唯「う~い~行ってくるねー!」

憂「お姉ちゃんお弁当忘れてるよー!」

唯「あぁっ!そうだった!今度こそ行ってきまーす」

今日は軽音部のみんなと山へ行きます
合宿でも野外フェスでもないただの山登り…ピクニックみたいな感じかな

天気も気持ち良い快晴になってくれて絶好の登山日和だ
みんなのお弁当一緒に食べるの楽しみだなぁ…とくにムギちゃんの

唯「なんてゆっくり歩いてる暇ないや!寝坊して時間ギリギリなんだった!電車だから遅れられないや!急ごう」

こうゆう時に限って信号に引っ掛かるよね、早くしてくれないかなー!

ふと道端に置かれた花束が目に止まった
そういえば最近近くで大きな事故があったって聞いたけど、ここだったんだ

道路に飛び出した子供と助けようとした母がバスにひかれて亡くなったって…

唯「あっ、信号青になった急がなきゃ!」

それにしても暑いなぁ…強い陽射しと熱されたアスファルトからの熱気でただでさえ地獄みたいなのに

蝉の声がさらに暑さに拍車をかけてる気がするよ

地中で何年も過ごして地上で生きられるのはほんの一週間の命っていうし、アイスは食べられないし

熱いアスファルトの上で横たわって死んでいる蝉を見てつくづく蝉に生まれなくてよかったと思うよ

駅前まで来ると既にみんなは集合していた

唯「みんなーおはよー!」

律「唯!遅いぞ!」

紬「おはよう唯ちゃん。遅いから心配したわ」

梓「唯先輩おはようございます」

唯「ゴメンゴメン!寝坊しちゃった!あれ?澪ちゃんは何してるの?」

澪ちゃんは耳を両手で塞いでしゃがみ込んでいた

唯「澪ちゃん…?」

澪「キャーーッ!ってゆゆゆ唯か、びびびびっくりさせるなよ!」

唯「私普通に呼んだだけだよー」

律「実は昨日テレビでやってた心霊番組の話しをしててさ」

澪「キャーーーッ!」

それで脅えてらっしゃったのですね

私も昨日ご飯食べてる時にそんなの見てたな

律「霊能者が言ってたけど、霊界への扉はそこら辺にたくさんあって霊は私達のまわりをうろうろしてるらしいぞー」

澪「うるさい!」

そういえばそんな事言ってたかも…

ただ霊的なものを信じない私には蝉がなぜ鳴くのかよりもどうでもよかったしアホらしかったな

律「ほら、澪の後ろに黒い影が…」

梓「霊じゃなくて私です」

澪「うぅ、ムギ~律がいじめるよぉ…」

紬「あー、よしよし」

梓「遊んでると電車に乗り遅れますよ」

唯「そうだった!」


切符を買って電車を待っていた。
その時電車が遅れるとアナウンスが入った
近くでなにやら人身事故があったらしい

だけど私達が乗る路線とは関係なく私達が乗る電車が遅れるということはなさそうだ

その後しっかりと時間通りに到着した電車に私達は乗り込んだ

律「涼しい~ここは天国ですか?」

唯「ずっとここにいたいよぉ」

澪「唯って冷房苦手じゃなかったか?」

唯「はっ!思い出したら急に具合が……」

紬「唯ちゃん大丈夫?」

唯「うん、なんとか暑いのよりは大丈夫だよー」

律「そうだ!着くまで暇だしダジャレ大会しようぜ!」

唯「やりたいやりたーい!」

澪「なんだそのとても関わりたくない名前の大会は…」

律「名前の通りだよ!一人ずつダジャレをやって全員が笑ったら次の人に交代って感じで全員笑うまではずっとやらなきゃダメってルールだ」

紬「とっても楽しそう!」

梓「そうですか?」

紬「うん!みんなでやりましょう」

梓「マジですか…」

ムギちゃんの楽しそうな笑顔を見たらやらないとは言えず澪ちゃんもあずにゃんも参加することになった

律「じゃ、最初は梓からなー」

梓「なんでそうなるんですか?無難にジャンケンとかで決めましょうよ」

律「えー?まずは後輩からだろー!あっ、もしかして梓はみんなを笑わせる自信がないとかー?」

梓「なっ…そんなわけないです!やってやるです!」

澪「なんだかうまく律の口車に乗せられた感じだな」

梓「それではいきますよ」

唯「あずにゃーん!ファイトー!期待してるよー!」

紬「梓ちゃん頑張れ!」

梓「仏はほっとけです!」

唯澪紬律「………」

一瞬で沈黙に包まれる
車内には電車の走る音だけが響いていた

梓「ね、猫が寝転んだですっ!」

なんだか車内の気温が一気に下がった気がするよ、あずにゃん…

梓「アルミ缶の上にあるミカンです!」

澪「は、はは…」

紬「うふふ…梓ちゃん面白いわ」

律「マジで?つまらないと思うんだけど、もっと斬新なのないのかー?」

梓「それなら律先輩がやればいいじゃないですか」

律「まだムギしか笑ってないだろ、梓がみんなを笑わせたらやってやるよ」

梓「うー…布団が吹っ飛んだです!」

唯「そんなあずにゃんも可愛いよ!頑張れあずにゃん!」

梓「スキー好き!カレー辛ぇ!馬美味い!」

紬「うふふふ…梓ちゃん可笑しいわ…」

澪「ムギだけは爆笑だな」

梓「ムギ先輩がこの度結婚して会社を辞める事になりました」

律「なんだそれ」

梓ちゃんはひたすらダジャレを言い続けそれに笑うムギちゃんと苦笑いの澪ちゃん
苦笑いは笑ったうちに入らないそうです

それを見守りながら私とりっちゃんは何が楽しいのか持ってきたトランプで二人ババ抜きをしてました

律「ほら唯の番だぞ」

唯「ほいほい」

りっちゃんの持ってる六枚のトランプ

そこから私は一枚を引いたスペードの6のカード

唯「やった!揃った!って絶対揃うんだよね」

律「まあな」

そんな楽しい時間を過ごしてるうちに電車は目的の駅に到着した

電車をおりるとまるでサウナに入ったみたいな暑さが私達を迎えてくれた

唯「あづい~…ここは地獄ですか…?」

澪「大丈夫、地獄じゃないから」

唯「あー暑いのヤダー早く冬になればいいのにぃ」

梓「それで冬になったら今度は早く夏になれって言うんですよね」

唯「もういっそのこと春→秋→春→秋のローテーションになれば調度いいのに」

駅を出るとすぐそこはもう山だった

澪「こんなにすぐ近く山がにあるんだな」

紬「自然がたくさんで空気が美味しいわ」

律「みんなー!ぼーっとしてないで早く行こうぜー!」

唯「待ってよ、りっちゃーん」

律「山ってすごいな!なんか冒険心をくすぐられるぜー!なんか未知の生物との遭遇とか期待できそうだな」

唯「ツチノコ!天狗!河童!」

律「そうそう、カメラは常に用意しておこう。いや写真だけじゃなくて見つけたら捕まえないとな」


ピクニック気分できたのに本来の目的とはちょっとズレたことでテンションがあがる

天狗、河童なんている訳がないだろうけど…

たくさんの鳥の声や虫の声、風で草葉が揺れる音を聞き

私達の日常ではあまり馴染みのない深い緑の中、山道を進んで行くにつれて別の世界にきたような感覚になる

天狗や河童やおとぎ話に登場する妖精みたいな、そんな不思議なものが出てきても不思議じゃない世界

ちょっと心の中でりっちゃんを小ばかにしていた私も何か未知との遭遇があるんじゃないかとワクワクしてきていた


律「もしも生まれ変わっても~♪」

唯「また私に生まれたい~♪」

梓「唯先輩と律先輩はテンション高いですね、帰り道があること忘れないで下さいよ」

律「ズレた間のワルさも~♪」

唯「それも君の~♪」

唯紬律「タイミング♪」

澪「さっきまであんなに暑い暑い言ってたのにな」

唯「歌えばそんなのも吹っ飛ぶよ~澪ちゃんも歌おう!恥ずかしがらなくてもここなら誰も聞いてないよ」

澪「遠慮しておきます」

私達は楽しく歌いながら歩み
鳥や珍しい植物をカメラで写真におさめたり充実した登山をしていたが…

律「疲れたー!」

唯「お腹空いたー!」

梓「こうなると思いましたよ、だからさっき言ったじゃないですか」

紬「まだ登り始めてあまりたってないからお昼はもう少し待ってね」

律「えー!せめて少し休憩しようぜー!」

澪「もう少しくらい頑張れよ」

律「だって疲れたんだもん」

紬「なら少し飲み物でも飲んで休憩しますか」

律「さんせーい!」

紬「はい麦茶」

律「はぁ…生き返る~」

唯「おぉ!ムギちゃんだけに麦茶!」

紬「少し狙ってみたの」

梓「お昼はもっと上の方で食べるんですから頑張って登って下さいよ」

唯「分かってるよー。でも、まだあまり登ってなかったんだね、なんだかもう数時間も歩いてた気がしたよ」

律「私もだよ、もう頂上近くまできてると思ってた」

梓「始めからあんなにはしゃいでるからです。そうですよね澪先輩」

澪「ん…?あ、あぁ…そうだな」

澪ちゃんなんだか元気ないみたいだな、澪ちゃんも疲れてるのかな?

小休憩を終えて再び山道を歩き始めた

みんな疲れたのか口を開くことはなく黙々と足を進めて行く

さっきまでどこかにいってしまっていたようだった暑さも再び戻ってきた

唯「あづい~まだ頂上につかないの~?」

澪「おかしいな、もうついてもおかしくないくらい歩いたんだけどな」

律「もしかして道を間違えたとか?」

紬「しっかり道どおり歩いてきたからそれはないと思うわ」

梓「戻った方がよくないですか?」

澪「うーん…道は続いてるしもう少し歩いてみよう」


それからしばらく歩き続けるも頂上につくこともなく

道も段々と険しくなり人が通る道というよりは獣が通る道のようになっていった

唯「ムギちゃんやっぱり道間違えてるんじゃないかな?」

紬「確かにこの道はおかしいわね」

梓「戻りますか?」

紬「このままだと進むのも難しいし、そうしましょう」

引き返そうと振り返るとそこにあるはずの二人の姿がなかった

唯「あれ?澪ちゃんとりっちゃんは?」

梓「いませんね…まさかはぐれちゃったんでしょうか?」

紬「急いで戻って捜しましょう!」

私達はすぐに元の道を急いで引き返し二人を捜した

唯「澪ちゃーん!」

紬「りっちゃーん!」

梓「どこ行ったんですかー!」

いくら呼んでも返事がかえってくることはなく二人を見つけることはできなかった

唯「二人ともどこ行っちゃったんだろう…」

紬「唯ちゃん……二人とも少しはぐれちゃっただけよ、大丈夫すぐに見つかると思うから三人で捜しましょう」

梓「あの、さっきから歩いてる道を通った覚えがないんですが…本当にここ来た道ですか?」

紬「そう言われてみればそうね…もしかして道に迷ったかしら…」

唯「えぇっ!?それって遭難したってこと?」

梓「このまま帰れなかったらそうなりますね…」

唯「そうだ!携帯電話で助けを呼べばいいんじゃないかな!私頭いい!」

梓「さっき見たけど圏外でしたよ」

唯「連絡できないの?どうするの?」

紬「自力で下りるか助けを待つしかないわね」

梓「まだ下りられないって決まった訳じゃないんですからネガティブになるのはやめましょう」

紬「そうね」

唯梓「…」

紬「……そ、そうだ!もうお昼だしご飯食べましょう!それがいいわ!」

梓「そうですね、食べてからまた先輩達を捜しましょう」

そう言ってムギちゃんは鞄からお弁当を出して食べ始めた
私も憂の作ってくれたお弁当を取り出して食べ始める

みんなでおかずを分け合ったりおしゃべりしたりしながら楽しく食べるはずだったお弁当

そんな予定とはまったく違ったのシチュエーションで食べることになったお弁当はとても味気ない物だった

暗く沈むみんなの表情を映すように青空も曇り空へと表情を変えていった


お昼を食べた後も引き続き澪ちゃんとりっちゃんを捜した

しかし人影を見ることもなく二人を捜して山の中を歩いて行くにつれてさらに迷っていった

私の頭の上の方で飛んでいる蝉を見て今は少し蝉になれたら飛んでみんなを捜せるのになと思った

・・・

梓「少し休憩しませんか?さすがに疲れました…」

唯「そう?」

梓「唯先輩は疲れてないんですか?」

唯「不思議と疲れはないよー、ムギちゃんは?」

紬「私も少し疲れたわ、休憩にしましょ」

唯「わかったよー」

紬「梓ちゃん手に切り傷があるわね、今絆創膏出すわ」

梓「ありがとうございます」

唯「えいっ!とうっ!じゅわっ!」

梓「こんな時に唯先輩は何してるんですか?」

唯「いや、飛べないかなって思って…飛べたら澪ちゃんとりっちゃんも簡単に見つけられそうだし」

梓「飛べるわけないじゃないですか…」

唯「だよねー、誰か助けにきてくれないかな…」

紬「私達が帰らなければ捜索願いを出してくれるだろうから夜には捜索がくるかもしれないわね」

梓「それか澪先輩か律先輩が下山して助けを呼ぶかですね」


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