梓「そ、そんな・・・」

紬「ま、待ってタラちゃん。梓ちゃんはまだ・・・」

タラヲ「そんなの関係ないで~す」

マスオ「そうだよ~。タラちゃんがそう言ってるんだからちゃんと従って欲しいですね」

唯「あずにゃん・・・」

カツオ「それじゃあぼく達はこれで」

タラヲ「明日お迎えの人を送るですから、ちゃんとユイノーの仕度をしておいてくださ~い」

マスオ「はいタラちゃん、籠だよ~」

タラヲ「はいパパ~」

 磯野一家は籠に乗って帰っていった。


澪「ど、どうしよう・・・このままじゃ梓がタラヲのお嫁さんにされちゃう」

唯「あずにゃ~ん、え~ん」

梓「・・・」

紬「梓ちゃん、私達が必ず貴女のことを」

梓「いいです」

紬「え?」

梓「私、磯野家の人間になります」

律「お、おい梓お前・・・」

梓「皆さんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいきませんから」



~翌日~

ノリスケ「すみませ~ん」

タイ子「梓ちゃんをお迎えに上がりました~」

紬「」

ノリスケ「あ、ムギちゃん」

タイ子「梓ちゃんを連れてきてくだいませんか?」

紬「断ります! 私達は梓ちゃんを貴方達には渡しません!」

タイ子「あの、それで本当によろしいんですか?」

律「当たり前だ!」

ノリスケ「おやおや? 暖簾の奥からみんな出てきて。何のつもり?」

澪「か、帰れ! この金の亡者!」

唯「もう来ないで下さい!」

タイ子「あらあら」

ノリスケ「どうする? タイ子?」

タイ子「梓ちゃんを連れて行かなきゃタラちゃんに申し訳ないわ。だってもう式の準備をしてるんですもの」

ノリスケ「そうだよねぇ」

澪「そんなのそっちの都合だろ? こっちにはそんなこと・・・」

タイ子「関係ないっておっしゃるの?」

律「そ、そうだ!」

ノリスケ「だあっーーー!!」

澪「ひっ・・・!」ビクッ

ノリスケ「ぼく達にだってね、君たちの都合なんか関係ないんだよ」

タイ子「うふふ」

ノリスケ「君たちがそういう態度をとるんならこっちにも考えがあるんだからね」

紬「な、何をするつもりですか!?」

タイ子「こうするのよ!」

梓「きゃっ!」

 タイ子は梓を抱きかかえると、彼女を肩の上に乗せて屋敷の外に飛び出した。

律「あ!!」

ノリスケ「じゃあね、琴吹屋のみなさん」

 ノリスケもタイ子の後を追って屋敷を出た。

律「まずいぞ! あいつらを追うんだ!」

唯「うん! 絶対あずにゃんを取り返すもん!」

 四人は波野一家を追いかけた。



タイ子「はぁはぁ」

ノリスケ「大丈夫かい?」

タイ子「ええ。少し重いけど運べない重さじゃないわ」


唯「まてぇ~~~!」


ノリスケ「あの子達まだ追ってくるよ」

タイ子「どうします?」

ノリスケ「よ~し、ぼくがあいつらを引き止めておくからタイ子は早くタラちゃんの屋敷へ」

タイ子「わかったわ。ノリスケさん」

 タイ子はノリスケにウインクをすると、磯野家に向かって韋駄天走りに走った。


律「あ、梓を返せ~~!」

ノリスケ「うるさい!」バキッ

 Uターンして引き返してきたノリスケが律の額を殴りつける。

律「うわ!」

澪「律!」

 すると、倒れた律に気を取られた澪をノリスケが両手で持ち上げた。

ノリスケ「はは、やっぱり女の子は軽いなぁ」

澪「う、うわああああ!」



八兵衛「あれ? なんだありゃ」

光圀「ん・・・あれは・・・助さん、格さん」

助格「はっ!」

 偶然道を通りかかった旅の一行が、四人の少女相手に大暴れする角刈りの男を発見した。


ノリスケ「わはははは! このまま真っ逆さまに落としてやる!」

澪「や、やだあああ!! 下ろしてえええ!」

唯「澪ちゃあああん! 誰か助けてえええ!」


助さん「止めろ!」

ノリスケ「え?・・・あふっ!」

澪「きゃっ!」ボトッ

格さん「おっと」パシッ

唯「ほっ」

ノリスケ「な、なんなんだお前達は!」

ノリスケ「ぼくは磯野一家の人間だぞ!」

助さん「それがどうした」

ノリスケ「生意気な!」

 ノリスケは脇差を懐から取り出し、助さんに飛び掛った。
 しかし、あっという間に刃物を取り上げられ、顔面に拳を食らわされてしまった。

ノリスケ「は、歯が・・・」ボロッ

格さん「まだやるか」

ノリスケ「お、覚えてろよ! 磯野一家に刃向かったらどうなるかとっくりと叩き込んでやるからな!」



~その後~

光圀「なるほど」

助さん「紬さんの家に奉公に来ていた娘さんを磯野一家とかいう輩にかどわかされてしまったわけですね」

紬「はい」

八兵衛「そいつぁ酷い話だ」

律「私達はみんな貧しい村の出なんだけど、そんな私達をムギが雇ってくれたんだ」

唯「あずにゃんもその一人だったんだよ~」

光圀「ふむ」

格さん「それにしてもその磯野一家という奴らはどんな奴らなんでしょうか、ご隠居」

光圀「少し探りを入れてみますかな」



~磯野家~

波平「ばっかもん!!」

ノリスケ「ひ!」

タイ子「すいません、おじ様!」

波平「折角タラちゃんが晴れ着まで来て待っておったのに! 嫁を連れてこないとはどういうことだ!」

ノリスケ「は、はいそれが・・・急な邪魔が入りまして」

タイ子「わ、私も風車を持った変な人に梓ちゃんを連れていかれて・・・」

波平「言い訳などいらんわ!」

ノリスケ「ご、ごめんなさひぃい!」

 ノリスケ達が地面に額をこすりながら土下座をする。

フネ「まぁ過ぎたことは仕方がありません」

 襖の奥から女性の影が現れる。

フネ「問題はどうけじめをつけるかです。ね、お父さん」

波平「そうじゃ」



~琴吹屋~

光圀「ほぉ・・・ここが紬さんのお店ですか」

紬「はい。しがない海鮮問屋です」

八兵衛「確かにばっちぃ所ですね」

助さん「八!」

律「まぁほんとのことだしな」

格さん「しかし、その割には屋敷自体は結構な大きさで」

助さん「外から見えた蔵も立派なものだったようだし」

唯「それには訳があるんです・・・」

八兵衛「わけ?」

光圀「磯野一家の事ですな?」

澪「ど、どうしてそれを?」

光圀「まぁまぁ。どれ、一つわしらに話をしてみなされ。もしかしたら力になれることがあるかもしれん」

八兵衛「そうですよ。うちのご隠居はそれはそれは有名な・・・」

格さん「八!」

紬「・・・元々うちは藩の商を一手に受ける大問屋だったんです」

光圀「ふむ」

紬「ですが、やくざものだった磯野一家が海鮮問屋を開いてからはそちらが藩の御用達になってしまいました」

助さん「それはおかしな話ですね」

格さん「やくざが始めた店がいきなり御用達だなんて。ご隠居」

光圀「確かにこれは裏があるようじゃな」



~川原~

ノリスケ「た、たすけてくれへぇえ!!」

タイ子「いやああ! 死にたくないいい!」

イクラ「ちゃあああん!」

 そこには簀巻きにされた波野一家と、カツオとその取り巻きたちが居た。
 (簀巻き→ぐるぐる巻きにして身動きをとれなくする)

カツオ「ごめんねノリスケさん。これもタラちゃんの希望だからさ」

ノリスケ「ぼ、ぼく達親戚だろう!?」

タイ子「なんとかタラちゃんを説得して! お願いカツオちゃん!」

カツオ「う~~~ん」

中島「おい磯野。あんまり迷ってるとお前もやばいんじゃないのか?」

橋本「そうだぜ磯野。ちゃっちゃと沈めて野球でもしようぜ」


カツオ「よ~し・・・それじゃ投げ込むぞ~」

中島「へい」

ノリスケ「う、うわあああ!」

タイ子「イクラだけは! お願い! イクラだけは助けて! あの子は何にもしてないの!」

カツオ「そんなの知らないよっ!」

橋本「投げるぞ~! 1・2の3!」ポイッ

中島「えい!」ポイッ

カツオ「えぇ~い!」ポイッ

ノリスケ「うあたすげぷごぽぽぽぽ・・・」

 筵(藁で編んだ敷物)で体をぐるぐる巻きにされた波野一家はぶくぶくと音を立てながら沈んでいった
 水を吸った藁が三人の体に絡みつく
 三人に残された道は二つのみ
 このまま溺死するか、
 あるい流れに流れ、息が切れる前に水中の岩に衝突して激突死するかだった



~琴吹屋~

弥七「ここがおめぇさんの奉公先かい」

梓「はい」

唯「あ! あずにゃんだ!」

梓「唯先輩!」

唯「心配したんだよ~、無事だったんだね~」

光圀「弥七か」

弥七「これは・・・ご隠居」

律「ん・・・この人爺さんの知り合いなんか?」



~磯野家~

タラヲ「いやです~、ぼくは今日梓ちゃんと結婚したいんです~」

波平「おぉ・・・タラちゃんや・・・そんなに泣かんでおくれ」

タラヲ「うわ~~~ん!」

マスオ「お父さん、ぼくが行ってきましょうか?」

フネ「わざわざ本家の人間が出向くというのもよくありませんよ」

サザエ「そうよマスオさん。そんなんじゃお嫁さんが調子に乗っちゃうわ」

マスオ「そ、そうかなぁ・・・」

波平「女は男に従うもの。夫の家族が嫁の送り迎えなんぞできるか!!」

サザエ「でもそれだと困るのよねぇ・・・」

 すると、戸をピシャリと開き一人の少年が現れた。

カツオ「みんな。この件はぼくに任せてよ」

波平「なにぃ?」

フネ「出すぎたことを言うんじゃありません」

カツオ「でもそれだといつまで経っても梓ちゃんはうちに来ないよ」

タラヲ「え~~ん! 梓ちゃんに会いたいです~~」

サザエ「・・・どうするつもりよ」

カツオ「梓ちゃんに自分から来てもらうんだよ。うちにね」

マスオ「えぇ!? そ、そんなことができるのかぃカツオ君!」

カツオ「まあね」

タラヲ「カツオにいちゃんにお願いするです」

波平「タラちゃん!?」

タラヲ「カツオにいちゃんにぜ~んぶ任せるです」

カツオ「そうこなくっちゃ!」


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