梓(ついにこの日がきてしまった)

梓(明日はバレンタイン。女の子が好きな人にチョコを贈る日)

梓(今年で卒業する先輩達にとって私に思いを伝えるラストチャンス)

梓(唯先輩、澪先輩、ムギ先輩…この美少女の中から一人だけ選ぶ日がやってきたんだ)

梓(確かにこのままじゃいけないなんてわかってた。でも酷いよ、こんなの。先輩達が可哀想…)



純「ねえ、梓のやつどうしたの?」

憂「さあ…。梓ちゃん、深刻な顔してどうしたんだろう」



放課後

紬「はい梓ちゃん、お茶」

梓「どうもです」

梓(ムギ先輩…うん、やっぱりいい)

梓(この優しさ、溢れ出る母性…ギュって抱きしめてほしい人NO,1)

梓(最初は掴みどころの無い人だと思ってたけど、天然で無邪気な一面を知って評価が一変したね)

梓(それに、キレイだしスタイル抜群。これはたまらないよね…)

梓(そして何より大きいのが…お金!)

梓(琴吹の一人娘のムギ先輩を捕まることができれば、正に玉の輿ってやつだし)

梓(美人な妻を持ち優雅なセレブ生活…ぐふっ)ニヤニヤ

澪「練習してから…はぁ、もういいや」

梓(外見なら文句なしで澪先輩かな。美人を絵に描いたような人だよね)

梓(背が高くて、髪の毛もキレイで…キュッって釣りあがった目がまたカッコイイ…)

梓(なにしろファンクラブができるくらいなんだから。世間のお墨付きって訳)

梓(あとは私と似て責任感が強いしっかり者なのが好印象だよね。これは将来の子育てでも重要なポイントだね)

梓(私と澪先輩の子供なら性格は完璧、澪先輩似のとびきりの美人が生まれるはず…)

梓(面倒見もよさそうだし私に優しくしてくれそうだし旦那にしたいタイプだなあ)

梓(後は…)チラ

唯「えへへ、おいひぃ~」

梓「ああもう、そんなに汚して…。ほら、拭くからじっとしててください」フキフキ

唯「んー…ありがとあずにゃん」

梓(本当に手のかかる人…。でもそこが放っておけないんだよね)

梓(練習はしないし子供みたいだし、私の好みとは正反対なんだけど…)

梓(そのくせ急に真面目な顔したり、先輩みたいな振る舞いされたら…ドキッってしちゃうじゃないですか)

唯「お礼にあずにゃんギューッ!」ダキッ

梓「ちょっ、やめてください!」

梓(それにここまでストレートに好意を見せられたら、答えないわけにはいかないでしょ)

梓「」チラッ

律「ん、何?」

梓(この人はおおざっぱだからパス)



梓(あっ、明日はバレンタイン前日ってことは、先輩達はチョコを作らないといけないわけで…)

梓「あっ。私ちょっと用事があったの忘れてました!」

澪「あ、そうなのか?じゃあ私達も帰るか」

梓(そうそう、早く帰ってチョコを作ってください)

律「えーもう帰るの?つまんなーい」

梓(あなたと違って澪先輩たちは忙しいんですよ)

紬「じゃあ皆で帰ろっか」

梓「いえ、ちょっと急いでるので走って帰ります。それでは」ピューッ

唯「あずにゃん、また明日ねー!」



梓の部屋

梓(9時か…今頃先輩達はチョコ作りの真っ最中かな?)

梓(唯先輩はきっとヘンテコなチョコになるんだろうな

梓(ムギ先輩は…自作じゃなくて取り寄せた超高級チョコレートとか?)

梓(澪先輩はチョコというより、お菓子…シフォンケーキとか作ってくるかも)

梓(とりあえず明日に備えて寝ておこうかな…。早起きして、ばっちりキメていかないと)



翌日

梓「…」

梓(誰もいない…)

梓(7時前に学校に着てしまった…。流石に早すぎたかな?)

梓(ううん、人前でチョコを渡して告白するのは恥ずかしいだろうし…そんな人のためにも早く学校に行ってた方がいいよね)

梓(女の子が告白しやすい状況を作るのも大切)

梓(とりあえず自分の机に座ってよう)

梓「…」



ガチャ

梓(きた!)

?「あれ…?」



憂「梓ちゃん、もう着てたの?こんな早くにどうしたの?」

梓(なんだ憂か…)

梓「ん、ちょっと早く目が覚めちゃってね。憂こそどうしたの?」

憂「え!?わ、私は…」ガサッ

梓(ん…あの袋は!)

梓(まさか憂まで私の事を…。これは盲点だった…)

梓「うん、何かな?私に教えてくれる?」ニコッ

憂「えっと、その…///」

梓「…恥ずかしい?」

憂「う、うん…///」モジモジ

梓(憂ってば、恥ずかしがり屋さんだな…あっ!)

梓(私より早く登校して、こっそり机に入れる…そんなやり方もあるのか!)

梓「そうだ、私音楽室に忘れ物取りに行かないと!行ってくるね!」ダッ

憂「あっ、梓ちゃん」



梓(これでOK、かな?憂には悪いことしちゃったけど…まずは1つ獲得と)

梓(あまり早く帰っても、憂が気まずいだろうし音楽室で時間を潰そっと。先輩が来るかもしれないしね)



音楽室

梓「…」

梓(それにしても憂も私の事が好きだなんて…。これで4択になっちゃったなあ)

梓(憂かぁ…。可愛いし、優しくて、勉強も運動もできる。家事も完璧だし、よく考えればすごい逸材だよね)

梓(それに憂を選べば、自動的に唯先輩との付き合いも続くわけで…。うまくすれば姉妹両方なんてことも…?)



キンコンカンコン

梓「あ、予鈴」

梓(先輩達来なかったな…。まあ私が朝から音楽室にいるなんて思わないだろうしね)

梓(とりあえず、皆が私の机に入れられるようにギリギリまでここで粘るか…)



教室

教師「中野、遅いぞ!」

梓「す、すみません」

クスクス…

梓(ギリギリまで粘りすぎて遅刻しちゃった…)

梓(まあいいや。女の子を恥ずかしがらせるくらいなら私が恥をかく事くらい…)ゴソゴソ

スカッ スカッ

梓(あれ?机に何も入ってない…?)

梓(せっかく出てってあげたのに、憂ってば一体何して…あ)

梓(下駄箱…?)

梓(そうか…下駄箱だ!よく考えれば机に入れたら…)



梓『あれ?机の中に何か入ってる』

モブA『梓、それってチョコレートじゃない?誰から?』

梓『さ、さあ』

モブB『こっそり机の中に入れるとか、それって本命じゃない!?』

モブC『げ、それレズ!?キモーい!』

梓『ちょっと皆止めなよ!』

キャハハハハ…

憂『…』グスン



梓(こうなる可能性もあるよね…。憂が机に入れてなくてよかった…)ホッ



昼休み

梓「…」

梓(下駄箱にもなかった…憂ってば一体どこに入れてくれたんだろう)

憂「梓ちゃんお昼食べよう」

梓「あ、うん」

純「いやーそれにしてもチョコ交換がすごいね」

梓「純達は貰ったの?」

純「うん、ジャズ研の友達と交換したよ」

梓(純ですら貰ってるのに…)

梓「ごめんね、私用意してないんだ」

憂「ううんいいの。私は自分が上げられればいいから」

純「憂ってホントいい子だね」

梓(ごめんね憂、ホワイトデーにお返ししてあげるからね)

純「そんな可哀想な二人のために、私がチョコを恵んであげよう!はいよ」

憂「わぁ、ありがとう純ちゃん!」

梓(コンビニ産の安物だな…こいつには返さなくていいな)

憂「あっ私も用意してあるんだ…よかったら食べてね」サッ

梓(えっ)

純「おおっサンキュー憂!」

梓「憂、何で私の分まで?」

憂「えっ?なんでって梓ちゃんにもあげるに決まってるよ」

梓「だって憂はもう私にチョコを…あ」

憂「?」

梓(そうか、ここで私にだけ渡さないと、別にチョコを渡したことがバレるから…なるほどね)

梓(ここは憂の演技に乗っておくか)

梓「なんでもない。ありがとう憂」

憂「どういたしまして♪」



午後

キャーキャー モブコチャン、パース!

梓(おかしい…。5時間目…もう放課後になるのに未だに憂のチョコが発見できない)

梓(聞くしか…いや、今は体育だ。移動授業は教室が無人になる絶好のチャンス)

梓(もしかして憂は最初からこの時間を狙ってたんじゃ…?)



キンコンカンコン

教師「はい終了~!ボール片付けて集まれ~!」

憂「」ソワソワ

梓(やっぱりソワソワしてる。これが終わったらダッシュで帰って私の机にいれるつもりなんだ)

梓(さりげなく憂より後…タイミングを見計らって二番目に教室に入らないとね)



教室

梓(さて、チョコレートはっと…)

ガサッ

梓「…」ニヤァ~

梓(あった!ついにきたっ!)チラッ

憂「…」

梓(憂、うつむいてる。恥ずかしいってわけね)

梓(ここでチョコを取り出してジロジロ見るのはマナー違反だよね。スムーズに鞄に移してっと)ササッ

梓(憂のためにも早く出てってあげよう。音楽準備室へGO!)カサカサ



音楽準備室

梓(まだ誰も来てないか…)

ガサガサ

梓(私宛の包み無し)

梓(まあココに置いたら他の人に見つかっちゃうかもしれないし、当然といえば当然か)

梓(先輩が来るまで憂のチョコでも眺めてようかな)ニヤニヤ

梓(ん?カードがついてる)



大好きだよ。ずっと一緒にいようね♪
                   ゆい 


梓「えっ…唯先輩?」

梓「憂じゃなくて…唯先輩からだったんだ」

梓(そうか…唯先輩は私が体育の時間を見計らってコッソリ机に入れたんだ)

梓(ふふっ、唯先輩ってば♪)キュン

梓(私争奪戦、唯先輩が一歩リードかな?)



ガチャ

梓(おっと!)サッ

律「おーっす!」

唯「あーあずにゃんだ。もう来てたんだ」

梓「ええ。授業が早く終わったもので」

梓(平静を装う唯先輩カワユス)

紬「ねえねえ、今日は何の日か知ってる?」

梓「はて?なんの日でしょう」

唯「バレンタイン!」

梓(ハイテンションの唯先輩可愛い)

律「ムギ…もしかしてその箱は!?」

紬「今日はチョコケーキを持ってきたの」パカッ

梓「ああ、バレンタインでしたか」

律「うわっでっか!」

澪「食べきれなさそうだなぁ」

梓(ほほう)

紬「早速切り分けるわね」



紬「…よしっ。はいどうぞ」

唯「うわぁ、おいしそ~!」

梓「あれ?ムギ先輩のバレンタインチョコってコレですか?」

紬「え?そうだけど…ダメだった?」

梓「いえ、ダメというか…」

梓(皆で仲良く食べたんじゃ私に気持ちが伝わらないんじゃ…)

梓(って、よく考えたら皆の前で私にだけ渡したり、私にだけ豪華な本命チョコ渡したらバレバレじゃん)

澪「梓、チョコ嫌いだったっけ…?」

梓(しまった!澪先輩が不安な顔を!)

梓「いえ、チョコ大好きですよ。もっと欲しいくらいです」

梓(それによく見ると…)

唯「んまい!」

律「ハムッハフッ!」

梓(私のケーキ微妙に大きいな…)

梓「ふ」ニヤァ~

澪(梓の鼻膨らんでる…)

梓「時に澪先輩」

澪「えっ!?あ、何?」

梓「澪先輩はチョコなんか作ったり?」

澪「ああ、まあ…一応」

律「えっマジ?ちょうだいちょうだい!」

梓(なんか勘違いしてるなこの人)

梓「律先輩、私達に作ったとは言ってませんよ」

澪「いや、作ったは作ったんだけど…///」

紬「食べたーい!」

澪「いや、持ってきてないんだ…。見た目も微妙だったから」

梓(えっ…)

唯「ええ~っ?見た目なんか気にしなくていいのにぃ」

梓「そうです、気持ちが重要なんです。渡したほうがいいと思います」

澪「じゃ、じゃあ帰ったら渡しに行こうかな…///」ボソ

律「え?渡しに…?」

梓「だから、『私達』に作ったとは言ってないじゃないですか…」

梓(『私に』作ったってことですよ)

律「なんだよぉ~…」ガクリ

梓「ご愁傷様です」

律「え」

梓「あ、いえ。そういうことなら今日は帰りましょうか」

紬「そうね。澪ちゃんは渡したい人がいるそうだし♪」

澪「からかうなよ…///」

梓(澪先輩、直接渡せないでポストに入れたりするかもしれない…後に帰ったほうがいいかな?)

梓「では澪先輩達はお先にどうぞ。唯先輩はちょっと待っててもらえますか?」

唯「え、私?」

梓「はい。ちょっと手伝って欲しいことがあって…」

梓(さりげなく唯先輩の告白タイムを作って、と)

唯「いいよー。じゃあ皆また明日ねー」

律「またなー」

バタン

唯「あずにゃん、手伝いって何?」

梓「ああすみません、ウソです。今日は唯先輩と二人で帰りたかったので」

唯「えっ…あずにゃん?」

梓「っと、ちょっと待っててください!すぐ戻ってくるので!」

ガチャッ

唯「え?ちょっとあずにゃん?」


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