唯『それじゃあ、ここら辺でメンバー紹介を!』

『まずは顧問のがくちんです!』

『がくちんはまずいだろ!?』

『あっ…神威がくちんです!』

『それでもダメ!』


クスクス…


『がくちんはいつも優しくて、私たちを応援してくれています!』

ガク「おまえらー! 愛してるぞー!!」


キャー!




…この子たちの最後の学園祭ライブは、今までで最高のライブだった。

『それじゃあ最後の曲…U&I!』

相変わらず律のリズムキープはバラバラで…

でも澪と組むとしっかりとした土台になって…

唯の自信に満ちたギターの音はパワフルだけれどもどこか荒削りで…

けれどもそれをカバーするような梓の丁寧なプレーと合わさったギターサウンドはとても心地よくて…

紬のキーボードの音色がそれら全てを優しく包み込んでいるようなこの子たちの演奏は…



でこぼこな5人が助け合って…

引き出しあって奏でるバンドミュージックは、他のどんなにテクニックのあるバンドよりも胸に響き…

とても美しかった。

もう…僕はこっちにはいられないけど…

この子達なら大丈夫。

必ず行けるさ、武道館。

だから、絶対に諦めるなよ!

『みんな、ありがとー!』







律「なぁ和~! がくちゃん知らない?」

和「…? がくちゃん?」

唯「がくちんだよぉ~。 神威楽斗先生!」

和「神威ガクト… あぁ、GACKTのこと?」

和「…そんな噂、どこで聞いたかは知らないけど、
たかが私立高校の学園祭に、そんな大物アーティストが来る訳ないでしょ?」

和「それじゃあ私、生徒会の仕事があるから行くわね」



澪「ガク…ト?」

梓「そんな…すっごく有名じゃないですか」

紬「なんで今まで分からなかったんだろう…」

律「それよりどういう事だよ!?」

律「さっきの和の反応じゃあ、私たちの…
ガクちゃんと過ごした1年半は、夢だったみたいじゃないか!?」

唯「りっちゃん…」

紬「…とりあえず、部室に行きましょう …もう使えるみたいだから」




いつもと同じ部室…

いつもと同じ紅茶とケーキ…

何もかも、いつもと同じなのに… 先生がいないだけで、こんなに寂しくなるものなのか…?

なあ…帰ってきてくれよ…

ガクちゃん…



律「……」

唯「……」

澪「……」

紬「……」

梓「……」



唯「…?」

唯が、何かに気づいて机の中を漁っている…

こんなときくらい大人しくしてくれよ…

唯「ねえみんな」

一体何だっていうんだよ…

唯「これ、見て」カタンッ

唯「たぶんみんなの机にも入ってると思う」

澪「CDと…手紙?」

紬「これって…」

梓「もしかして」

律「ガクちゃんの字じゃねーか…」



唯の言った通り、私たち全員の机に、私たち一人ひとりへ向けた手紙とCDが入っていた…

さすが顧問、私たちと発想が同じか…ハハッ

唯「それじゃあ、再生するね」

澪「あぁ…」

CDプレイヤーから流れてきたその曲は、軽快でいて、私たちの思い出を走馬灯のように思い起させるような曲だった…



『振り返ればほら、当たり前になっていた君の笑顔が』

『いつの間にかほら 優しい思い出になってしまった現実』

『目を閉じれば、今でも笑った君がいて』

『いつも、誰よりも勇気を僕にくれたこと』

『BLACK STONE』

『突然現れて、ふざけて馬鹿をやったりした そんな何でもないことが』

『かけがえのない程の宝物になっていた あの日の現実』

『目を閉じれば、今でも笑った君がいて』

『いつも傷ついた僕を癒してくれる』

『寂しい時も 笑っているから』

『僕の側にはそう、君が… 君がいるから』


『ただ寂しがりの君をいつも憎めなくて…』


『目を閉じれば、今でも笑った君がいて』

『いつかまた必ず逢えると 信じているから』

『約束したから』

『BLACK STONE』





梓「夢なんかじゃ…ありませんよ」

曲を聴き終わったとき、私たちの目からは涙が溢れていた。

紬「そうね…それに、悲しむことなんてないわ」

澪「ああ… 先生、言ってたもんな」

唯「『必ずまた会える』って」

だけど、その涙は悲しい涙なんかじゃ決してない。

だって約束したもんな?

私たちの為に、歌ってくれるって…

律「そうだな。 いつまでも泣いてたら、ガクちゃんに笑われるよな」

律「次に会ったときに」

そして、私たちはあの日に貰った黒い石のブレスレットを…

仲間の印の、あのブレスレットをそっと撫でた…



『夢は見るものじゃない。 夢は叶えるもの』

『夢を叶えること。 それは、強い意志を貫くこと』

『お前たちの未来に期待しているからな!』

『必ず行けよ? 武道館!』

『by 神威楽斗』



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