヽ    .イ爪 「`
.           ヘ{ ( /`ト . ゝ ノ .. イ /ノハノ

りっちゃんの相撲教室!

【懸賞金】というのは、勝った力士がもらえるお金のことだ!
企業等が自主的に出すもので、どの勝負にいくらってかんじで出すらしい

たとえば高見盛の取組時に永谷園が出したりとかな!(CMに出演しているから)

あと【序の口】は朝から始まるのでお客は普段マジ少ないぞ……
応援は家族とか友達しかいないってかんじだ


唯「ところで、りっちゃんはどうだった?」

律「え、ああ……なんかすごかったぞ、色々」

唯「カメラ、りっちゃんばっか追ってたよね」プスス

律「まあ、それも困ったけど」

律「幕内って、すごいな」

唯「うん」

唯「うちの部屋では一番すごい人でも十両の下のほうだもんね」

律「だから私たちが入れたってのもあるのかもしれないけどな」

律「そんだけ大変なんだよな、あそこに上がるのは」



唯「【十両】は【幕内】の次に強いステージだよ」

唯「【十両】の上位はテレビで放映されることもあるよ」



唯「でも、私はやるよ! 次の場所では横綱になる!」

律「いや、なれないだろっ」バシッ

紬「私も応援してるわ~」

律「どっから沸いた!?」

梓「一緒に見学に来たです」ヒョコ

律「おお、ひさしぶりだな~梓。受験勉強はどうだ」

梓「ぼちぼちです。……でも、夢があるので」

律「そっか……」

しかし、その言葉も嘘じゃないってくらい唯はどんどん成長していった。
唯はあれよあれよという間に勝ち星を重ね、ついには幕下の地位を手に入れた。



          ´      `  、
      /           \
      ′    /    l     ヽ
         /  /l    l   ヽ   .
     l i /  / ! l   ||   l ハ i 説明するのが夢だったの~♪
     | |   /ィ≠N   |八   |  } |
     l N   |  l   \|  }  j /
     |  |   |x≠ミ    rxミハ′ |
     |  |   |"""     """/  /
     l  |   |    __'    /   ∧
     }  l  人    ー'    /  / ∧
    ′ 八  Vト ..__,,..≦{  ′{ ∧
   / / ∧  V  久_人 l  |  / !
.  / -──∧  ∨ ニ}  〉l  ├ 、|
  /丨    | ∧ {   r}l / |   |  ∨
. / .|      \ヘ|   リ / l|   |   l\
/  |      /Y^\ノ / r'|  }   |  }
   }     〈 |   \| /ノ   ′ / /

力士は勝った数によって
【序の口】→【二段目】→【三段目】→【幕下】→【十両】→【幕内】
と昇進していくわ。ダメな人はずっと序の口から上がれないの~

飛び級なんかはないし、陥落することもあるから、毎回気を抜けないわね!

あと相撲部屋はわりと一般人も見学できるみたいなの
kwskは各部屋のHPへ!


梓「じゃあまた……頑張ってくださいです」

紬「また国技館行くからね!」

律「ムギ、ありがたいけど大学サボりすぎんなよ……」

紬「唯ちゃんのためだもの!」

唯「久々にみんなに会ったねー」

律「懐かしいな、あの頃が……」

ムギは毎回来て良い席を取って応援してくれている。和もだ。

梓は卒業してから初めて会った。
それまでも、応援席に来てくれていたこともあったみたいだが。

でも、澪とはあれっきりだ。


テレビ『~~……~~…』

唯「ん? これ……」

律「どうした唯」



「じゃあ、お天気のミオちゃーん」

ミオ「はい! 今日のお天気は曇りのち晴れです」

ミオ「午後はさわやか~な天気になるでしょう!」

「ありがとうミオちゃん。さすがK大のミスキャンパス、かわいいね~」

ミオ「そんな……」テレテレ



律「み、お……?」

唯「ミスK大だって! すごいすごいすごい~!」

唯「そういえば、澪ちゃん大学のほかにアナウンサーの学校行ってるって和ちゃん言ってた!」

唯「美人女子アナだね!」

律「そ、そうだな……」


私は正直複雑だった。

澪の見た目は、それほど変わっていなかった。
髪も黒いままだし、化粧もうっすら。
服は番組に用意されたのか可愛らしいものだったけれど。

それでも、そんな目立つことをする奴じゃなかった。
アナウンサーになりたいなんて聞いたこともなかったし、むしろそういうのは敬遠していると思っていた。

律「ミスキャンパス、か……澪が?」

唯「澪ちゃんかわいいから、みんなに出ろって言われたんじゃない?」

それでも以前の澪なら絶対に拒否したはずだ。

知っていると思っていた澪の、突然の変化。

唯についてって勝手に相撲界に飛び込んだ私の言えることじゃないけど……。



それからも時々テレビで澪を見かけた。

唯「大学もあるしアナウンサーの学校もあるのに、大変だよねー」

律「お前もなかなか大変だけどな」

最初はただのイロモノ的存在だった唯だが、確かな実力で旧来のファンからも認められつつあった。
ワイドショーの取材は前より減ったけれど、逆に真面目なインタビューなどが増えた。



幕下で挑戦中...

唯「ふむむ~」

律「どうした?」

唯「なんかね、勝てないんだよねー……」フニャー

唯「もうみっつも星落としちゃったよ」

唯「なんでかな、お稽古が足りないのかな」

律「いや、お前の稽古量はけっこうギリギリだぞ」

律「みんな驚いてるくらいだ」

唯「だってそうしないと男の人には勝てないもん……」

唯「とにかく、もっとお稽古するしかないよね!」フンスッ!!

律「でも唯、最近やせてきてるぞ」

唯「うん、じゃあちゃんこももりもり食べないとね!」フンスフンス!!

律「唯……」



でも、その場所、唯は初めて負け越してしまった。



       /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.\
          /: : : : : : : : : : /: : : : :/: : :、ヘ: : : : : : : : : : :\ これは他のスポーツでもいうけど、
       /: : : : : : : : : : /: : : : :/:ヘ.: : \\: : : : : : : : : ∧  【星】っていうのは勝負のことだよ
       |: : : : : /: : :/: : : : :/: /\\: : ヽ'.: /: : : :| : : : :ハ  
      /: : : /: : : :/: : .ノ: /: : |: : : \/|: :/: : : : :i: : : : : :',  【白星】が勝ち、【黒星】が負け
     ,':/::!: /: : :/ヽ./: : :|: : /: : :/  |:/: : : : /.!: : : : :/l   【星を落とす】は負けってこと……
    /:/: ::レ': : :/ ⌒/: : :/: :|: /: /`ー―''!≦: ::/: :! : : : : : |
.    /: : : : : : : ∧ 〈/:: : /: : :!rc、、   、  |: : : /∨|: : : : : : |  負け越しは、その場所で【黒星】が【白星】より多かった
   /:/: : : :i: : : :、:ゝ': : :/:: : :|ヽ\\  丶 .|: : / 、.|::!: : : /: : !  ていうことなんだ
.  /:/!: : : : ',: : : : V: : : |: : : : | l//|.\ン   .!:./  ∨: : /: : :,i  
.  |/ |: : : : : ゝ: : : :\: :|: : : : |  .! j     /、─ ノ: :,イ: : : /  私は前の場所の成績が良かったからセーフだけど
    ゝ: >イ三三ニ=、.: : : /  ノ/´゜  _ \\イ/::|: : :/ !  何度も負け越すと下のステージに戻されちゃうよ~
    ∠三三三三三三ハ: /   /。゚     ' //!ヽJ: : : .!: /!! |
  /三三三三三三三ニ| \ノ/ < フ    し': : : : :レ' ノ .,
. /三三三三三三三三ニ|\ゝ'、    `    ノ: : : : : : :!'  ノ
. /三三三三、三三三三ニ|  \/|`ー――<|:/: : : : : :j,イ/
/三三三三三、三三三三jレ‐´ ̄ヽ三ヽ:/´.j/: : :,: : :/ ´
三三三三三三',三三三=|´三ニ=、 `}三ニ、 /: :./|:/
三三三三三三 ',三三=∨三三三',ノ三三|  ̄   '
∨三三三三三ニ',三三/三三三三', }三ミj




唯「どすこーい、どすこーい!」ドスドスッ

兄弟子1「もう休めよ……俺たちも相手しきれないぞ」

兄弟子2「ハァハァ…こっちがかわいがりを受けてるみたいだぜ」

唯「じゃあ他の部屋に遠征して来まーす!」

唯「たーのーもー!」

兄弟子1「あ、おい……」

親方「……」



律「唯、初めて負け越したのがショックだったのかな」

呼出見習い1「それにしても、あんなに無茶して……ガリガリじゃないか」

律「普通にみればポッチャリですけどね」

呼出見習い2「相撲界にいると心配なほどガリガリに見えるふしぎ」

呼出見習い1「でも、身長も伸びたよな」

呼出見習い2「見下されるもんな」

律「ちゃんこと稽古のおかげですかね」


唯はもはや普通の女の子ではない、見た目も立派な力士だ。
身長は170を超えたし、体重も……今は痩せてしまったが前は80?あった。

私も毎日練習をしていたら、前よりも甲高い声じゃなくなった気がする。
まだ幕下でさえ本来の呼出はさせてもらえていないけれど。

でも、力士の世話のときにテレビでたびたび映るので、今では私のほうがイロモノ的存在だ。
まあ「美少女呼出」なんて言われるのは悪い気分じゃない。



唯「勝てない……」ショボー


次の場所、なんとか勝ち越しはしたものの、唯は十両に昇進はできなかった。


3

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