翌日、中野家。

唯「あずにゃん、誕生日オメデトー!」

澪「おめでとーう!」

律「めでたいなぁ」

紬「おめでとう梓ちゃん」

梓「あ、ありがとうございます。
  こんな盛大に祝ってもらえるなんて……」

紬「今日は特別に作らせたケーキを持ってきたのー」ででーん

律「おー、でかい!」

澪「あっ、真ん中に梓の砂糖人形が乗ってる」

唯「わー、かわいー!
  あずにゃんの誕生日を祝うにふさわしいケーキだねっ」

梓「ありがとうございます、ムギ先輩。
  こんな凄いケーキ、食べたことないです!」

紬「うふふ、どういたしまして」

澪(梓はもうすっかり13日誕生日設定を受け入れてるな)

唯「はい、私からのプレゼントはこれだよ、あずにゃん」

梓「わっ、なんですか?」

唯「あずにゃんが欲しがってた某バンドのライブDVDだよ!」

梓「え、ほんとだ!
  わー、これずっと欲しかったんです!
  ありがとうございます、でも高かったんじゃないんですか?」

唯「大事な後輩のためなら身銭を切ることなど厭いませんて!」

梓「ありがとうございます、唯先輩……!」

律「私と澪からはこれだ」

澪「昨日二人でお金を出しあって買ったんだ。
  このまえみんなで買い物行ったとき、これ欲しがってただろ。
  キョウアニーブランドのテディベア」

梓「わああ、ありがとうございます!
  ていうかよく覚えてましたね、私がコレ欲しかったこと!」

律「あったりまえだろ、後輩のことなら何でも覚えてるって!
  なー、澪」

澪「あ、ははは、そうだな!」

梓「……」

唯「ケーキ美味しー」

澪「ほんと、いつも食べてるのも美味しいけど
  これはまた格別だな」

律「食い過ぎると太るぞー」

澪「コレ食べて太るなら本望だわ」

梓「ほんとに美味しいです、ありがとうございますムギ先輩」

紬「うふふ、どういたしまして。
  梓ちゃんの誕生日だもの、おかかえのパティシエに
  気合入れて作ってもらったのよ」

律「梓の誕生日さまさまだな!」

梓「あはは……」

唯「いやーでもあずにゃんの誕生日が土曜日でよかったよ。
  一日中こうやってパーティできるもんね」

澪「そうだなー、平日だと放課後だけだもんな」

梓「……」

律「そういや唯の誕生日も今月じゃなかったっけ」

唯「そだよー、27日」

澪「唯の誕生日は何曜日だ?」

唯「えーっと、何曜日だったかなー。
  あれ、あずにゃんカレンダーどこー?」

梓「カレンダーはそこの机の上に……あ゛っ」

唯「あ、これか」

梓「あああああっ、駄目です! 見ちゃ駄目です!!」

唯「えー、なんで? いいじゃんカレンダーくらい」

梓「駄目です、とにかく駄目です!!
  見ると地球連邦政府がひっくり返ります」

律「何を言ってんだ」

唯「もう、日付確認するだけだからいいでしょっ」ひょいっ

梓「あああああああああああっ!!!」

唯たちは4人でカレンダーを覗き込む。
そのカレンダーの11月11日のところが、
ピンクの蛍光ペンで書かれた花丸で囲まれ、
そしてその下には可愛らしい字で「☆誕生日☆」…………

4人「…………」

梓「…………」



唯「…………」

澪「…………」

律「…………」

紬「…………」

梓「…………」

澪「…………」

律「…………」

紬「…………」

梓「…………」

澪「…………」

律「…………」

紬「…………」

唯「あはは、あずにゃんったら自分の誕生日間違えるー!」

澪「えっ!?」

律(そうくるか……)



梓「あ、あははは、そうですね、
  私ったら間違っちゃってました!」

唯「あっ、この間違いを見られるのが恥ずかしかったから
  必死に隠してたんだね?」

梓「そうなんですよ、あはは、
  唯先輩のせいでバレちゃったじゃないですかぁー、
  恥ずかしいなーもー」

唯「えっへへー、ごめんごめん!
  でもあずにゃんったら可愛いね、
  誕生日が楽しみすぎて2日も前にチェックしちゃったの?」

梓「はい、もう楽しみで仕方なくって!
  無意識のうちに11日に印つけちゃってました、あはは」

澪(切り抜けられた……のか?)

紬(どうやらそのようね……すごいわ唯ちゃん)

律(私はもういたたまれないよ……)

唯「さっ、気を取りなおしてパーティの続きしよう!
  次は一発芸大会だよー、まずはりっちゃんから」

律「はいはい。
  じゃあ一番手田井中律、回ってる扇風機を指で止めまーす」

その後も夜遅くまで楽しい誕生日パーティは続いたのだった。



帰り道。

唯「いやー、楽しいパーティだったね!」

澪「ははは……もう開き直って楽しまないと
  良心の呵責が半端なかったわ……」

律「だな……」

紬「あのー、来年からどうするの?
  来年以降もずっと13日に梓ちゃんの誕生日を祝うの?」

唯「大丈夫大丈夫、今回と同じ作戦で行けばいいよ」

紬「同じ作戦?」

唯「そう、13日が誕生日だって押し切ったように、
  来年は11日が誕生日だって押し切ってしまえばいいんだよー」

澪「うわぁ……」

律「不憫だな、梓……」

唯「だってこうでもしないと私たちは後輩の誕生日を忘れてしまった
  最低最悪のゴミ先輩だよ? そんなのやだよー」

律「誰もゴミとまでは言わねえよ」

唯「とにかく、来年からは11日に祝ってあげることにしよう。
  あずにゃんも今回みたいにちゃんと受け入れてくれるはずだよ」



そして翌年、11月11日。
音楽室では梓の誕生日パーティの準備が進んでいた。

唯「飾り付けOK?」

律「ばっちりだ!」

唯「クラッカーの用意は?」

澪「完璧だ!」

唯「ケーキとご馳走は揃ってる?」

紬「ええ、あとは梓ちゃんが来るのを待つだけよ」

唯「うん、これ以上はないってくらい誕生日パーティの雰囲気だね。
  これで今年はちゃんと11日に祝ってあげられるよー」

澪「ああ、去年は酷かったな……色々と」

律「一番酷い思いをしたのは梓だろうけどな」

唯「だからその罪滅ぼしも兼ねて、
  今年は去年よりも盛大に祝ってあげようよ」

紬「そうね、もうあんな気まずい誕生日パーティはイヤだわ」

唯「あずにゃん、早くこないかなー」



ガチャ
梓「こんにちはー」

唯「お、あずにゃんキター!」

梓「わっ、なんですかこれー。
  部屋中こんなに飾りつけて……
  それにこんな大きなケーキも」

律「ははは、とぼけるなよ。
  今日は何の日か、忘れてるわけじゃないだろ?」

梓「今日? 何の日でしたっけ」

紬「またまたー、知らない振りしちゃって。
  今日は梓ちゃんの誕生日じゃない!」

梓「は?
  私の誕生日は明後日、13日ですけど……」

唯「もー、いいよそういうの。今日があずにゃんの誕生日だよっ」

梓「いえ13日ですけど」

唯「11日だよ、11日。つまり今日。
  今日11日があずにゃんの誕生日!」

梓「いや、13日って言ってるじゃないですか……
  もしかしてみなさん……私の誕生日覚えててくれてないんですか!?」

梓「ひどい、ひどいです……
  私、明後日の誕生日楽しみにしてたのに……
  こんなんじゃぶち壊しですよ」

律「あ、いやこれはその……」

梓「早く片付けてください、そのクラッカーも、
  飾り付けも、ケーキも……!
  最低です……みなさん……」

唯「ええっ、せっかく準備したのに!?」

梓「人の誕生日間違えたくせに
  せっかくもクソもないですよっ!!
  とっとと全部片付けてくださいっ!!!」

唯「ひ、ひええ~」

梓「律先輩たちもっ!!」

律「はいいいっ!!
  ただちに全て撤去いたしますっ!!」



澪「なあムギ……もしかしてこれは」

紬「梓ちゃんなりの復讐でしょうね……1年越しの」

澪「……」

澪「もしかして13日に誕生日を祝おうとして
  パーティの準備なんかしたりしたら……」

紬「結果は見えてるわ……」

澪「はは、そうだな……」



梓「人の誕生日忘れてんじゃねーです、
  この最低最悪のゴミ先輩どもー!」

唯「ひ~、しーましぇーん!」

誰も祝わないままに誕生日パーティの片付けが終わったあと、
4人は梓に土下座で去年やったことを謝り、
そして二度と梓を怒らせまいと心に誓ったのであった。



    お  わ  り



これでおしまい

約1時間半もの長きに渡る保守支援ありがとうございました
こんな長編を書いたのは久々なので疲れました