澪「ごめんくださーい」ピンポーン

澪「……?」

澪「あのー」ピンポーン

ガチャリ

聡「はーい。どちらさま――」

聡「あ」

澪「あ」

聡「……えっと」

澪「おっす、聡」

聡「お、おっす……」

澪「律は?」

聡「ね、姉ちゃんに用事?」

澪「まぁ、そんなところかな」

聡「あいにくだけど今家にいないんだよ」

澪「あれ? そっか」

澪「じゃあ出直すよ。たぶんまた来る」

聡「そ、そう……?」

聡「……」

聡「姉ちゃん、もう少ししたら帰ってくるかも」

澪「本当?」

聡「もしかしたらだけど」

聡「……」

聡「よかったら、上がって待ってたら?」

澪「いいの?」

聡「……悪いなんて言わないよ」

聡「それにうちに今、俺しかいないもん」

澪「えー、それは心配だなぁ」

聡「あ! ば、ばかにすんな!」

澪「あはは、そうだよね。聡、もうこんなに大きいんだし」

澪「中学生なんだしな」クスッ

聡(またそうやって!)

澪「でも、心配だから上がらせてもらうかな」

聡「上がるならはやくっ、寒いんだから」

澪「ふふ、はいはい」

聡「ジュースとお茶どっちがいいー?」

澪「へー……」

聡「な、なんだよ……目丸くして……」

澪「いや、聡ったらそういう気遣いするようになったんだなぁって」

聡「で、できたらおかしいのかよっ」

澪「ううん、聡偉いね」

聡「……~///」ドタドタドタ

澪「あれ?」

澪「……」ポチポチ、ポチポチ

聡「結局ジュース持ってきたよ……?」

聡「メール打ってんの?」

澪「んー? そうだよ」

聡「ふぅん……」

澪「なぁに、興味ある? 携帯?」

聡「べっつにー」

聡「ていうか俺携帯とか別にいらねーし全然興味ねーし」

澪「んー……いつかは聡も持つことになると思うなぁ」

聡「ないない! ありえないって」

澪「どうかな?」クスクス

聡「ちぇっ……賭けてもいいぜ」

澪「ぷふ、あはははっ」

聡「え、え?」

聡「じゃあ、俺……」

澪「どこ行くんだ?」

聡「どこって自分の部屋だよ」

澪「どうして?」

聡「どうしてって……」

澪「私は聡ともっと話したいんだけどなぁ」

聡「え!」

澪「こうして久しぶりに聡と話すことができたんだし。ねぇ、だめかな?」

聡「いや、えっと……だめとか……///」

聡「……げ、ゲームしたいから……」

澪「じゃあ、ゲームしてるところ見せて欲しいな」

聡「うぅ……」

澪「それがPSP?」

聡「そうだよ。知らないの?」

澪「実物は初めて見たよ。でもPSPって色んなことできるみたいだし、私も欲しいかも」

澪「それで、カセットは何だ? カセット」

聡「ダサい呼び方すんなよなぁ」

澪「べ、べつにそれぐらいいいだろっ」

ジャジャジャーン、ジャジャジャ

澪「わぁ、すごい。映像がきれいだ!」

聡「ふぅん……そんなこと気にしたこともないや」

澪「えー、きれいなのに。……このゲームあれだな」

澪「怪獣を倒すだっけ、そうそう狩るとかってやつだ!」

聡「怪獣……まぁ、怪獣ちゃあ怪獣か」ポチポチ

澪「ちょっ、ちょちょちょ!」

聡「は?」

澪「これ! 血が、血がブシューって出てるじゃないか!?」

聡「そりゃ、相手は生き物だし」

澪「い、痛々しい……最近のゲームってみんなこんなのばっかりなのか……」シュン

澪「……もっと可愛いゲームが好きだな、私は」

聡「そんなの面白くねーって。だせーもん」

澪「なんでだよぉ」ムスッ

聡「……」

聡(今気づいたけど、結構距離が……ち、近い……///)

聡(いい匂いがする……昔はこんな匂いしたっけかな……)

澪「あ、この猫は可愛いから許せるぞ!」ニコニコ

ブチッ

澪「あれ、ゲームやめちゃうのか?」

聡「あ、飽きたの」

澪「そう」

聡「……」

聡「姉ちゃん来ないね」

澪「そうだなぁ、メール気づいてくれてるといいんだけれど」

聡「……」

聡「な、なんかお菓子持って来る」

澪「え!? そんなっ、気使わなくてもっ」

聡「持って来る!」

澪「うぅ……」ハラハラ

聡「ポテチしかなかったけど、どうぞ」

澪「あ、ありがとう……」

澪「……」

澪「……」チラ、チラ

聡「……食べないの?」

澪「あ、たっ、食べるよ! 食べる食べる!」

澪「うぅ……」

聡「もしかしてお腹いっぱい? それとも腹痛いの?」

澪「えっと、ね……いやぁ……あはは……」

澪「さ、聡が食べてよっ!」

澪「いっぱい食べて大きくなって欲しいんだ! 聡にはっ」

聡「ダイエット?」

澪「っ!?」ガガーン

聡「へへ、図星だね」

澪「あ、ち……ちがっ……///」カァァッ

澪「お願いっ、律には言わないでっ」

聡「え~、どうしよっかなぁ~」

澪「さとしぃっ」

聡「えっへっへー」

澪「……」ムスッ

聡(す、拗ねた……)

聡「ごめん。ちょっと調子乗りすぎちゃった」

澪「……別に気にしてない」

聡「澪姉ぇ……」

澪「え?」

聡「え?」

澪「……ぷっ」

澪「ふふっ、あはは……うふふふっ」クスクス

聡「ど、どうした?」

澪「あはははっ、いや、聡! やっと私のこと……ふふっ、呼んでくれたなぁって」

聡「え……あっ」

聡「……///」

聡「……」

澪(なんかよくわからないけど拗ねちゃった)

澪「別にからかったわけじゃないんだぞ? 聡」

澪「久しぶりに私のこと呼んでくれて嬉しかったんだぁ……」

澪「だって、聡ってば恥ずかしがっていっつも」

聡「お、俺がいつ恥ずかしがったんだよ!?」

澪(お……)

聡「そんな覚えない!」

澪「えー、恥ずかしがってたぞ?」

聡「ないよ!」

澪「本当に?」クスクス

聡「あ゛ぁぁーもぉぉっ!!」

聡「にしてもなんでダイエットなんてしてんさ」

澪「おいおい、まだ言うか……」

聡「澪姉は全然太ってないじゃん」

澪「そ、そう見える?」

聡「あ、やっぱデブだぁー」

澪「さ、聡ぃっ」

聡「あはははは!」

聡(女の人ってなんでそんなにダイエットとかしたがるんだろう?)

澪「次言ったらぶつぞ……」

聡「おっかねー! 澪姉ってばいつからそんなに暴力的になったんだよ」

澪「さぁ? どこかの誰かさんのお姉さんのせいじゃないかな」

聡「も、申し訳ない……」

澪「にしても、聡変わったね」

聡「え? ……ど、どこらへんが?」

澪「うーん、なんて言えばいいのかな」

聡「なんだそれ」

聡「それ言うなら澪姉だってすっごく変わった」

澪「私?」

聡「小学生のころはもっと、すっげぇ照れ屋で恥ずかしがり屋で……」

聡(こんなにお姉さんっぽくなかった!)

澪「……まぁ、人ってどんどん成長していくものなんだよ。あの頃のまま大きくなるなんてありえないんだ」

澪「色んなこと覚えて、さ。良いことも、悪いことも」

聡「へー……」

澪「だから、聡も同じ。大人の階段登り始めたばかりだろうけどな」クスッ

聡「なんかムカつく……」

聡「ねぇ、澪姉。覚えてる?」

澪「ん?」

聡「昔さ、こんな感じでウチに二人っきりになったこと」

澪「……いつだっけ? 小学生のころ?」

聡「うん」

澪「んー、ちょっと覚えてないかなぁ」

聡(自分に都合が悪いことは覚えてないのか)

聡「澪姉ってばいくつか歳離れてる俺にでさえビクビクしててさ」

澪「は、ははは……///」

聡「俺が一生懸命話しかけてもボソボソボソボソって聞き取れないぐらいの声でしゃべって」

聡「正直、よく姉ちゃんの友達でいられるなぁってずっと思ってたよ!」クスッ

澪「……」

澪「だよなぁ」クスッ

澪「それもこれも、律が私にしつこく迫って来たのが原因だ!」

聡「その言い方だと姉ちゃん完全男だよっ」

聡「ねぇ、姉ちゃんのこと。嫌いじゃないよね?」

澪「え!? な、なんでそんなっ」

聡「いや、なんとなく」

澪「……嫌いじゃないよ。そうだったら今ここにいること自体がおかしいだろ?」

聡「まぁ……」

澪「す、好きっていうのもあれだけど……律は私の大切な友達」

澪「律が友達になってくれたから、今の私がいるんだ」

聡「そ、そっか……」

澪「もちろん。その弟の聡だって私の大事な友達だよ」

聡「え!?」

聡「あ、あっそ……!」

聡(なんかついでにみたいな言い方……)ムスッ

聡「じゃあ姉ちゃんが澪姉の友達じゃなかったら俺は友達じゃなかったってことだね」

澪「そ、そういうわけじゃっ」

澪「うーん……でもどうなんだろうね」

聡「は?」

澪「もしかしたらさ、私と律。私と聡が出会ったのは偶然とかじゃなかった……とか」

聡「……はい?」

澪「う、運命とか!」

聡(よ、よくそんなこと恥ずかしがらずに言えるなぁ……)

聡「へぇ」

澪「運命……出会い……」

澪「あ、なんか良いインスピレーションが頭に」

聡「?」

澪「すっかり外暗くなっちゃったな」

聡「大丈夫なの? 帰り」

澪「まぁ、うん。なに? 聡が私と一緒に帰ってくれる?」

聡「なんでそうなるんだよ! 言ってない!」

澪「あはは、ごめんな」

聡「……ど、どうしてもって言うなら家まで送ってやらないことも…………」モゴモゴ

澪「ん? 聞き取れなかったよ。もう一回言ってくれない?」

聡「……///」

澪「聡?」


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