唯「もー、酷いよ澪ちゃん!もう少しで溺れる所だったじゃない!」プンプン

澪「だから何度も謝ってるじゃないか。悪かったよ、ついビックリして」

紬「着衣をしたままだと、例えプロの水泳選手でも溺れるっていうからね」

律「でもなんでそんな唯に集まるんだよ…?」

唯「なんでかなぁ?私の事友達と思ってるのかも知れないよ。嬉しいなぁ」

紬「凄いわね唯ちゃん。ゴキブリとも仲良しになれるのね!私もお友達になりたいわ。ねぇ律っちゃん」

律「私に降るな…。なりたくねぇよ」



ガチャリ

さわ子「さーて、今日のお菓子は何かしら」スタスタ

紬「すいません、今日のお菓子は全部無くなってしまって…」

さわ子「えー、あなた達先生の分を残さないで全部食べたの!?」

唯「…あれ、でもさわちゃんの頭にさっきのクッキーがのってるよ?」

さわ子「…………え?」パラパラ



律「って訳なんだよ、さわちゃんなんとかしてくれよ!」

澪「そうですよ、これじゃ練習どころかこの部屋に居るのもツライです!」

さわ子「あらあら、何の事かと思えば。そんな事で騒いでたの貴方達?」

澪「そんな事って!ゴキブリなんですよ、それも大量に!」ガタガタ

さわ子「仕方ないわね、それじゃ先生が教えてあげるわよ。こういう時の対処法を」スッ

律「おぉ、さすがさわちゃん!独身の一人暮らしは頼りになるぜ」

澪「それで、対処法っていうのはどんなのなんですか?」

さわ子「この前ね、ビールを飲みながらテレビを見てたのよ」

澪「……はぁ?」

さわ子「それでね、柿ピーの袋に指を入れて口まで運んだら…。なんと、それがゴキブリだったのよ!」

唯「へー、さわちゃんもゴキー太と仲良しなんだね!」

律「それ、完全にゴキブリと共存してるじゃねぇか!?全然参考にならねぇよ!」

さわ子「だから、先生が言いたいのはゴキブリぐらいでそんな騒ぐ事じゃ無いって事よ。分かった?」

澪「分かりませんし、分かりたくも無いですよ!!」

律「もういいから、さわちゃん部費貸してくれよ!バルサンとか殺虫剤買ってくるから」

さわ子「仕方ないわね、無駄遣いしたらダメよ」

律「じゃあ私と澪が買いにいくから、ムギ達は掃除しといてくれないか?」

紬「えぇ、分かったわ律っちゃん」

律「よし、それじゃ行くぞ澪!」グッ

澪「お、おいそんなに引っ張るなよ!」



ガチャリ

律「さーてそれじゃ、どこに行くかな」スタスタ

澪「…?どこってホームセンターじゃないのか」

律「それは最後にして、まずはゲーセンかな」

澪「最後ってなんだよ!?まさかお前サボるつもりか?」

律「だってさー、お前だって見ただろ。あのゴキブリの数を」

澪「そ、それは確かに…凄い沢山いたけど」ビクッ

律「唯達には悪いけどさ、私達はもうちょっと数が減ってから手伝おうぜ」

澪「けど唯達が頑張ってるのに、私達だけ楽をするのは…」

律「だったらお前、あの数のゴキブリを前に掃除できんの?集団で飛んでくるかもしれないんだぜー」

澪「しゅ…集団で飛んでくる…?」ガタガタ

律「下手したらそのまま口の中にも入っちゃったりして」

澪「ひぃぃぃぃッ!怖い事言うなよ!」

律「ほらほらもっと笑えよ」

澪「え…、あぁ」

パシャ

律「ほら見ろよこれ、ラクガキ出来るんだぜー!」キュッキュッ

澪「あ、コラ止めろって!よしそれじゃ私もブタ鼻に!」キュッキュッ

律「うーし、じゃあ次はカラオケでも行くか」

澪「まだ遊ぶのか?そろそろホームセンターに行かないと」

律「大丈夫だって!ほら、早く行かないと置いてくぞ」ダッ

澪「あ、律待てって!」



紬「じゃあ行くわね、この食器棚を。よいしょっと!」ガッ

カサカサカサ

唯「うわぁ、凄いよ!ゴキー太がいっぱいだね」

さわ子「さーて、じゃあ新聞紙をまとめて…。せいやっ」スパーン!

カサカサカサ

紬「あら、命中したのに全く堪えてないみたいね」

さわ子「胴体を半分にしても平気で動けるって言うしね。生命力がハンパじゃないのよ」

紬「へぇ、逞しいんですねゴキブリって。…私もやってみますね、せいっ!」ズギャァァン!!

プシュー

さわ子「……さすがに身体が四散に吹き飛んだら無理よね」

唯「………………………」

さわ子「あら、どうしたの?早く唯ちゃんも掃除して頂戴」

唯「ゴキー太が可哀相だよぉ…」

さわ子「え?何言ってるのあなた。相手はゴキブリなのよ」

唯「でもゴキー太だって軽音部が出来た時から一緒にティータイムをしていたんだよ。ゴキー太だって私と同じ軽音部の一員なんじゃないかな!」

紬「ゆ、唯ちゃん…。そうかもしれないわね」

唯「人間同士でも、育ちや人種…色々な事でぶつかりあって、時には傷付けあったりもしちゃうけど。いつかは分かり会えるって思っているの。それはゴギー太と私達も同じじゃないのかな」

さわ子「確かに…、たかがゴキブリ、されどゴキブリなのね……」

唯「探してみよう、私達とゴキー太…みんなが笑って幸せなハッピーエンドを!神様はきっと用意してくれているはずだよ!」

紬「そうよね、私はそれを信じたい…。いえ、信じているわ!」

さわ子「やれやれ…、教師であるはずの私が、生徒の唯ちゃんに教えられるなんてね」



律「はぁ、食った食った!中々美味しかったなあのラーメン屋」

澪「もう!律のせいですっかり遅くなっちゃったじゃないか」

律「澪だってノリノリで熱唱してただろ?人の事言えないんじゃん」

澪「そ、それは律が強引にだな…!」アセアセ



ガチャリ

律「今帰ったぞー!どうだ少しは部室綺麗になった…」

カサコソカサコソカサ…

唯「ほらーゴキー太達、いっぱい食べて大きくなるんだよぉ」パラパラ

カサカサコソコソカサ

紬「ゴキブリさん達のお家はこんな感じでいいかしら?」トンカントンカン

さわ子「あら、おかえりなさい。随分遅かったのね」

カサカサカサカサ

澪「…………………………」

律「……ねぇ、さわちゃん達何してんの」

唯「律っちゃん澪ちゃん!私達は気付いたんだよ、ゴキー太も私達、軽音部の一員。私達もゴキー太達の一員だって事に」カサカサ

律「はぁ…!?お前何訳の分からない事言ってるんだよ!」

紬「大丈夫よ、律っちゃん達も直ぐに理解出来るわ。だって律っちゃんも軽音部の一員なんだもの!さぁ、早くこっち来て」サッ

律「行くわけないだろ!気持ち悪ぃ!」

さわ子「その考え自体が間違えなのよ、性別や人種が違っても、私達はこの星に生まれ育った兄妹なの!」カサコソ

唯「目を覚まして二人とも!ゴキー太達も言ってるよ、皆と仲良くしたいって、もっと私達の演奏を聞かせて欲しいって!」

澪「ゴキー太は一員……、私達は一員……」フラフラ

律「えっ!オイ澪気をしっかり持てって!」

紬「澪ちゃんも分かってくれたのよ…、きっと律っちゃんも分かるはずよ。その為に私達は軽音部の名の元に集ったんだから」カサコソ

律「ひぃぃ!私に近寄るなぁぁぁぁ!!」ガタッ

さわ子「可哀相に、怯えているのね…。でも、ゴキブリ達は同じ思いを今まで感じていたのよ…。分かるでしょ」カサコソ

澪「分かり会える……私達は…。人類は全て…」フラフラ

唯「そう、私の手を掴んで澪ちゃん。神様は私達やゴキー太にこんなハッピーエンドを与えてくれたんだよ。ううん…これは私達が創り出したハッピーエンド、つまり私達軽音部みんなが天使……、エンジェルだったんだよ」ニコッ

澪「ゆ、唯……」



澪「…って、んなワケあるかぁぁぁあぁぁ!テメェら全員ただのゴキブリだぁぁあぁぁぁぁッ!!」ブォォォオォォォン!

バッリィィィィイィィィッイイイッン!!

唯「へぶぅんッ!」ボッチャーァァァアン!
紬「たらばぁッ!」ボッチャーァァァアン!
さわ子「ひでばぁッ!」ボッチャーァァァアン!

澪「付き合ってられるか!律ッ、バルサンだ!徹底的に駆除し尽くすぞ!」クワッ!

律「は、…はぁい…」



和「……だから、あなた達何してるのよ?」

唯・紬・さわ子「…………………」プカプカ



ガチャリ

唯「うーいー…だだいまぁ……」フラフラ

憂「おかえりお姉ちゃんー!…って、どうしたのずぶ濡れじゃない」

唯「まずは、お風呂に入りたいよぉ」フラフラ

憂「ボロボロになって可哀相なお姉ちゃん…、さぁ早く中に入って!」サッ

唯「ありがとぅうーいー」ガシッ



憂「へぇ、それじゃバルサンでゴキブリ全部居なくなっちゃったんだ」

唯「可哀相だよね、ゴキー太…」モグモグ

憂「お姉ちゃん優しいんだね。でも大丈夫だよ、ゴキブリって生命力が高いからね、人類が絶滅しても生き残るって言われてるんだよ」

唯「そうなんだー、じゃあ私の取り越し苦労だったんだね」ホッ

憂「それに、病原菌とかを人間に運んできちゃうし健康面においてもゴキブリは良く無いんだよ」

唯「そうなんだ、憂は物知りなんだね!」

カサカサ

憂「だからね……、よっと!」スパコーン!

唯「あ、ゴキブリだ」

憂「見つけたらこうやって退治しないとダメだよ」サッ

唯「うん、分かったよ!」



=一年後=

梓「へぇ、ここを部室にしてるんですか。結構綺麗になんですね」キョロキョロ

律「今はそれなりになー。けど昔はそりゃもうゴキブ」

澪「おい、律!嫌な事思いださせるなよ!」ビクッ

紬「ほら、梓ちゃんお菓子どうぞ。でも床にこぼしたらダメよ」サッ

梓「あ、どうも有り難うございます、ムギ先輩」

ガバーッ

唯「あずにゃんいいなぁー!私も食べたいよぉ」スリスリ

梓「先輩はもう食べたじゃないですか。だからくっつくのは止めて下さいよ!」ジタバタ

唯「だって、あずにゃんゴキー太みたいで可愛いんだもん!」スリスリ

梓「ゴキー太…?なんですかそれは」

律「あー…、それはなぁ、澪?」

澪「思い出したくない…!思い出したくない…!」ガタガタ

紬「ふふっ、ゴキー太は唯ちゃんの大事なお友達よ」

梓「はぁ…、そうなんですか?」

カサコソカサコソ

律「って、そんな事言ってっから久し振りに出て来やがったぜ!」

澪「ぎゃぁぁぁぁあぁぁっ!?ちょっと!早くなんとかしてくれ!!」ガタタタッ

唯「よーし、いっくよぉぉ!このギー太でぇぇぇッ!!」ブォン!

ズガンッ!!

=おしまい=