律「お助けロボだって?」
澪「介護とかメイド的な事とか?」
紬「そうなの~。うちの会社の新事業なの」
澪「それにしても……何から何まで梓にそっくりだぞ」
紬「それはもう、梓ちゃんに協力してもらったから当然!」
律「いつの間にだよ。それで? 具体的に何ができるんだ」
紬「何でもできるの。そうだ、試しにお茶を淹れてもらいましょうか」
アズサ「やッテやるでス」ザラザラゴクゴクガバッ
律「あのーつむぎさん……何でそのロボは茶葉と熱湯飲んだ後にスカートをたくし上げて下着をずらすんでしょうか?」
紬「可愛いでしょ~? ここからが本番なの!」
アズサ「……はぁッ…………ああウゥっ!」ジョロロロロロロロォッ
澪「あああああああああ」
紬「完成~♪ どうぞ召し上がれ」ホカホカ
律澪『召し上がれるかっ!』
紬「ええぇ……折角アズサちゃんが淹れてくれたのに」
律「あれをお茶を淹れるっていうのは無理があるだろ」
澪「普通に淹れられないのか?」
紬「これは無人島とか道具が何も無い所でも、何とかするっていうのがコンセプトなの」
澪「だからって、そ、その……そんな所から出さなくてもいいだろ」
紬「面白いでしょ~。可愛いし」
澪「頭痛くなってきた……」
唯「みんな、遅くなってごめ~ん!」ガチャ
紬「唯ちゃん、いい所に。今アズサちゃんがお茶淹れてくれたから、グイっと一気にどうぞ」
唯「おお~、あずにゃん気が利くねぇ。それじゃあいっただっきま~す!」
澪「お、おい唯っ!」
唯「んっく、んっく……こ、これは!?」
律「一体どうなってしまうんだ……」
唯「う、うまい!」ペカー
律澪『ええぇ!?』
紬「でしょ~?」
唯「すっごい美味しいよ、この紅茶! あずにゃん、紅茶淹れるの上手かったんだね!」
アズサ「でデれこでン」
唯「おかわり!」
紬「よろこんで~。アズサちゃん、もう一度お願い」
律「ちょ、唯やめろ!」
唯「ふぇ?」
アズサ「やッテやるでス」ザラザラゴクゴクガバッ
唯「あ、あずにゃん!?」
アズサ「……ああぁ……あんンンッ!」ジョボボボッボボボォ
澪「またああああああぁぁ」
唯「あ、ああ……」
紬「完成~♪ どう、唯ちゃん。すっごい可愛かったでしょ」
律「ゆ、唯、ショックだと思うが……」
唯「あ……か、か……」
澪「唯?」
唯「かっわいいぃぃ~! どうしたのあずにゃん、覚醒しちゃったの!? うん、紅茶もうまい!!」
律「同類かよ」
澪「帰りたくなってきた」
唯「――へぇ~、じゃあこのあずにゃんはムギちゃんの会社が作ったロボなんだ」
紬「そうなの。ずっと前から作成していて、ようやくプロトタイプが完成したの」
律「それで完成なのかよ」
澪「一般に流通させるのは無理があるだろ」
唯「そうかなぁ、私はすっごくいいと思うよ」
律「放尿で陶酔したやつに言われてもなぁ」
澪「なぁムギ、百歩譲ってその紅茶の淹れ方はいいとして、だ。その……その際の声は何とかならないのか?」
紬「何言ってるの澪ちゃん! あれがいいんじゃない!」
唯「そうだよ澪ちゃん! あれをなくすなんてとんでもない!」
澪「だあぁ! ステレオで批判するな!」
律「もうそのお助けロボのニッチ産業には目をつむるけどさ、肝心の本人は何も言わなかったのか?」
唯「そういえば今日はまだ本物のあずにゃん見てないね」
紬「梓ちゃんなら先に来てたけど、気分が悪くなったみたいで帰っちゃったの」
律「……まさか、紅茶を淹れたんじゃないだろうな」
紬「うん、そうしたら色々言いたい事あるけど今日は無理って、真っ青になって帰っちゃった」
律「梓……強く生きろよ」
唯「ねーねームギちゃん、この子ほかに何ができるの?」
紬「何でもできるの~。材料さえあればカレーも作れるわ」
唯「本当~、いいなぁ~」
律「いや、それはすごーく嫌な予感しかしないから止めとこうなー」
唯「えぇ~?」
澪「今日は練習もできなさそうだし、私は先に帰るよ……何か疲れた……」
唯「もう帰っちゃうの~、もっと遊んでいこうよ~」
紬「このアズサちゃんもネコミミ似合いそう~」
唯「おお~、あだ名はロボにゃんで決定だね!」
律「……」
澪「……」
律「澪、帰るか……」
澪「ああ……」
……
梓「――新事業の協力者を募集している、ですか?」
紬「そうなの~」
梓「一般募集とかしてないんですか?」
紬「大っぴらに宣伝したくないみたいで近しい人に希望者を募ってるんだけど、梓ちゃんどうかなぁって」
梓「はぁ……でもどうして私なんですか? 唯先輩達もいるのに」
紬「協力者の思考もインプットするみたいなんで、真面目に取り組んでくれそうな人がいいの」
梓「あはは、唯先輩と律先輩じゃどうなるかわからないですもんね。あ、じゃあ澪先輩は?」
紬「最初は澪ちゃんに頼もうと思ってたんだけど、結構ハードな現場に赴く場合もあるらしくて……」
梓「ああ……澪先輩じゃ怯えちゃって動けなくなる可能性がありますね」
紬「だからって訳じゃ決して無いんだけど、梓ちゃんに頼めるかしら? ちゃんとお礼はするから」
梓「はぁ、まぁ別に構いませんけど……一体何をすればいいんですか?」
紬「ありがとう、梓ちゃん! それじゃあ早速この用紙の質問に答えて」
梓「ええっと、好きな食べ物、得意or苦手な教科、口癖、この局面であなたはどんな行動をとりますか……」
紬「まだまだあるから、深く悩まないで思ったままに記入してね」ドサッ
梓「こ、こんなにあるんですか!? これは結構重労働ですね」
梓「――ふぅ、やっと終わりましたよ」
紬「お疲れ様、それじゃあ今度は身体測定するわね」
梓「えぇっ!? そんなことまでするんですか?」
紬「何かまずかった?」
梓「いえ、そんなことないですけど……それじゃあ計って下さい」
紬「あ、服は脱いでもらえる?」
梓「……本当に必要なんですか、それ」
紬「うーん、結構細かく必要事項があるの」
梓「ちょっと嫌気がさしてきました」
紬「えぇ……やっぱりダメだった?」ショボン
梓「はわわ……わ、わかりましたよ。服を脱げばいいんですねっ」バッ
紬「わ~、梓ちゃんだいた~ん」
梓「へ、変なこと言わないで下さい! 早く必要項目調べて下さいよ」
紬「うんうん!」
紬「これでよし、と。お疲れ様、梓ちゃん」
梓「本当に疲れましたよ。それでこの結果はいつわかるんですか」
紬「それはちょっと私にはわからないの。でも数ヶ月はかかるって話だったわ」
梓「はぁ。それじゃあ冬ぐらいになるんですかね」
紬「完成したらすぐに見せてあげるね」
梓「あんまり見たいとも思いませんけど……変なのだったら私のデータ使わないで下さいね?」
紬「大丈夫! 信用してちょうだい」
梓「はぁ」
~~
梓「――とか言ってたのに……凄いロボが完成してた」
梓「あの広辞苑くらい分厚かったデータはどこに生かされてたんだろう?」
梓「ハードな現場って、一体あれをどこに持っていく気なんだろうか」
梓「昨日はびっくりして気分が悪くなっちゃったけど」
梓「今日は行かないとね……はぁ、気が乗らないけど文句の一つは言わないと」
梓「多分、ムギ先輩は唯先輩達にも見せただろうし」
梓「皆さんの良識と常識に賭けるしかない」ガチャ
梓「こ、こんにちはー……昨日は先に帰ってしまって申し訳ありませんでした」
律「あ、梓」
アズサ「あぁ……ア……あああアアぁぁぁぁァァアアっっ!!」プシャアアアアア
唯紬「わ~♪」
梓「」パタリ
澪「梓ああぁぁぁぁ!」
…
梓「う、う~ん…………はっ!」
澪「お、気が付いたか」
梓「あ、澪先輩……そうか、私気絶しちゃって……あ! あのロボはどこに行きましたか!?」
澪「梓に膝枕してる」
アズサ「……」
梓「う、わわっ!?」
唯「おお、あずにゃん気が付いたんだ」ズズー
紬「部室に入ってくるなり倒れちゃって心配しちゃった」ズズー
梓「唯先輩、ムギ先輩……まさかその紅茶は」
唯「うん? ロボにゃんが淹れてくれたんだよ~」
紬「最高に甘露~。梓ちゃんもどう?」
梓「け、結構です! というか、ムギ先輩はともかく唯先輩まで!」
唯「ええ~? ロボにゃん可愛いじゃ~ん」
律「やめとけ梓、私らも散々言ったけど聞く耳もたずだったんだ」
梓「律先輩……私の味方は律先輩と澪先輩だけです」
唯「私はあずにゃんもロボにゃんも等しく大好きだよ~」
梓「そのロボにゃんっていうのやめて下さい!」
律「それにしても二人並んでいると」
澪「本当にそっくりだな」
梓「うぅ……それは認めます。でも、どうしてここまでそっくり何ですか」
紬「梓ちゃんの詳細なデータと、製作してくれた会社のお陰かしら」
澪「製作会社?」
紬「そう。私もよく知らないけど、オリエント工業っていう業界No.1の製作会社らしいの~」
唯「へぇ~、凄い会社なんだね」
律「これだけ瓜二つに作れるなんてなぁ」
澪(オ、オリエントってあれか……)モジモジ
紬「そうでしょ~」ニコニコ
梓(絶対ムギ先輩知ってて言ってるなぁ。反応から見るに、澪先輩も知ってるんじゃないかな)
律「それでムギ、さっきの話の続きだけどさ」
梓「何か話してたんですか?」
澪「ああ、このロボの事なんだけど」
唯「あずにゃんが倒れたから中断してたんだよ」
梓「それはすみませんでした。それでロボの事って何です?」
律「今週の間、このロボのモニターをするって話なんだけどさ。具体的に何するのかなってな」
梓「今週の間って、もう金曜日ですよ?」
律「だからどうすんのかなって訳だ」
紬「そこでみんなに提案したいんだけど……」
唯「なになに~」
紬「合宿の時に使った私の別荘で、週末過ごしてもらいたいんだけど……ダメかな?」
律「まぁ私は別に構わないけど……」
澪「ああ、別にいいよ。あそこなら勉強も練習もはかどりそうだしな」
唯「私もいいよ~」
紬「後は……」チラッ
梓「うっ……わ、わかりましたよっ! 行きますよ!」
紬「わ~、これで決定ね! ロボアズサちゃんもよかったわね~」
アズサ「でデれこでン」
唯「ロボにゃんも喜んでるね~」
紬「本当~」
律「全然わかんねーよ」
……
唯「――とうちゃ~~く!」
紬「とうちゃ~~く!」
律「あいつらテンション高いなぁ」
梓「これからの事を考えると、とてもあんな気分にはなれませんよ」
澪「まぁそういうなよ、梓。ロボの事は気掛かりだけど、私達は構わず練習しようじゃないか」
梓「澪先輩……そうですよね! 最近揃って練習する事が少なくなってましたから、ちょうどいい機会かもしれませんね」
律「そうだな。今回は私も練習を優先するよ」
梓「律先輩……イテテ、夢じゃないです!」ギュー
唯「それじゃあ早速ロボにゃんと遊ぼう!」
紬「わ~、楽しみ!」
アズサ「にゃア」
梓「……練習……できますかね?」
律澪「……」
梓「それにしても何でロボはこんなところでも制服なんですか?」
紬「似合ってていいと思うわぁ。それにこの制服にも色々機能が織り込まれているの」
梓「はぁ、なら気にしませんけど……ちょっとスカートが短すぎると思うんですよ」
律「だよな、私もそう思ってた」
唯「そうかなぁ。これくらい短い方が可愛いよ?」
梓「唯先輩の好みは聞いてません。いくらなんでも、その、下着が見えそうになってて……」
澪「いや、たまに見えてる……」
梓「ムギ先輩! もうちょっと丈を何とかして下さい!」
紬「これが可愛いのに~」
梓「ムギ先輩!!」
紬「は~い……」
紬「――それじゃあ入りましょう……あら?」ガチャガチャ
律「ムギ、どしたー?」
紬「うん……カギが合わないの。別の別荘のカギを持ってきちゃったみたい」
律「みたい、ってそれじゃ中に入れないのか!?」
唯「えーっ、どうしよう!?」
梓「どこか裏口とかないんですか」
紬「うふふふ、大丈夫。こういうアクシデントの為にロボアズサちゃんがいるの!」
澪「だ、大丈夫なのか? そもそもカギが無いのに開けられる訳ないだろう」
紬「大丈夫でっす! さぁ、ロボアズサちゃんお願い!」
アズサ「やッテやるでス」サッ
澪「おもむろに制服のスカートからヘアピンを!」
唯「そしてそのヘアピンをカギ穴に差し込んで!」
梓「複雑な内部構造のカギ穴を縫う様に弄って!」
アズサ「開きまシタ」ピーン
律「って、こりゃ犯罪だー!」スパーン
紬「ああっ、ロボアズサちゃん!」
アズサ「……」チラッ
律「うお、振り向いた!」
澪「無表情だから怖っ!」
最終更新:2011年05月06日 12:26