……

 おかしな夢をみたような気がする。

 確か、私は唯先輩とシューター……いやシューターではないかもしれな

い何かを構えた状態で向き合っていて、

 ただひたすらに喉がカラカラだった。

 唯先輩の表情はわからない。その場所がどこだったかもわからない。

 けどひどく印象的だったのは、そのあとすごく身体が熱くなったという

ことだ。

唯「おきようよー、あずにゃーん。朝だよぉー」

梓「……すー」

唯「ねー、りっちゃんもう偵察いったよー。私たちもいこー?」ユサユサ

梓「ん……あ、おはようございます」

唯「もう、あずにゃんったら寝すぎー」

梓「す、すいません……昨日はとても疲れてて」

唯「かもねー、あ、おはよう♪」ギュウ

梓「んにゃ……!? もう」

梓「唯先輩よく眠れました?」

唯「ちょっと寒かったけど疲れはとれたよ! あ!あずにゃん抱いて寝た

らよかったかな!」

梓「冗談はほどほどに、今日のプランはどうなってるんですか」

和「律と澪が偵察からもどったら、一度校内の数を減らしに戦力を半分動

員するわ」

梓「わ! 和先輩!」

和「みんな同じ反応するのね。悲しいわ」

梓「ごめんなさい……」

純「よし! 今日も私がんばっちゃおうかなー」

梓「……が、がんばってね。で、みなさん弾とか大丈夫ですか?」

唯「まぁこんだけあれば。あとは飲み物のんでなんとか継ぎ足していくし

かないね」

憂「梓ちゃんは?」

梓「私は大丈夫。ほら、私ってトイレ近いでしょ? ちょっと飲むだけで

すぐおしっこでる」

唯「ふーん便利だね。でもおもらししないでね?」

梓「しませんし!!」

ガチャ

律「うーっす帰還!」

唯「あ、りっちゃんたちもう戻ってきた」

澪「少しだけ数減らしてきた」

和「あと何人いるかわかる?」

澪「どうだろう……倒れてる人の数から判断すると、もう100人きって

るんじゃないかな」

純「たった一日で500人が100人までへっちゃったんですか?」

梓「ムギ先輩がけっこう減らしてくれてそうですね……」

唯「と憂……」

憂「えへへ。今日もがんばるよ」

律「とりあえず朝飯くったら行動開始だ」

澪「部隊分けは、ここに残るのが私と和、それと純ちゃんと憂ちゃん」

梓「えっ、私と唯先輩と律先輩の三人が掃討部隊ですか?」

澪「憂ちゃんはストックの弾がもうすこし貯まるまで待機だ」

律「私は一応白兵戦向きだからなー、ここで留守番よりあってるかも」

澪「私はここから援護、といいたいところだけどさすがに向こう側の校舎

をつかう人は昨日一日でいなくなったな」

唯「あっちの廊下は澪ちゃんに狙われ放題だもんねー」

律「校庭もほとんど姿がみえないってことは」

梓「のこりは私たちの階下、もしくはプールとかですか」

和「どこへ行くとしても交戦は避けられないわね」

純「もっとみんなして潰しあってくれませんかねー」

憂「とりあえずお姉ちゃんがんばってね」

唯「うん! 良い報告をまってなさい!」

梓「やってやるです!!」

律「よし! ここは任せたぞ澪!和!憂ちゃん!鈴木さん!」

純「違います鈴木です! あ、鈴木であってましたがんばってください」




……


【3階】


唯「うぅ……ひどい臭い」

律「ここでも激しい戦いがあったみたいだな」

梓「床がびしょびしょです」

唯「またムギちゃんかな……」

律「さすがに三対一なら勝てる……よな?」

梓「ムギ先輩は昨日の段階でかなりストックも消費してるはずです」

唯「だけど油断はできないよ。一体何を隠し持ってるかわかったもんじゃ

ないからね」

梓「ですね。機能も隠し武器に苦戦させられましたし」

律「くそームギが仲間だったらもっと楽にすすめられたのにな」

唯「あ、なんかムギちゃんの話してたらお茶のみたくなってきた、ムギち

ゃーんお茶いれて~なんつて」


紬「呼んだ?」


唯「!!」


梓「ま、また神出鬼没な!」

律「おいムギぃ! お前なんで私たちも攻撃してくるんだよ!!」

紬「ごめんなさい。でもしかたないの」

唯「いいよりっちゃん。理由はひとそれぞれ」

律「ま、まぁそうだけどさ……」

紬「……」

梓「ムギ先輩……私も一つ聞きたいことがあります」

紬「なぁに?」

梓「ムギ先輩のシューターは……なんというか独特ですよね。私たちのと

はベースから違うというか」

紬「!」

律「あ! さてはムギ違法改造だな!」

紬「ち、違うわ! ちゃんと申請を出してクリアしてるもの!」

唯「なんでもいいよ。で、戦う? こっちは三人だけど」

紬「ううん。唯ちゃんたちとは本戦で戦うことにするわ」

梓「えっ」

紬「もうだいぶ数も絞れたしね、あともう人踏ん張りで本戦だもん」

紬「ここで唯ちゃんたちとやりあって共倒れになるのは得策じゃないの」

唯「……だね」

紬「これから私は階下を殲滅するわ。だから唯ちゃんたちにはこのフロア

をお願いしていい?」

律「おいおい、一人で行く気かムギ」

紬「うん。私なら大丈夫」

律「つってもなー」

紬「私が倒れたら倒れたでりっちゃん達は嬉しいんじゃないの?」

律「それは……そうかもしんないけど、なんだかなー」

梓「ガンマン精神に反するってやつですか?」

律「あ、そうそうそれ。なんか気持ち悪いんだよ。人の力に頼って勝ち残

るのって!」

梓(純に聞かせてやりたい……)

唯「じゃありっちゃんはムギちゃんと一緒にいって!」

梓「私と唯先輩がこのフロア頑張りますので」

律「……おっけ! いくぞムギ! あんまり乱射して私にあてんなよ!」

紬「うふふ~、初めての共闘よ~」

唯「じゃあいくよあずにゃん!」

梓「はい!」




……



 精神を集中。慣れたもんだ。

 シューターと体を一体化することさえうまくいけば、昨日の力をいつで

も引き出せる。

 これならきっと信代先輩みたいな例外をのぞけば一発でKOできるだろう


 まだ唯先輩ほど切り替えはうまくいかないけど、それでも手に余る力だ


 本当にこんな力を一介の学生である私がつかっていいのだろうか。 


 思いを巡らせながら、私は見つけた敵を次々と撃ち倒していく。

 高揚感の中にある一抹の不安。反動が脳髄までいちいち響き渡るようだ

った。


唯「えーい! ばーん!」

梓「……」バシュッ バシュッ

唯「あずにゃん、もっと元気よくいきましょう!」

梓「といってもですね。人を撃ってその元気はどうかとおもいますよ」

唯「そっかなー。ばーーん!!」

梓「もうそろそろこのフロアは終わりそうですね。律先輩たちと合流しま

しょうか」

唯「だね」

梓「……」

唯「なに? 私の顔になんかついてる? は! まさか返り尿でべったり

とか!?」

梓「い、いえ……唯先輩はほんと元気でなによりですねって……」

唯「えへ♪」


 『唯ちゃんには気をつけて』

 あの言葉がずっとひっかかっている。たしかに唯先輩と本戦でぶつかる

ことになったら、私にとってはかなりの壁になるだろう。

 しかし、それ以外の意味も孕んでいるのではないのか……先程の唯先輩

を見ていると、そう思えてしかたなかった。


……


律「っしゃあ! ラスト! いただきぃ!」

参加「きゃああああぅ」バタリ

紬「はぁ……はぁ。すっかり弾切れだわ……」

律「……これで終わったか!?」


唯「おーい! りっちゃーん、ムギちゃーん!」

律「お、唯に梓! そっちも終わったんだな!」

唯「うん! これで残ったのは」

梓「けいおん部の五人と憂、純、和先輩のはず……です」

唯「やったー!」


ピンポンパンポーン


梓「!」

  『まずはおつかれと言っておく。そしておめでとう』


律「ちきしょー! 高見の見物かよ」

唯「ねぇどこから放送してるの!」

梓「放送室にも職員室にもそれらしい人はいませんでしたしね」


 『まずは全員講堂へと集まってもらおう』

 『そこで本戦の説明を待て』ブツン


梓「……本戦か」

唯「ついにだね」

律「……いやいや、今回ははえーって」

唯「たしかに去年みたいにいろんな競技を何度もやらされるよりかは早か

ったけど」

梓「こんなの横暴です!」

紬「……とにかくいきましょう?」

梓「ですね。澪先輩たちもきっとむかってるはずです」



【講堂】


唯「やっほーきたよー」

律「ふー疲れた疲れたー、どっこいしょっと」

紬「もうへとへと」ガシャン

澪「おつかれ。ムギも一緒だったか」

和「……」

憂「……」

唯「ムギちゃんを睨んじゃだめだよ。戦いだったんだから仕方ないよ」

梓「そうですよ。もうめちゃくちゃな潰し合いはおしまいなんですから」


「そのとおり!」


唯「だれ!?」

律「舞台の上だ!」

梓「あなたは!!」

さわ子「みんなお疲れ様ー」

律「なんださわちゃんか」

唯「わーさわちゃーん」

さわ子「なんだって何よ」

和「あの、なぜ先生が……」

さわ子「まぁいいじゃない。追々説明するわね」

梓「先生も、なにか関係してるんですか?」

さわ子「そうね、大会の運営に関わってるわよ。だってこの学校の教師だ

もん」

律「でさぁさわちゃん。なんで今回は予選からこんなにえぐい戦いだった

んだ?」

さわ子「それに関してだけど……謝らなきゃいけないことがあるの」

律「え?」

和「……これは実は予選ではない。ですよね?」

さわ子「ご名答。さすが生徒会長ね」

唯「どどど、どういうこと!?」

律「だましたのかよ!」


澪「じゃあ優勝賞金ってのは……嘘?」

さわ子「大丈夫よ。総額をみんなで山分けしなさい」

律「……そっか」ホッ

唯「じゃあみんな優勝!? やったー!」

さわ子「と、浮かれる前に」

梓「?」

さわ子「賞金はまだだせないわ。その前にやってほしいことがあるの」

唯「ほえ?」

さわ子「これからあなたたち8人はヘリに乗ってとある島へ移動してもら

うわ」

純「島!?」

唯「なにするの? バカンス?」

さわ子「ま、そんなところね」

紬「……」

さわ子「校庭までもう迎えにきてるはずよ」

紬「質問があります」

さわ子「なに?」

紬「私たちが倒しちゃった人たちは……」

さわ子「大丈夫よ。ちゃんと治療班がいるから」

紬「良かった……」

律「自分が一番めちゃくちゃやっといてそれかよ」

澪「まぁ参加者も危険は承知できてるんだ。しかたないだろ」

純「実力の世界ですもんね。弱い方がわるい!」

唯「そゆこと~」


さわ子「さぁヘリに乗りに行くわよ」

梓「私ヘリコプターはじめてです」

唯「すっごく高いとこ飛ぶんだよ! 怖くておしっこ漏らしちゃだめだよ

?」

梓「もらしませんし」


 二日間における戦いは意外にもあっけない形で終わった。

 こんなあっというまに大会が終わるとは思ってなかったので、すこし拍

子抜けだ。

 それでもかなり疲れがでたのか、何人かは座席でうとうとしている。

 唯先輩と私は律先輩の事情をきいて、優勝賞金の一部を手術のお金とし

て提供することを決めた。

 感謝しきれない、と何度も頭をさげられてしまった。


 これから私たちはどんな島へ連れていかれるのだろうか。

 やってほしいこととはなんだろうか。

 期待と不安を胸に、私はそっとまぶたを閉じた。



唯「んみゅ……あずにゃ……zzz」

梓「……zzzz」



第20話『大会終了』



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