……

梓「どこにいるんだろう」タッタタタ

純「梓~~~、まってよ~~」

梓「ここでも銃撃戦のあとが……あ、大丈夫ですか!」

参加者「 」

梓「くさっ」

純「顔にあびて失神してるみたいだね」

梓「こんな臭いおしっこはじめて……」

純「ね、ねぇ梓……なんか向こうから足音しない……?」

梓「えっ」

ガショーン ガショーン

梓「こ、こっち近づいてくる!!!」

ガショーン ガショーン

純「あ、あの金ピカの装甲は!!!」

梓「……!!」


 臭気の中からのろのろと現れた影。

 それはよく見慣れた金髪と、特徴的な眉毛の持ち主。

 まごう事無き、『ゴールデンシューター』のムギ先輩だった。


紬「あらあら、うふふ、梓ちゃんこんなところにいたのね」

梓「む、ムギ先輩!! ご無事でしたか!」

紬「うん!」

純「……」

梓「いやー、よかったよかった。ホっとしました」

梓「これから一緒に行動しましょう! 三人いれば」

純「まって梓!」

梓「!」

紬「…………」

純「……先輩ですよね?」

紬「……なにが?」

梓「じゅ、純どうしたの? はやく向こう行ってムギ先輩と合流……」

純「ここにいる人たちをみんなやったのって……」

梓「!」

紬「……」

梓「え、む、ムギ先輩がここに倒れてる人たちをやったんですか!?」

紬「……だとしたら?」

純「……同じように、私たちもやるんですよね?」

紬「……」

梓「な、ま、待ってよムギ先輩がそんなことするわけないじゃん!」

純「じゃあ先輩の体中に付着した返り尿は何さ」

梓「……」

純「ご丁寧にシューターを撃ちぬいて破壊してるんだよ!」

紬「それが手っ取り早いの。むしろそれしか無いわ」

紬「だって、このガトリングで」

 ガシャリという音と共に、巨大なアームガトリングの銃口がこちらを向く。

 頭が真っ白になった。一体全体どういうわけなのか、理解が追いつかな

い。

 そしてそのままムギ先輩はとても悲しそうな目をして呟いた。


紬「殺しちゃうのは可哀想だから……」


 その言葉が届く前に私は純の裾をひきよせ、身を翻していた。

 直後、私たちがいた場所を通り過ぎる雨のようなおしっこの弾丸。

 ムギ先輩のガトリングが尿を吹いたのだ。 ……間一髪だった。

 動かなかったらそのまま全身おしっこまみれ、いや威力によってはあっ

という間に失神していたかもしれない。


純「ちょちょちょちょ! ぎゃあああ」

梓「ムギ先輩!! どうして!!」


 体とは裏腹に頭はいまだに冷静さを取り戻せないでいる。

 ムギ先輩は極めてのんびりした動作でこちらを見ると、再び巨大な銃口

をつきつけた。


梓「くッ!!」


 純をつかんだまま、すぐ側の教室へと飛び込む。

 また間一髪のところで回避に成功。バサササという音が背後から聞こえてく

る。

 床や壁がムギ先輩のアンモニア臭のキツイおしっこで染められたようだ



紬「梓ちゃん、どうして逃げるの?」

梓「やめてください! 私たちは敵じゃないんです!」

紬「そうかしら? たった8人しか残れないのよ? なら出会った人から

倒していくのはセオリーかと私は思うんだけど……」

梓「……こ、後輩なんですよ!!」

紬「……先輩だとか、後輩だとか」


 ムギ先輩がぽわぽわした顔をしぼってこちらへ近づいてくる。


紬「おしっこガンマンの世界を舐めないほうがいいわ……!!」

梓「なっ」ゾクッ

純「あへあへあへあへww」

梓「純! しっかりして! パ二クってる場合じゃない!!」


 抵抗しなくちゃ……いくらムギ先輩のといえど、他人の尿で全身を陵辱

されるのは耐えられない。

 私は震える手でホルダーから銃を引きぬく。すでにセーフティは解除し

てある。

 やるしかない……やるしか!!


紬「梓ちゃん、震えてるわ。無理しないでいいのよ? さぁ、その銃を私

に頂戴?」

梓「誰がッ!! 私は唯先輩とも約束したんです! 必ず勝ち残るって!

!」

紬「私に勝てる気でいるのね……残念……」

梓「!」

紬「……シューターを持ってまだ一ヶ月でしょ? 馬鹿にしてるわ」

梓「そ、それは……やってみないと」ガタガタ


 手の震えがおさまらない。

 人にシューターを向けるのがこんなに怖いことだとはおもわなかった。

 そんな私にムギ先輩は言葉でおいうちをかける。


紬「シリンダーは大丈夫? ストックはある? 銃身は? ちゃんと正面

に構えてる?」

梓「う、うわああああっ」


 勢いに任せて発砲。

 いつも練習で撃ってるのとは違って、とても弱々しく小さな水の塊がム

ギ先輩向かって宙を舞う。


紬「……なにそれ」


  私の決意の弾丸は、虚しくも金ピカの装甲をまとった手の甲でパシリと

軽くはじかれてしまったのだった。


紬「やれやれね。でも梓ちゃん、これで覚悟ができたでしょ?」

梓「あっ……あっ……」

純「梓……」

梓「撃っちゃった……私、撃っちゃった……」

紬「……撃っていいのは、撃たれる覚悟のある人だけよ!」


 三度目のインサイト。何度みても恐ろしい銃口だ。一体どれだけ弾があ

るのだろう。

 あぁ、もう追い詰められている、これ以上は逃れられない。


純「お、おたすけぇ~!!」

梓「……くっ」

紬「大丈夫。苦しくないわ。ただちょっと臭くて気が遠くなるだけ」

梓「そんなの……耐えられないです!!」

紬「わがままね。でもダメよ。あなたはここにくるには力不足だった。た

だそれだけ」


 ムギ先輩がニヤリとした表情を浮かべる。

 トリガーを引く気だ。

 何かいおうとした瞬間、眼前がわずかにフラッシュした。


梓「あっ」

純「ひっ」


 言葉は出てこず、情けない声とともに反射的に目をつぶる……。


梓「……」

梓「……あれ?」


 二、三秒たった。しかし私に尿弾は降り注いでいない……。 これは…

…?


純「梓! 梓!! いつまで目ぇつぶってんの!」

梓「はっ!」


目を見開くと足もと数メートル手前が水びたしになっていた。

 尿だ。


梓「外した……? でもなんで!?」

純「前前!」

梓「!」


 そこには私が会いたかった人。

 ふんわりとした栗色の髪をなびかせ、銃口をしっかりとムギ先輩につき

つけた唯先輩の姿があった。


唯「やっほーあずにゃん。ぎりぎりせーーーふ!」

梓「唯先輩!!」

紬「唯ちゃん、どういうつもり。私のバレルに撃ちこんで狙いをずらすな

んて」

唯「可愛い後輩をまもっただけだよ!」

紬「……邪魔しないで?」

唯「のんのん。あずにゃんは私と同じ場所からのエントリーだからね。仲

間も同然なのさ!」

紬「そう、唯ちゃん、残念だわぁ」

梓「唯先輩逃げて!!」

唯「ん? 逃げる~~? えへへ。あずにゃんこそ早く逃げなよ!」


唯「ちょっとここは戦場になるよ!」


 唯先輩はそう言い放つと容赦なく金色のおしっこの弾丸をムギ先輩にむ

かって何度も撃ち込んだ。

 ドピュンドピュンという重たい音が教室内に響き渡る。

 しかしムギ先輩はそれら全てを体中にまとった装甲でふせぎきり、すぐ

さま右腕の兵器ともいえるシューターで反撃する。

 唯先輩は軽やかな身のこなしでそれらを回避し、蹴飛ばして倒した机の

後ろに逃げこむ。


 あっというまに狭い教室で銃撃戦がはじまった。


純「や、ヤバいヤバい! まきこまれる~~~~!!」

梓「で、でも唯先輩をおいては……」

唯「いいよ。私がムギちゃんをとめるから」

紬「うふふふふふ~」ババババババ

唯「んもう! 乱射しすぎ! どんだけおしっこあるの!」

紬「どうせ一発一発に威力はでないから、古いおしっことガトリングは相

性がいいの~!」 

唯「!」

梓「もしかしてあの背負ってる箱にはおしっこがたくさんつまってるんで

すか!!?」

唯「……だね。アレ、貯尿タンクみたいなもんだよ」

紬「当たり~。これがガトリングと連結してるの。だからいちいちチャー

ジもしなくてすむの~~」ババババババ

梓「ず、ずるいです!!」

唯「さすがだねムギちゃん!」

紬「ありがと~。さぁ、唯ちゃん、そんなとこに隠れてないででていらっ

しゃ~い」

純「うあわわわわあ」

梓「純は落ち着いて。私たちも反撃するよ!」

純「でもこんなにおしっこが雨あられってるのにぃ!!」

紬「その隠れてる机もどんどん削れていくわよ~」ニコニコ

ババババババ ババババババ


唯「……このままじゃこっちがフリだね。よし、あずにゃん逃げないなら

私に力を貸して!」

梓「えっ」

純「わわわわ私もお手伝いしますうう」

唯「私が一瞬隙をつくりだす。だからその間にムギちゃんの顔を狙って撃

って!」ヒソヒソ

梓「え~~~顔をですか!?」

唯「顔にはさすがに装甲まとってないからね! 正面からならそこしか狙

うところないよ!」

梓「わ、わかりました!」

純「はい!!」

紬「こそこそしてないででていらっしゃい」

紬「みんなまとめてハチの巣にしてあげる~~♪」

ババババババ

 なおもムギ先輩は連射をやめる気配はない。

 唯先輩が鋭い目でムギ先輩を見据えている。

 一体どうやってあの人から隙を奪うのだろうか。

 私と純は一挙一動を見逃さないように神経をすり減らして事態の展開を

待った。


唯「ききたいんだけどさ。あ、ムギちゃんのほうね」

紬「なぁに?」ババババババババババババ

唯「ちょっとうるさい! きこえないよ」

紬「しかたないじゃな~い♪」ババババババババババババ

唯「なんでムギちゃんはこれに出場したのかなって」

紬「……それはね」ババババババババババババ

唯「それは……?」

紬「教えられないわ~~~うふふふふふ」ババババババ

唯「そっか、じゃあ!」


 唯先輩はふっと微笑むと、窓に向かって発砲した。

 ガラスがけたたましい音をたてて砕け散る。


紬「そんなので気をひくつもり? あはは唯ちゃんっておろか……ガッ」


 窓の遥か向こうからなにかが突然飛来し、ムギ先輩の横っ面を吹き飛ば

した。

 衝撃でガトリングの照準は私たちから完全に外れ、天井、床とありもし

ないほうをおしっこでそめあげる。


紬「むぎゅううっ!!! いったーい!」 


梓「その隙は!!」

純「逃さない!!」 

 おいうちをかけるようにムギ先輩の顔面に向かって同時に発砲。直撃。


紬「きゃあああっしみる~~~」

梓「よし! あたった!」

唯「いまだあずにゃん! 逃げるよ!」

梓「えっ」

唯「こんだけやれば十分! いまはとにかくムギちゃんから遠ざかる!」

純「とどめとかささないんですか!」

唯「それだとこっちももはや無傷ではすまないからね! ムギちゃんみた

いなのは相手にしないのが一番!」


紬「え~ん、まってよ~~、うう、くさ~い」


 ムギ先輩が必死に顔を拭いている間に私たちは教室をあとにした。

 はやく落ち着ける場所にいきたい。

 唯先輩にはききたいことがたくさんあるから。


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