わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です

帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎

人呼んでフーテンの寅と発します



律「よっしゃー練習終わりー」

澪「…」

紬「そうね」

梓「お疲れ様でした」

唯「…」

律「帰ろうぜ」

唯「あ、今日は寄る所があるから先に帰るね・・」

紬「・・うん」

澪「うん、お疲れ」

梓「お疲れ様でした」



澪「唯、最近元気ないな」

紬「そうね・・」

梓「何か悩みでもあるんでしょうか」



憂「お姉ちゃんお帰り」

唯「ただいま」

憂「ご飯もうすぐ出来るよ」

唯「ごめん、今日はいいや・・」

憂「お姉ちゃん…」

唯「ごめんね」



唯の部屋

唯「決めた」

唯「明日家を出よう」

唯「お金があまり無いけど・・」

唯「なんとかなるよね」

唯「荷物をまとめて明日は早起きしないと」



早朝

唯「こんなもんかな」

唯「あ、ギー太」

唯「よいしょっと」



ギー
バタン

唯「憂、ごめんね」

唯「とりあえず駅に行こうかな」



憂「お姉ちゃん起きてー」

憂「お姉ちゃん?」

憂「いない。あ、手紙」

カサ



憂「そんな…」

ピピピ

憂「電源切ってる…」



梓「先輩!」

律「どうした梓?」

梓「憂から聞いたんですが唯先輩が家出したそうです!」

澪「え!」

紬「…」

梓「学校も辞めると書いてあったそうです」

梓「電話も通じません」

律「なんでだよ唯・・」




唯「どこに行こうかな」

唯「うーん、よく分かんないな」

唯「とりあえずこれに乗っちゃえ」



ガタンゴトン

唯「新しい人生の始まりだぁ」



唯「遠くまで来ちゃったなぁ」

唯「これから住む所と仕事探さなきゃ」



桜が丘高校

律「どこへ行ったんだよあいつ」

紬「そんなに遠くへは行けないと思うけど」

梓「えぇ」

澪「何が理由なんだろうな」




唯「全然駄目だよ・・」

唯「どこも雇ってくれないよ」

唯「これからどうしよう」

グー

唯「お腹へったな・・」



唯「ここの食堂安そうだね」

唯「ここで食べよう」



「いらっしゃーい」

唯「ええと」

唯「・・サンマ定食ください」



パクパク

唯「どうしよう・・」

唯「お金もあまり無いし」ガク

唯「あー・・」グッタリ

「ねえちゃん」

唯「あー」

「ねえちゃん?」

唯「え、あ、私?」

「あぁ、ねえちゃんだよ」

「浮かない顔してどうしたい?」

唯「え、色々あって・・」

「見たところ学生さんだろ?」

唯「え?、、はい・・」

「おばちゃん、この子にサイダーあげてくれ!」

唯「え?あ、悪いです」

「いいんだよ」

「家出でもしたか?」

唯「な!なんで分かるんですか?」

「それくらい分かるよ」

「悪い事は言わねぇから早いとこ帰んな」

唯「・・帰れません」

「そうかい、あんたも色々あるんだな」

「だけどな、こんな所でウロウロしてたら変な奴に絡まれるぞ」

唯「え!そうなんですか?」

「あぁ、ねぇちゃん名前は?」

唯「唯です、平沢唯」

「唯ちゃんか、俺は寅次郎、車寅次郎だ」

唯「寅次郎さん・・」

寅次郎「寅さんでいいよ」

寅次郎「住む所はあるのかい?」

唯「これから探します・・」

寅次郎「もしどこにも行く所が無くなって困ったらな」

寅次郎「葛飾柴又の帝釈天にある「とらや」に行って寅次郎の知り合いだと言えば
       そこにいる家族がきっと力になってくれるよ」

唯「葛飾柴又のとらやさん?」

寅次郎「あぁ、おばちゃん!この子の分と一緒に勘定だ!」

唯「えぇー悪いですそんなー!」

寅次郎「いいってことよ」

寅次郎「いいか?困ったらきっと訪ねるんだぞ」

唯「は、はい」

寅次郎「じゃあな」

唯「あ、ありがとうございました!寅さん!」



次の日

唯「う・・憂、朝?」

唯「あ・・駅のベンチで寝ちゃったんだ・・」

唯「働く所探さないと」

・・・・・・・・

2日後

唯「やっぱり私だけじゃ駄目だよ・・」

唯「保護者がいないとどこも雇ってくれない」

唯「お金減ってきちゃったな」

唯「あぁ、どうしよう・・」

唯「…」

唯「・・葛飾柴又のとらやさん」

唯「えーと、葛飾・・」

唯「結構遠いね」

唯「でも、もう当てがないし」

唯「駄目で元々だし行ってみよう・・」

ガタンゴトン



唯「グーグー」

唯「う、、!」

唯「あ、寝ちゃ駄目だ、乗り過ごしちゃうよ」



柴又駅

唯「ふー やっと着いたよ」

唯「えーと、ここからどこへ行けばいいんだろう?」

唯「そこの店の人に聞いてみよう」

唯「すみませーん、とらやさんってどこか分かりませんか?」

・・・・・・

唯「とらやさんって団子屋さんなんだ」



唯「あ、あった とらや」

唯「ごめんくださーい!」

「はーい」

さくら「お団子ですか?」

唯「あ、いいえ、」

唯「こちらに寅次郎さんという方は?」

さくら「兄の知り合い?」

唯「妹さんですか、えぇ一応」

さくら「ちょうど一昨日帰ってきたのよ、ちょっと待ってね」

さくら「あ、お名前は?」

唯「唯です、平沢唯です」



さくら「お兄ちゃん」

寅次郎「あ?」

さくら「唯さんって女の子が訪ねてきてるわよ」

寅次郎「唯?」

寅次郎「あぁ!あの時の定食屋の娘か!」

ダダダ

唯「あ、寅さん・・」

寅次郎「唯ちゃんか?来たかー!」

唯「ごめんなさい、どうしようもなくなって・・」

寅次郎「いいんだいいんだ、座れ座れ!」

寅次郎「さくら!ラムネと団子出してやってくれ!」



寅次郎「よく来たなぁ」

唯「ごめんなさい、どこにも行く所が無くなったの」グスン

寅次郎「おいおい、もう大丈夫だぞ!」

寅次郎「ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる」

唯「グス、うう、、びえーーん!」

寅次郎「辛かったんだな可哀想に、もう大丈夫だ!」

唯「すみません、少しの間だけでいいのでお世話になります・・」グス

寅次郎「遠慮する事ぁねぇ、いつまでもいればいいんだよ」

寅次郎「さくら!今日からこの子うちで預かるぞ!」

さくら「え?」

さくら「唯ちゃん、と言ったわね、歳は?高校生?」

唯「はい、17歳です、でも学校は辞めるつもりです」

さくら「お兄ちゃん未成年よこの子」

寅次郎「そういう話は後だ後!」

寅次郎「疲れてるみたいだから俺の部屋で寝かせてやってくれ!」

さくら「…分かったわ」



夜 食卓

さくら「余程疲れてるみたい、グッスリ眠ってるわ」

寅次郎「無理もねぇよ」

おばちゃん「しかし寅ちゃん、未成年だろ?」

博「ちょっとこのままじゃ問題ありますね」

寅次郎「なんだ?お前ら歓迎してやらねぇのか?」

おいちゃん「そうは言うがな寅、人様の娘なんだぞ」

さくら「そうよ、まだ学生よあの子」

寅次郎「あの歳で家出したって事ぁ、余程の事があったんだよ!」

寅次郎「このまま話も聞かずに帰せるかぃ!」

寅次郎「今日はもう寝る」

寅次郎「明日よく話を聞いてみらぁ」



おいちゃん「あいつは次から次へと問題を背負い込んでくるなぁ」



翌日

唯「あ、寅さん、おはようございます」

寅次郎「おう!よく眠れたかい?」

唯「おかげさまで」

唯「朝食先に頂いてます」

寅次郎「俺も食うかな」

寅次郎「唯ちゃん、昼からちょっと付き合ってくれよ」

唯「はい?」

寅次郎「買物だよ、とりあえず住むためにいる物を買いに行くぞ」

唯「でも私お金・・」

寅次郎「そんなのは気にするこたぁねえんだ」

唯「ただでさえ迷惑かけてるのに」

寅次郎「迷惑じゃねえよ、じゃあ行くよ、表で待ってな」



寅次郎「さくら、2万ほど貸してくれ、すぐ返すから」

さくら「…」



夕方

寅次郎「ふうー、こんなもんか」

唯「こんなにお世話になって・・ありがとう寅さん・・」

寅次郎「気にすんなよ」

寅次郎「晩飯食って帰るぞ、何が食べたい?スパゲチィか?」

唯「なんでも食べます」



食堂

寅次郎「うまいかい?」

唯「うん、とってもおいしいよ!」

寅次郎「唯ちゃんよ、気が進まないかもしれねぇが何があったか聞かせてくんねぇかな」

唯「…はい」

唯「私は今妹と二人で暮らしています、両親は外国にいる事が多いので、、」

唯「妹はとても出来た子で私の身の回りの世話を全部してくれるんです
    私はいつもグータラして今までずっとそれが当たり前だと思ってました」

唯「学校では軽音部に入ってました」

寅次郎「けいおんぶ?」

唯「あ、みんなで集まって楽器を演奏したりする音楽のクラブです
    私はギターをやってました」

寅次郎「あの大きい荷物はギターだったのか」

唯「そのクラブでもわたしはダラダラしていました、少し前まではそれで良かったんですが・・」

唯「卒業が近づくに連れて段々不安になって来ました、みんな受験勉強で忙しくなって
    なんだか取り残されたような気になりました」

唯「家でも学校でも駄目な私自身が怖くなったんです、
      このままみんなに置いて行かれて私一人で・・」グス

唯「その前に自立して一人で生きてみようと決めたんです、
    でも、そんなに甘くなくてこんな・・」グスン

唯「寅さんやとらやの方達にも迷惑かけてしまって・・
    もうどうしたらいいか・・」グスグス

寅次郎「分かった、唯ちゃんよ?よーく分かったよ」

寅次郎「うちにいて唯ちゃんの気の済むようにしたらいい」

寅次郎「その気なら働く所も見つけてやる、気が済むまでうちにいたらいいよ」

唯「寅さん・・」

寅次郎「もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな」

唯「ありがとう・・」

寅次郎「一応、妹さんにだけでも連絡して安心させてやったらどうだい?」

唯「あ、そうですね」



ピヒ

唯「あ・・憂?」

唯「・・ごめんね、うん、ごめん」

唯「私の事は心配しないで」

唯「うん、住む所も見つかったの、これからお仕事もするつもり」

唯「許してね、落ち着いたらまた合おう?」

唯「うん、ごめんね」

唯「みんなによろしくね、ごめんと伝えておいて」

唯「心配しないで、また電話するからね」

唯「寅さん、私働きたい」

唯「少しでも自分で出来る事をしないと」

寅次郎「よし!仕事は心当たりがあるから心配するな」


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