唯(ん~『用意するもの』は全部見つけられたけど…)
唯(隠し味は何がいいのかなぁ)
唯(チョコは何かと食べるし、買ってもいいよね)
唯(全部入れれば、それこそスペシャルだよね)
唯(サラダの材料も買って)
唯(カゴ重くなってきちゃった…)
店員「3980円になります」
唯「すみません、チョコ1つだけにします」
店員「…3245円になります」
唯「玉ねぎ1個やめます」
店員「3195円になります」
唯「3000円しかないんです」
店員「どれですか、次何やめるんですか」
唯「どれがカレーに必要ないと思いますか?」
店員「…アイスじゃないですかね」
唯「うぅ…やめます」
店員「…2895円です」
105円残してお買い物出来ました!
この105円でチョコが1つ買えました。
…2つにすればよかった。
家のドアを開けると、薄暗かったです。
いつもは憂が先に帰って、電気がついてるから少し不思議な感じがします。
さあ、早速準備です!
…と思ったら重大なミスに気がつきました。
紬「唯ちゃんからメールだ~♪」
律「わたしには来ないぞ!」
澪「わたしにも来ない…」
梓「同じく来てません」
From 唯ちゃん
「ムギちゃん、わたしのケーキは余っておりませんでしょうか…?」
紬「唯ちゃん、肝心なケーキ忘れてたみたい…」
律「あいつ大丈夫か?」
澪「ケーキのない誕生日…」
梓「物悲しいです」
紬「ケーキ…届けてあげようか?」
律「唯のことだ、料理の材料で予算オーバーなんだろう」
澪「絶対そうだと思う…」
梓「…すごく心配になってきました」
紬「もしもし、紬です。斎藤、バースデーケーキを用意してくれる?」
紬「大丈夫だって!」
律「それ、わたしもお金出すよ」
澪「そうだな、軽音部から憂ちゃんへのプレゼントだ!」
梓「4人で割ればお小遣いの範囲ですよね」
紬「そう?じゃあ…1人2000円くらいね♪」
律澪梓(レベルが違った…)
紬「あ!いつでもいいよ??別にわたしが出」
律「ムギ!いつもわりぃな!」
澪「律!ちゃんと1人2000円ずつだ!」
梓「軽音部からの『プレゼント』ですから!」
律「はは…そうだよな…」
平沢唯、大ピンチです。
ケーキを忘れてしまいました。ムギちゃんに最後の願いを託しました…。
するとムギちゃんからはすぐ返事がありました!
From ムギちゃん
「7時頃、みんなで届けるね♪」
ムギちゃんは天使です!
今日わたしに食べてもらえなかったケーキが、憂のお口に入ります。
きっとケーキも喜ぶことでしょう。
ささ!ここに来てやっとカレーの準備です。
17歳になった平沢憂です。
学校で、梓ちゃんと純ちゃんがお祝いしてくれました。
いつもより重いカバンが嬉しいです。
でも…いつもなら、誕生日の朝はお姉ちゃんが「ういーおめでとー」と抱きついてきます。
だけど…今日は違いました。
唯「ういー、そこに座りなさい」
憂「なーに?お姉ちゃん」
唯「今日はいっぱい寄り道して、遅めに帰りなさい」
憂「…夕飯の用意できないよ?」
唯「いいのです」
憂「お姉ちゃん、食べてくるの?」
唯「そんなところであります」
憂「じゃあわたしも…」
唯「めっ!いけません!」
憂「?」
唯「とにかく今日は寄り道して、お腹すかせて帰るのです!」
憂「…はーい」
お姉ちゃんはわたしの誕生日を祝おうとしているようです。
バレてるのに、あくまでサプライズのようです。
嬉しいけど…心配です。
でもお姉ちゃんの手料理…楽しみだなあ。
最近、お姉ちゃんとの会話が減りました。
それは…お姉ちゃんの一人暮らしが決まった頃からでした。
高校を卒業する。大学に入る。また一つ大人に近づくわけです。
きっとお姉ちゃんは、わたしが居なくても生活できる準備を始めたのです。
わたしが生まれてから、ずっとわたしたち二人は一緒でした。
それが当たり前でした。
特に大きな喧嘩もなく、お姉ちゃんがわたしに甘え、それに応える。
そんな毎日を送ってきました。
それが、あの日から少しずつ距離を取るようになりました。
急に離れるんじゃなく、ゆっくりと別れに備えてるんでしょうか…。
とりあえず今日は、商店街をわけもなくブラブラして帰ります。
どんな服屋さんやアクセサリー屋さんを見ても、
「お姉ちゃんに似合いそうだな~」なんて考えてしまいます。
―――
和ちゃんのレシピを見ながらお料理です。
♪おにく~ お~やさい ひみつの~かくしあじ~
そだち~ ざ~かりの よくばり~こいごころ~
歌いながら楽しく作っていますが、玉ねぎには泣かされました。
今まで普通に食べていたものですが、こんなに大変なんだなあって思いました。
…玉ねぎが嫌いになりそうです。
憂は毎日笑ってご飯を作ってくれますが、本当は苦労してるのかな?
当たり前に思っていたので、気付きませんでした。
そんなことを考えると、また涙が出そうになりました。
…玉ねぎのせいにしておきます。
律「はー、今日はそろそろ帰ろうか」
澪「唯もいないし、切り上げてもいいよな」
梓「そうですね」
紬「もうすぐケーキも届くと思うし、片付けちゃおうか」
律「しっかし高級ケーキ、楽しみだな!」
澪「律、お前が食べるんじゃないんだぞ?」
律「えー?一口ぐらいいいだろー?」
紬「でも、今日は姉妹水入らずじゃないかなー?」
律「確かに…」
澪「まあさ、一緒に祝えそうならわたしたちも参加させてもらおう」
梓「…最近の憂、元気ないんです」
-部室-
梓「何だか空元気って言うか、いつも通りなんですけど…」
律「けど?」
梓「寂しそうな顔する時があって…」
紬「どうしたのかなー?」
澪「…唯の一人暮らしが原因とか?」
律「離れ離れになるんだよな、平沢姉妹」
梓「だから…」
紬「…今日もいい思い出になるといいね♪」
梓「…はい!」
-平沢宅-
でっきたー!
いつもうちのカレーは甘口ですが、中辛にしました。
憂も1つ大人になったわけだし、今日は中辛 大人味なのです!
少し味見をしてみます。
唯(あれ…甘くておいしい)
チョコ、蜂蜜、砂糖、りんご。…甘くなるはずです。
でも、とってもおいしいです!
時刻は6時前。そろそろ憂が帰ってくるかなー?
サラダの用意をしながら、憂にメールを送りました。
-商店街-
とっても可愛いストラップを見つけたので、二つ買いました。
お店を出てすぐ袋から出し、携帯につけました。
もう一つは、お姉ちゃんへのプレゼントです。
憂(お姉ちゃん、付けてくれるかな~?)
なんてストラップに見とれていると、お姉ちゃんからメールです!
テレパシーでしょうか?
From お姉ちゃん
「ういー。そろそろ帰っておいで~。待ってるよ~!」
-平沢宅-
From 憂
「うん、もうすぐ帰るね!」
憂が帰ってくる!
そう思うと急に焦ってしまいます。
でも大丈夫、カレーもサラダも完璧です。
ムギちゃんのケーキが届くのは、憂が帰った後でしょうか?
憂は喜んでくれるかな。
ここまで一人でしたことは初めてだし、憂が作るものには敵わないです。
でも、わたしの気持ち届くといいなあ。
-桜高前-
紬「ありがとう~♪」
?「お嬢様、このまま乗っていかれますか?」
紬「いいえ、近いので歩いていくわ♪」
?「では、お気をつけて」
律「すっげー車…」
澪「リムジンってやつだな…」
梓「はじめて見ました…」
紬「さあ、行きましょう♪」
-平沢宅-
そろそろ7時、ムギちゃんたちが来る頃です。
憂ももうすぐだって言うし、いい感じかな?
すると玄関から憂の声が聞こえました!
「ただいま~!」
玄関に走りました。
とびきりの笑顔で抱きつきました。
本当は今朝も、抱きついておめでとうと言いたかったです。
-玄関-
唯「うーいー!おかえりー!」
憂「ただいま。どうしたの?」
唯「待ってたよー!」
憂「えへへ。…カレーの匂いがする」
唯「わたしが作りました!一緒に食べよう!」
律「何でドア開けっ放しで抱き合ってんだ?」
澪「お、お邪魔しました…」
紬(素晴しい)
梓(妬ましい)
最終更新:2012年03月11日 23:50