――――――

澪「大丈夫か?律」

律「あぁ、もう一人で歩けそうかな…痛っ…」

澪「無理するなよ」

律「大丈夫大丈夫。悪いな、私が足くじいたせいでみんなとはぐれちゃって」

澪「そんなこと気にするなよ」

これからどうしようか…

近くを捜したけど、みんなを見つけられなかったし
ここがどこらへんかもよく分からないからこの状態の律と山を下りるのは難しいな

律「みんな気付いてるかな?」

澪「いつまでも気付かないって事はないだろ、今はみんなを信じて待ってよう」

律「なぁ澪~腹へった」

澪「さっき弁当食べただろ?ほかに食べ物なんて持ってきてないぞ」

律「えー…なんかないのかよ、助けが来なかったら食い物ないと飢え死にするぞ」

澪「しょうがないな、ちょっと近くになにかないか見てくるからここで待ってろよ」

律「いってらっしゃーい」

・・・

とは言ったものの山にある食べれる物ってなんだ…
野草とか食べられるっていうけど、どれが食べられるか分からないしな

食べられる虫もいるっていうよな、ただ虫なんて見るのも嫌だからこれは無しだ


余計なこと考えなきゃよかったな、まわりの草場に虫がいると思うとなんだか怖くなってきた

もう戻ろうかな…

…ん?何か音がする…水の流れる音か?もしかして!

私は音のする方へと行ってみた

澪「やっぱり川だ!これで飲み水に困らないな、よし律を呼びに行こう」

・・・

律の所へと戻るとそこでは律が地面を這うようにして倒れていた

澪「りっ、律!どうしたんだ!」

律「みおぉ…水ぅ…」

律の近くには朱色のキノコが転がっていた

澪「バカ律っ!なにも分からないのにキノコを食べたのか!?」

私は律を抱え上げると大急ぎでさっき見つけた川へと律を運んだ

澪「ほら律、水だぞ!飲め!死なないでくれ律!」

持ってきていた水筒のコップに水をすくい律に渡してやると律は勢いよく水を飲み干した

澪「律…大丈夫なのか?」

律「はぁはぁ…大丈夫、喉に詰まらせただけだから…毒とかはなかったみたいだ…」

澪「このバカ律!本気で心配したんだぞ、もうキノコなんか食べるなよ!」

律「一応死ぬかと思ったんだぞ…まぁ心配させて悪かったよ」

澪「まったく………あれ?」

律「どうしたんだ?」

澪「いま川の向こう岸に人影が見えた気が…いや間違いなく人影が見えた」

律「こんなところで?気のせいだろ、幽霊でも見たんじゃないか?」

澪「うるさい!幽霊なら目に見えないだろ。間違いなく人だよ、もしかしたら唯達かもしれない!行こう」

律「どうやって行くんだよ!橋とかないんだぜ」

澪「川を渡ればいいじゃないか」

律「濡れるだろ!それに川にそって行けば山を下りられるんじゃないのか?」

澪「さっきのが唯達だったらどうするんだ?置いて行けないだろ!ほら早く行くぞ」

律「私はいいよ、足が痛いからここで待ってるよ」

澪「何言ってるんだよ、私がおぶって行くから捕まれ」

律「わ、分かったよ」

私は律を担いで川を渡り出した
流れはそこそこ早かったが、浅い川で思ったより渡るのに苦労はしなかった

律「で、人影を見たのはどこなんだ?」

澪「あっちに行ったよ、追い掛けよう」

律「あぁ」


――――――

唯「澪ちゃんとりっちゃん見つからないね」

梓「そうですね…」

あれから歩き続けたがなんの成果をあげることもなく、ただ山の中をさまよっただけだった

唯「あっ、雨…」

紬「降ってきちゃったわね、天気予報では晴れだったのに…」

梓「朝は全然雨雲なんてなかったのになんでこういう時に限って降ってくるんですかね」

紬「どこか雨を避けられる場所に移動しましょう」

唯「そうだね、早くしないとびしょびしょになっちゃうよ」

鞄をカサがわりにして雨の中を歩く
強さを増してきた雨が衣服に染み込み身体を重くする
さっきまで軽かった足どりも重くなっていき体力を奪われる

梓「キャッ…」

激しく音を鳴らして降る雨の中あずにゃんの悲鳴が聞こえて後ろを見るとあずにゃんがいなくなっていた

唯「あずにゃん?ムギちゃんあずにゃんは?」

紬「分からないわ、いつの間にかいなくなってて…」

まさかと思い私達が歩いていた脇の斜面の下を覗くとそこにあずにゃんはいた

唯「あずにゃーん!」

紬「返事がないわね…唯ちゃん下りて梓ちゃんを助けましょ」

唯「うん!あずにゃん!今助けに行くよー!」

雨で滑りやすくなった斜面を慎重に慎重に下りて行く
ゆっくりと時間をかけてあずにゃんの所までたどり着いた

紬「梓ちゃん大丈夫?」

梓「ムギ先輩…ちょっと大丈夫じゃないかもです…体中が痛くて動けません」

紬「意識はあるわ、よかった…」

唯「ムギちゃんそこに洞穴みたいなのがあるよ、あそこなら雨も凌げるんじゃないかな?」

紬「そうね、あそこまで梓ちゃんを運びましょう。唯ちゃん手伝って」

唯「了解だよ!あずにゃん痛いかもしれないけど我慢してね」

私とムギちゃんは協力してあずにゃんを洞穴の中まで運んだ

ゴツゴツとした真っ暗な洞穴でも雨を避けられることで今の私達にとってはとても快適な空間だった

唯「あずにゃん…大丈夫?痛いところは?」

梓「…」

唯「あずにゃん?」

紬「眠ったみたいね」

唯「ムギちゃん!あずにゃん死んじゃったりしないよね!」

紬「体中傷はあるけど、骨折とか大きい怪我はないように見えるし大丈夫よ」

唯「よかったぁ…」

紬「でもいつまでも手当てをしないままにしておくのは良くないわ、早く救助がきてくれるといいんだけど…」

唯「そうだよね、雨早くやんでくれないかな…」


――――――

平沢家

憂「和さんよかったらお菓子食べますか?」

和「ありがとう。いただくわ」

お姉ちゃんが出掛けて一人留守番の私のために和さんが家にきてくれました

和「憂ちゃんも唯達についていけばよかったのに」

憂「私はいいですよー軽音部の人達の中に入るのもなんか悪いですし」

和「そんなことないわ、みんななら喜んで歓迎してくれたと思うわよ」

憂「今度なにかあったら私も参加してみようかな」

和「そうしなさいよ、私といるよりは唯といる方がいいでしょ?」

憂「そんなことないですよー和さんも一緒に参加しましょうよ」

和「私は疲れそうだから遠慮しておくわ」

テレビ「………死亡したのはバス運転手の………」

和「それにしても暗いニュースばっかりね」

憂「そうですね」

テレビ「次のニュースです。突然の豪雨で○○山で土砂崩れが発生し……」

憂「えっ…ここってお姉ちゃん達が行ってる山……」

和「本当に…?もう夕方になるし唯達ちょっと帰ってくるのが遅いわね」

憂「もしかして何かあったんじゃ…」

和「まさか、雨で電車が遅れたりしてるんじゃない?」

憂「でも、なんか嫌な予感がするんです……私電話してみます」

…………ガチャ

「おかけになった電話は電波の届かないとこ……」

ガチャ

憂「やっぱり電話が繋がらない…」

和「電車の中とかにいて電源切ってるんじゃないの?」

『おかけになった電話はでん……』

ガチャ

憂「ほかの皆さんも電話繋がりませんし、きっと山で何かあったんですよ!私お姉ちゃんの所に行きます」

和「ちょっと待ちなさい憂ちゃん!まだ何かあったなんて分からないでしょ」

憂「分かります!なんとなくですが分かるんです!姉妹だからお姉ちゃんが助けを求めてる気がするんです」

和「落ち着いて!もし何かあったとしてもこの雨の中じゃ憂ちゃん一人が行っても危険なだけよ」

和「まずは警察に電話して話してみましょう。いつまでも帰ってこなければ捜索隊を派遣してくれるわ」

憂「そんなの待ってられません!」

和「ダメよ、憂ちゃんをそんな危険なところに行かせられないわ」

和さんが両手を広げて私の前に立ちはだかった

憂「和さん…ごめんなさい!」

和「うっ…」

私は和さんのみぞおちに拳を一発打ち込んだ
映画のみたいに気絶なんてうまいようにいかないけど、和さんはその場にうずくまった

私はその隙に家を飛び出した

大きな通りまで走りタクシーを捕まえてお姉ちゃん達が行っている山へと向かってもらった

タクシーの中で何度もお姉ちゃん達の携帯に電話をかけるが繋がることはない

警察にも電話して事情を話しておいた

警察からは大人しく待つように言われたが、お姉ちゃんが危険な時に待ってなんていられない

山の近くまできてタクシーをおりよう思った時にようやく財布を持ってきてないことに気付いた

悪いと思いながら運転手の隙を見てタクシーを飛び出し山の中へと逃げた

憂「ごめんなさい…お金は帰ったら必ず払います…」

私はタクシーの方へ謝罪をして
お姉ちゃん達を捜すために大雨の山を登り始めた


――――――

唯「すっかり夜だね、真っ暗でなにも見えないや」

紬「そういえば、懐中電灯をもってきてたわ」

唯「ムギちゃんナイスタイミングだよ!」

懐中電灯の光で洞穴の中が明るく照らされる
今まではよく見えなかったけど、かなり大きな洞穴でまだまだ奥が深いみたいだった

唯「ムギちゃん懐中電灯貸して私ちょっと奥の方を見てくる」

紬「えっ!危ないわよ。唯ちゃん」

唯「でも、奥から風が吹いてきてる気がするし…もしかしたら反対に繋がってるんじゃないかな?」

紬「そう言われてみると風が吹いてきてる気がするわね」

唯「でしょ!だから私見てきてみるよ!」

少し強引にムギちゃんから懐中電灯を取り洞穴の奥へと進んだ

デコボコしていて歩きにくかったが、進んでいくと出口が見えた

唯「やっぱりトンネルになってたんだ!」

出口から外に出るとすぐそこに道路があるのが見えた

唯「道路があるってことは車が通るかもしれない!助かった!急いでムギちゃんを呼びに行かなきゃ」

唯「ムギちゃーん!洞穴の先に道路があったよー」

紬「本当!?」

唯「うん!道路に出れば車も通るかもしれないし人がいる所に続いてるはずだよ」

紬「これでやっと帰れるのね…」

唯「うん!あずにゃん!もうすぐだからね」

私とムギちゃんはあずにゃんを担いで洞穴を通り抜けて反対側へと出た


出た先の道路を二人の人が歩いてるのが見えた

唯「あれ澪ちゃんとりっちゃんだよ!おーい!」


唯「あっ!二人とも手を振ってる!こっちに気付いたみたいだよ!」

紬「よかったわ、みんな無事だったのね」

道路へと下りた私達を澪ちゃんとりっちゃんが迎えてくれた

律「みんな無事だったんだな!」

唯「二人とも大丈夫みたいでよかったよぉ…心配したんだよ~」

律「私がちょっと足くじいたぐらいだから心配いらないよ」

澪「梓どうしたんだ?」

紬「怪我しちゃったんだけど今は眠ってるだけ、大丈夫よ」

澪「そうか、よかった…」


再会を喜ぶ私達の所へ遠くから車のライトが近づいてくるのが見えた
車に停まってもらおうとみんなで手を振る

走ってきたのはどこか見慣れたようなバスだった
バスは私達の前で止まりドアが開くと中から一人の女の子が下りてきた

憂「お姉ちゃん!」

唯「えっ!?うい~!なんでこんな所にいるの!?」

憂「お姉ちゃん達の帰りが遅いから心配で山まできたんだよ!そしたら途中でこのバスに乗せてもらったんだ」

澪「憂ちゃんの唯への愛はすごいな…」

憂「もうお姉ちゃんに会えないんじゃないかって思ったよ…これでまたずっと一緒だね」

唯「もう憂は心配性だなぁ…」

律「それより早くバスに乗ろうぜー、私はもうくたくただよ…」

紬「そうね、私も梓ちゃんを運んできて疲れたわ」

澪「帰れるって安心したら急に疲れがきたな」

運転手に会釈をしてバスに乗り込むと中には私達のほかに女性と子供が乗っていた

唯「そういえば、このバスってどこに行くの?」

憂「この先にある宿に行くんだって」

紬「そこに着いたら電話あるわよね、みんな家に連絡しないとね」

澪「そうだな、で今夜はその宿に泊まりかな…って部屋は空いてるのか?」

運転手「部屋はいつも空いてるから大丈夫だよ」

澪「ひっ…!」

憂「だそうです」

律「急に運転手しゃべるからビックリした…」

唯「澪ちゃん大丈夫?」

澪「大丈夫だよ!ちょっとビックリしただけだ!」

紬「空いてるなら宿は大丈夫そうね、よかったわ」


しばらく山道を走ると古い建物の前でバスは停車した

唯「着いたみたいだね、あずにゃんは私がおんぶしていくねー」

澪「そうだ運賃払ってないな、えっといくら払えばいいんだ…」

運転手「もう貰ってるからいいですよ」

澪「え…?」

そう言って運転手はバスを下りて行く
それに続いて女性と子供もバスを下りて行った

律「誰かお金払ったのか?」

紬「誰も払ってないと思うわ」

唯「あの人達も払ってないし、いいんじゃないの?」

律「そうだな、サービスってことなんだろう」

澪「そうなのか?もらってるって言ってたけど、何も払ってないし…」

憂「まぁ、いいって言ってるんだから気にしなくていいじゃないですか?早く行きましょう」

澪「そうか…?」

紬「そうよ、みんなも疲れてるし早く行きましょう」

律「温泉とかあるかな?風呂に浸かりたいぜ」

唯「澪ちゃん気にしない気にしない!今日はいろいろあって疲れてるんだから考え過ぎない方がいいよ」

澪「そ、そうだな…」

唯「じゃあ早く中に入ってゆっくり休もう」


終わり