唯「わー!みんないらっしゃい!」

憂「み、皆さんおそろいで」

澪「あ、ムギ。ケーキ」

律「?おーい、帰ってこーい」

紬「あ、これ、例のものです!」

唯「やった~、ってすごく大きいよこれ!」

梓「ムギ先輩のスペシャルケーキですからね」

紬「うふふ♪」

憂「あ、皆さんどうぞ、上がってください」

唯「今日はわたしが作ったカレーが、何と12皿分あるからね!!」

律澪紬梓
(ちょっと恐い…!)


「あら、みんなおそろいなのね」


唯「わあ、和ちゃん!」

憂「いらっしゃい!」

和「こんばんは、唯、ちゃんと出来た?」

唯「インド人もびっくりだよ!」

和「そう、よかったわ」

憂「和ちゃんもどうぞ!」

和「ありがとう、お邪魔するわね」

澪「…和、今日憂ちゃんの誕生日らしいんだ」

和「ええ、もちろん知ってるわ」

律「さすが平沢姉妹の心の友」

紬「素敵ね~」

和「今年のプレゼントは結構悩んだわね」

梓「何にしたんですか?」

和「ふふふ、内緒よ」



憂「さあ皆さん、座ってください」

唯「憂もだよ~、座ってて」

憂「でもお姉ちゃん…」

唯「大丈夫!今日のわたしはひと味違うからね!ふふ~」

紬「唯ちゃん、張り切ってるね♪」

律「そりゃあ可愛い憂ちゃんのためだからな」

和「唯なりに一生懸命なのよ」

憂「えへへ…」

梓「今日は何だか頼もしい気がします」


唯「あーーーー!」


澪「言ったそばから…」

憂「お姉ちゃん!?」

梓「前言撤回です」

律「まあ、そうすんなりとは行かないよな…」

和「…どうしたのかしら」

紬「唯ちゃ~ん、大丈夫?」


唯「お米炊くの忘れてた…」


唯「うい~、ごめんね…」

憂「ううん、いいんだよ、ありがとう♪」

唯「わが妹よ~…」

憂「ね、一緒に準備しよ?」

結局、ルーだけのカレーとサラダになってしまいました…。
憂のお姉ちゃん失格です…。

律「で、でも見た目は思ったより全然マシだ!」

唯「リッチャンヒドイヨ」

澪「おいバカ律」

梓「と、とってもおいしそうです!」

紬「こんなカレー初めてだわ~♪」

憂「わたしもお姉ちゃんのカレー初めて!」

唯「おいしいよ!何せ和ちゃんレシピだからね」

和「ふふ、お役に立ててよかった」

唯「じゃあ皆さんご一緒に!」


「いただきます!」


唯「どう?うい、おいしい?」

憂「すっっっごく、おいしいよ!」

律「本当だ…」

澪「うん、おいしい…」

梓「とっても甘口なんですね」

紬「家庭の味って感じね!」

和(あのレシピでこんなに甘くなるの…?)


お米もなかったからか、12皿分のカレーはすぐお鍋から消えました。
そしてムギちゃんのケーキは、とってもおいしくて大きくて綺麗でした。
食べるのがもったいないくらい。
みんなして、携帯で写真を撮るほどでした!

聞いた話だと、軽音部からのプレゼントだそうです。
みんな、わたしの妹のためにありがとう。



律「唯、寝ちゃったな」

和「じゃあわたしは後片付けを手伝って帰るから」

澪「そんな、悪いよ」

紬「わたしたちも手伝うわ」

和「いいのよ、わたしの家はすぐ近くだし、早く帰らなきゃ家の人心配するわよ?」

律「そうか…悪いな」

和「それにわたし、まだ憂にプレゼント渡してないからね」

梓「何だかすみません」

和「いえいえ、気をつけて帰ってね」


お姉ちゃんのカレーはとってもおいしかったです!
一口食べて、甘くておいしいのに…何だか涙が出そうでした。

軽音部の皆さんからのプレゼントは、とってもすごいケーキでした。
こんなにおいしいケーキを毎日食べられるお姉ちゃんがうらやましいです。

今年の誕生日は、人生で一番嬉しいものになりました。

お姉ちゃんは疲れたのか、ケーキを食べた後こたつで寝てしまいました。
和ちゃんがお片付けを手伝ってくれました。


憂「お客さんなのにごめんね、ありがとう和ちゃん」

和「気にしないで。そんなことよりおめでとう、憂」

憂「えへへ…ありがとう」

和「ささやかだけど、これわたしからのプレゼントよ」

憂「わあ!ありがとう、あけてもいい?」

和「喜んでもらえるかしら?」

憂「可愛いマグカップ…が二つ?」

和「憂が一番喜ぶものを考えたら、唯とのつながりを感じられるものだって思ったのよ
  お揃いで使ってもらえると嬉しいわ」

憂「…大切にするね」



気付いたらこたつで寝てしまっていました…。
起きたらみんな帰った後でした。

可愛い妹の誕生日に、何やってるんでしょう。
わたしの挑戦は完璧に失敗です。

…憂に、一人でも大丈夫だよって見せたかったんだけどなあ。


憂「お姉ちゃ~ん、起きた?」

唯「みんな帰っちゃったんだね~…誕生日に片づけまでさせて、ごめんね」

憂「ううん、いいんだよ。和ちゃんも手伝ってくれたし…それに」

唯「それに?」

憂「とっても嬉しかったよ!」

唯「なら…よかった!」

憂「えへへ…そうだ、お風呂沸いてるから入ってきたら?」

唯「じゃあお言葉に甘えて…」



お風呂に入るお姉ちゃん。
浴室のドアの向こうで、何だか歌ってるようです。
わたしは着替えやタオルを用意して、その上に今日買ったストラップを置いておきました。

お姉ちゃんに、わたしの「ありがとう」が伝わりますように。

お風呂から上がると、いつも通り着替えとタオルが用意されていました。
いつもと違うのは、その上にストラップが置いてあったことです。
憂からのプレゼントかな?…今日は憂の誕生日なのに、変だね。

もらってばかりで、何もあげられてないよ。

わたしから、憂にあげれるものって何だろう。
わたしにしか、あげられないもの。


…そうだ。



唯「うい~、起きてる?開けるよ~」

憂「お姉ちゃん、どうぞ~」

唯「子どもは早く寝なきゃだめだよ~」

憂「ふふ、お姉ちゃんだって」

唯「わたしはいいんだよ、もうすぐ大学生だからね~」

憂「お姉ちゃんは大人なんだね」

唯「そうだよ、だから今日は『憂のお姉ちゃん』だってとこ、見せたかったんだけどね~…」

憂「ちゃんと伝わったよ?」

唯「わたしが一人暮らししても、心配しない?」

憂「それは…ちょっと寂しいけど」

唯「だいじょうぶ!わたしたちはいつまでも、姉妹です!」

憂「そうだね…うん、心配しないよ」


唯「あ!忘れるとこだった、ちょっと待ってて!」


憂「今からギター弾くの?」

唯「うん、ちょっとくらいなら音出しても平気だよ!」


お姉ちゃんは、学祭で歌っていた曲を歌ってくれました。
夜だから小さな声で、でもはっきりと。

風邪を引いたわたしの看病をしてくれた日、机に伏せて寝ていたお姉ちゃん。
その机にはおかゆと、この曲の歌詞が置いてありました。

あの時に出来た歌詞なんだと思います。


『キミがそばにいることを当たり前に思ってた』


憂が生まれてからずっと、わたしたちは一緒でした。
何の不思議もありません。だって家族だから。
でも、もうすぐ少しだけ離れなくちゃいけません。

当たり前って思っていたことが、こんなに大切なものだったなんて。


『こんな日々がずっとずっと続くんだと思ってたよ』


わたしが甘えて、憂がそれに応えてくれる。
心のどこかで、ずっと続くものだと思っていました。

感謝の気持ちを表すことなんて、したことがなかったです。


『ゴメン今は気づいたよ 当たり前じゃないことに』


大学に入ると同時に、わたしは一人暮らしを始めます。
今までは憂がしてくれていたことを、これからは自分でしなければなりません。
意識して初めて、憂の大変さがわかりました。

そんなことに、今更気付いた自分が少し恥ずかしいです。


『まずはキミに伝えなくちゃ 「ありがとう」を』


どうすれば伝わるか、考えてみました。
ただ「ありがとう」と言うだけじゃ、何度言っても足りません。

だから今日は、憂を精一杯お祝いして、
わたしは一人でも大丈夫だよって、心配掛けないように頑張ろうと思ったんです。


『キミの胸に届くかな?今は自信ないけれど』


でも、やっぱり全部はうまく出来ませんでした。
ケーキだって、お米だって、用意していませんでした。

手伝いや後片付けまでさせてしまって…本当、憂にしてもらってばかりです。


『笑わないでどうか聴いて 思いを歌に込めたから』


そんなわたしを、憂は笑うかもしれません。
…いや、今日も笑って許してくれました。

憂の笑顔が大好きだよ。
でもね、この曲に憂への思いを込めて歌うから、
今度はどうか、笑わないで聴いて欲しいなあ。


『ありったけの「ありがとう」 歌に乗せて届けたい』


憂、ありがとう。
毎日わたしのお世話をしてくれて。
笑顔で居てくれて。
そばに居てくれて。

わたしの妹に生まれてきてくれて…ありがとう。


『この気持ちはずっとずっと忘れないよ』


もうすぐ離れてしまうけど、ずっとわたしたちは一緒だよ。
いつまででも、わたしはずっと憂のお姉ちゃんで、憂はずっとわたしの妹だよ。

ずっとずっと、「ありがとう」を忘れないよ。



「お姉ちゃん…ありがとう」

憂は涙を目にいっぱい溜めて、言ってくれました。
本当はわたしが伝えなきゃいけない言葉なのに。

瞬きをすると、憂の涙はキラキラとほっぺを伝いました。

「笑わないで」って言ったから、憂は泣いちゃったのかな。

唯「この曲はね、U&Iって曲なんだ」

憂「わたしと、お姉ちゃん?」

唯「そだよ~。それにね、『わい・おー・ゆー』の『YOU』じゃないんだよ」

憂「どういうこと?」

唯「『わい・おー』はなしで、『ゆー』だけ」

憂「『ゆー』と、『あい』?」

唯「そう、『うい』の『ゆー』と『あい』だよ。
  わたしたちの曲を、ういの名前にしてみました!
  もし一人暮らしで寂しくなったら歌うんだ~」

憂「わたしも寂しくなったら、電話するから歌ってくれる?」

唯「ふふふ~、当たり前だよ」



憂の誕生日から1ヶ月も経たないうちに、わたしは新生活を始めました。

憂には引越しの手伝いを頼みませんでした。
憂も、手伝おうとはしませんでした。

大変な毎日です。
憂なら楽々こなせるのかな、と思います。
そのたびに、また憂への「ありがとう」がたくさん浮かんできます。

この部屋にあるものは、必要最低限の生活用品。
みんなとの写真をたくさん貼ったコルクボード、ギー太とミニアンプ。
和ちゃんからもらった、お揃いのマグカップ。

まだ肌寒い部屋を、このマグカップが暖めくれます。
マグカップに触れるたび、憂の温かさを思い出して胸がキュンとなります。

憂が電話を掛けてくれる日は、必ずU&Iを歌います。
憂がくれたお揃いのストラップを揺らしながら、わたしは思いを歌います。


『思いよ 届け』



終わり!
U&Iの下りは細かく分けすぎてだれてしまいすみません。