梓「ふう、困ったなあ。
  思わせぶりな態度とっちゃったけど、そもそもギターじたいをもってないのに売って、お金を工面するとか無理だから。
  ……あ、メールだ。真鍋先輩からだ」

和『ぁす〃さちゃωきょぅは∧〃んきょぅUT=(#^.^#)?』

梓「相変わらず、リアルのイメージとメールの内容が一致しない人だなあ。

  『ええ。今日は授業も集中してとりくみましたよ』っと」

和『このちょぅUでか〃ωは〃りなさぃょ!(^^)!』

梓「ベース爆破の件をチクられた腹いせに、嫌がらせしようとしてメアド聞いたのが間違いだったかも。
  メールボックスが真鍋先輩からのメールで全部埋まってるし……。
  そうだ。あのことを相談してみよう。

  『私、軽音部のみなさんにギター弾けるって嘘ついてるんですけど、どうしたらいいですか?』」

和『そぅレヽぇば ぁす〃±ちゃωッはTょレニけ〃レニけレヽぉん、ζ,〃レニはぃッてるσЙё?? 受レナゑ(藁)』

梓「『けっこうこっちはマジメに相談してるんですけど。
  生徒会執行部を務める真鍋先輩からなら、なにか助言を頂けるかと思ったんですが(汗)』……送信っと」


♪アノコハタイヨーノコマチエンジェエ-ル♪


梓「って、もう返信きた」

和『ナ=〃ッナ=らぁナょナ=がホ〃→ヵ儿ゃれは〃レヽレヽし〃ゃナょぃ(ノ><)ノ』

梓「『だったらあなたがボーカルをやればいいじゃない』。

……その発想はありませんでした。さすが、執行部を務めるだけありますね。
  うん、私がボーカルやろ。歌なら私でも歌えるし、そうしようっと」


キタエヌカレルドゥイッドゥイッドゥイッドゥイッヴェーイ!


梓「もういいや、真鍋先輩のメールは無視しよ。
  さて、さっそく土日明けにボーカルの件を伝えなきゃ」




数日後

梓「そういえば、純ってどこの部活にも所属してないんだっけ?」

純「まあね。最初はジャズ研に入ろうかと思ったんだけど。
  ストパーかけたりとか、髪の毛のケアでお金がかなりかかるからバイトしてるの」

梓「そこまで純の髪って長くないと思うけど」

純「そりゃあ梓に比べたらね。
  ……っと、もうこんな時間。あたし、バイト行くね」

梓「はいはい、ガンバ。
  私も部活行こうっと」



梓「こんにちわー」

唯「あずにゃーん!」ダキッ

梓「おやおや。唯先輩ったらいきなりそんな熱い抱擁なんて。
  ……ん? そんなにニヤニヤしてどうかなさいましたか?」

唯「えへへ。実は、わたしたちからあずにゃんに素晴らしいプレゼントがあるんだよ」

梓「プレゼント?」

紬「たぶん、見たら喜んでくれると思うよ」

梓「はあ……私が喜ぶものですか」

澪「……梓」

梓「なんですか、澪先輩? 相変わらずベッピンさんですけど」

澪「その……梓がベースを私にくれたおかげで、また練習ができるようになった。
  それで……お礼というわけじゃないんだけど、渡したいものがあるんだ」

梓「はあ、そうですか。私が澪先輩のベースを木っ端みじんにしたのに。なんかすみませんね。
  それで、私に渡したいモノとはなんですか?」

澪「ギターだ」


梓「\(^o^)/」

唯「あずにゃん。よっぽど嬉しいんだね。
  嬉しさのあまりバンザイしちゃうなんて」


澪「誤解のないように言っておくけど、これは私が買ったものじゃない。
  もちろん、ほかのみんなもギターを買ったりはしてない」

律「先週の金曜日にさ、澪が私に提案したんだ。
  もしかしたら部室のどこかにギターがあるかもしれないって。
  それで、実際に土曜日に私と澪と唯とムギとで集まって、部室全体を探してみたんだ」

紬「そしたら本当にギターがあったの」

唯「もともとはさわちゃん先生が親戚の人からもらったものらしいけど。
  あずにゃんのことを話したら、そのギターをあげるって言ってくれたんだよ」

澪「それがそのギターなんだけど。
  保存状態もいいし、たぶん使えるはずなんだ」

梓「…………」

唯「あ、もしかしてあずにゃんったら、嬉しさのあまり泣きそうなのかな?」

梓「ええ。すごく泣きたい気分です」



梓「適当に理由つけて、部活から抜けてきたけどこれからどうしたらいいんだろ。
  ギターをもらってしまった以上はギターを弾かなきゃならないし……本気で困った」


レディナビゲーションユアフレッシュ♪


梓「あ……澪先輩からメールだ」

澪『もしギターに不具合があるなら、楽器屋に見てもらうといいよ
  なんなら私のわかる範囲で見てもいいし
  まあお互いにガンバろ
  ファイティーン!!』

梓「……澪先輩ってわりといい人なのかな。

  ん……楽器店?

  そうだ! その手があった! こうなったら急いで楽器店に行かなきゃ!」



店員「いらっしゃいませー」

梓「あの、すみません。
  ギターを売りたいんですけど見てもらってもいいですか?」

店員「…………」

梓「な、なんですか?
  そんなにジットリ眺められても、困ることしかできませんよ」

店員「……いえ、失礼しました。どこかで拝見したことあるお顔だったような気がしたもので」

梓「気のせいでしょう。ええ、どう考えても気のせいです。
  それよりギターを見ていただきたいんですが」

店員「……そうですね。
   それではギターを拝見させてもらいます」



次の日

梓「こんにちわー」

澪「よっ、梓。
  昨日は帰ってからギターのほうは試したか?」

梓「…………」

唯「どうしたのあずにゃん?
  なんだかすごく、気まずそうな顔してるけど」

紬「もしかして体調がよくない?
  なんなら保健室にいっしょに行こうか?」

律「ていうか、梓。
  なんでギターをもってないんだ?」

梓「実は……」

唯「ホントに大丈夫、あずにゃん?
  なんだか顔色が悪いよ?」

梓「い、いえ……大丈夫です。それより私の話を聞いてください。
  実はギターなんですが……」

澪「なんだ?
  もしかして、思いのほか使えなかったとか、どこかに不具合があったりしたのか?」

梓「違います。

  ギター、売っちゃったんです」

律「(´Д`)」はあ!?

梓「より、正確に情報をお伝えするなら売られてしまったんです。
  澪先輩が私にくれたギターは」

澪「……どういうことだよ?」

梓「お恥ずかしい話なのですが、実は私の母は生粋のギャンブル狂でして……。
  毎日毎日、ほとんど欠かさずにパチンコや競馬をやるような人間なんです」

唯「パチンコはお金がなくなっちゃうからやっちゃダメなんだよ?」

梓「ええ、唯先輩のおっしゃるとおりです。
  実際、母はかなりの負債を抱えています。
  なのに、それにも構わず借金までしてギャンブル三昧でして……」

律「麻雀とかもやっちゃったりするわけだ」

梓「ええ。雀荘とか行きまくりですよ」

紬「それは大変ね」

澪「つまり、梓のお母さんは自分のギャンブルのために……その、ギターを売ったんだな……」

梓「ええ……。本当にすみませんでした。
  私がもっとしっかりしていればこんなことには……」

唯「あずにゃんはなにも悪くないよ。そういうこともあるよ」

梓「唯先輩……そうですね。
  悪いのは私の母のような人間であり、私の母みたいな人間を生み出してしまう社会ですよね」

澪「そこまでは言ってない」

紬「でも、これからどうしよう……」


梓(どうやら大丈夫みたいですね。なんとかごまかせたみたいです。
  まったく……お人よしな先輩たちです)


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