澪「で、なんだ? 他になにか私に聞きたいことでもあるのか? 
  ちなみに私は将来的には子供は二人産みたいな、って考えてる」

律「聞いてねえし!」

澪「そんな怒鳴るなよ。疲れたのか?」

律「おう、たった今な」

澪「人間ドックでも受けたほうがいいんじゃないか?」

律「うるせーよ。ていうか私の話を聞けよ」

澪「なに?」

律(好きな人のこと喋らせると面倒だから……)

律「あのさ。今は理想の男性像を聞いたじゃん」

澪「そうだな。なんならまだまだ語れないこともないけど」

律「いや、いいよ。それはまた今度の楽しみに取っとく。
  それでだ。逆に澪ってどんなタイプの人がダメなの?」

澪「苦手なタイプか……まあぶっちゃけ男の人じたいが苦手な気がしないでもないけど……」

律「なんだそりゃ」

澪「ああ、一個浮かんだのがある」

律「なになに?」

澪「オタク」

律「…………」

澪「オタク」

律「二度も言わんでいい」

澪「ちなみにこの場合のオタクは典型的なアニメとかゲームとかのオタクな」

律「なにがどう苦手なんだ?」

澪「いや、正直なところ私自身はオタッキーな人と会ったことも話したこともないんけど」

律「私もないな。仏像オタクならいたけど」

澪「だからあくまでイメージなんだけど」

律「うん」

澪「気持ちわるい」

律「ストレートだな」

澪「さらに言うと、なるべく近い場所にいてほしくない。同じ電車とかバスとか勘弁してほしい」

律「ああ、それはわかる。体臭キツそうだもんな」

澪「オタクの人ってたいてい肥満体型でハゲてるって感じじゃないか?」

律「うんうん、多少の偏見はあるんだろうけど間違いない」

澪「というかアニメとかにあんなに夢中になれる時点で、けっこう本格的にヤバい気がする」

律「うーん、どうなんだろ」

澪「律はオタクの人についてはどう思うんだ?」

律「私? 私はべつにそこまでオタクに否定的でもないよ」

澪「そうなのか。律はオタクとかすごく嫌いそうだと思っていたのに」

律「そんなイメージあるか?」

澪「オタクとか真っ先にひっぱたいて、説教しそうなイメージがある」

律「いや、しないからな……ていうかそこまでオタクってダメか?」

澪「少なくとも私には無理だな。オタクの人と結婚するとか、オタクの人が彼氏とかありえない」

律「……そりゃあ私も積極的に付き合いたいとかは思わない。けど」

澪「けど?」

律「カッコよかったらありかな、とは思う」

澪「カッコイイ人だったら……」

律「まあ、いいかなって思うよ。それにオタクの人って浮気しなさそうじゃん。
  彼女とかめったにできないぶん大事にしてくれそうじゃね?」

澪「そうか? むしろアニメとかのキャラにばかり夢中になって、相手にされなかったりして」

律「……意外とありそうだな」

澪「それとイケメンなのにオタクって逆に私はいやかも」

律「ん? どうして?」

澪「だってイケメンなのにアニメなんかに夢中になるんだぞ?
  普通はもっとアウトドアな趣味を持つだろ。性格に致命的な欠陥がありそう」

律「…………」

澪「なに? 急に黙ったりして?」

律「性格に致命的な欠陥、ね……」

澪「?」

律「なんにも。気にすんなって」


澪「律はどんなタイプの人がいいんだ?」

律「私のタイプの人……?
  ……パッとは出てこないな」

澪「律は誰でもいいの?」

律「そうでもない。収入とかはやっぱ重要じゃん」

澪「恋愛ってお金じゃないと思う」

律「うん、私もそう思う。
  けど金の切れ目が縁の切れ目って言うくらいなんだからさ。収入は重要だよ」

澪「それは、そうかもしれないけど……」

律「べつに私の場合、婚カツ女みたいに年収八百万じゃなきゃダメっ、てわけじゃないしさ」

澪「男の人の収入が少なくても自分が稼げばいいしな」

律「それはどうかと思う」

澪「なんで?」

律「だってそれこそ男女の関係が悪化しそうじゃない?
  引け目を感じたりしてさ」

澪「ムギは?」

律「ムギの場合は例外すぎるだろ。
  とにかく、男はある程度は稼げなきゃダメだと思う」

澪「まあ、言われてみるとお金を稼げる人ってそれだけでカッコよく見える、かも……」

律「わかるようなわからないような感覚だな」

澪「ていうか律は嫌いな男の人の嫌いなタイプってなに?」

律「嫌いなタイプ、ねえ」

澪「嫌いなタイプの人とかいないの?」

律「わかんない。そういうのってけっこう曖昧なもんだと思うんだけど」

澪「そうか? むしろ私わ明確なものな気がする……」

律「案外話してみたら、思いのほかいい人だった、みたいな話はよく耳にするだろ?」

澪「ないこともないな」

律「だから自分の好みなんて決めないほうがいいんじゃね、と私は思うわけだ」

澪「なるほど。いいこと言うな、律」

律「でしょでしょ? あ、でも」

澪「でも?」

律「澪みたいな男がいたら、たぶんぶん殴る自信がある」

澪「…………はい?」

律「澪みたいな男がいたら、たぶんぶん殴る自信がある」

澪「え? え? ど、ど、どどどどういうこと?」

律「そんなに動揺するなよ」

澪「いやいやいやいや、ええ!?」

律「冷静に考えてみろよ。ファンクラブの面前でイタい詩を朗読したりとか。
  ちょっと痛そうな話したらビビって、あげく気絶したり」

澪「…………」

律「そんなヤツの嫁になったら色んな意味で苦労するぞ」

澪「あ、あはは……女に生まれてよかった……」

律「うん。澪が女でよかったよ」

律「ああ、あともう一個許せないタイプがいる」

澪「なに?」

律「さっき収入の話したじゃん」

澪「……したっけ?」

律「なんか妙にぽけーっとしてるけど大丈夫?」

澪「律に言われたことが予想外にダメージになってて……」

律「あらま。あんまり気にするなよ。澪ちゅわん大好き、ちゅー」

澪「ば、バカ!」

律「あ、いてっ」


澪「それでなんの話だったっけ?」

律「頭がズキズキする……だからアレ、私が許せない男の話」

澪「ああ、思い出した」

律「許せない、というかいつまでもそうであってほしいっていう感じかな」

澪「どういうこと?」

律「あんまへりくだるのもどうかと思うってこと。やっぱ、ある程度は謙虚な人がいいかなって」

澪「なるほど。たしかにそうだな」

律「酒飲みだしたら、調子に乗って自分の収入を誇示して他人にケンカ売ったりとか絶対に許せない」

澪「妙に具体的だな……」


律「でもさ、最終的にはこの人だ、って思える人に出会えたらそれでいいよな」

澪「そうだな。それが一番だよな」

律「いつどこでだれを好きになるか、なんてわからないしな」

澪「最高の人に出会えて、それでカワイイ子供を産んで……」

律「そんでもって幸せな家庭を築けたら人生文句なしだよな」

澪「うんうん」

律「なんか澪としゃべったらスッキリしたし、そろそろ帰るよ」

澪「そういえばもともとは愚痴りに来たんだよな……」

律「なんかいつのまにか話題変わっちゃったけどな……っと、電話だ」

澪「あ、私のほうにもだ。誰からだろ……」

律「あ、唯からじゃん」

澪「『私の誕生日忘れてるでしょ! ひどいよお! あずにゃんとムギちゃんはきちんと祝ってくれたのに(プンプンマーク)』」

律「そういえば唯の誕生日っていつだっけ?」

澪「11月27日だな」

律「一週間ぐらい前だな……すっかり忘れてた」

澪「ていうかもう師走か……早いな」

律「ホントに年齢上がるたびに時間の感覚が早くなるよな」

澪「本当だな」

律「ていうか唯の誕生日忘れてたなんてな……本当に人間ドック受けたほうがいいかも」

澪「まあ、私たちも今年で四十路に突入だからな」

律「彼氏欲しい、な……」

澪「ていうか結婚したい……」

律「……そろそろ帰るわ。明日も早いし」

澪「うん、おやすみ」

律「また明日」





おわり♪