筋肉少女帯というバンドの『レティクル座妄想』というアルバムに収録された楽曲をもとにした短編集です。
各短編の間には特に関連性はありません。
※曲の解釈は>>1自身のものであったりそのままであったりします。



『梓「ハッピーアイスクリーム!」』



今日も私は穴を掘っている。

びくびく怯えながら、人目を忍びながら。

物音に振り返ると、いつもの小さなモグラが私を見ていた。また笑われているような気がした。

梓「笑わないでよ、あずにゃん3号……」



――逆さにしちゃうぞ。



初めは本当に驚いて、それから涙を流して喜んだ。

事故で死んだ先輩たちが以前と変わらない姿で現れたのだ。

幽霊や幻覚なんかじゃない、抱きついてきた唯先輩の感触がそれを示していた。

ああ何て素晴らしい奇跡なんだろう。

大好きな先輩たちと、またバンドができるんだ。

そうだ、憂や和先輩にも知らせなきゃ。

本当にそう思っていた。

だけど……

少しすると私は言いようの無い違和感、もうそれは嫌悪感と言ってもいいものを覚え始めた。

先輩たちは死んだんだ。

死んだ者が生き返る。

そんなことがあっていいんだろうか。

世界の何もかもがめちゃくちゃになってしまいやしないだろうか。

私はそれに耐えられるのだろうか。



結論から言えば耐えられなかった。



私は物置からスコップを取り出し、4人の先輩を再び殺した。

唯先輩を一番に、律先輩、澪先輩、ムギ先輩も順番に叩き潰した。

もう二度と起き上がることができないくらいに。

彼女たちは少し悲しそうな、諦めたような、あるいは私を哀れむような表情で潰れていった。

すぐに穴を掘って埋めた。

次の夜、再び先輩たちは現れた。

昨日の傷は完全には治っていない。

やっぱり殺して埋めた。

潰すだけでなく、手足を少し解体した。

次の夜もその次の夜も同じことが続いて、同じことを続けた。

数日が経ち、だんだんと崩れながら蘇る先輩たちの行動に少しずつ変化があらわれる。

梓「もう歩かないで!」 唯「とっとっとっとー」

梓「走らないで!」 澪「たったったったー」

梓「馬鹿にしないで!」 律「馬鹿にしないで!」

梓「マネしないで!」 紬「マネしないで♪」

みんなは私をからかうように走り回って遊ぶようになった。

しかし彼女たちの動きは鈍い。

いつも最後には私に捕まり埋められるのだった。

私の心は擦り減っていった。

夜毎醜く崩れてやって来る先輩たち。

無邪気に私をからかう彼女たちを殺す日々。

どうして生き返るんだろう。

どうして私は殺すんだろう。

何もかもよくわからない。

だけど私は殺しては埋めた。

ああ、死ぬってなんだろう。

すごく怖いなあ。



ある夜、私は先輩たちに尋ねた。

梓「私もいつか死ぬんでしょうか」 唯「死ぬよ」

梓「死にますか」 澪「死ぬな」

梓「しにますか」 律「死ぬぞ」

梓「シにますか」 紬「死ぬわ」

梓「怖い」 唯「平気」

梓「こわい」 澪「平気」

梓「コわい」 律「平気」

梓「コワイ」 紬「平気」



――闇に還るだけだよ。



梓「苦しいです」 唯「ついに言ったねー」

梓「辛いです」 澪「けっこう脆いんだな」

梓「きっと皆さんが」 律「ん~、誰のことだあ?」

梓「クモの糸なんです」 紬「あらあら」

もう限界だった。

先輩たち、またマネしてくれるかなあ。

梓「あはは」 唯「あはは」

梓「いひひ」 澪「いひひ」

梓「おほほ」

唯澪律紬梓「おほほ」



――ハッピーアイスクリーム!

幸せな遊びの後で、また4人を殺して埋めた。



そして私は自殺した。

きちんと先輩たちを埋めた穴に入り、出来るだけ土を被ってから包丁で喉を裂いた。

少し痛くて苦しかった気もするけれど今の私たちにとってはどうでもいいこと。

目の前では憂が喜びと戸惑いの涙を流している。

これから先、彼女の心がどんな風に揺れて動くのかはわからない。

でもまあ、どうでもいいか。

じゃあ遊ぼう、頑張ってね、憂。



おしまい!



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