ある日の音楽準備室

梓「いきなり何を言ってるんですか」

紬「フフ……唯ちゃんりっちゃん、梓ちゃんを捕まえて!」

梓「ムギ先輩……?」

唯「合点ですたい!」ダダッ

律「確保ぉー!!」グワッ

梓「ちょっ、待ってくださいー!」

 ドタバタ ワーワー

唯「あずにゃん、抵抗しないのっ!」

梓「ですから……ふぐっ!」ゴチン

梓「く」ガクッ

律「よっし、捕まえた!」

紬唯「イェスッ!」パシン

――――

梓『う……?』モー

梓(あれ……私、寝てた?)

梓(なに、この固い床に寝かされてる感じ)

梓(確か今は放課後で……ムギ先輩が変なこと言いだして)

梓(なんだか暑いし、体が重い……ここはどこ?)

梓『唯先輩? ムギ先輩?』モー モー

梓(……視界がすごく狭い! 何かに閉じ込められてる!?)

 ガバッ

梓(身動きはとれる……動きにくいけど)

梓『唯先輩! どこですかっ!?』ブモーッ

唯「おー、ムギちゃん。起きたようだよ」

梓『!?』


紬「ふふ♪ 梓ちゃん、気分はどう?」

梓『ムギ先輩っ、何ですかこれは!』モーッ!

紬「……って、答えられないわよね」ニタァ

梓(……はぁ?)

紬「そうねぇ……ひとまず、梓ちゃんの置かれている状況を教えようかしら」

梓『だからそうしてくださいと言っているじゃないですか』モー

紬「梓ちゃんは今、『ファラリスの雄牛』と呼ばれる拷問具の中に閉じ込められているわ」

梓『ごっ、拷問!?』モー

紬「処刑道具と言った方が正確かもしれないけどね」

梓(……処刑道具?)

梓(これが……?)

梓『すいません、ムギ先輩……』ブモー

梓『私の見える範囲では、雄牛というかホルスタインが見えるんですけれど』モーモー

梓『ムギ先輩。これ牛の着ぐるみですよね』ウモー

紬「そしてっ!」

梓(あくまで話聞きませんか)

紬「恐ろしいことに、ファラリスの雄牛に閉じ込められた人間は」

紬「着ぐるみ頭部の変声機によって、『モー』としか言葉を発せなくなるのよ!!」ズバーン!

梓『着ぐるみって言っちゃった!!』モォー!

唯「ムギちゃんすごーい!」パチパチ

律「大発明だなっ!」パチパチ

梓『そして人を差し置いて盛り上がってんじゃねーです!!』ブモォー!

梓『もう良いですか? 着ぐるみの頭とっちゃいますね』モーモー

 ガチッ

梓『えっ』モッ

紬「外そうとしても無駄よ。二つの南京錠で前後をロックしてあるの」

梓『うぜぇー!!』ガチガチガチ

梓『とにかく、冗談はいいですからもう外してくださいよ』モー

梓『この中けっこう暑くて息苦しいです』ブモフ

律「さっ、ムギ。ティータイムにしよーぜ」

紬「ええ♪」

梓『ちょ、ちょっとちょっと!』モーモー!

唯「あずにゃーん♪」

梓『……なんですか』ンモ

唯「もーもー♪」ツンツン

梓『死ね』モー

唯「もーもー言うあずにゃんもかーわいいー♪」ダキッ

梓『抱き着かないでください、マジ暑いんですから!』ブモーッ!

唯「ありゃ、怒っちゃった」

梓『当たり前です』モーモー

 ガチャ

澪「ごめんな、遅れて……」

梓『澪先輩!』モー!

梓(澪先輩ならこのバカげた状況から私を救い出してくれるはず!)

澪「……」パタン

律「戻ってこい」

 ガチャ

澪「だって……それ、何?」プルプル

唯「あずにゃんだよー」

梓『……』

澪「……コホン。梓、何をやってるんだ?」

梓『私は特に何かしようと思ったつもりはないんですけれど』モーモー

梓『ムギ先輩が……』ウモ

澪「何言ってるかわからん」

梓『秋山ァー!!』モォー!

紬「さぁ、澪ちゃんもお茶にしましょう?」

澪「ああ。梓も早くそれ取ったらどうだ?」

梓(取れねーんだよ! 外れないってことを見て分かれ自称秀才!)ガチガチガチ

澪「お、この香りはダージリンだな」

梓『見ろおおぉぉー!! せめて見てくださいぃーっ!!』モオオン!

唯「えへへぇ」

紬「ほら唯ちゃん、クッキーもあるのよ」

唯「わーい!」パタパタ

梓『……』ポツーン

梓『なにこの疎外感』モゥ

唯「でねー」

律「ハハハッ」

紬「アリゲイターみたいね」

澪「それはないよ」

 ワイワイ ペチャクチャ

梓(もしかしてこれがムギ先輩の言ってた、私を苦しめるってこと……?)

梓(だったら……酷いよ)グスッ

梓『う、ひっ……』モゥ

梓(1年前まで……私のいないころは、こうして話してたんだろうなぁ)

梓(これがムギ先輩の夢って事は……ムギ先輩にとって、私って?)グスグス

梓『ふっ、えええぇぇ……む、ぎ、ぜんぱぁいぃ……』モオォ

紬「それからね……」ニコニコ

梓(涙が……止まんないよ)ポロポロ

梓『せんぱい、せんぱいぃっ』モーモー

梓(……私、けいおん部にとって邪魔だったんだ)

梓(そりゃそうだよね……先輩達のけいおん部が、1年かけて築いてきたものを)

梓(私みたいな新参者が壊そうとしたんだもんね……)

 ゴソッ

唯「あずにゃん? ギター背負ってどうしたの?」

梓『……帰ります』モー

唯「モーじゃわかんないよ」

梓『……帰りますっ!! 軽音部もやめますっ!!』モォー!

梓『こんなの酷いですよ……邪魔だってはっきり言ってくださればいいじゃないですか!』モーモォー!

唯「あずにゃんっ」ギュウ

梓『離して下さい……』モー

 カチャリ

梓『へ……』

 カチャ

梓(鍵が……外された?)

唯「……あずにゃん、ほっかほか」

 コトン

梓「ゆい、せんぱい……」

唯「こんなぼろぼろ泣いちゃって」ゴシッ

梓「先輩のせいじゃないですかっ!!」

梓「こんな、こんなぁ……」ギュウ

唯「よしよし……」

唯「……ごめんねあずにゃん。あずにゃんのこと、大好きだよ」ナデナデ

梓「当たり前です……じゃなきゃ困りますよぅ」

紬「……」

梓「唯先輩……大好きです」

唯「エヘヘ。私もだよ、あずにゃん」ギュウ

――――

澪「……なんかあそこ、変な雰囲気ただよってないか?」

紬「澪ちゃん、アールグレイ淹れたわよ」

澪「あ、うん……」コポポ

律「なぁムギ。これって結局……」

紬「そうね。私と唯ちゃんで、梓ちゃんの心理を操作しただけ」

律「……うまくいくのか、あいつら?」

紬「それはあの二人次第じゃないかしら」

律「まぁな……うまくいきゃあいいけど」

紬「えぇ。夢がかなうといいわね」


 おわり