さわ子「……なぜ」

律「忘れんなって。私が早撃ちカチューシャ様だぞ」

さわ子「すごいわね……どっちみち私なんかじゃ、はなから敵わなかった

のかも」

律「自責……あんた、悩んでたんだろ。ほんとにこれでいいのかって!」

さわ子「……」

律「だったら自殺なんて馬鹿げたことする前にやることがあんだろ!!」

さわ子「……」

律「生徒に説教させるなよ!」

さわ子「……」

律「自殺するくらい自分を責める前に! まずはみんなの未来に貢献して

みせろ! あんたはそれができる人間だろ!!」

さわ子「……かもね」

さわ子「すこし、考える時間を頂戴。大丈夫、逃げたりしないから」

律「……信じるよ、さわ子先生のこと」

さわ子「……ありがと」

律「全国からシューターをリコールするんだ」

さわ子「私一人の権力じゃどうにもできないけど」

律「だからさ、今から私があの会長をなんとかする!! 説得して、そう

なるように動いてもらうんだ」

さわ子「一筋縄じゃいかないわよ」

律「任せろって! いままでピンチは何度もくぐり抜けてきた!」

さわ子「……ふふ、頼もしいわね」

さわ子(やり直しか……こんな歳からできるのかしら)

さわ子(調子いいわよね。さんざん人をひどいめにあわせてきて……はは

……)

さわ子(全部終わったら自首も、しなくっちゃ……)



……


【G号棟】

屋上部


 私と唯先輩は、戦いの舞台を連絡橋から屋上へと移していた。

 広々した場所でやり合いたい、それが唯先輩の希望だったから。

 私だってそっちのほうが都合がいい。

 ムギ先輩が破壊の限りをつくした隣の建物は依然炎でおおわれいる。

 赤い光に照らされた唯先輩の顔が、すこし怖かった。


唯「あずにゃ~ん♪ やっと相まみえるときがきたんだね」

梓「……ですね」

唯「こんな可愛い後輩といまから全力でやれるとおもうと、ドキドキがと

まらないよぉ……えへへ」

梓「……おしっこしていいですか。いまこれに詰まってるのはだれのか知

らないおしっこなんで」

唯「ん。いいよ~あずにゃんのおしっこするとこ見せてー」

梓「わかりました」

 こんな状況でおしっこをすることになるとは、少し前までなら考えもつ

かなかっただろう。

 私はひとまずシューターを下において、女の子らしい水色の下着に手を

かけゆっくりと下ろしていく。

 例によってあそこに触れる部分には小さい染みができていた。おねしょ

というほどではないが夜寝るといつもそう。

 私の膀胱管理とやらはまだうまくいってないようだ。

 シューターを両手で拾い上げ、幼い秘裂にそっと給水口をあてがう。

 ひんやりとした感触に、すこし身震いしてしまった。


唯「ほほぉ! あずにゃんは一度しゃがんでからおしっこするんだね! 

可愛いなぁ」

梓「うるさいです」

唯「はやくしゃーしてよしゃー、ん、じょぼぼぼかな?」

梓「……ん」


 勢いよく噴き出る私の全てがつまった水。

 淫猥な音をたて、臭いをたちこめさせながらシリンダーを徐々に満たし

ていく。

 見られてる、おしっこするとこ唯先輩に見られてる。

 放尿の快感もあいまって、すこしだけ頬が蒸気した。


唯「終わった?」

梓「ええぇ」


 きっちりとキャップをしめる。

 たっぷんたっぷんに満たされたシューターが光を受けギラリと光る。

 まるで私が引き金をひくのをいまかいまかと待ちかまえているように見

えた。


梓「……セイフティ解除」

唯「うん! そうだね! それでいいよ!」

梓「……戦うまえに一つたずねていいですか?」

唯「んぅ?」

梓「また、みんな仲良く暮らせますよね?」

唯「……さー、わかんない!」

梓「そうですか…………いま、助けてあげますから、唯先輩」


 轟々と燃える炎を背景に、私と唯先輩の戦いがはじまった。


 まずは牽制のつもりでトリガーを指をかけ、そのまま発砲。

 ケタ違いの威力を孕んだ尿弾が唯先輩にむかってまっすぐ飛んでいく。


唯「わぁ! それがあずにゃんのだしたてほかほかおしっこ!?」

梓「あたって!」


 思いも虚しく、唯先輩は軽やかに身を横に振り回避する。

 と同時に私の足元ににむかってとびっきりの尿の塊を発射。


梓「くっ」


 私は真後ろに大きく跳躍して事なきを得る。

 一メートル手前は唯先輩のおしっこでコンクリートがえぐれている。


梓「なんて威力!」

唯「えへへ。シュー太二号はお利口さんだね。反動もすくないし、エネル

ギー効率もいいみたい!」


梓「それはよかったですね」

唯「あずにゃんはどう?」

梓「こっちもなかなか……」

梓「いい感じですよ!!」


 声を荒げトリガーを引く。

 ずしんとした重たい衝動。

 いくら反動が軽くなったとはいえ、放出するおしっこエネルギーの総量

自体が跳ね上がっているのだ。

 闇夜を切り裂きながら突き進む弾丸。

 回避運動を妨害するために間髪入れず二度三度と連続で撃ちこむ。


唯「いいね! それだよそれ! やるかやられるか、己の判断力と身体能

力だけにたよった危険な駆け引き!」

唯「この瞬間こそ、私は『生』を実感するよ」


 唯先輩は笑いながら、私の弾丸を撃ち落とす。

 轟音が響き渡り、おしっこの飛沫が四散する。


唯「ふ、当たらないとイライラするよね」

梓「!」

唯「でも教えたでしょ? どんなときでも心は冷静に、だよ」

梓「しってます」


 狙いをつけて砲撃。


唯「はい外れ」

梓「唯先輩におしえてもらったこと、全部実践していままで戦ってきたん

です!」


 繰り返し砲撃。


唯「んー、これも当たってやれないなぁ」

梓「くっ!」

唯「次はこっちの番かな?」

 唯先輩の鋭い眼光がこちらを捉える。

 間違いなくシューター狙いではなく、私の体そのものを撃ちぬく気だ。


唯「血の海に沈めてあげる~」


 おぞましいほどの満面の笑顔で速射する唯先輩。

 いくつもに連なった殺意の弾が私の小さな体を切り裂こうと飛来する。


梓「よけなきゃ!!」


 左足に力をいれてそのまま真横に跳躍。

 すんでのところで回避はできたが、次に迫りくる弾が肩口をかすめる。

 シャツが破け、肩が露出する。すこし血が滲んでいる。


梓「あっ」

唯「お~ごめんよぉ。一発で楽にしてあげたかったんだけどあずにゃんが

よけちゃうから」

梓「……」

唯「ほらほら! 踊りなよあずにゃん!!」


 声を荒げながら唯先輩は残弾をまるで気にすることなく撃ち続ける。

 このまま撃たせ続けて弾が切れたら。私の勝ちだ!

 補給なんてさせるもんか!


梓「つッ」


 だからいまは凌ぐだけ。

 腕を、足を、頬を、脇下を弾がかすめ飛んでいく。

 とても体中が熱い。

 傷も熱をもち、隣の炎はさらにそこを焼き焦がすようだ。


梓「もうすぐ、もうすぐ尽きるはず」


 しかしそんな願いは一瞬のうちにして闇夜に葬られてしまうのだった。

 唯先輩がのこり少ないシリンダーを軽くのぞき込みながら口元をつりあ

げる。


唯「ブレードモード展開」


 そうつぶやくと、駆動音とともに唯先輩のシューターのまわりの大気が

振動する。

 なんだアレは。

 残り僅かなおしっこが銃口から噴出しまっすぐに伸び、収束。

 みるみるうちに刃のような形を成形する。

 そしてそれはそのまま重力に逆らい続け、銃先で形を保ったままあらた

な武装となる。


唯「おしっこシューターブレード」

唯「タカラ◯ミーが新規に開発した特殊バレルによって実現可能になった

近接用最終兵器だよ」

梓「嘘……」

唯「これはおしっこを切り離す必要がないからね。刃が削れないウチはほ

とんど無消費で使える」

唯「ど? かっこいいでしょ」


 ブォンという風切り音と共に唯先輩がブレードをその場で鋭く振り回す


 想像を絶した機能だった。


梓「それで私は切り裂くんですか?」

唯「私のおしっこ大好きでしょ?」

梓「……」

梓「剣と銃ならこっちの方が有利です!」

唯「どうかな」


 照準をあわせてトリガーを引く。

 尿弾は月の光をとりこんで宙を駆ける。

 しかし唯先輩は左右に避ける様子もなく、ただ接近するのを見守ってい

る。


梓「!?」

唯「ふふ」


 直撃するわずか手前、唯先輩は大きくブレード振り、尿弾を完全に切り

払う。


梓「なっ!」

唯「軽いねぇ」

梓「弾丸を切り払った!?」

唯「おしっこシューターブレードは攻防一体」

梓「……」

唯「さぁ、そろそろ終わりにしようよ!!」

梓「この距離からでは撃ちぬけない……ならば!!」

唯「いくよあずにゃん!!」


 力に飲み込まれた唯の黒い陰が、コンクリートを蹴り猛スピードで梓へ

と肉薄する。


梓「ッ!! 唯先輩!!!」


 梓はそれめがけて何度か発砲するが、全て軽くいなされる。


唯「あずにゃんあずにゃん! 可愛いあずにゃん!!」


 唯が狂気にも似た笑顔を浮かべた次の瞬間。繰り出されたブレードによ

る鋭い突きが梓の腹部を貫いた。 


梓「あ……ッ……ぁあ……!!! く、唯せんぱ……」


 おびただしい量の鮮血が闇夜を舞う。どうみても致命傷だ。

 しかし私の体はまだ動いていた。

 決して攻撃を回避できかったわけではない、私はただ、自身を囮にした

だけだ。

 力を振り絞り唯先輩の腕を、体をつかみ、引き寄せる。

 おしっこの刀身がさらに深く突き刺さり身をえぐる。


梓「うぁあああっ!! ……ッ!!」

唯「あずにゃ……ん?」


 唯先輩は私の命を顧みない行動に驚いて、身を強ばらせる。

 そのままお腹にささったシューターに自分のシューターの銃口をおしあ

てすぐさま発砲。

 身を裂くような痛みとともに唯先輩のシュー太二号は粉々に爆散した。


……


唯「あずにゃん、臭い」

梓「……」

唯「おしっこまみれだよ。シュー太、爆発しちゃった」

梓「……」

唯「あずにゃん。痛い?」

梓「……」

唯「すごいねあずにゃんは。びっくりだよ」

梓「……」

唯「いい子いい子……」ナデナデ

梓「……」

唯「血、とまらないね。かわいそうに」

梓「……」

唯「あれ、おかしいな……」

唯「わぁ見て! 綺麗なお月様だよ!」

唯「あ! ヘリもきた! おーい!」

唯「こ と ぶ き って書いてあるよあずにゃん! ムギちゃんと何か

関係があるのかなぁ」

唯「ねぇあずにゃん! あずにゃんあずにゃん!」

梓「……」

唯「あずにゃん! 今度のおやすみに一緒に遊園地いこうよ!」

梓「……」

唯「ねぇあずにゃん……返事してよー……」

とみ「終わったのかい唯ちゃん」コツコツ

唯「あ! おばあちゃん! あのね! あずにゃんがこんなとこで寝ちゃ

ったの!」

とみ「おやおや、それは寒いだろうに」

唯「あれ? なんでこんなとこにいるんだろう。てか何してたんだろうあ

れ?」

とみ「……唯ちゃん。そうなのね。……強力すぎる洗脳チップも問題だね

ぇ」

唯「おばあちゃん? あ! 今度の演芸大会あずにゃんと一緒にでるから

ね! たのしみにしてて!」

とみ「もういいのよ唯ちゃん。あんたはよく頑張った」

とみ「だから、あずにゃんさんと一緒におやすみなさい」チャキ

唯「えっ」

とみ「壊れた兵隊さんには用はないんだよぉ……」



……



 スコープを覗き込む。化物が唯にシューターを向けているのが映る。

 あいにく向こうまで駆けつけることはできない。

 私、秋山澪はすでに満身創痍だ。あの攻撃に巻き込まれて、体中を瓦礫

に引き裂かれてしまった。

 そのまま足は埋もれて動かないし、体の半分以上の感覚がすでにない。

 かろうじで左腕と首が動くだけ。耳もほとんど聞こえない。砂埃で目が

かすむ。


澪「だがまだ死んでない……」

 すさまじい激痛の中、腕一本でライフルを抱え、地面を這って行く。

 そして絶好の狙撃ポイントを見つけ出す。

 スコープが指し示す距離はおよそ700M。

 とっさに呟いた。 


澪「無理だ」


 たしかに私は1200Mのエイムに過去成功している。

 しかしそれは決して一発勝負ではない、コンディションも最高の時の記

録。

 いまはどうだろうか。こんなボロボロの体で、さらに風も強い。

 私の経験や、私をとりまく全てが、このスナイピングは不可能だと告げ

ていた。


澪「でも……唯が……このままだとみんな……」


 諦められなかった。


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