4時限目 音楽室

さわ子「もうここ何ヶ月もご無沙汰よね……」

さわ子「しかも生理も近いから、さらに拍車をかけてムラムラするわ」

さわ子「かと言って愛し合えるような彼氏もいないし」

さわ子「なんで、こんな魅力あふれる女を世の男どもはほっとくのかしら……」

さわ子「ああ……」

生徒「先生」

さわ子「は、はい!? 何?」

生徒「譜面台の数が足りません」

さわ子「へっ? そうなの?」

生徒「はい」

さわ子「じゃあ、隣の音楽準備室まで取りに行ってくるわね」

生徒「お願いします」



音楽準備室

さわ子「さっきの独り言聞かれてないでしょうね」

さわ子「……まぁ、大丈夫か」

さわ子「さてと、譜面台はと……」

さわ子「あった、あった」

さわ子「それにしても、いつになくムラムラするわ」

トンちゃん「プクプク」

さわ子「あんたはいいわよね、何も悩み事なんてなさそうで」

トンちゃん「プクプク」

さわ子「……待てよ」

さわ子「亀にも『亀頭』があるのよね……」

トンちゃん「プクプク」

さわ子「ゴクリ……!!」



同時刻 プール

唯「ほらほら見て~、トンちゃんの真似~」プカ~

紬「うふふ、似てるわ唯ちゃん」

紬「じゃあ、私もマンボウの真似~」プクプク プカ~ン

律「唯、だったら息継ぎは鼻だけでやらないと」

唯「あ、そっか」

唯(じゃあ、鼻だけを水面に出して……)スゥー

律「津波だ~!!」バシャッ!!

唯「!?」

唯「ゲホッ、ゲホッ! 鼻に水入った……」

律「あははははっ!」

澪「何やってんだよ……」

唯「も~う! りっちゃん酷い~!」

律「ごめん、ごめん」

唯「これでも喰らえっ!」ポイッ!!

律「あいてっ! 何だ~?」

唯「プールの底にあるバブだよ」

律「バブ?」

唯「うん、入浴剤だよ」

澪「唯、それは入浴剤じゃなくて塩素だぞ」

唯「えっ!? そうなの!?」

澪「そうなのって……、なんでプールに入浴剤を入れる必要があるんだよ……」

唯「だって、お風呂に入れると疲れもよくとれるって言うじゃない?」

唯「だからプールに入っててもいいかな~って」

澪「ああ、そう……」

律「唯は今までずっとそう思っていたのか?」

唯「うん。あ、でも、なんでお風呂みたいに色が変わらないのかな~とは思ってたけど」

律「その程度の認識かよ……」

唯「でも、なんで塩素なんて入れてるの?」

澪「水を綺麗にするためだよ」

唯「そうなんだ」

澪「殺菌効果があるから」

唯「へ~、これって私たちを助けてくれているんだね!」ドッチャリ

澪「って、唯拾い過ぎ」

唯「昔っからこれ拾うの得意だったんだ~」

律「何を~! 私も負けてられるかっ!」

和「あんた達、何やってるのよ」

唯「あ、和ちゃん」

律「和も参加するか? 塩素拾い競争」

和「しないわよ……」

澪「なぁ、和」

和「なに? 澪」

澪「唯ってプールに入ってる塩素のこと入浴剤だと思ってたって言ってたけど」

和「ああ、確かに小学校のときからそうね」

澪「なんで、その間違いを正してやらなかったんだ?」

和「だって、面白いでしょ?」

澪「えっ!?」

和「でも、まさか今の今まで信じているなんて……、本当に唯ったら、うふふ」

澪「……」



律「よっしゃ! 塩素5個ゲットだぜー!!」

唯「なんの! 私は30個!!」

律「げっ! っていうかそんなに入ってるもんなの!?」

唯「ふふん! だから私は昔っから得意だって言ったでしょ」

律「くっそ~」

和「もう、やめなさいよ、みっともない」

律「ん~」ジ~~~~~~ッ

和「なに?」

律「いや、和ってけっこう着痩せするタイプなんだなと思ってさ」

和「それって私が太ってるってこと?」

律「じゃなくって、結構出るとこ出てるってこと」

和「いきなり何を言い出すのよ」

唯「だっていつも私が抱きついてるから母性あるれる体になるんだよ」

和「唯も変なこと言わないの」

律「でも、いいなぁ~……」

唯「りっちゃんまな板~」

律「ムッ! そういう唯だって」

唯「私はまだ成長期だもんね~」

律「わ、私だって~」

和「でも、私なんかより澪の方がいい体してるんじゃないの?」

澪「ち、ちょっと和!」

律「ああ、もうね、澪の体はなんて言うかさぁ~」

澪「なによ……」

律「エロい体!」

唯「いよっ! エロい体!」

澪「おいっ!!」



体育教師「そろそろ時間だから上がってちょうだいね~」

律「いや~、今日もたらふく泳いだな~」

唯「もうお腹ペコペコだよ~」

律「体育が4限目で良かった!」

唯「すぐお昼だもんね!」

和「ところでムギは? さっきから見当たらないんだけど」

律「あれ? さっきまで一緒にいたと思ったんだけど……」

唯「先に上がったのかな?」

澪「じゃあ私たちもそろそろ上がって着替えるか」

紬「ぷはっ! どうだった? 私のマンボウの真似……」

紬「って、あれ? 皆は……?」

紬「……」

紬「クスン……」



更衣室

唯「あれ? ムギちゃん先に上がってたんじゃなかったの?」

紬「ううん。気にしないで……」

律「どうしたんだムギ? なんだか元気ないぞ~」

紬「私はきっとマンボウにはなれない……」

律「うん?」

澪「唯、なんだその袋」

唯「わわっ! 見ちゃだめっ!」

澪「塩素……、持ってきてたのか、それも大量に」

唯「だ、だって~」

和「唯、プールに返してきなさい」

唯「ちえ~っ」

律「何やってんだよ唯は~」



昼休み 3年2組教室

唯「ごちそうさまでした」

律「満腹じゃ~」

澪「お腹をさするな、行儀が悪いぞ」

律「さ~て、腹も膨れたことだし、午後の授業が始まるまで昼寝でもするか~」

澪「……聞けよ」

唯「私、ちょっとお花をつみに」

律「あら? なんていじらしい表現かしら」

唯「おほほ、だって花も恥じらう乙女ですもの」

律「あらやだ、おほほ」

唯「おほほ」

紬「おほほ」

和「本物のお嬢様がそんなものに参加しちゃいけないわよムギ」

唯「では、行って参りますわ」

律「お漏らしにならないようにお気をつけて行ってらしてね」

唯「おほほ」

律「おほほ」

紬「おほほ」

澪「……ムギ」

和「唯も早いとこ行ってきなさいよ」

唯「では、ご機嫌よう」

和「はぁ……」

唯「さてと……」



昼休み 音楽準備室

さわ子「さすがにそのままじゃ恐いから、ゴム買ってきちゃった……」

さわ子「噛まれたら困るし……」

トンちゃん「プクプク」

さわ子「これを、トンちゃんの亀頭に……」ゴクリ

トンちゃん「プクプク」

さわ子「見れば見るほどイヤらしい亀頭してるわね」ハァハァ

トンちゃん「プクプク」

さわ子「少しの間我慢してね、トンちゃん」ハァハァ

トンちゃん「プクプク」

さわ子「……」

トンちゃん「プクプク」

 …
 …
 …



 ・ ・ ・ ・ ・

さわ子「……」

唯「あれ? さわちゃん?」

さわ子「ひっ!? ゆ、唯ちゃん!」

唯「どうしたの? 軽音部の部室から出てきたみたいだけど、なんか用だった?」

さわ子「な、何もしてないわよ!」

唯「ふ~ん?」

さわ子「唯ちゃんこそ、お昼休みはもう終わるわよ」

唯「うん、ちょっと、トンちゃんの様子を見にきたんだ」

さわ子「と、トンちゃん!!////」カァッ

唯「顔赤いよ、さわちゃん?」

さわ子「わ、私、もう行くわね」スタコラサッサ

唯「?」



放課後

梓「こんにちは~」

梓「って、まだ誰も来てない……」

梓「先輩たちは掃除当番かな?」

梓「……」

梓「来年、もし誰も入部する人がいなかったら、こんなに寂しいんだ……」

梓「ううん、そんなこと考えたってしょうがない、今年一年は先輩たちと一生懸命やるんだ!」

梓「それに、私一人じゃないし」

梓「ね、トンちゃ……」

トンちゃん「ぷか~」

梓「あれ? トンちゃん?」

梓「ど、どうしたの!? トンちゃん!!」

律「おーっす」

澪「すまん梓、掃除当番で遅れて」

梓「た、大変です!」

唯「どうしたの、あずにゃん?」

梓「と、トンちゃんが……」

紬「トンちゃん?」

律「げっ! 逆さ向いて浮いてるぞ!」

澪「これ、やばいんじゃないのか!?」

唯「何があったの!? あずにゃん!」

梓「わかりません! 私が来たときにはもうこの状態で……」

紬「とにかく、いったん水槽から引き上げたほうがよさそうね!」



梓「どうですか? ムギ先輩」

紬「うん、まだ死んではないみたいだけど……」

澪「かなり弱ってるな……」

律「いったい何があったんだ!?」

唯「トンちゃん死なないで!!」

梓「ううっ……」ウルウル

 ピッピッピ…… prrrrrrr……

紬「斎藤? すぐに亀専門のドクターを派遣してちょうだい!」

紬「梓ちゃん大丈夫よ、ウチのお抱えの水生生物専門の獣医に見てもらうから」

梓「トンちゃん……ヒッグ……」

唯「あずにゃん……」



 ・ ・ ・ ・ ・

斎藤「それではお嬢様」

紬「ええ、よろしく頼むわね」

斎藤「お任せ下さい」

梓「……」

斎藤「トン様は必ず元気になって帰ってきます」

梓「はい、お願いします……」

斎藤「では……」



澪「大丈夫だよ、梓」

律「そうだって、元気出せ」

梓「私が、もっとちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったのかも」

唯「あずにゃんが一人で責任を背負い込む必要はないよ!」

紬「そうね、だって皆で飼っていたんだから」

梓「でも、でも……」

澪「梓、トンちゃんがこんなことになって自分を責めるのもわかるけど
  梓は明確に自分の飼育方法が悪かったって自覚はあるか?」

梓「いえ……、飼育方法の解説本や図鑑で色々調べて勉強しました」

澪「だったら、きっと梓が悪いわけじゃないよ」

律「そうだぜ、私なんかちっとも世話したことなんかないし」

澪「それはそれで問題だ」

唯「あずにゃんが、ちゃんと世話をしていたのは私が良く知ってるよ」

紬「そうよ、だからあまり自分を責めないで」

澪「原因があるとすれば、梓じゃなくて、私たちかもしれないし……」

律「ちょっと待った!!」

唯「りっちゃん?」

律「トンちゃんが具合悪くなって気分が沈むのはわかる」

律「わかるが、そうやってお互いを慰めるために自分を責めてたんじゃ
  なんの解決にもならないぞ」

梓「律先輩……」

律「確かに、飼育に対して何らかの不備があったのかもしれない」

律「でも、それは反省すべき材料として次に活かせばいいだろ」

紬「うん、りっちゃんの言うとおりだわ」

律「今は、トンちゃんの無事を祈ってやるんだ」

唯「そうだね! あずにゃん、トンちゃんはきっと元気になって帰ってくるよ」

梓「はい!」

律「うんうん、これでこそ我が軽音部だな」

澪「まあ、お前は全然世話をしていないんだけどな」

律「もぉう! せっかく部長らしく決めたのに、はぐらかすな!」

紬「でも、だとすると、いったい何が原因だったのかしら?」

さわ子「ちょっと! 校庭にヘリとか救急車とか沢山来てたけど、いったい何の騒ぎ!?」

唯「さわちゃん……、実は……」

律「この軽音部部室で殺人事件が……」

さわ子「殺人!? 誰か死んだっていうの?」

梓「まだ死んでいません!」

律「ああ、そっか、ごめんごめん」

唯「殺人未遂だよ、りっちゃん」

澪「まぁ、人でもないけどな」

紬「でも、おかしいわ……」

唯「どうしたの、ムギちゃん?」

紬「この軽音部部室は密室だった……」

律「な、なんだって!?」

紬「そう、だからこれは密室殺人未遂事件」

梓「いえ、私が来たときには部室の鍵はもう開いていたので密室ではありませんでしたよ」

紬「そうなの? なんだか残念……」

唯「ムギちゃんミステリー好きだね~」

澪(なんでトンちゃんが死にかけたのに、この人たちは早速ネタにし始めているんだ……)

さわ子「密室殺人?」

唯「あのね、トンちゃんが何者かに殺されかけて」

さわ子「へっ!?」ビクッ!!

澪「だからなんで事件にしたがるんだよ」

唯「だって~」

律「さっき、ムギが呼んだ特別医療チームが来て、トンちゃんを連れて行ってくれたんだ」

さわ子「そ、そうなの~。へ~」

澪「先生は何かご存知ですか?」

さわ子「知らないわよ、亀頭のことなんて」

唯「きっとう?」

さわ子「あっ! しまっ……!!」

さわ子「き、きっとう……。きっと水を替えなかったからじゃないのかな~……」

唯「水はいつも以上に綺麗にしてたよ!」

さわ子「そう、じゃあ私は良くわからないわね~。ははは……」

梓(怪しい……)


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