翌日

寅次郎「こっちだ」

唯「え?家の裏?」

寅次郎「ここだ」

唯「印刷工場?」

寅次郎「おう、博もここで働いてるんだ」



ガチャガチャ 

唯「わー」

タコ「おう、寅さん」

タコ「君が唯ちゃんかい?」

唯「あ、はい!」

寅次郎「これが社長だ、タコみてぇな面してるが立派な社長だ」

タコ「君にはここで慣れるまで軽い作業をしてもらうけどいいかい?」

唯「あ!はい!これからよろしくお願いします!」

寅次郎「タコ!唯をあんまり扱き使うんじゃねぇぞ」

タコ「うるせぇよ!てめぇも働け!」

私の新しい生活が始まりました




ジリリリ

タコ「よーし、今日はこれまでだ、ご苦労さん」

唯「ふぅ・・」

博「疲れたかい?」

唯「は、はい、今までグータラしてたので、あはは・・」

さくら「どう?頑張れそう?」

唯「はい!一生懸命頑張ります!」

寅次郎「良かったなぁ、唯」

唯「ありがとうね、寅さん」



唯「それでね、さわちゃん先生がね あ、担任でクラブの顧問の先生なんだけど~」

おばちゃん「なんだいその先生は(笑」

さくら「面白い先生ねー」

博「すっかり明るくなりましたね」

寅次郎「あぁ、元々気さくな子だったんだよ」

寅次郎「このまま上手くいってくれたらいいなぁ」



日曜日

ジャラーン ジャーン

唯「今わたしの願いごとが かなうならば翼がほしい」

  「この青空に翼をひろげ 飛んでゆきたいよ」

  「今 富とか名誉ならばいらないけど 翼がほしい」

  「子供のとき夢見たこと 今も同じ夢に見ている」

  「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ ゆきたい」

寅次郎「…」

さくら「さすがに上手いわねー」

唯「あ、このアコースティック博さんのですか?勝手に借りてごめんなさい」

寅次郎「唯、それはなんて歌だ?」

唯「翼をください」

唯「これは私の大切な歌なんだー」

唯「軽音部と出会って初めて聞いた曲、軽音部のみんなとの繋がりの切っ掛けになった曲」

寅次郎「いい歌だなぁ」

寅次郎「唯、どうだ?今の暮らしは」

唯「うん、とっても充実してるよ」

唯「みんなみんな優しくて親切にしてくれるし」

唯「全部寅さんのおかげだよ!」

寅次郎「よせやぃ・・」

寅次郎「唯、ここにずっといていいんだぞ」

唯「寅さんもここにいる?」

寅次郎「あぁ、いるさ」

唯「じゃあ居たいかなぁ、あはは」

寅次郎「そうか」

唯「うん!」

さくら「…」


・・・・・・

寅次郎「さくら!売に行ってくらぁ」

さくら「急にどうしたの?お兄ちゃん」

寅次郎「どうしたって、労働だよ 唯だって働いてんだから俺が寝て暮らすわけにはいかねぇだろ」

さくら「・・そうね、行ってらっしゃい」



ブロロロロ

「ここですね」

「そうみたいね」



おばちゃん「さくらちゃん、うちの前になんか大きな車が止まったよ」

さくら「外車みたいね」



「通行の邪魔になるから向こうで待ってて」

「はい」



「ごめんください」



さくら「はい」

さくら「なにかご用でしょうか?」

紬「初めまして、私は桜が丘高校3年の琴吹紬と申します」

さくら「もしかして、唯ちゃんのお友達?」

紬「はい、やはりこちらに 唯さんはご在宅でしょうか?」

さくら「唯ちゃんは今お仕事してるの、ちょっと待っててね」

紬「はい」



さくら「唯ちゃん」

唯「はーい」

さくら「お客様よ」

唯「…」

唯「でも仕事中だし」

博「いいよ、行ってきたら」

唯「はい・・ すぐ戻ってきます」



唯「あ、」

紬「唯ちゃん、久しぶりね・・」

唯「ムギちゃん・・」

さくら「上の部屋でお話ししたら?」

唯「はい」



紬「いきなりおしかけてごめんなさい」

紬「勝手に調査した事も悪いと思ってる」

唯「こっちこそ・・ 黙って出て来てごめん・・」

紬「お仕事してるみたいね」

唯「うん・・」

紬「辛くない?」

唯「辛くないよ、今の生活が好き・・」

紬「そう・・」

唯「あの・・ みんなは、怒ってる・・?」

紬「最初はね、怒ってたわ」

紬「でも唯ちゃんが悩んでたのに頼りにならなかった事でみんな自分を責めてる」

紬「もちろん私も」

紬「私達や憂ちゃんじゃ解決できない事なの?」

唯「…」



紬「・・戻ってきて欲しい」

紬「今は休学届けを出してあるから」

唯「ごめんムギちゃん、私仕事の途中なんだ」スッ

紬「待って!」

紬「もちろん軽音部の活動はみんな今も続けてるわ」

紬「勉強しながらも、みんなライブに向けて頑張ってる」

紬「唯ちゃんがリードギター前提にね」

唯「…」

紬「お仕事の邪魔をしてごめんなさい」



紬「待ってるからね唯ちゃん」

唯「…」



紬「突然お邪魔して申し訳ありませんでした」

おばちゃん「まぁまぁ、お茶も出さないで」

さくら「お話し出来たの?」

紬「はい・・唯ちゃんの事よろしくお願いします」

寅次郎「唯~! 寅さんが帰ってきたぞ~」

寅次郎「唯はどこだ?もう工場終っただろ?」

さくら「ちょっと散歩に行ってくるって」

さくら「・・お兄ちゃん、昼に唯ちゃんの高校の友達が訪ねてきたの」

おばちゃん「べっぴんさんでお嬢様みたいなのがさ、大きな車で」

さくら「唯ちゃん、ちょっと迷ってるみたい」

寅次郎「…」



寅次郎「探してくらぁ」

さくら「お兄ちゃん!」



寅次郎「おい、源公!唯見なかったか?」

源「へい、さっきまで河川敷にいやした」

寅次郎「よし!」ダッ

源「兄貴ぃ」



寅次郎「いやがった」ハァハァ

寅次郎「おーい唯!」

唯「寅さん?」

唯「どうしたの?」

寅次郎「あ、あぁ 一緒に晩飯を食いに行こうと思ってな」

唯「え?今から?」

寅次郎「おうよ、行くぞ」

唯「寅さん」



食堂

寅次郎「あー、んー 今日ダチが来たんだって?」

唯「!・・うん」

寅次郎「連れ戻しに来やがったのか?」

唯「…」

寅次郎「騙されるんじゃねぇぞ」

寅次郎「お前の気持ちも察しがつかなかった奴らだ」

唯「…寅さん、悪く言うのはやめて・・」

寅次郎「そんな奴らに今更お前を」

唯「やめて!」

唯「やめて、ね?」

寅次郎「…」

寅次郎「でもな、」

「おまちどう、サンマ定食とレバニラ定食」

寅次郎「…」

唯「寅さん」

寅次郎「ん?」

唯「寅さんと最初に出会った所でも食べたサンマ定食だよー」

唯「あ、あの時も、、寅さんがごちそうしてくれたよね」グス

寅次郎「…あぁ、そうだったな」

・・・・・・・・・・・
・・・・・・



さくら「唯ちゃんどう?」

博「うん、仕事は頑張ってるけど元気が無いな」

おいちゃん「あんなに明るい子だったのになぁ」

おばちゃん「やっぱり家に帰りたくなったんじゃないのかねぇ」

さくら「お兄ちゃんもすっかり大人しくなっちゃって」



ジャーン ジャラーン

唯「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ~」



寅次郎「唯」

唯「え?」

寅次郎「俺ゃあ明日から旅に出る事になったのよ」

唯「どうして・・?」

唯「わたしのせい!?」

寅次郎「関係ねぇよ」

寅次郎「俺ゃあ元々商売しながら渡り鳥みてぇに日本中を旅して回る渡世人よ」

唯「でも明日って急すぎる・・」

寅次郎「いつもそうなんだよ」

唯「どうしても行かないと駄目なの?」

唯「寅さんここにいるって言ったじゃない!」

寅次郎「…大人にゃあ色々都合ってモンがあるのよ」

寅次郎「お前もそのうち分かるよ」

唯「私のせいだ・・」グスグス

寅次郎「唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ」

唯「…」グス

寅次郎「後悔しないようにな、俺みてぇな大人になっちゃ駄目だぞ」

唯「寅さん!」

寅次郎「お休み」



朝、居間に行くと寅さんはもう旅立った後でした

さくら「唯ちゃん、気にしちゃ駄目よ」

さくら「お兄ちゃんはいつもこうなの、自分勝手でね」

さくら「あの人は一つの所へじっとしていられない性分なのよ」



唯「悲しみのない自由な空へ、か・・」

唯「さようなら、寅さん」



それから間も無く私は家に帰りました
とらや、や工場の皆さんには沢山お世話になりました

軽音部のみんなや憂や先生にも迷惑かけてしまって

それからはライブの練習と遅れてしまった勉強の毎日でした

時間は瞬く間に過ぎて行きます



さくら「お兄ちゃんの事をどう思ってた?」



さくらさんに最後に聞かれた事をよく思い出します
さくらさんはその後すぐに、「いいの、ごめんなさい」と濁したけど

わたしは・・



ライブの日がやってきました

梓「とうとう来ましたね」

澪「ううう」ガクガク

律「よーし、やってやるぜ!」

紬「おーー!」

唯「頑張ろうねみんな!」



三曲目が終った



最後の曲
「ふわふわ時間」



唯「キミを見てると~」

唯「夢の中なら二人の距離~」

(浮かない顔してどうしたい?)

唯「あぁ カミサマお願い~」

(ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる)

唯「二人だけのDream Timeください」

(もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな)


なぜか今、思い出す
涙が出そうになる

(唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ)





あの入り口の帽子の人!

寅さんだ!

唯「ふわふわ時間 ふわふわ時間」

ジャジャ ジャジャ ジャーン

終った・・

ごめんみんな!先に行くね!

澪「おい、唯!」



唯「寅さん?」

外に出る

確かにこっちを見て笑ってた

唯「寅さんどこ?」



「さっき歌ってた平沢唯さんですよね?」

唯「は、はい」

「これ男の人が渡してくれって」

唯「ありがとう・・」

唯「手紙・・」


「拝啓、ひらさわゆい様 お前の大切な歌やらなかったな、俺も好きだったのによ、
  まぁいい、またいつかあれをききにくるぜ。 車寅次郎」


唯「寅さん!やっぱり寅さんだったんだ!」


絶対絶対いつか聴きに来てね、寅さん 大好きだよ



寅次郎「今、富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい・・か」

「なんだそりゃ」

寅次郎「おめぇみてぇな無学な人間にゃあ理解できない芸術ってやつよ」

「ぬかせ、てめぇが芸術だと」

寅次郎「あぁ嫌だ嫌だ、下品な男にゃうんざりだ」



寅次郎「よし!商売だ!」

さて、いいかねお客さん! 
角は一流デパート、赤木屋、黒木屋、白木屋さんで、紅、白粉つけたお姉ちゃんから下さい頂だいでいただきますと5千が6千、7千が8千、1万円はする品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない! 
いいかいい! ハイ! ならんだ数字がまず一つ 物のはじまリが一ならば 国の始まりが大和の国 島の始まりが淡路島 泥棒の始まりが石川の五右衛門なら 助平の始まりがこのオジサンっての、ネ! 
笑っちゃいけないよ 助平ってわかるんだから目つき見リや。  



四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水 粋な姐ちゃん立ち小便 白く咲いたか百合の花 
四角四面は豆腐屋の娘 色は白いが水臭い 一度変われば二度変わる 三度変われば、
四度変わる 淀の川瀬の水車、誰を待つやらくるくると ゴホンゴホンと混さんが、口の浜辺でねえ、
あなた、私しゃあなたの妻じゃもの 妻は妻でも坂妻と来やがった。

どうホラ! これで買い手が無かったら あたし浅野内匠頭じゃないけど 腹切ったつもり、

だめか、えー チキショウー。

全くねぇ、今日はしょうがねえ、貧乏人の行列だ、まぁ、いいよ。
いいっていいって帰んなさい。みんないなくなっちゃったね。

どうおじいちゃん。






毎年この曜日のこの時間にはよく、男はつらいよTVでやってたのに
今じゃさっぱりやらないので寂しいです。

なんでやらないんだろうね、DVD買えって事かな?

最後の啖呵は某サイトから勝手に貼ってしまった。

見てくれてありがとう。



唯たちが卒業した後、軽音部で一人になってしまった梓。
先輩達のいない寂しさに、
軽音部が終わるかもしれない焦りに、
受験勉強の忙しさに、打ち拉がれる日々。
そんなある日、桜高軽音部に絵はがきが届く。
『拝啓 平沢唯様』
それは唯が卒業したことを知らない寅次郎が送ったものだった。
「寅さん……か…… どんな人なんだろう……」

男はつらいよ 寅次郎と迷子の仔猫(あずにゃん)
が読みたいと思った俺のベストヒロインは榊原るみ



.>>124
榊原るみ良かったよな、あの知的障害者の役の話が1番好きだわ。
また見たくなってきたよ。