音楽室。

唯「あれっ、あずにゃんの誕生日っていつだっけ?」

紬「さあ……?」

澪「梓の誕生日がどうかしたか?」

唯「確か11月だったと思うんだけど……何日だったかなあ」

律「へー、今月なのか。
  じゃあなんかお祝いしてやらねーとな」

唯「うーん、でも何日だったか思い出せないんだよ」

紬「梓ちゃんに聞いてみれば?」

唯「だめだよ、そんなことしたら如何にも『祝いたい』みたいに思われちゃうじゃん。
  こういうのはサプライズが大事なんだよ~」

律「サプライズっつっても肝心の何日かが分からないんじゃアレだろ」

唯「うーん、そうなんだよね……」

澪「あ、そういえば梓が入部したときにプロフ書いてもらったんだ。
  確かアレに誕生日の欄もあったはず」

唯「おっ、でかした澪ちゃん。
  果たしてそのプロフは今どこに?」

澪「手帳に挟んであるよ。
  えーと……あ、あったあった。はい」

唯「ふむふむ、どれどれ……あずにゃんの誕生日は……
  …………
  …………」

澪「…………」

律「おい、何黙ってるんだ。何日だったのか教えろよな」

唯「……11日」

紬「えっ?」

澪「昨日…………だな」

律「えっ……」



唯「……」

澪「……」

紬「……」

律「そういえば昨日……
  すげーそわそわしてたよな、梓のヤツ……」

澪「言われてみれば、確かに……」

紬「期待してたのね……
  私たちはその梓ちゃんの純粋な気持ちを踏みにじって……」

律「最低な先輩だな、私たちは……」

唯「そうかなー、そんなに深刻に考えなくてもいいじゃん。
  わざとすっぽかしたんじゃなくて、覚えてなかっただけなんだしさー。
  まだ取り返しはつくよぉー」

律「つくわけないだろ!
  梓の誕生日はもうあと364日後にしかこねーんだぞ!」

唯「大丈夫、私にいい考えがありまーす」

澪「唯のいい考えが本当にいい考えだった試しがないんだが」

唯「あずにゃんの誕生日が明日だったということにすればいいんだよー」

律「はあ?」

唯「つまり、11月13日があずにゃんの誕生日!」

律「何いってんだよ、人の誕生日が動くわけ無いだろ」

唯「大丈夫!
  あずにゃんはマジメだし、空気も読んでくれる!
  私たちに合わせて13日を誕生日だってことにしてくれるはず!」

律「え、ええー……」

紬「まあそれなら、梓ちゃんを悲しませずに
  誕生日を祝ってあげることもできるけど……」

澪「ていうか誕生日を祝うことじゃなくて
  自分たちが悪者にならないことが目的になってないか、それ」

唯「するどいね、澪ちゃん。
  りっちゃんも言ったように後輩の誕生日を忘れるなんて
  最低の先輩がやることだよ。
  でも私たちは13日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげられる。
  私たちは罪から逃れることができるのだよ」

澪「本当の誕生日を忘れたっていう事実はくつがえらないと思うんだが」

唯「あーあー聞こえなーい」

紬「まあ、やってみる価値はあるんじゃないかしら……
  このままだと梓ちゃんも誕生日を祝ってもらえないままだし」

律「ホンキかよ」

紬「唯ちゃん、要するに私たちは
  梓ちゃんの誕生日が13日だって思い込めばいいってことね?」

唯「そうだよー。
  私たちが13日ってことで押し切れば、
  あずにゃんも空気読んでこっちに合わせてくれるだろうし」

律「……どうする、澪」

澪「……いや、まあ……
  誕生日を祝ってやれないのはアレだし、
  誕生日そのものを忘れてた、って言うのはもっとアレだし……」

律「まあ、そうだな……」

唯「よしっ、じゃあ決まりだね。
  あとはあずにゃんが来るまで
  『明日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげたいムード』を盛り上げておこう」

律「ムードメーカーを自負してはいるが
  そんな高度なムードメイキング技術は持ってないよ私は」



ガチャ
梓「こんにちはー……」

唯(あっ、もう来た! ほら盛り上げて盛り上げて)

律(ええー……)
 「あー、梓、明日……暇か?」

梓「え、はあ、暇ですけど」

紬「そう、良かったわー。
  私たち、明日梓ちゃんの誕生日パーティを開こうと思ってて!」

梓「えっ……!?
  私の誕生日、覚えててくれたんですか?」

澪「ははは、もろちんだよ。
  大事な後輩の誕生日を忘れるわけ無いだろ」

梓「嬉しいです、てっきり忘れられてるものだと思ってました!」

唯「やだなーあずにゃん、ちゃんと覚えてたよ、
  11月13日があずにゃんの誕生日だってね!」

梓「えっ!?」

唯「11月13日が、あずにゃんの誕生日だよね!」

梓「えっ、えっ、えー……っと……
  …………」

梓「そ、そうですよー、13日が私の誕生日です!
  あははは、覚えててくれてありがとうございます……」

唯(よし、うまくいった!)

紬(ミッションコンプリートね)

澪(すまん梓、許せ……)

律(哀れになるくらいイイ子だな梓は)

唯「で、どこでパーティやる?
  あずにゃんの家でやっていい?」

梓「あ、はい、いいですよ……親もいませんし」

唯「よーし、じゃあ決まりだね!
  明日のあずにゃんの誕生日、盛大に祝ってあげるからね!」

紬「色々用意しとかなくちゃ、
  明日の梓ちゃんの誕生日のために!」

澪「律、今日の帰りに
  明日の梓の誕生日のためにプレゼント買いに行こうぜ」

律「おう、
  明日の梓の誕生日のために」

梓「……………………」


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