唯「どっこいしょ」

律「げふー」

澪「……」ボリボリ

紬「よいしょ」ガチャ

梓「う゛えっくし!!」

さわ子「……」


さわ子「私が言うのもなんだけど、あなた達もう少しおしとやかに出来ないの?」

律「華の女子高生を捕まえて何言ってんだよ」

さわ子「いいえ、今のあなた達はまるでおっさんよ」

さわ子「いい? 年長者として忠告しておくけど、オッサン化はとても恐ろしいのよ」

唯「関係無いよー」グデーン

さわ子「それよ!」

唯「ほえ?」

さわ子「女子高ゆえの罠……」

さわ子「男子の目が無い事に対する気の緩み、気心の知れた友達だけの閉鎖的な状況」

さわ子「素の自分を見せれてしまう甘え」

さわ子「それらが積み重なった結果、あなた達はもうオッサンレベル3……りっちゃんに至ってはレベル4にまで達しているわ!」

律「おおげさだなー。私は可憐な乙女だよ」

さわ子「どこの世界にあぐらかいてパンツ見せてる乙女がいるのよ」

律「だって唯達に隠すのも面倒なんだもん」

唯「だねー」

梓「胸元だって苦しいですし、ボタン三つくらい開けちゃうです」

さわ子「恥じらいを持ちなさい!」

紬(先生が言うのね……)

澪「確かに先生の指摘も最もですが、他人の目があるところではちゃんとしてますよ?」

さわ子「甘い!」

さわ子「自分ではちゃんとしているつもりでも、染み付いた癖はなかなか隠せないのよ」

さわ子「付け加えるならあなた達、女子高に慣れ過ぎて男子と話せなくなってるわよ多分」

梓「別に話す機会ありませんよ」

さわ子「大学で一人ぼっちになってからも同じ事が言えるかしら?」

さわ子「ハッキリ言って、女の友情なんか男の前じゃ紙くずよ」

さわ子「このままじゃ全員便所飯よ~」

澪「ひぃぃぃ」


紬「私は女子大希望なんですが……」

さわ子「同じ事よ。いくらお嬢様でも、親父臭い子なんか相手にされないわ」

紬「そ、そんな」

唯「か、彼氏なんかいらないもん! ギー太がいればいいもん!」

さわ子「強がりはよしなさい」

さわ子「何も男漁りをしろなんて言わないわ。人生経験として異性の友達も大事よ」

さわ子「何を隠そう、私も大学生の時はぼっち気味でね……」

さわ子「ま、私の場合はオッサン化よりも高校時代の性格が抜けなかったせいなんだけど」

律「さわちゃん……」

さわ子「あなた達には同じ思いを味わって欲しくないの!」

澪「せ、先生! 私、女の子に戻りたいです!」

さわ子「任せなさい!」


さわ子「まずはあなた達がどれだけオッサン化してるか自覚してもらうわ」

唯「そんに酷いかなー」

さわ子「唯ちゃん、一回部屋を出てからまた座ってもらえる?」

唯「? いいよー」

ガチャ


さわ子「よく見ておきなさい」

梓「ゴクリ」


ガラッ

唯「うぃーっす」

唯「よっこいしょっと」ドタン

紬「!」

さわ子「ムギちゃんは気付いたようね」

律「何が?」

唯「普通に座っただけだよ?」

梓「ですね」

澪「……座る時に『よっこいしょ』」

さわ子「半分正解ね」

紬「本当の問題は座る姿勢よ」

紬「スカートを整えて座らなければいけないのに、唯ちゃんはそのまま座った」

紬「つまり、今の唯ちゃんは椅子に生パンツをつけて座ってるのよ!」

梓「言われてみれば!」

律「座ると同時に全体重を背もたれに任せるのもオッサン臭いな」

唯「えー、タイツ履いてるから生じゃないよー」

さわ子「そこ重要じゃないから」

唯「でもでも、別にパンツが見えるわけじゃないし……」

律「おまけに唯がどけば尻の温かさが直に残るしな」

さわ子(りっちゃんは重症ね)

澪「けどまぁ、女の子らしくは無いよなぁ」モゾモゾ

梓「……」モゾモゾ

紬「今、整え直したわね」


さわ子「いつどこで誰が見てるか解らないんだから、きちんとしなさい。大体シワになるでしょ」

唯「面倒だー」

さわ子「唯ちゃん、天然属性に賞味期限が無いと思ったら大間違いよ? ある日突然ただのズボラ扱いになるんだから」

唯「目がマジだよさわちゃん……」


さわ子「ほらほら、背筋は正しく」

唯「うえぇ、窮屈」ピシッ

澪「なんだか姿勢が良いと優等生に見えるな」

唯「え、そう?」

梓「無邪気な笑顔とのギャップがたまらんです!」

唯「えへー」

さわ子「梓ちゃんと澪ちゃんの評価が、そのまま男子の評価と思いなさい」

律「男に媚びるなんて嫌だね」ホジホジ

さわ子「あら? 使いこなせば便利よ?」

さわ子「遊ぶお金と車くらいは心配しなくて良いわ」

律「そんなに上手くいくかね」

さわ子「唯ちゃん……この台詞を……上目遣いで……」ボソボソ

唯「えっと……男くん、お腹空いてない? 良かったらお昼ご飯一緒に食べない?」

唯「えへへ、この学食ランチ食べてみたかったんだ……あ、でも小銭が無いや~」チラッ

律「しょうがないな、俺が……はっ!」

律「あ、ありのままに今起きた事を話すぜ……考えるより早く財布を出していた……」

さわ子「このように、女の子らしさを取り戻す事は人生において幅広いメリットがあります」

梓「でもなんか卑怯じゃないですか?」

さわ子「向こうが勝手に出すんだから良いのよ。決して『奢れ』とは言ってないんだから」

梓「大人ってずるい」

澪「まぁまぁ、そこは個々人の差って事で」

律「よーし! 私も女の武器を手に入れるぞ!」

さわ子「りっちゃんは一番オッサン化してるから最後よ」

律「え」


さわ子「次はそうね、澪ちゃん辺りかしら」

澪「私ですか」

梓「見たとこ澪先輩には問題は無くないですか?」

紬「そうねぇ……少し手が出やすいところかしら」

澪「あ、相手は選んでるぞ!」

律「余計質悪い」

唯「う~ん、澪ちゃんってよく体をポリポリしてるよね」

澪「な!」

紬「確かにテストで詰まったりするとよく頭かいてるわね」

澪「そ、そんなのただの癖だよ」

梓「さっき思いっきりお尻かいてましたね」

律「あとさー、澪って歩き方がノシノシしてるんだよな」

唯「うん、なんか『どけオラァ!』って感じだよね」

澪「わ、わざとじゃない!」

梓「基本的にいかり肩なんですよ」

澪「梓まで……」

さわ子(始まったわね……相手を落とす事で自分の順位をあげようとする女子サバイバルが)

紬「……」

さわ子(さすがにムギちゃんはそんな事しないわね)

紬「あと恥ずかしがりって言う割にはすぐ大声出すわ」

律「だな」

梓「です」

唯「間違いない」

澪「うぅ」

さわ子「鬼の間が生まれてしまった……」


澪「あぁ……自分ではしっかりしてるつもりだったのに」

さわ子「落ち込まないで澪ちゃん、これから直せば良いのよ」

澪「先生……」

さわ子「さ、まずはおしとやかに歩いてみましょう?」

澪「こ、こうですか?」ギクシャク

唯「ぷー!」

律「ろ、ロボットダンスみてぇだ!」

梓「げらげら」

紬「……」クスクス

澪「笑うな!!」

さわ子「澪ちゃん、声を落として手を引っ込めなさい」

澪「あ……」


さわ子「ふぅ、澪ちゃんは我慢を覚える事が必要ね」

律「澪は忍耐力無いからなー」ニヤニヤ

唯「からなー」

梓「割と嫌って言いますしね」

紬「接客業には不向きね」

澪「ぐっ!」

澪(が、我慢だ、覚えてろよこいつら……)

澪(女の子っぽく、女の子っぽく)

澪「……」ジワ

唯「あ」

律「な、泣く事ないだろ」

紬「ご、ごめんね澪ちゃん!」

梓「ごめんなさいです!」

澪(なんだ、意外とチョロいじゃないか)


澪「……」シズシズ

律「やっべ、大人しい澪襲いてぇ」ジュルリ

梓「押し倒したいです!」

唯「なんだかお姉様って呼びたい」

紬「是非呼ぶべきよ」

澪「なに? 唯」

唯「はぅぅ!」

唯「澪ちゃんに目線を向けられただけで胸が痛い……」

澪「ごめんね、私ってガサツだから」

唯「そ、そんな事無いです~」

澪「ふふ、唯は優しいね」ナデナデ

唯「あぁ、お姉様……」

梓「唯先輩が懐柔されてしまった」

紬「先生、次は私に指導を!」

さわ子「は、張り切ってるわね」


律「ムギこそオッサン臭いところなんか無いだろ」

梓「容姿言動ともにまさにお嬢様ですよね」

さわ子「甘いわね、見えてるところが全てじゃないわよ」

律「内面って事?」

さわ子「もっと単純よ。ムギちゃん、腕捲くってみて」

紬「?」グイ

さわ子「唯ちゃん触ってあげて」

唯「了解~」スリスリ

紬「やん、くすぐったいわ」

唯「ムギちゃんは相変わらずスベスベだね~二の腕も良い意味でプニプにしてて……なんじゃこりゃぁぁぁっ!?」

澪「ど、どうした?」

唯「ガチムチ……ガチムチのムギちゃん……ガチムギだよ……」バタン

梓「倒れるほどの衝撃を与えた!?」

さわ子「毎日毎日、しっかり中身の入ったティーポッドやらアンプの移動をさせてたらそうなるわよ」

紬「そういえば最近、なんだか腕が太くなった気が……太ったんじゃなかったんですね」

さわ子「そう、それはただひたすら純粋な筋肉よ!」

澪「アスリートってわけでもないのに」

律「ある意味一番きついな。女にとっては」

梓「お嬢様が脱いだらマッチョでしたって、どんな地雷ですか」

紬「だ、ダイエットするわ!」

さわ子「筋肉と脂肪は違うわよ。おまけにムギちゃんは筋肉がつきやすいみたいだし」

紬「どうすれば良いんですか!?」

さわ子「簡単なのは体のラインの出ない服を着ることだけど……いざって時に困るものね」

さわ子「さしあたっては筋トレ的行為を避ける事かしら」

紬「わかりました! もうお茶の用意も機材運びもしません!」

律「おい」


律「お茶はとにかく機材運びは……」

紬「嫌!」

澪「ムギが一番力あるんだし」

紬「嫌!」

梓「アンプ運びのプロじゃないですか」

紬「嫌!」

さわ子「余程ショックだったのね」

紬「こ、こんなバキのキャラみたいな腕は嫌!!」

唯「お、落ち着いてムギちゃん!」

梓「復活した」

唯「バキは言いすぎだよ! せいぜいドラゴンボールくらいだよ!」

紬「嫌ぁぁぁぁっ!!」


紬「こんな腕無くなれば良いの!」ギラリ

梓「包丁だけはダメですー!」

澪「早まるんじゃない!」

唯「うわぁぁぁ! ムギちゃぁぁぁん!!」

紬「離して! いらないわよこんな腕!」

律「おいおい、切るために力込めたらまたマッチョになるぞ」

紬「あ、う」

律「アホは止めて包丁貸せ」

紬「うぅ……りっちゃん!」ギュ

律「よしよし」

さわ子(筋肉は置いといて、ヤンデレお嬢様はいけるわね……)

唯「さわちゃん?」

さわ子「なんでもないわよ~」


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