第二話 『大会開幕』



梓「あれから一ヶ月弱、なんやかんやで私は鍛えまくった」

梓「おしっこに明け暮れる毎日」

純「梓の成長は目を見張るもので、あっという間に私なんか相手にならな

くなった」


梓「いや、純のおかげだよ! ありがとう!」

純「いやいや、梓さんには敵わないッスよ」

梓「さて、いこうか! おしっこガンマン大会! 待ちに待った日がつい

にやってきた!」

純「大丈夫。私たちならそこそこの線までいけるよ」

少女1「がんばってください梓さん」

梓「うん」

少女2「絶対勝ち進んでくださいね!」

梓「ありがとう。いい子分をもったもんだよ」


純「ほら、いくよ」

梓「と、その前によらなきゃだめなとこがあるの」

純「ん?」

梓「先言ってて! 高校でまた会お」

純「おっけー」



【ホビーショップ一文字】


とみ「いよいよこの日がきたねぇ……」

梓「はい!」

とみ「あずにゃんさんがシューターを手にとって一ヶ月。どうだい調子は

?」

梓「楽しいです! 毎日充実してます!」

とみ「そうかい、そりゃよかったわよぉ」

梓「それで最後のメンテナンスと、念のため予備弾倉を買いに来たんです

けど」

とみ「あら、唯ちゃんもさっきメンテナンスにきたのよ~」

梓「へぇ。負けてらんないです!」

とみ「ところであずにゃんさん」

梓「はい?」

とみ「これの使い勝手はどうだい?」

梓「そうですね……いい感じかと、よく手に馴染みますし」

とみ「そうかいそうかい。ほかのタイプもすすめてみようかとおもったけ

どいらないお世話みたいだねぇ」

梓「どもです」

とみ「さてと、これでばっちり」

梓「ありがとうございます」

とみ「うちのお店からのエントリーだからがんばってね!」

梓「……! そ、そうですね! おばあさんの顔をたてるためにも勝ち進

んでみせます!」

とみ「あずにゃんさんも唯ちゃんと一緒でいい子だねぇ」

梓「はは……照れますよ」


梓(……やるぞー! やってやるー! やってやるです!)



【桜ヶ丘高校】


和「爽やかな秋晴れ、なんとも良いおしっこガンマン大会日和ですね」

和「みなさん昨日の晩はよく眠れたでしょうか?」

和「今朝のおしっこはどうでしたか?」

和「さぁ、それでは選手宣誓!」


澪「はい!」

律「私たちは! おしっこガンマンシップにのっとり!

澪「正々堂々と戦い抜くことを!」

律・澪「誓います!」


和「ではこれより第55回おしっこガンマン大会を開催いたします!」

ピュー!

 和先輩が壇上から空に向かってシューターを発砲した。

 それは涼しげな秋風にのり、私たち選手一同の頭上へとふりそそぎ、火

照った体を冷やしてくれる。

 私は柄にもなく高揚していた。これから先にあんな地獄が待ち受けてい

るともしらずに……。


……


純「あー、いたいた梓」

梓「あ、純!」

純「ついにはじまったね」

梓「種目についての説明がないんだけど」

純「それについては校内アナウンスで通達するらしいよ」

梓「ふーん。じゃあそれまでどうしよっかな」

純「教室でダベってようよ」

梓「にしても参加者いっぱいいるね」

純「うん。あ、そうだ、情報通の純様が手ごわい参加者の解説してあげる

よ」

梓「べつに必要ないけど……」

純「なーんでよー。どうせ時間あるんだからいいじゃん。あんたライバル

の情報ほしくないの?」

梓「わかったわかった聞かせて聞かせてめんどくさいなぁもう」

純「♪ じゃあまずはあそこに座ってお茶飲んでる金髪の人!」

梓「ムギ先輩?」

純「琴吹紬。通称『ゴールデンシューター』」

梓「?」

純「みて、あの金ピカの装甲と右腕につけられた巨大なアームガトリング


梓「うわぁ……あれもおしっこシューターなの?」

純「形はかなり特異だけどね。一応認められてるみたい」

梓「なんかすごい金にものを言わしてるような……」

純「見た目だけじゃなくて威力もすさまじいよ。発射速度毎分1200発なん

だって!」

梓「ずるくない!?」

純「その分おしっこの消費も早いし一発あたりの威力もたかがしれてるけ

どね」

梓「でも、あんなので射撃勝負したら勝てないよ」

純「そんときは公平になるようにオーソドックスなのが支給されるんじゃ

ないかな」

梓「ムギ先輩は要注意だな……」

純「対戦相手にならないことを祈るしかないね」

純「次はあっちで談笑してる二人組」

梓「あっ! 律先輩と澪先輩!!」

純「あの二人はヤバい」

梓「そうなんだ……」

純「律先輩、田井中律。通称『早撃ち二丁拳銃の律』」

梓「ほんとだ二丁もってる」

純「スピード勝負であの人に勝てるガンマンはなかなかいないよ」

梓「へぇ」

純「他にもワープスピードとか、早撃ちカチューシャとかいろいろ異名が

あるみたい」

梓「律先輩ってすごいんだ……」

純「去年公園のなわばり争いで一度戦ったことあるけど射撃の腕もかなり

いいよ」

梓「ふーん、へぇー」

純「……」

純「次澪先輩ね」

梓「うん」

純「秋山澪。通称『孤高のスナイパー闇を照らす凶星』」

梓「なにそれ」

純「ファンクラブの間ではそう呼ばれてるんだって」

梓「あー、たしかにおっきい銃もってるね。あれスナイパーシューターな

んだ! はじめてみた!」

純「うん! 実はね、昨年度の全国スナイパー大会での優勝者は澪先輩な

んだよ」

梓「嘘! すごい!」

純「その射撃精度はすさまじく、一度狙いをつけたターゲットは絶対に逃

さないんだって」

梓「へぇー」

純「澪先輩が打ち立てたシューターでの超長距離狙撃の記録1230Mはまだだ

れにもやぶられてないよ」

梓「かっこいいー」

純「おそらく狙撃部門ではあの人がぶっちぎりだろうね」

梓「私が勝てる相手っているのかなぁ」

純「さて次は……ひらさ」


ピンポンパンポーン

梓「あ、放送だ。はじまるのかな」

 『……』ガサガサ

 『…………』ガサガサガサガサ


純「?」


 『あ、えー……お集まりのみなさん』

 『ただいまより、おしっこガンマン大会の予選を開始します!』


梓「予選……? そんなの聞いてないけど」

純「どうしたんだろ」


 『…………』 ガサガサ ガー

 『えーでは、まず予選の内容といたしまして』

 『校内のみなさんでつぶし合ってもらいます』


純「えっ」

梓「いまなんて……」

 『無事勝ち残った8名のみが本戦へと駒を進めることができます』

 『では、ご武運を』

 『なお、今大会における、負傷死傷においては大会運営委員会は一切の

責任をとらないものと致します』


 放送が途絶えると同時に突如地鳴りがした。

 慌てて窓の外を見る。

 壮観だった……桜ヶ丘高校の周りを巨大な壁がせり上がり囲んでいく。

 私たちはすでに完全にここに閉じ込められたようだ。いつのまにあれを

用意したのか検討もつかない。

 しかしこの異様な光景にほとんどの参加者たちは首をかしげている。

 その様子をみる限り、どうやらこれは恒例行事……というわけではなさ

そうだ。

 当然だ。だいたい全く意味がわからない。なぜ私たちがつぶしあわなけ

ればならないのか。

 つぶしあいとはどういう意味なのか。

 仮にこのシューターで直接撃ちあうのだとしたら……。


純「あ、梓……どうする?」

梓「わからない……とりあえずはまわりと距離をとって……」

純「やばいって。絶対こんなのへんだって!」

梓「わかってる! けどもし直接うたれたら一溜まりもないんだから」

梓「いまはここを無事に脱出することを考えよ?」

純「シューターで人を撃つなんて……そんなの本気でする人いるの?」

梓「……もし、この参加者500人超のここで撃ち合いがはじまったら…

…」



 一階からおぞましい金切声が鳴り響いた。

 それを皮切りに明らかに教室の空気が凍りついた。

 誰かが撃たれたんだ……。

 同じ教室にいる数名みんながそう思っただろう。


純「わ、私……みてくる!」

梓「だめ! 動かないほうが……」


 一階はどうなっているのだろう。だんだん悲鳴が大きくなってきた。

 おそらくもう始まっている。唯先輩たちは無事だろうか。


「わ、私は帰るからな! こんなところにいられるか!!」

「わたしも! 帰る!!」


 教室にいる私と純以外の参加者たちは、居ても立ってもいられないのか

廊下へと勢い良く飛び出していってしまった。

 だがおそらく簡単に逃げられやしない……あの壁をよじ登ることは不可

能だ。

 考えたくはないけど、脱出するには……やはり……。


純「あずさ~~~」

梓「純……セイフティー解除」

純「うそでしょ~~~」

梓「自分の身をまもるには、シューターだけが頼りだよ」

純「そ、そうだ! 澪先輩たちに守ってもらえば!」

梓「!」

純「ほら、私ら仲いいしさ。さすがに後輩うったりはしないでしょ?」

梓「たしかに」

純「さがしにいこう! ついでに憂と憂のお姉ちゃんも!」

梓「うん! 危険を犯してでも合流する価値はありそう」



その頃

【屋上】

澪「……」

律「いやー絶景絶景! まさかこんなことになるなんてなーははは」

澪「笑い事か!」

律「いやー悪い悪い。そんな怖い顔するなってー」

澪「いったいコレはなにがどうなってるんだ……」

律「校庭でもドンパチはじまってるな。うわ、どんどん倒れてく」

澪「あぁ……地獄絵図だ」

律「さて、この状況は澪しゃんの得意分野じゃないの?」

澪「えっ」

律「狙いたい放題じゃん! ほれババーンっと!」

澪「……」

律「おそらく勝ち残らなきゃでられないんだぞ? ならやるしかないって


澪「……」

律「ここからなら反撃をうけることもなく一方的にやれる!」

澪「……だけど」

律「澪。この大会、尋常じゃない自体になってることは気づいてるだろ?


澪「……うん。わかってるよ」

律「大丈夫大丈夫。弾あててもちゃんとパワーセーブすればたいした怪我

はしないって」

澪「知ってる。ただのおしっこだもん」

律「……8人。何としても残る」

澪「律?」

律「……私はさ、この大会の優勝賞金が絶対に必要なんだ」

澪「……聡か」

律「大金があればあいつの足の手術ができる……」

律「なんとしても、あいつにもう一度サッカーをやらしてやりたいんだっ

!!」

澪「あぁ……私だって律に協力するさ……約束したもんな、うん」

律「ありがと、澪」

澪「……観測手、たのめる? ここですこしでも数を減らしておこう」

律「!! ありがと!」ダキッ

澪「き、気持ち悪い抱きつくなー!! それとお前はここに続く階段の警

備もちゃんとするんだぞ!」

律「わかったわかった。澪の背中はこの早撃ちカチューシャ様にまっかせ

なさい!」

澪「……ふふ」


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